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episode3 人と魔の狭間に
93話 命運決めるもの
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「南部より敵襲! 数はおよそ二万ほどかと思われます!」
北部区画の城壁にて、伝令の声が響き緊張感で包まれる。上官は冷静に被害状況と物資の残量確認を急がせ、出来うる限りの援軍を手配するように指示。この行動にラムザはソルディオスに何か耳打ちをすると、軍の上官へと歩み寄る。
「いえ、ここはこちらの陣営から一人出します。まだ襲撃も受けていない状態から兵力を削いで、『虚を突かれる』なんて古典的な展開、誰も期待していないでしょうし」
「しかし……たった一人を送ったところでどうなります?」
「足止めの足しくらいにはなるでしょう」
上官の疑問に足止めくらいであればできるとラムザは答える。彼の行動がふざけているのか、それとも本気なのか、煮え切らないが彼の用いた物資によって戦力の補強に大いに貢献している手前、強くも発言できなかった。現に榴弾砲も機能しているようで、南部は襲撃こそ受けているものの、なんとか持ちこたえているようである。「お戯れを」と呆れながら返す事がせいぜいであったが、それでもラムザは余裕の表情を見せて「十分ですよ」とだけ返す。
「敵襲!! こちらへ向かってきております!」
そしてラムザの読みが当たったかのように北部でも魔物の影を捉えると、兵達は臨戦態勢を取る。ラムザも城壁より魔物の姿を捉えながら少しだけ笑ってみせる。再び彼の横に並び立つソルディオスに対して述べる。
「魔物にしては賢しいな。どう見る?」
「狙い方が人間的でしょうか。指揮を執ってる頭でもいるんでしょうかね。まぁー……所詮は魔物かと」
「任せる。三人揃ってお迎えする必要もなさそうだ」
ラムザに一任され、託されたソルディオスは城壁から飛び降り、城壁外へと出る。十メートル近くはあろう城壁から飛び降りても、彼はいとも容易く行なったと言わんばかりに何食わぬ顔で歩き出す。その手に持つメイスを伸縮自在に展開させて、先端の光源体らしき物体を発生。周囲の兵士達も見たことがない装備品に驚きの言葉を口々にする。
「捕捉しました! 距離、まもなく五百…」
「射撃開始!」
合図と共に一斉に撃ち出される榴弾。魔物の群れを捕らえ、水平線に爆炎が巻き起こる壮絶な映像が映し出される。兵士達も榴弾砲の威力に息を呑み、次の射撃準備へと備える。
そしてロゼット達のいる南区画城壁では小銃部隊による応戦、城壁外では榴弾砲による攻防が繰り広げられる。傭兵部隊も翼鳥迎撃も兼ねた、城壁と市内への侵入防止のために張り巡らした拒馬から防衛線を張っている。榴弾砲による防衛は確かに機能はしているものの、魔物の数は圧倒的でじりじりと前線を押し上げられる。
「弾薬が足りない!! 補給は!?」
「足りない分は火炎瓶でも火弓でも使って何とかしろ! こっちも手一杯なんだよ!!」
怒声と銃声、そして爆音と魔物の奇声が混じり飛び交う中で、ロゼットはシンシアと澄華の元へ向かった。
「シンシアさん!! 澄華連れてすぐにここから離れて!」
扉を勢いよく開けたことでシンシアと澄華は少し身体をびくつかせる。シンシアに小銃を渡し、緊急時には護身として持つことを促す。彼女達も外の音でどういう状況なのかは察知できていたが、シンシアは身体を震わせながらも逃げようとしないロゼットを強く見る。そして思いの丈をぶつけてしまう。
「ヴぇ、ヴェルちゃんはどうするの!? 外は戦場なんでしょ!!」
