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episode2 『ユーロピア共栄圏』
47話 誰がために
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「大統領はまだいらっしゃらない?」
「申し訳ございません。交通状況の混雑もあって遅れが生じており……到着までにまだ時間を要するとのことで」
一行は役所にたどり着くが大統領は不在。内部は慌ただしい様子でこちらの対応もままならない状態だった。
「タイミングの悪いときに来ちゃったみたいだね。時間改めたほうがいいか」
ここ数週間で海賊の襲撃を受けた港から難民のように押し寄せているのだ。ロゼット達がいた港からも数多くいるらしく、顔ぶれに共通点のようなものがあまり散見されないのも移民国家であるが所以だろう。
一度に押し寄せてくるともなれば当然住民と難民との間で問題も起こる。居住区も持たず、宿も借りられない人間が役所に押し寄せて宿代わりにしている人間も多い。
役所を出て、再び行商人の自宅へと戻る頃には日が沈みかかっており、行商人の提案で外食へ行くこととなった。
夜になっても慌しい様子は変わらない街並み。明かりのせいで昼間と大差ないくらいには明るく感じ、中心の宿に止まっても眠れる気しないとロゼットは思いつつ周囲をキョロキョロと見渡していた。
宿にはやはり多くの人間が押し寄せて、順番待ちをしている中、強引に中に入り込もうとしてつまみ出されている人々も散見される。
「なんだか…かわいそうだね」
シンシアの呟きに黙っているロゼット。確かに辛そうではあるけど、一番かわいそうなのはこの都市の住民のようにも思えた。
宿屋どころか、商店にまで宿代わりにしようと押し寄せている人間もいたため、店側と衝突している。それどころか物を投げ込んでガラスを破り商店に侵入して窃盗を働いている者まで出る始末。近くにいた衛兵達にすぐに取り押さえられ連れて行かれる。
人々の住む都市であるはずの街中も戦場のように怒号が飛び交い、物が壊される音が響く。それでも周囲は日常生活を営んでいる光景がどうにも不気味に思える。
「外の渋滞の理由が分かったろ?」
行商人が彼らに話しかけてくる。
「みんな自分のことで一杯いっぱいなんだ。盗みも暴動が起こっていても自分達の身が大事だ。平和は国が守ってくれると。自分達から問題に足突っ込んで、予期せぬ痛手を負うリスクなんかごめんだよ」
「政府は無理をして受け入れ過ぎてる気もしますな…」
「そこだよな問題は…」
そうこうしているうちに少し大きめな食事場へと着く。正門には衛兵が立ち並び、警備もしっかりした場所だったためか難民者も寄り付いていなかった。内装は随分と豪華な作りで多くの貴族達たちが食事を楽しんでいる。
行商人と店員は顔見知りなのか軽く挨拶を交わした後、席へ案内されその中でもより高待遇の扱いを受ける。
「今日は命の恩人のあんたらに俺からの感謝のつもりだ。遠慮なく食ってくれ」
予約でも取っておいたのか次々とご馳走が運び込まれてくる。王宮での食事にも引けを取らない豪勢さに加えて地域の特産品なのか海産物が多く見られた。目の前の食事に目を輝かせているロゼット。
(見た目の通り分かりやすいなぁ)
シェイドはそんなロゼットの様子を見て和んでいるかのようだ。それに気づいた彼女は紅潮した頬を少し膨らませてジト目で一瞥したあとそっぽを向いて食事を始めた。
海産物の料理は非常に美味で、ロゼットもどんどん手を進めていく。気に入ってもらえたようで行商人も満足気の様子を見せる。しかしそれと対照してシンシアの手はあまり進んでいない。
セルバンデスが彼女を気を使って接すると、行商人が話し始める。
「嬢ちゃん、旨いだろ?」という行商人の問いにロゼットは素直な返事で答える。
