143 / 176
最終部【伍横町幻想 ―Until the day we meet again―】
十三話 「この町は終わるね」
しおりを挟む
ミオの家には、既に他のメンバーが勢揃いしていた。
実は彼が家を出る前、既にやって来ていた協力者の一人に、後の人たちを招き入れるようお願いしていたのだ。
そんなわけで、家主であるミオが一番遅くに登場することになったのである。
「ごめんね、僕たちが一番遅くなっちゃった……お待たせ、みんな」
「ああ、結構待ったぜ……とか言いつつ、ハルナも準備に手間取ってたんだけどさ」
「ミツヤってば、余計なこと言わない!」
ミオの挨拶を受け、隣り合って座っている男女が、まるで夫婦漫才のようにかけあう。
互いがどう思っているのかはさておき、周りから見ればとても似合いのカップルだ。
「ミイナちゃんとは、はじめましてだね。私は法月東菜っていうの。んでこっちは北村満也。ほら、挨拶」
「はは……初めまして、ミイナちゃん。騒がしいだろ」
「だから余計なこと言わないの!」
そのテンションの高さに気圧されながらも、ミイナは無難なコメントを返そうとあれこれ考え、
「は、はじめまして。……素敵なコンビですね?」
と、ミオの表情を伺いながら言った。
「はは、その通り。賑やかでいい二人だよ」
ミオが笑うと、先に待っていたもう一人の青年も笑顔で答える。
「ふふ、本当にね」
それから軽く咳払いをして、
「僕は遠野真澄。そしてこっちの子が光井明乃だ。よろしく」
「よろしくね、ミイナちゃん」
隣に座る少女と一緒に、自己紹介をするのだった。
この輪に初めて加わるのは、ミイナだけだ。
ここへ来るまでに、ミオからある程度の事情は教えてもらっていたが、目の前に座っている四人が何れも困難を乗り越えてきた者たちだというのには驚きだ。
ミツヤとハルナは霧夏邸で。
マスミとアキノは、ミオと同じく三神院で降霊術に絡んだ事件に関わり、そして生き残った。
「……よろしくおねがいします、皆さん」
彼らを前にして緊張はどうしても消えなかったが、そんなことに負けてはいられないと、彼女はあえて大きな声で挨拶する。
そんな彼女を、メンバーは和やかに迎え入れ。
それから、作戦会議がスタートするのだった。
「……さて、早速だけど本題に入るべきだろうね。みんな、集まってくれて本当にありがとう。この集まりの目的は、勿論分かってくれてるね?」
「確認なんてしなくても大丈夫だよ、マスミさん。思いはみんな一緒さ」
「……そうだね。わざわざ聞くのも申し訳ないかもしれない」
ミツヤの言葉に、マスミは軽く頷いてから答えた。
そして、ぐるりとメンバーを顔を見回す。
「僕らはこの伍横町で降霊術の実験を繰り返す、ドール……彼の暴走を止めるために集まった。これ以上、降霊術による悲劇が起きないためにね。まあ、これを最初に言い出したのは、ミオくんなんだけど」
「マスミさんも含めて、みんなが賛同してくれて嬉しかったです。僕やミイナちゃんだけでは、どうにもならなかったでしょうから」
最終的に集まったのは、たった六人だけではあるけれど。
それでも二人よりずっと心強いと、ミオは真実、そう感じていた。
「実際、ドールの計画の殆どを解明出来ましたけど……二人だけの手に負えるものじゃないですし」
「……だね」
「そ、そんなに恐ろしい計画なんですか?」
これまでの経緯を知らないミイナは、彼らの重苦しいやりとりを見て、思わず訊ねてしまう。
それに対しマスミは、ゆっくりと首を縦に振ると、こう告げた。
「……最悪、といってもいいと思うよ。止めなければ――この町は終わるね」
「町が、終わる……」
普通ならば、受け入れがたい話ではあったが。
ミイナは、マスミの言葉が誇張ではないと確信出来た。
「……というわけで、各自集めた情報をまとめてみよう。時間はもう、残されていないから」
今は六月八日の午後。
ドールが行動を起こすまで、もう数時間の猶予しか残されてはいなかった。
実は彼が家を出る前、既にやって来ていた協力者の一人に、後の人たちを招き入れるようお願いしていたのだ。
そんなわけで、家主であるミオが一番遅くに登場することになったのである。
「ごめんね、僕たちが一番遅くなっちゃった……お待たせ、みんな」
「ああ、結構待ったぜ……とか言いつつ、ハルナも準備に手間取ってたんだけどさ」
「ミツヤってば、余計なこと言わない!」
ミオの挨拶を受け、隣り合って座っている男女が、まるで夫婦漫才のようにかけあう。
互いがどう思っているのかはさておき、周りから見ればとても似合いのカップルだ。
「ミイナちゃんとは、はじめましてだね。私は法月東菜っていうの。んでこっちは北村満也。ほら、挨拶」
「はは……初めまして、ミイナちゃん。騒がしいだろ」
「だから余計なこと言わないの!」
そのテンションの高さに気圧されながらも、ミイナは無難なコメントを返そうとあれこれ考え、
「は、はじめまして。……素敵なコンビですね?」
と、ミオの表情を伺いながら言った。
「はは、その通り。賑やかでいい二人だよ」
ミオが笑うと、先に待っていたもう一人の青年も笑顔で答える。