「私も戦えるなら行かなきゃ」
魔物と戦う兵の悲鳴がすぐそこまで響き、焦燥の表情で振り返るロゼット。危機が目前まで迫っていることを如実に物語る。ロゼットも指先の震えが止まらなかった。シンシアの目から見ても、恐ろしくて仕方ないという彼女の様子は明らかだった。逃げ出したくて仕方ないと、彼女の目が語っている。
「怖いのに戦う必要なんてないじゃない! ヴェルちゃんだって……女の子なんだよ!?」
ロゼットもシンシアもひ弱な少女。本来、戦いなど無縁の存在。王宮で何事もなく生活する毎日―…それだけで済むのなら、できることならそうしたい。
だが今の彼女は違う。
ロゼットは澄華の頭を撫でて「だって…守りたいじゃない」と囁く。
戦闘が激化し、外の空気に湿気と火薬の乾きが入り混じり魔物の接近に伴って白兵戦を繰り広げる様相が目立ち始めた。ロゼットは城壁の外へと再び駆け抜けて、狭間付きの胸壁へ隠れながら様子を伺う。小さな頭をひょっこりと恐る恐ろ覗かせながらすでに血みどろとなった戦場を目に焼き付ける。より一層恐怖が身体へと流れ込んできて、頭を引っ込めて構えていた弓を強く握り締める。目を強く瞑り「私にも出来る」と念仏を呟くように唱えて、意を決して弓を構えて狙いを定める。極度の緊張のあまりにただひたすら目で追って撃ち続ける。銃声も響き魔物も次から次へとやってくる始末。
「榴弾砲に取り付かれるぞ!! 応援まだかぁっ!?」
「口動かす前に手ぇ動かせ!!」
ロゼットのすぐ隣でも怒声と銃声が飛び交う。足の速い小型の魔物がもうすでに榴弾砲付近にまで迫り取り付く怒涛の勢いを見せる。傭兵部隊の応援が駆けつけて次々と城壁から銃弾の雨を降らせるがそれでも掻い潜って入り込んでくる魔物との攻防。榴弾砲部隊の多くは最低人数を残してほとんどが白兵戦に持ち込んでいる始末。
「どれを狙えば良いの…っ!?」
兵と魔物で入り乱れ錯乱するロゼット。その横から兵士の一人が「目を見て狙え!!」と叫ぶ。ロゼットが混乱していた事を察してなのか、それとも兵全てに行き届くように叫んだのか定かではなかったが彼の言うとおりに目を見て狙いを定める。魔物の目は赤く光を帯びているうような、よく見れば目立つ外観をしており彼女はそれをヒントに弓を構える。先ほどまで当たらなかった矢を引く瞬間に思い起こされる。
―『そうじゃない、少し上を狙え』―
彼女は標的から少し上を向けて狙いをを定めて放つ。しかし僅かにズレて今度は更に上を狙う。
―『標的に直進に進むと思うな、弾道ってのは下へと落ちていく。距離が開くほどにな』―
今度は魔物の動きを予測し、進路方向の少し先へ向ける。
―『狙うなら…』―
「首筋っ…!」
彼女は教えられた言葉を口にして、強く引いた矢を一気に解き放つ。矢は僅かに放物線を描きながら戦火の中を掻い潜るようにして魔物目掛けて向かっていく。鋭い矢の一撃が綺麗に魔物の首筋に入り込み食道を貫通、魔物は倒れこみもがき苦しむ。
「あ、当たった…!?」
彼女の驚嘆と安堵が入り混じった声が戦火の中で響くが、倒れこんだ魔物の口から黒い物体が吐き出されるように出てくる。魔物の体液と血液の入り混じった色に染まり宿主から這い出ようと―…そして別の寄生先を探しているようであった。ロゼットはそれも見逃すことなくもう一度、狙いを定めて弓を引く。今度も先ほどよりも小さな対象である寄生体の頭上に命中し、あまりの緊張にほっと息つく。
しかしそんな暇を与える間もなく爆発音が響く。それも先ほどまでロゼットとカブスが会話をしていた角櫓から炎上。レンガのような石作りは崩れかかり、魔物の大群がまるで蟻のように這って登ってくる。
「西側が‼」
兵たちの間でも同様が広がる。ロゼットもカブスのことが気がかりになり、剣に持ち替えて急いで向かう。向かう途中に襲い掛かってくる魔物に対して慣れた手つきで応戦し葬る。経験を積んだ剣での近接戦においてはひるむことはないがこれほどの数を相手にすることは今までになかった。変な緊張感からか兵の悲鳴に反応、動揺してしまいわずかに動きが鈍ったところに魔物は付け入ってくる。
「きゃあっ‼…くっぐぅっ」
押し倒されてしまうも咄嗟の反応が追いつき刀身で魔物の噛みつきを防ぐが、純粋な力勝負に持ち込まれてしまっては少女の力では勝ち目はない。じりじりと迫りくる血混じりの魔物の牙に恐怖しながらも必死にもがいているロゼットの耳に一際大きく、乾いた音が入ってきた。その音と共に魔物の動きは鈍くなり、再度銃声が響き今度は魔物も彼女に倒れこむ。重たい魔物の体をどかして、一緒になって手伝ってくれた人に感謝すると聞き覚えのある鳴き声を発した小さな生き物が彼女に擦り寄る。
「澄華⁉ じゃあ…」
「ヴェルちゃん…私…」
魔物を撃ったのはシンシア。それも彼女が渡した小銃で魔物を倒していた。二発の弾丸が撃ち込まれたが妙である。先ほどロゼットが弓で射った時は寄生体が体外へと這い出ようとしていたのだが、シンシアの撃った魔物からはそれが見られなかった。
「何も出てこない…?」
「え?」
ロゼットの疑問にシンシアは恐々と魔物を見てみるがやはり何の反応もなかった。ただ息絶えて屍となっている。緊張して強張った表情と肩で息をするシンシアをひとまず落ち着かせたロゼットは一緒に崩れかかっている角櫓へ行くように促し、走り出す。再び戦火へと引き戻されたように爆破と魔物の行進で揺れる城壁、足元がおぼつかない状態で無我夢中で向かった先―…。
赤々と燃える炎と兵と魔物の死屍累々が入り混じる血だまりの朱に染まりし空間。二人は口を押えて惨たらしい光景にたじろぎ、小さな地竜の澄華も同じ魔物の死骸には寄り付こうとはしていなかった。カブスを探してロゼットは周囲を見渡すが彼らしき人物は見つからない。難を逃れて脱出したのだろうか―…あるいは崩れた城壁の下敷きになってしまったのか。ロゼットの頭の中で嫌な考えが過ったその時、シンシアの声が響き渡った。
彼女の元へと駆け寄るロゼット。
「カブスさん‼」
角櫓はほぼ崩壊状態で城壁の外へ向けて瓦礫が散乱。その瓦礫の中に体の半分が埋もれているカブスを見つける。ロゼットは何の躊躇もなく瓦礫をうまく足場にして飛び降りていく。周囲は猛ける炎に囲まれるような状態で体を動かしていなくても汗ばんでしまいそうだ。
幸いにもカブスの体にかぶさっていた瓦礫はロゼットの力でもどかすことができる程度の重さと大きさ。息を切らしながらも彼の身体を手繰り寄せるように作業を進めていくと両足がつぶされているような形で巨大な岩石の下敷きとなっていた。心配そうに慌てるロゼットに落ち着くように低い声で答えるカブス。
「いや、脚甲のおかげで骨は折れてない」
ただ変形してるせいなのか引き抜くのは難しい様子。ロゼットはダメ元で瓦礫を動かそうとするがビクともしない。無理に引き抜こうとも試みるが激痛が走ったのかカブスが少し顔をゆがませる。
「大丈夫ですか⁉」
「痛みがあるってのは生きてる証拠だ」
どうやら足の感覚がないわけではないようだ。炎上のせいか魔物も彼らの周囲には寄り付こうとしてこないがこちらを伺う様子を見せている。いずれにしても火の手が回っている今のうちに救出できなければ助かる保証もない。ロゼットがシンシアに助けを呼ぶように頼みこもうとした瞬間だった。