「こんな旨い物が今じゃほとんど取れない。漁船も海賊の襲撃で近辺の海域しか出ることが許されない」
「それどころか最近じゃ港も襲撃される始末。結果どうなったかというと現状をみれば一目瞭然だろう?」
港町の安全が保障されなければ難民として住みやすい環境へと押し寄せてくるのだ。
「当然規制は厳しくなるし、外国からの移民なんてなったら尚のこと」
食事を取りつつ、頷きながら聞いているロゼットを横にシンシアが深刻そうな顔をしているのに気づく。そして一同に対しての言葉に反論する声を上げる。
「どうして手助けをし合わないのですか? 難民の人々も行き場もなく冷たくあしらわれるから暴挙にでるのでは…」
疑問を投げかけたシンシアに意外そうな表情をロゼットは見せる。行商人は彼女を一瞥してグラスに入ったワインを転がしながら答える。
「自分の立場に置き換えてみなよ。こんな町の現状で住みたいと思うかい? 仮に一人に優しくしたらまた一人やってくる。そしたらまた一人やってくるぞ?」
「み、みんなに優しくすればいいと思いますっ」
彼女の言葉に笑ってみせる行商人。その後すぐに少し溜め息をついて彼女に答える。
「君は随分と優しいんだな。百人だろうと千人、一万人でも受けれて養うことが出来るというわけだな?」
「そ、そんなの無理に決まってるじゃないですか」
「じゃあ後から来た難民はどうするんだ? 見捨てるのか?」
「それは…」
シンシアは顔を顰めて行商人の方を見ている。行商人はシンシアに意地悪を言っているようにも見えるが、ロゼットはよく考えてみると行商人の言っていること自体おかしなことでもないと感じていた。自分の出来る範囲でのこと、自分では決めておいても周りはそんなこと知らないし、彼らには関係のないことだ。
自分が助かるのであれば救いを求めていくのも当然。なのに自分にはその恩恵が受けられないとなると必死になるだろう。そうなったらどうするだろうか。
「だから盗みや無茶をするんですか…?」
ロゼットは少し考えたように、不安気な声で彼に問う。
「そういうことだよ。自分の許容量を超えた事なんてものはどうやったって出来ない。大切なのは今の自分に出来る事を考えることだ」
彼の言葉を聞き入るロゼット。紫苑と小屋で話していた言葉と同じで『今の自分にできること』というものを探していくことが最善手だと気づかされる。シンシアは「それでも」とさらに追求をしようにも言葉が出てこなかった。
彼の真っ当な意見の前では何を言っても綺麗事にしか聞こえてこない。シェイドが宥め、国としてはこうなった原因となるものを取り除く必要があるから大統領は軍を派兵している。しかしそれに反対する勢力がいる事を問題視した。
「俺は支持しないね。空論どころか具体的な思案を示さない上、軍を退かせるべきだと主張するのはどうかしてる。国民を守る気なんてさらさらないに等しい」
シェイドがこう述べていると横からポツリと。
「『誰のための国なのか…』」
ロゼットが呟き行商人が彼女を見る。
「『自由を求めてやってくる人々のための土地ではないのか』って言ってましたよね」
「そうだよヴェルちゃん。あの人達はただ平和を望んでいるだけなのに…」
シンシアは彼女の言葉、演説の中にある言葉に同調の意を示す。しかしロゼットは違っていた。
「でもどうしてこんな騒がしい時に他国からやってくるのかな…? しかもわざわざこの都市を選ばなくてもいいのに」
ロゼットの問いかけに言葉を詰まらせるシンシア。確かにおかしな話だ。難民はまだ分からないにしてもロゼット達は渋滞の中では他国からやってきたであろうと思われる人間も数多く見てきている。難民間で襲撃の噂話も散見されたのに帰る素振りさえみせていなかった。
一同沈黙する。周囲の貴族達の食事音と会話だけが聞こえ、ロゼット達のテーブルだけは異様な空間に見えただろう。沈黙を破ったのはセルバンデス。彼はワインを少し口に含んだ後にこう言った。
