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Ⅰ 入学
30倍サイズの生徒の担任は危険だらけみたい 2
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萩原先生は、わたしと小鈴ちゃんの席のちょうど境目くらいに、縦横10センチ×20センチくらいの可愛らしいサイズの(実際には3メートル×6メートルというサッカーゴールみたいに大きな黒板だけれど)、黒板を模したホワイトボードを使って授業を進めてくれる。ちなみに、この黒板風ミニホワイトボードは、休み時間にわたしたちと同じくらいの大きさの事務員である東條さんが運んでくれた。
ジッとホワイトボードに字を書いている萩原先生を見て、小鈴ちゃんがわたしに耳打ちをしてくる。
「絶対にくっつけてる机離したらダメだからね」
「何それ? 離したほうが良いってこと?」
わたしが冗談半分に尋ねると、小鈴ちゃんが慌てて首を横に振る。
「そんなわけないでしょ! わたしたちの席の真ん中にホワイトボードが置いてあるってことは、机離れたら落ちちゃうんだから!」
「そんなこと言われたら動かしたくなっちゃうけど」
わたしが本気では動かさないように気をつけながら机の縁に触れようとした瞬間に、小鈴ちゃんが「ダメだって」と言って思いっきりわたしの腕を掴んだせいで、力加減がおかしくなった。あっ、と声を出したのと同時に力が入って勢いよく机を揺らしてしまった。
「ちょっ」
ホワイトボードが思いっきり倒れて、机から落ちて床に落下する。萩原先生はバランスを崩して尻餅をついた。
「こ、小鈴ちゃん……」
わたしがジトっとした瞳で小鈴ちゃんを見てから、床に落ちたホワイトボードを拾い上げる。
「ごめんなさい……」
と小鈴ちゃんが萩原先生を見下ろしながら謝った。
「とりあえず、授業をちゃんと聞いてちょうだい……」
萩原先生が大きなため息をついてから、気を取り直して授業を再開する。
「あの、先生。ここわからないんですけど……」
「どれかしら?」
小鈴ちゃんがわたしたちサイズの、一般生徒用の教室くらい大きな教科書を指差すと、萩原先生が机の上を歩いて小鈴ちゃんの教科書の方に移動する。
姿勢良く歩いている先生が、普通サイズならかなりカッコいい女性であることは理解できる。でも、今の親指姫くらいのサイズだと圧倒的に可愛いが勝ってしまう。キュートアグレッションって言うのだろうか。ちょっとイタズラしたくなっちゃう。
わたしは静かに萩原先生の方に口を近づけていく。そんなことは気づかずに、萩原先生は教科書の上で全身を使って英単語の上をあっちに行ったり、こっちに行ったり、移動していた。そこにフッと軽く息を吹きかけてみる。
「え? ちょっと!?」
萩原先生がコロコロと机の上を転がって、小鈴ちゃんが教科書を押さえていた手に当たる。そんなわたしのイタズラに気づいた小鈴ちゃんが小さくため息をつくのと同時に、萩原先生が立ち上がって、わたしの方をジッと睨んでから、「春山ぁ……!」とお説教モードの声を出してくる。さすがにヤバいかと思った瞬間、小鈴ちゃんが右手で思いっきり机をドンっと叩いた。
大きな音がして、わたしや、後ろの席にいた詩葉先輩までビックリしていたのだから、すぐ近くに、自分の体を叩き潰せてしまうような大きな手が振り下ろされた萩原先生がビックリしないわけがない。ヒッ、と怯えた声を出して、その場に尻餅をついてしまっていた。
もはやお説教ができるようなメンタルではなさそう。小鈴ちゃんがわたしに助け舟を出してくれたということだろうか。不思議に思っていたけれど、次の瞬間に小鈴ちゃんがわたしをキッと睨みつけてきたから、別にわたしの味方をしようとしたわけでは無いことは理解した。
「何してるのよ! ちゃんと授業聞きなさいよ! しかも萩原先生のことビックリさせて、ダメじゃない!」
それを聞いて、わたしは苦笑いをする。萩原先生はわたしに吹き飛ばされた時よりも、明らかに小鈴ちゃんが机を叩いた方に怯えているんだけど……。
少ししてから、萩原先生がバツが悪そうに立ち上がる。
「と、とりあえず、春山は次変なことしたら2ヶ月トイレ掃除当番担当させるからな……」
週替わり当番でやることになっているトイレ掃除を2ヶ月ぶっ通しでするなんて嫌すぎる……。ある意味一番効いてしまうお説教かも。わたしは素直に頷いた。
「すいませんでした……」
「ちゃんと反省しろよ?」
「はい……」
仕方がないから、とりあえず、今は一旦反省したのだった。