炎の中から飛び込んできた一体の魔物。姿かたちは狼型の魔物のようだが様子が他の魔物とは明らかに違った。他の魔物はだらしなく涎を垂らしながら、明後日の方向に視線が向かっている。どれも狂気に満ちているような様子だったがこの魔物―…そんな様子が微塵も見られない。まるで躾の行き届いた動物のように見たままでは大人しく感じるのだ。そして明らかに他とは違う決定的なもの…。
澄華がうなり声をあげ、ロゼットはその違和感の正体に気づく。魔物の目―…全てが真っ黒なのだ。
瞳孔も白目にあたる部分も見当たらない。目を動かせばわずかだが動物でも白目は確認できるものも存在するがこの魔物はそれが一切ない、そして瞳孔にあたる部分さえも全く何もないのだ。炎の光加減で僅かにだが動いているのはわかる。しかし穴でも開いているかのように目が漆黒で底なしの窯のように感じられた。
そしてこちらの様子を伺ったのちに体から黒い無数の触手のようなものが飛び出し、こちらへと向かってくる。あまりのことに慌てて剣を構えるが魔物の急接近があまりにも早すぎる。最後まで目を見開きながら、おびえる余裕さえない刹那で銃声が響く。放ったのはシンシア。彼女が再び放った弾丸は今度は魔物の頭部へと見事に命中。魔物は今度は電源が切れたおもちゃのように一切の苦しみも見せずにその場に倒れこみ即死であった。うねりをあげていた触手もまるで糸が切れたかのように動きが止まった。兵士数名が彼女たちの元に下りてきて救出にやっと乗り出そうとしたが再び火炎の中から先ほどと同じ雰囲気を纏った魔物が次々と飛び込んでくる。
「キリがない…。俺のことはいいから退け‼」
カブスは彼らに逃げるよう指示を促すも誰一人としてその場から逃げようとはしなかった。銃声と剣撃が交差する中でロゼットは戦闘を兵に任せて自身は瓦礫動かそうと再度試みる。
「やめろ‼ お前まで付き合う必要はない。今すぐにでも逃げろ!」
やめる様子を見せないロゼット。今度はシンシアにも彼女を連れて逃げるように叫ぶがシンシアも少し戸惑いを見せながらも彼女たちを守りながら戦う兵たちを見て銃を握りしめて魔物へと正確な射撃を続ける。しかし六発しか入らない小銃はあっという間に切れてしまい、弾丸の込め方がわからないシンシアは狼狽えてしまう。
「使って‼」
だが遅れてやってきたシェイドがその様子を見て咄嗟の判断でシンシアへ弾丸を込めた小銃を投げ渡す。拾い上げると震える手で再び銃を構えて彼らを援護し、再び正確無比な射撃を行う。彼女にまさかこんな才能があったとは思いもよらずシェイドは弾丸の込められた銃を集めて彼女の元へと駆け寄っていく。
そしてロゼットの行動に兵の一人が手を貸すように瓦礫を動かそうと協力する。ロゼットと違い鍛え上げられた若手の兵士の力でも瓦礫は動く気配を見せない。それでもと命がけで戦う兵士と周囲を見てロゼットも瓦礫の破片の石を抱え込んで瓦礫に向かって猛進。少しでも力の足しになるようにと彼女も全身を使って捨て身のように助け出そうと必死になっていた。身体が傷つき瓦礫にぶつけた部位からジワリと出血しようとも構うことなくぶつけ続ける。誰かに死んでほしくないという一心で―…。
「もうやめろ‼」
カブスの言葉にあの時と同じものを感じとる。あの時ももういいんだという優しい声を掛けられて、そして彼は死んでいってしまった。もうあんな苦しい思いはしたくないと、その眼には大粒の雫が蓄えられていた。そんな異様なまでに生への執着を見せる彼女に触発されたのか、兵士も同じ行動に出た。
「もう誰かが死ぬところなんて…見たくないの‼」
声を張り上げて抱えていた石を瓦礫に向けてぶつけようとするその刹那、身体の熱が発生するようにロゼットを包み込む。魔力の発生と同じ熱を感じ取ったロゼットはそれを理解して、瓦礫へと衝突。