「もしかしたら……間者の可能性も十分ありえましょうな」
間者とは国の密偵いわばスパイのようなもの。旅行客として他国に入り込み内情を探る、または国民を煽り国家を傾倒させるような行為を行なうような存在。これと照らせば今回の騒動にも説得力が出てくるがこれだけの規模で行なうことなど本当に可能なのかと疑問に思っていると突如外で爆音が響く。
何事かとバルコニーへ向かうと火の手から逃げ惑う人々で騒ぎが起こっている。爆発によって火災が発生し、火元は広場。それと同時にけたたましい大砲の音が次々と都市に向かって撃ち込まれるのがわかる。
「また海賊か!?」
その言葉に店の客は一斉に悲鳴と共に逃げていく。これに巻き込まれる形でロゼット達も外へ逃げることとなる。店の外へ出ると爆発音が次々と起こり、ロゼットは再び戦場へと戻されたかのような気分であった。
人ごみの集団にもみくちゃにされ、建物から火の手が上がり落下物が飛来し逃げる人々が巻き込まれていく。紫苑に手を引かれロゼットは逃げていたが人ごみの勢いで押し出され上手く走ることが出来ない。
必死に彼についていこうとするも、脚が絡んでしまい人ごみの中で盛大に転んでしまう。
「ロゼット様!!」
紫苑は彼女の名を呼びながら必死に戻ろうとするも人ごみに遮られどんどん遠ざかっていく。
「し、紫苑さん!!」
人々の阿鼻叫喚の中では全く届くことなく、かき消される。立ち上がろうと身体に力を入れ頭上を見上げると一際大きな爆発が建物から起こり、燃えた破片が彼女達のいる路上目掛けて飛来する。
落ちてきた破片は周囲に炎を撒き散らしながら音を立てて散らばり、火の手の移った人々の悲鳴が響き渡った。紫苑は焦燥の表情を隠しきれず魔物襲撃の際に見せた脚力で飛び上がる。
軽快な身のこなしで建物から路上を見下ろして必死に探すがロゼットの姿は見当たらない。自分の不甲斐なさをかみ締めながら海上に目をやると黒い船体が見え、あの時の海賊と同じだということに気づく。
「申し訳ございません。交通状況の混雑もあって遅れが生じており……到着までにまだ時間を要するとのことで」
一行は役所にたどり着くが大統領は不在。内部は慌ただしい様子でこちらの対応もままならない状態だった。
「タイミングの悪いときに来ちゃったみたいだね。時間改めたほうがいいか」
ここ数週間で海賊の襲撃を受けた港から難民のように押し寄せているのだ。ロゼット達がいた港からも数多くいるらしく、顔ぶれに共通点のようなものがあまり散見されないのも移民国家であるが所以だろう。
一度に押し寄せてくるともなれば当然住民と難民との間で問題も起こる。居住区も持たず、宿も借りられない人間が役所に押し寄せて宿代わりにしている人間も多い。
役所を出て、再び行商人の自宅へと戻る頃には日が沈みかかっており、行商人の提案で外食へ行くこととなった。
夜になっても慌しい様子は変わらない街並み。明かりのせいで昼間と大差ないくらいには明るく感じ、中心の宿に止まっても眠れる気しないとロゼットは思いつつ周囲をキョロキョロと見渡していた。
宿にはやはり多くの人間が押し寄せて、順番待ちをしている中、強引に中に入り込もうとしてつまみ出されている人々も散見される。
「なんだか…かわいそうだね」
シンシアの呟きに黙っているロゼット。確かに辛そうではあるけど、一番かわいそうなのはこの都市の住民のようにも思えた。
宿屋どころか、商店にまで宿代わりにしようと押し寄せている人間もいたため、店側と衝突している。それどころか物を投げ込んでガラスを破り商店に侵入して窃盗を働いている者まで出る始末。近くにいた衛兵達にすぐに取り押さえられ連れて行かれる。
人々の住む都市であるはずの街中も戦場のように怒号が飛び交い、物が壊される音が響く。それでも周囲は日常生活を営んでいる光景がどうにも不気味に思える。
