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プロローグ
朱に染まる滅びの美景
しおりを挟む赤く灼熱の大地が続く。
空は赤黒い雲が入り混じりながら、灼熱の炎の光と血染めの大地に反射され、真っ赤に染まる。
その様相は色彩が交じり合うような、美しくもおぞましい。そして、そこに佇む一人の少女。煉獄の中に佇む少女が言葉を吐露する。
「私は壊した―…」
彼女は壊した。この『場』を悉く壊し尽くした。自身が愛し、目指そうとした彼女の居場所はそこにはない。彼女が知りうる限りの『モノ』全てを壊し、殺し尽くした。
そして今はただ、死にゆく赤い大地と黒い空を目に焼き付けて、呆然と立ち尽くすだけだった。
灼熱と血肉の朱に染まった大地にたった一人『少女』が立ち尽くしていては、それは不気味なのだろうか、それとも恐ろしいのだろうかーー……。人々は肉片となり、もはや誰が誰かも区別の付かない、死屍累々の山と化す。動物たちも灼熱に焼かれ、逃げ場も無く灰となり、無慈悲な大地へと還る。植物さえも焼けただれ、本来青々と茂る草木はまるで赤い葉を付けているように焦土と化していく。
そして今度は赤く染まった天空、その向こうにある漆黒の闇に広がるものさえも取り込み、壊しつくそうとしている。これが『地獄絵図』というとこのような情景なのだろうか。見る者誰しもが思い描く『死』とはこのことだろうか。あるいはこれが真の『天国』なのかもしれない。
けれど彼女にとって、そんな些細なこと考えるに値しない。
赤い世界にたった一人立ち尽くす『少女』の姿。美しい白色の長い髪をなびかせて、色白い艶やかな肌。それに不釣合いなほど、破れ爛れた衣服とも呼べぬ、もはや布切れとしか思えないものを身に纏い。左右異なる眼を持ち、右眼の美しい碧い輝き、左眼の禍々しい紅い輝きを放ちながら、その光景を立ち尽くすように見続ける。
彼女は遥か以前に夢見ていた情景。それと重ね合わせ、懐かしむ。大地より赤く燃え盛る炎はその勢いを増し、周囲へと散らばる火の粉が舞う。それはまるで赤く美しい花びらのようで、燃え盛る灼熱の火炎は風で揺れ動く花畑のように―…。理想の中で思い描いた広がる緑と色彩が混じり合う豊かな大地。広大な美しい花畑と暖かな夢、哀しくも皮肉なのか、この情景は似ていたのだ。
純粋な思いと滅びゆくこの情景にどこか美しささえ感じてしまう。
なぜ彼女はそこにいるのだろうか―。
なぜ殺さねばならなかったのだろうか―。
なぜ滅びたのだろうか―…。
彼女を見た者はそう『少女』に問いかけたくなるのだろう。ならばあなた自身がそう問いかけたとして、彼女はあなたに逆に問うだろう。
「なぜ私の愛するものを滅ぼされなければならなかったのか?――」
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