「…っ‼」
衝撃が加えられた瓦礫の部位は粉々に散らばるもロゼットの抱えていた石にはまるで傷一つ付いていない。煙のような炎のような新緑とも思える虹色の輝きを帯びながら孔雀魔鉱石の腕輪と同調している。そんな風に映る。兵士とカブスはそれを見て言葉を失い、彼女が魔力を扱えることにこの時初めて気づく。
ロゼットは新しく覚えた魔力の使い方をさっそく試すようにもう一度石をぶつける。今度は彼女が感じ取り思い描いた形を取るようにその破壊力は先ほどのものとは比較にならないほどの衝撃を与えた。さらに再度繰り返し、瓦礫は大きくひび割れを起こして破損し飛び散る。岩石よりも強固で破壊力を増すことに特化した、物質の性質を大きく変化させたのか、はたまた衝撃を発生させる魔力だったのかそれは定かではない。だが新しい魔力の使い方とそれによってカブスを救い出せたことは紛れもない事実であったのは確かなものであったとこの場にいた皆が共有していた。
だが魔物の侵攻はとどまることを知らず。炎上も火が弱まり、本体と思われる大群もすでに城壁まで三百メートルほどの距離まで迫っていた。
解けない緊張感の中、甲高い鐘の音が響き渡る。何かの合図だろうかとロゼットは城壁のほうへ目をやっていたがすぐに兵に体を抱えられる。
「っ…まずい! 下がれ‼」
カブスの声と同時に迫りつつあった大群の足元より巨大な轟音が断続的に繰り返される。まるで火山でも噴火するのかというほどの勢いで地面から繰り出される炸裂の嵐。それは最後の切り札として仕掛けられた大量の爆薬の数々。魔物の大群は瞬く間に総崩れとなり前方で浸食を広げていた魔物もその轟音にひるみその一瞬の隙をついて形勢が覆る。大群で迫っていた魔物は瞬く間に炎上の中へと消え燃え上がる大地がそこには広がっていた。衝撃で福飛ばされたロゼット達も立ち上がってその光景が目に映る。
魔物の悲鳴や時折遅れるように響く爆発の轟音。その中でのまだ蠢いている魔物を見て、その場にへ垂れ込む。
「雨季のせいで機能するかどうかやけくそ混じりだったが、一番成果を上げたのはこれか…」
ぽつりとつぶやいたカブスの一言にはやりきれないような思いが込められているように感じられる。彼らの実力というよりは『運』を味方につけたことで死守できたようなものだったからだ。
そして今度はすぐさま第二波が襲い掛かってくると兵は重たい体を引き摺りながら、補給の被害報告を行うために駆け出していく。炎上する大地の悲鳴に答えるかの如く、雷雲が轟き天から大粒の雫が次々と零れ落ちる。
「これで同じ手は使えなくなったか…」
カブスが最後に吐き捨て、兵に支えられながらその場を後にする。その光景はロゼットの目にはどのように映ったのか―…
彼女の心の中にまで染み込んでいくように雨は勢いを増すばかりだった。
北部区画の城壁にて、伝令の声が響き緊張感で包まれる。上官は冷静に被害状況と物資の残量確認を急がせ、出来うる限りの援軍を手配するように指示。この行動にラムザはソルディオスに何か耳打ちをすると、軍の上官へと歩み寄る。
「いえ、ここはこちらの陣営から一人出します。まだ襲撃も受けていない状態から兵力を削いで、『虚を突かれる』なんて古典的な展開、誰も期待していないでしょうし」
「しかし……たった一人を送ったところでどうなります?」
「足止めの足しくらいにはなるでしょう」