「外の渋滞の理由が分かったろ?」
行商人が彼らに話しかけてくる。
「みんな自分のことで一杯いっぱいなんだ。盗みも暴動が起こっていても自分達の身が大事だ。平和は国が守ってくれると。自分達から問題に足突っ込んで、予期せぬ痛手を負うリスクなんかごめんだよ」
「政府は無理をして受け入れ過ぎてる気もしますな…」
「そこだよな問題は…」
そうこうしているうちに少し大きめな食事場へと着く。正門には衛兵が立ち並び、警備もしっかりした場所だったためか難民者も寄り付いていなかった。内装は随分と豪華な作りで多くの貴族達たちが食事を楽しんでいる。
行商人と店員は顔見知りなのか軽く挨拶を交わした後、席へ案内されその中でもより高待遇の扱いを受ける。
「今日は命の恩人のあんたらに俺からの感謝のつもりだ。遠慮なく食ってくれ」
予約でも取っておいたのか次々とご馳走が運び込まれてくる。王宮での食事にも引けを取らない豪勢さに加えて地域の特産品なのか海産物が多く見られた。目の前の食事に目を輝かせているロゼット。
(見た目の通り分かりやすいなぁ)
シェイドはそんなロゼットの様子を見て和んでいるかのようだ。それに気づいた彼女は紅潮した頬を少し膨らませてジト目で一瞥したあとそっぽを向いて食事を始めた。
海産物の料理は非常に美味で、ロゼットもどんどん手を進めていく。気に入ってもらえたようで行商人も満足気の様子を見せる。しかしそれと対照してシンシアの手はあまり進んでいない。
セルバンデスが彼女を気を使って接すると、行商人が話し始める。
「嬢ちゃん、旨いだろ?」という行商人の問いにロゼットは素直な返事で答える。
「こんな旨い物が今じゃほとんど取れない。漁船も海賊の襲撃で近辺の海域しか出ることが許されない」
「それどころか最近じゃ港も襲撃される始末。結果どうなったかというと現状をみれば一目瞭然だろう?」
港町の安全が保障されなければ難民として住みやすい環境へと押し寄せてくるのだ。
「当然規制は厳しくなるし、外国からの移民なんてなったら尚のこと」
食事を取りつつ、頷きながら聞いているロゼットを横にシンシアが深刻そうな顔をしているのに気づく。そして一同に対しての言葉に反論する声を上げる。
「どうして手助けをし合わないのですか? 難民の人々も行き場もなく冷たくあしらわれるから暴挙にでるのでは…」
疑問を投げかけたシンシアに意外そうな表情をロゼットは見せる。行商人は彼女を一瞥してグラスに入ったワインを転がしながら答える。
「自分の立場に置き換えてみなよ。こんな町の現状で住みたいと思うかい? 仮に一人に優しくしたらまた一人やってくる。そしたらまた一人やってくるぞ?」
「み、みんなに優しくすればいいと思いますっ」
彼女の言葉に笑ってみせる行商人。その後すぐに少し溜め息をついて彼女に答える。
「君は随分と優しいんだな。百人だろうと千人、一万人でも受けれて養うことが出来るというわけだな?」
「そ、そんなの無理に決まってるじゃないですか」
「じゃあ後から来た難民はどうするんだ? 見捨てるのか?」
「それは…」
シンシアは顔を顰めて行商人の方を見ている。行商人はシンシアに意地悪を言っているようにも見えるが、ロゼットはよく考えてみると行商人の言っていること自体おかしなことでもないと感じていた。自分の出来る範囲でのこと、自分では決めておいても周りはそんなこと知らないし、彼らには関係のないことだ。
自分が助かるのであれば救いを求めていくのも当然。なのに自分にはその恩恵が受けられないとなると必死になるだろう。そうなったらどうするだろうか。
「だから盗みや無茶をするんですか…?」
ロゼットは少し考えたように、不安気な声で彼に問う。
「そういうことだよ。自分の許容量を超えた事なんてものはどうやったって出来ない。大切なのは今の自分に出来る事を考えることだ」
