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第三部【流刻園幻想 ―Omnia fert aetas―】
一話 覚醒
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目覚めは最悪だった。
ズキズキという頭の痛みで意識が覚醒し、オレは自分が冷たい床に俯せで倒れていることに気付いた。
重たいまぶたをどうにか開いて、半身を起こす。
……暗い、目が慣れないとよく分からない。
だが……少なくともオレは、どこかの教室にいるようだった。
さっきまでの出来事はすぐに思い出せた。屋上にいた仮面の男。呼び出されたオレとリク。
男の謎の魔術によって、俺たちは引き寄せられ、何らかの攻撃を受けて……意識を失った。
だが、あれは屋上だった筈だ。
「……どうして、教室に……」
立とうとすると、まだ頭も痛むし体もふらふらする。
上手く形容し難いが、まるで動かしているのが自分の体じゃないような違和感もあった。
けれど、体つきは完全に自分のものだし、試しに頬を抓ると痛い。
きっとあの奇妙な魔術のせいで、一時的に神経がおかしくなってしまっているのだろうとオレは結論付けた。
「仮面の男……まさか、本当にいたなんてな」
いただけならまだしも、七不思議らしい魔術まで披露してみせたわけだ。
気に入らないが、これは流石に信じるしかない。
ミイちゃんにこの件を話したら、びっくりされるだろうな。
大丈夫だったかと、凄い顔で心配されてしまいそうだが……。
「……っと。それより状況を確認しないとだよな……」
ミイちゃんのことを考えるより、今自分が置かれた状況を把握しなければ。
不可思議な現象を体験したが、それが終わったとも限らないのだ。
教室に移動させられて、日が暮れるまで放置された……という可能性が一番近いとは思うものの、果たしてそれで間違いないのかは確かめなくては分からない。
これ以上何の異常も無ければ、さっさと帰ればいいだけの話だ。
「……ん?」
あれこれ考えているうち、視界が闇に慣れてくる。
すると、教室の様子がおかしいことに気付いた。
机が端に寄せられたり、椅子が倒れたりしている。
掃除の途中で放置されたのか、或いはここで誰かが暴れたのか――。
「――え?」
教壇の前に、目が釘付けになった。
そこには……一人の女性が、血を流して倒れていたからだ。
一目見ただけで、その女性が死んでいることが分かる。
何故なら、女性の胸元には深々とナイフが突き刺さっていたから……。
「し、死んでる……」
性質の悪いジョーク、ではない。
傷口を中心に広がっている血液は既に凝固しているが、この鉄臭さは確実に本物だ。
暗さのせいもあって顔は判然としない。ただ、年齢からすると誰かの親なのだろうか。
だとすると、どうして学校の教室で死んでいるのかという疑問が沸いてくるのだが……。
「誰、なんだろう……」
ここがどの教室なのかもあまり分からないが、とりあえずオレはクラスメイトの顔を一人ひとり思い出していった。
すると、案外すぐ似た人物に思い至る。
「……ミイちゃんと、似てるような」
青白い頬。すっかり生気は失われているものの、どことなく顔立ちがミイちゃんに似ている。
まさかこの人は……ミイちゃんのお母さんなのだろうか。
「でも、なんで学校になんか……」
ミイちゃんの両親には、二、三回くらい会ったことはあるけれど、あまり詳しいことは知らない。
ただ、PTAの役員なんかではなかった筈だ。
ここで死んでいる理由など、まるで見当がつかなかった。
「まだ、ミイちゃんのお母さんって決まったわけじゃないけど……」
もしもそうだったら、ミイちゃんは……どれだけ泣くだろう。
自分の母親が突然命を奪われたとしたら……自分の身に置き換えても、それは恐ろしく絶望的なことだった。
彼女の泣き顔が、とても鮮明に目に浮かぶ。
「……はあ」
どうして、こんなことになっているんだ。
オレが目覚めた教室の中で……こんな。
下手をすれば、オレが疑われてしまいかねない状況でもある。