上官の疑問に足止めくらいであればできるとラムザは答える。彼の行動がふざけているのか、それとも本気なのか、煮え切らないが彼の用いた物資によって戦力の補強に大いに貢献している手前、強くも発言できなかった。現に榴弾砲も機能しているようで、南部は襲撃こそ受けているものの、なんとか持ちこたえているようである。「お戯れを」と呆れながら返す事がせいぜいであったが、それでもラムザは余裕の表情を見せて「十分ですよ」とだけ返す。
「敵襲!! こちらへ向かってきております!」
そしてラムザの読みが当たったかのように北部でも魔物の影を捉えると、兵達は臨戦態勢を取る。ラムザも城壁より魔物の姿を捉えながら少しだけ笑ってみせる。再び彼の横に並び立つソルディオスに対して述べる。
「魔物にしては賢しいな。どう見る?」
「狙い方が人間的でしょうか。指揮を執ってる頭でもいるんでしょうかね。まぁー……所詮は魔物かと」
「任せる。三人揃ってお迎えする必要もなさそうだ」
ラムザに一任され、託されたソルディオスは城壁から飛び降り、城壁外へと出る。十メートル近くはあろう城壁から飛び降りても、彼はいとも容易く行なったと言わんばかりに何食わぬ顔で歩き出す。その手に持つメイスを伸縮自在に展開させて、先端の光源体らしき物体を発生。周囲の兵士達も見たことがない装備品に驚きの言葉を口々にする。
「捕捉しました! 距離、まもなく五百…」
「射撃開始!」
合図と共に一斉に撃ち出される榴弾。魔物の群れを捕らえ、水平線に爆炎が巻き起こる壮絶な映像が映し出される。兵士達も榴弾砲の威力に息を呑み、次の射撃準備へと備える。
そしてロゼット達のいる南区画城壁では小銃部隊による応戦、城壁外では榴弾砲による攻防が繰り広げられる。傭兵部隊も翼鳥迎撃も兼ねた、城壁と市内への侵入防止のために張り巡らした拒馬から防衛線を張っている。榴弾砲による防衛は確かに機能はしているものの、魔物の数は圧倒的でじりじりと前線を押し上げられる。
「弾薬が足りない!! 補給は!?」
「足りない分は火炎瓶でも火弓でも使って何とかしろ! こっちも手一杯なんだよ!!」
怒声と銃声、そして爆音と魔物の奇声が混じり飛び交う中で、ロゼットはシンシアと澄華の元へ向かった。
「シンシアさん!! 澄華連れてすぐにここから離れて!」
扉を勢いよく開けたことでシンシアと澄華は少し身体をびくつかせる。シンシアに小銃を渡し、緊急時には護身として持つことを促す。彼女達も外の音でどういう状況なのかは察知できていたが、シンシアは身体を震わせながらも逃げようとしないロゼットを強く見る。そして思いの丈をぶつけてしまう。
「ヴぇ、ヴェルちゃんはどうするの!? 外は戦場なんでしょ!!」
「私も戦えるなら行かなきゃ」
魔物と戦う兵の悲鳴がすぐそこまで響き、焦燥の表情で振り返るロゼット。危機が目前まで迫っていることを如実に物語る。ロゼットも指先の震えが止まらなかった。シンシアの目から見ても、恐ろしくて仕方ないという彼女の様子は明らかだった。逃げ出したくて仕方ないと、彼女の目が語っている。
「怖いのに戦う必要なんてないじゃない! ヴェルちゃんだって……女の子なんだよ!?」
ロゼットもシンシアもひ弱な少女。本来、戦いなど無縁の存在。王宮で何事もなく生活する毎日―…それだけで済むのなら、できることならそうしたい。
だが今の彼女は違う。
ロゼットは澄華の頭を撫でて「だって…守りたいじゃない」と囁く。
戦闘が激化し、外の空気に湿気と火薬の乾きが入り混じり魔物の接近に伴って白兵戦を繰り広げる様相が目立ち始めた。ロゼットは城壁の外へと再び駆け抜けて、狭間付きの胸壁へ隠れながら様子を伺う。小さな頭をひょっこりと恐る恐ろ覗かせながらすでに血みどろとなった戦場を目に焼き付ける。より一層恐怖が身体へと流れ込んできて、頭を引っ込めて構えていた弓を強く握り締める。目を強く瞑り「私にも出来る」と念仏を呟くように唱えて、意を決して弓を構えて狙いを定める。極度の緊張のあまりにただひたすら目で追って撃ち続ける。銃声も響き魔物も次から次へとやってくる始末。