でも、小鈴ちゃんも萩原先生のこと怯えさせてたし、わたし以外にも萩原先生のことビックリさせてる人がいるじゃん、と少し不満に思っていたけれど、2限目にはわたしたちよりももっと凄いことを、無意識でやっている人が存在することを知ることになるのだった。
ジッとホワイトボードに字を書いている萩原先生を見て、小鈴ちゃんがわたしに耳打ちをしてくる。
「絶対にくっつけてる机離したらダメだからね」
「何それ? 離したほうが良いってこと?」
わたしが冗談半分に尋ねると、小鈴ちゃんが慌てて首を横に振る。
「そんなわけないでしょ! わたしたちの席の真ん中にホワイトボードが置いてあるってことは、机離れたら落ちちゃうんだから!」
「そんなこと言われたら動かしたくなっちゃうけど」
わたしが本気では動かさないように気をつけながら机の縁に触れようとした瞬間に、小鈴ちゃんが「ダメだって」と言って思いっきりわたしの腕を掴んだせいで、力加減がおかしくなった。あっ、と声を出したのと同時に力が入って勢いよく机を揺らしてしまった。
「ちょっ」
ホワイトボードが思いっきり倒れて、机から落ちて床に落下する。萩原先生はバランスを崩して尻餅をついた。
「こ、小鈴ちゃん……」
わたしがジトっとした瞳で小鈴ちゃんを見てから、床に落ちたホワイトボードを拾い上げる。
「ごめんなさい……」
と小鈴ちゃんが萩原先生を見下ろしながら謝った。
「とりあえず、授業をちゃんと聞いてちょうだい……」
萩原先生が大きなため息をついてから、気を取り直して授業を再開する。
「あの、先生。ここわからないんですけど……」
「どれかしら?」
小鈴ちゃんがわたしたちサイズの、一般生徒用の教室くらい大きな教科書を指差すと、萩原先生が机の上を歩いて小鈴ちゃんの教科書の方に移動する。
姿勢良く歩いている先生が、普通サイズならかなりカッコいい女性であることは理解できる。でも、今の親指姫くらいのサイズだと圧倒的に可愛いが勝ってしまう。キュートアグレッションって言うのだろうか。ちょっとイタズラしたくなっちゃう。
わたしは静かに萩原先生の方に口を近づけていく。そんなことは気づかずに、萩原先生は教科書の上で全身を使って英単語の上をあっちに行ったり、こっちに行ったり、移動していた。そこにフッと軽く息を吹きかけてみる。
「え? ちょっと!?」
萩原先生がコロコロと机の上を転がって、小鈴ちゃんが教科書を押さえていた手に当たる。そんなわたしのイタズラに気づいた小鈴ちゃんが小さくため息をつくのと同時に、萩原先生が立ち上がって、わたしの方をジッと睨んでから、「春山ぁ……!」とお説教モードの声を出してくる。さすがにヤバいかと思った瞬間、小鈴ちゃんが右手で思いっきり机をドンっと叩いた。
大きな音がして、わたしや、後ろの席にいた詩葉先輩までビックリしていたのだから、すぐ近くに、自分の体を叩き潰せてしまうような大きな手が振り下ろされた萩原先生がビックリしないわけがない。ヒッ、と怯えた声を出して、その場に尻餅をついてしまっていた。
もはやお説教ができるようなメンタルではなさそう。小鈴ちゃんがわたしに助け舟を出してくれたということだろうか。不思議に思っていたけれど、次の瞬間に小鈴ちゃんがわたしをキッと睨みつけてきたから、別にわたしの味方をしようとしたわけでは無いことは理解した。
「何してるのよ! ちゃんと授業聞きなさいよ! しかも萩原先生のことビックリさせて、ダメじゃない!」
それを聞いて、わたしは苦笑いをする。萩原先生はわたしに吹き飛ばされた時よりも、明らかに小鈴ちゃんが机を叩いた方に怯えているんだけど……。
少ししてから、萩原先生がバツが悪そうに立ち上がる。
「と、とりあえず、春山は次変なことしたら2ヶ月トイレ掃除当番担当させるからな……」
週替わり当番でやることになっているトイレ掃除を2ヶ月ぶっ通しでするなんて嫌すぎる……。ある意味一番効いてしまうお説教かも。わたしは素直に頷いた。
「すいませんでした……」
「ちゃんと反省しろよ?」
「はい……」
仕方がないから、とりあえず、今は一旦反省したのだった。
でも、小鈴ちゃんも萩原先生のこと怯えさせてたし、わたし以外にも萩原先生のことビックリさせてる人がいるじゃん、と少し不満に思っていたけれど、2限目にはわたしたちよりももっと凄いことを、無意識でやっている人が存在することを知ることになるのだった。
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