「ふふ、本当にね」
それから軽く咳払いをして、
「僕は遠野真澄。そしてこっちの子が光井明乃だ。よろしく」
「よろしくね、ミイナちゃん」
隣に座る少女と一緒に、自己紹介をするのだった。
この輪に初めて加わるのは、ミイナだけだ。
ここへ来るまでに、ミオからある程度の事情は教えてもらっていたが、目の前に座っている四人が何れも困難を乗り越えてきた者たちだというのには驚きだ。
ミツヤとハルナは霧夏邸で。
マスミとアキノは、ミオと同じく三神院で降霊術に絡んだ事件に関わり、そして生き残った。
「……よろしくおねがいします、皆さん」
彼らを前にして緊張はどうしても消えなかったが、そんなことに負けてはいられないと、彼女はあえて大きな声で挨拶する。
そんな彼女を、メンバーは和やかに迎え入れ。
それから、作戦会議がスタートするのだった。
「……さて、早速だけど本題に入るべきだろうね。みんな、集まってくれて本当にありがとう。この集まりの目的は、勿論分かってくれてるね?」
「確認なんてしなくても大丈夫だよ、マスミさん。思いはみんな一緒さ」
「……そうだね。わざわざ聞くのも申し訳ないかもしれない」
ミツヤの言葉に、マスミは軽く頷いてから答えた。
そして、ぐるりとメンバーを顔を見回す。
「僕らはこの伍横町で降霊術の実験を繰り返す、ドール……彼の暴走を止めるために集まった。これ以上、降霊術による悲劇が起きないためにね。まあ、これを最初に言い出したのは、ミオくんなんだけど」
「マスミさんも含めて、みんなが賛同してくれて嬉しかったです。僕やミイナちゃんだけでは、どうにもならなかったでしょうから」
最終的に集まったのは、たった六人だけではあるけれど。
それでも二人よりずっと心強いと、ミオは真実、そう感じていた。
「実際、ドールの計画の殆どを解明出来ましたけど……二人だけの手に負えるものじゃないですし」
「……だね」
「そ、そんなに恐ろしい計画なんですか?」
これまでの経緯を知らないミイナは、彼らの重苦しいやりとりを見て、思わず訊ねてしまう。
それに対しマスミは、ゆっくりと首を縦に振ると、こう告げた。
「……最悪、といってもいいと思うよ。止めなければ――この町は終わるね」
「町が、終わる……」
普通ならば、受け入れがたい話ではあったが。
ミイナは、マスミの言葉が誇張ではないと確信出来た。
「……というわけで、各自集めた情報をまとめてみよう。時間はもう、残されていないから」
今は六月八日の午後。
ドールが行動を起こすまで、もう数時間の猶予しか残されてはいなかった。
0
あなたにおすすめの小説
白苑後宮の薬膳女官
絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。
ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。
薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。
静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
『 ゆりかご 』
設楽理沙
ライト文芸
- - - - - 非公開予定でしたがもうしばらく公開します。- - - -
◉2025.7.2~……本文を少し見直ししています。
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
――――
「静かな夜のあとに」― 大人の再生を描く愛の物語
『静寂の夜を越えて、彼女はもう一度、愛を信じた――』
過去の痛み(不倫・別離)を“夜”として象徴し、
そのあとに芽吹く新しい愛を暗示。
[大人の再生と静かな愛]
“嵐のような過去を静かに受け入れて、その先にある光を見つめる”
読後に“しっとりとした再生”を感じていただければ――――。
――――
・・・・・・・・・・
芹 あさみ 36歳 専業主婦 娘: ゆみ 中学2年生 13才
芹 裕輔 39歳 会社経営 息子: 拓哉 小学2年生 8才
早乙女京平 28歳 会社員
(家庭の事情があり、ホストクラブでアルバイト)
浅野エリカ 35歳 看護師
浅野マイケル 40歳 会社員
❧イラストはAI生成画像自作
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
2月31日 ~少しずれている世界~
希花 紀歩
恋愛
プロポーズ予定日に彼氏と親友に裏切られた・・・はずだった
4年に一度やってくる2月29日の誕生日。
日付が変わる瞬間大好きな王子様系彼氏にプロポーズされるはずだった私。
でも彼に告げられたのは結婚の申し込みではなく、別れの言葉だった。
私の親友と結婚するという彼を泊まっていた高級ホテルに置いて自宅に帰り、お酒を浴びるように飲んだ最悪の誕生日。
翌朝。仕事に行こうと目を覚ました私の隣に寝ていたのは別れたはずの彼氏だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる