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Ninth Chapter...7/27
再会
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玄人は瓶井さんから聞いた鬼の伝承について、私は八木さんから聞いた月の理論について。それぞれ論文を披露するように説明をし合い、時間は過ぎていった。
ムーンスパローの通信は、曇り空なこともあって成果は無く、この日は話だけで十二時になってしまった。
興味深かったのはやはり、曖昧だった鬼の伝承が戦時下において肉付けされ、水鬼、餓鬼、邪鬼という三つの鬼が確立されたというところか。それに、赤い満月が昇るときに、人々が狂い果てるというのも気になる部分だった。
赤い満月が人々を狂わせる。それはまさに、八木さんと話したルナティックと共通する。赤い、という接頭語が付いているのは良く分からないが、赤という色が血を連想させ、鮮烈な印象を残すからかもしれない。教訓的な言い伝えは怖いほどに意味があるのだし、そこは何とでも考えられる話だった。
「今日はおつかれ。また学校でね」
「また月曜日にねー」
「おう。元気にしてなさいよ」
十二時を過ぎ、私たちは秘密基地で別れる。今日は私が片付けをして、玄人に満雀ちゃんを送ってもらうことになったからだ。手を繋いで仲良く歩いていく二人は、ともすれば兄妹のようにも見えた。これが虎牙と満雀ちゃんだったら、絶対に見えないんだろうなあ。
……虎牙。全く、どこで何をしているというのか。
「やっぱり、押しかけてやろうかしら」
朝にもちらっと考えたことが、また頭をよぎる。佐曽利さんがどうしても秘密にしたいのなら、私だって。どうしても彼の無事を、知りたいのだ。
未だに既読にならないチャット。あれから何度も、私はメッセージを送り続けている。
何なら、さらっと戻ってきたら恥ずかしくなるような文言だって。
でも、本当はもっと沢山の言葉を送りたいくらいなのだ。
募る不安を、私は懸命にセーブしている。
勿論それは、私だけでなく玄人や満雀ちゃんもなのだろうけど。
「……ふう」
基地内の片付けがようやく終わる。
私の手では、やっぱり時間がかかってしまうものだ。
私の……。
「……痛て」
数日ぶりに、軽い頭痛がした。
あの夜ほどには痛まなかったが、それでも私は思わず顔をしかめる。
自動筆記の前兆というわけではなさそうだ。手には全く影響がない。
今回の頭痛は、本当に疲れているだけかもしれないな。
――じゃあ、帰るとしようか。
額に滲んだ汗を拭い、秘密基地から出ようとした。
そのときだった。
「……よう」
――え?
想像もしていなかった声と、
想像もしていなかった姿が、
そこにあった。
「疲れた顔してんな、龍美」
あれだけ求めていたのに。
あれだけ願っていたのに。
こんなにも、あっさりと。
こいつは。
「虎牙……」
姿を消す前と全く変わらない。
軽薄な笑顔を浮かべる虎牙が、私の前に立っていた。
ムーンスパローの通信は、曇り空なこともあって成果は無く、この日は話だけで十二時になってしまった。
興味深かったのはやはり、曖昧だった鬼の伝承が戦時下において肉付けされ、水鬼、餓鬼、邪鬼という三つの鬼が確立されたというところか。それに、赤い満月が昇るときに、人々が狂い果てるというのも気になる部分だった。
赤い満月が人々を狂わせる。それはまさに、八木さんと話したルナティックと共通する。赤い、という接頭語が付いているのは良く分からないが、赤という色が血を連想させ、鮮烈な印象を残すからかもしれない。教訓的な言い伝えは怖いほどに意味があるのだし、そこは何とでも考えられる話だった。
「今日はおつかれ。また学校でね」
「また月曜日にねー」
「おう。元気にしてなさいよ」
十二時を過ぎ、私たちは秘密基地で別れる。今日は私が片付けをして、玄人に満雀ちゃんを送ってもらうことになったからだ。手を繋いで仲良く歩いていく二人は、ともすれば兄妹のようにも見えた。これが虎牙と満雀ちゃんだったら、絶対に見えないんだろうなあ。
……虎牙。全く、どこで何をしているというのか。
「やっぱり、押しかけてやろうかしら」
朝にもちらっと考えたことが、また頭をよぎる。佐曽利さんがどうしても秘密にしたいのなら、私だって。どうしても彼の無事を、知りたいのだ。
未だに既読にならないチャット。あれから何度も、私はメッセージを送り続けている。
何なら、さらっと戻ってきたら恥ずかしくなるような文言だって。
でも、本当はもっと沢山の言葉を送りたいくらいなのだ。
募る不安を、私は懸命にセーブしている。
勿論それは、私だけでなく玄人や満雀ちゃんもなのだろうけど。
「……ふう」
基地内の片付けがようやく終わる。
私の手では、やっぱり時間がかかってしまうものだ。
私の……。
「……痛て」
数日ぶりに、軽い頭痛がした。
あの夜ほどには痛まなかったが、それでも私は思わず顔をしかめる。
自動筆記の前兆というわけではなさそうだ。手には全く影響がない。
今回の頭痛は、本当に疲れているだけかもしれないな。
――じゃあ、帰るとしようか。
額に滲んだ汗を拭い、秘密基地から出ようとした。
そのときだった。
「……よう」
――え?
想像もしていなかった声と、
想像もしていなかった姿が、
そこにあった。
「疲れた顔してんな、龍美」
あれだけ求めていたのに。
あれだけ願っていたのに。
こんなにも、あっさりと。
こいつは。
「虎牙……」
姿を消す前と全く変わらない。
軽薄な笑顔を浮かべる虎牙が、私の前に立っていた。
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