彼の言葉を聞き入るロゼット。紫苑と小屋で話していた言葉と同じで『今の自分にできること』というものを探していくことが最善手だと気づかされる。シンシアは「それでも」とさらに追求をしようにも言葉が出てこなかった。
彼の真っ当な意見の前では何を言っても綺麗事にしか聞こえてこない。シェイドが宥め、国としてはこうなった原因となるものを取り除く必要があるから大統領は軍を派兵している。しかしそれに反対する勢力がいる事を問題視した。
「俺は支持しないね。空論どころか具体的な思案を示さない上、軍を退かせるべきだと主張するのはどうかしてる。国民を守る気なんてさらさらないに等しい」
シェイドがこう述べていると横からポツリと。
「『誰のための国なのか…』」
ロゼットが呟き行商人が彼女を見る。
「『自由を求めてやってくる人々のための土地ではないのか』って言ってましたよね」
「そうだよヴェルちゃん。あの人達はただ平和を望んでいるだけなのに…」
シンシアは彼女の言葉、演説の中にある言葉に同調の意を示す。しかしロゼットは違っていた。
「でもどうしてこんな騒がしい時に他国からやってくるのかな…? しかもわざわざこの都市を選ばなくてもいいのに」
ロゼットの問いかけに言葉を詰まらせるシンシア。確かにおかしな話だ。難民はまだ分からないにしてもロゼット達は渋滞の中では他国からやってきたであろうと思われる人間も数多く見てきている。難民間で襲撃の噂話も散見されたのに帰る素振りさえみせていなかった。
一同沈黙する。周囲の貴族達の食事音と会話だけが聞こえ、ロゼット達のテーブルだけは異様な空間に見えただろう。沈黙を破ったのはセルバンデス。彼はワインを少し口に含んだ後にこう言った。
「もしかしたら……間者の可能性も十分ありえましょうな」
間者とは国の密偵いわばスパイのようなもの。旅行客として他国に入り込み内情を探る、または国民を煽り国家を傾倒させるような行為を行なうような存在。これと照らせば今回の騒動にも説得力が出てくるがこれだけの規模で行なうことなど本当に可能なのかと疑問に思っていると突如外で爆音が響く。
何事かとバルコニーへ向かうと火の手から逃げ惑う人々で騒ぎが起こっている。爆発によって火災が発生し、火元は広場。それと同時にけたたましい大砲の音が次々と都市に向かって撃ち込まれるのがわかる。
「また海賊か!?」
その言葉に店の客は一斉に悲鳴と共に逃げていく。これに巻き込まれる形でロゼット達も外へ逃げることとなる。店の外へ出ると爆発音が次々と起こり、ロゼットは再び戦場へと戻されたかのような気分であった。
人ごみの集団にもみくちゃにされ、建物から火の手が上がり落下物が飛来し逃げる人々が巻き込まれていく。紫苑に手を引かれロゼットは逃げていたが人ごみの勢いで押し出され上手く走ることが出来ない。
必死に彼についていこうとするも、脚が絡んでしまい人ごみの中で盛大に転んでしまう。
「ロゼット様!!」
紫苑は彼女の名を呼びながら必死に戻ろうとするも人ごみに遮られどんどん遠ざかっていく。
「し、紫苑さん!!」
人々の阿鼻叫喚の中では全く届くことなく、かき消される。立ち上がろうと身体に力を入れ頭上を見上げると一際大きな爆発が建物から起こり、燃えた破片が彼女達のいる路上目掛けて飛来する。
落ちてきた破片は周囲に炎を撒き散らしながら音を立てて散らばり、火の手の移った人々の悲鳴が響き渡った。紫苑は焦燥の表情を隠しきれず魔物襲撃の際に見せた脚力で飛び上がる。
軽快な身のこなしで建物から路上を見下ろして必死に探すがロゼットの姿は見当たらない。自分の不甲斐なさをかみ締めながら海上に目をやると黒い船体が見え、あの時の海賊と同じだということに気づく。
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