おまけにオレは気絶していたから、何の記憶も持っていないのだ。
ズキズキという頭の痛みで意識が覚醒し、オレは自分が冷たい床に俯せで倒れていることに気付いた。
重たいまぶたをどうにか開いて、半身を起こす。
……暗い、目が慣れないとよく分からない。
だが……少なくともオレは、どこかの教室にいるようだった。
さっきまでの出来事はすぐに思い出せた。屋上にいた仮面の男。呼び出されたオレとリク。
男の謎の魔術によって、俺たちは引き寄せられ、何らかの攻撃を受けて……意識を失った。
だが、あれは屋上だった筈だ。
「……どうして、教室に……」
立とうとすると、まだ頭も痛むし体もふらふらする。
上手く形容し難いが、まるで動かしているのが自分の体じゃないような違和感もあった。
けれど、体つきは完全に自分のものだし、試しに頬を抓ると痛い。
きっとあの奇妙な魔術のせいで、一時的に神経がおかしくなってしまっているのだろうとオレは結論付けた。
「仮面の男……まさか、本当にいたなんてな」
いただけならまだしも、七不思議らしい魔術まで披露してみせたわけだ。
気に入らないが、これは流石に信じるしかない。
ミイちゃんにこの件を話したら、びっくりされるだろうな。
大丈夫だったかと、凄い顔で心配されてしまいそうだが……。
「……っと。それより状況を確認しないとだよな……」
ミイちゃんのことを考えるより、今自分が置かれた状況を把握しなければ。
不可思議な現象を体験したが、それが終わったとも限らないのだ。
教室に移動させられて、日が暮れるまで放置された……という可能性が一番近いとは思うものの、果たしてそれで間違いないのかは確かめなくては分からない。
これ以上何の異常も無ければ、さっさと帰ればいいだけの話だ。
「……ん?」
あれこれ考えているうち、視界が闇に慣れてくる。
すると、教室の様子がおかしいことに気付いた。
机が端に寄せられたり、椅子が倒れたりしている。
掃除の途中で放置されたのか、或いはここで誰かが暴れたのか――。
「――え?」
教壇の前に、目が釘付けになった。
そこには……一人の女性が、血を流して倒れていたからだ。
一目見ただけで、その女性が死んでいることが分かる。
何故なら、女性の胸元には深々とナイフが突き刺さっていたから……。
「し、死んでる……」
性質の悪いジョーク、ではない。
傷口を中心に広がっている血液は既に凝固しているが、この鉄臭さは確実に本物だ。
暗さのせいもあって顔は判然としない。ただ、年齢からすると誰かの親なのだろうか。
だとすると、どうして学校の教室で死んでいるのかという疑問が沸いてくるのだが……。
「誰、なんだろう……」
ここがどの教室なのかもあまり分からないが、とりあえずオレはクラスメイトの顔を一人ひとり思い出していった。
すると、案外すぐ似た人物に思い至る。
「……ミイちゃんと、似てるような」
青白い頬。すっかり生気は失われているものの、どことなく顔立ちがミイちゃんに似ている。
まさかこの人は……ミイちゃんのお母さんなのだろうか。
「でも、なんで学校になんか……」
ミイちゃんの両親には、二、三回くらい会ったことはあるけれど、あまり詳しいことは知らない。
ただ、PTAの役員なんかではなかった筈だ。
ここで死んでいる理由など、まるで見当がつかなかった。
「まだ、ミイちゃんのお母さんって決まったわけじゃないけど……」
もしもそうだったら、ミイちゃんは……どれだけ泣くだろう。
自分の母親が突然命を奪われたとしたら……自分の身に置き換えても、それは恐ろしく絶望的なことだった。
彼女の泣き顔が、とても鮮明に目に浮かぶ。
「……はあ」
どうして、こんなことになっているんだ。
オレが目覚めた教室の中で……こんな。
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おまけにオレは気絶していたから、何の記憶も持っていないのだ。
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