「榴弾砲に取り付かれるぞ!! 応援まだかぁっ!?」
「口動かす前に手ぇ動かせ!!」
ロゼットのすぐ隣でも怒声と銃声が飛び交う。足の速い小型の魔物がもうすでに榴弾砲付近にまで迫り取り付く怒涛の勢いを見せる。傭兵部隊の応援が駆けつけて次々と城壁から銃弾の雨を降らせるがそれでも掻い潜って入り込んでくる魔物との攻防。榴弾砲部隊の多くは最低人数を残してほとんどが白兵戦に持ち込んでいる始末。
「どれを狙えば良いの…っ!?」
兵と魔物で入り乱れ錯乱するロゼット。その横から兵士の一人が「目を見て狙え!!」と叫ぶ。ロゼットが混乱していた事を察してなのか、それとも兵全てに行き届くように叫んだのか定かではなかったが彼の言うとおりに目を見て狙いを定める。魔物の目は赤く光を帯びているうような、よく見れば目立つ外観をしており彼女はそれをヒントに弓を構える。先ほどまで当たらなかった矢を引く瞬間に思い起こされる。
―『そうじゃない、少し上を狙え』―
彼女は標的から少し上を向けて狙いをを定めて放つ。しかし僅かにズレて今度は更に上を狙う。
―『標的に直進に進むと思うな、弾道ってのは下へと落ちていく。距離が開くほどにな』―
今度は魔物の動きを予測し、進路方向の少し先へ向ける。
―『狙うなら…』―
「首筋っ…!」
彼女は教えられた言葉を口にして、強く引いた矢を一気に解き放つ。矢は僅かに放物線を描きながら戦火の中を掻い潜るようにして魔物目掛けて向かっていく。鋭い矢の一撃が綺麗に魔物の首筋に入り込み食道を貫通、魔物は倒れこみもがき苦しむ。
「あ、当たった…!?」
彼女の驚嘆と安堵が入り混じった声が戦火の中で響くが、倒れこんだ魔物の口から黒い物体が吐き出されるように出てくる。魔物の体液と血液の入り混じった色に染まり宿主から這い出ようと―…そして別の寄生先を探しているようであった。ロゼットはそれも見逃すことなくもう一度、狙いを定めて弓を引く。今度も先ほどよりも小さな対象である寄生体の頭上に命中し、あまりの緊張にほっと息つく。
しかしそんな暇を与える間もなく爆発音が響く。それも先ほどまでロゼットとカブスが会話をしていた角櫓から炎上。レンガのような石作りは崩れかかり、魔物の大群がまるで蟻のように這って登ってくる。
「西側が‼」
兵たちの間でも同様が広がる。ロゼットもカブスのことが気がかりになり、剣に持ち替えて急いで向かう。向かう途中に襲い掛かってくる魔物に対して慣れた手つきで応戦し葬る。経験を積んだ剣での近接戦においてはひるむことはないがこれほどの数を相手にすることは今までになかった。変な緊張感からか兵の悲鳴に反応、動揺してしまいわずかに動きが鈍ったところに魔物は付け入ってくる。
「きゃあっ‼…くっぐぅっ」
押し倒されてしまうも咄嗟の反応が追いつき刀身で魔物の噛みつきを防ぐが、純粋な力勝負に持ち込まれてしまっては少女の力では勝ち目はない。じりじりと迫りくる血混じりの魔物の牙に恐怖しながらも必死にもがいているロゼットの耳に一際大きく、乾いた音が入ってきた。その音と共に魔物の動きは鈍くなり、再度銃声が響き今度は魔物も彼女に倒れこむ。重たい魔物の体をどかして、一緒になって手伝ってくれた人に感謝すると聞き覚えのある鳴き声を発した小さな生き物が彼女に擦り寄る。
「澄華⁉ じゃあ…」
「ヴェルちゃん…私…」
魔物を撃ったのはシンシア。それも彼女が渡した小銃で魔物を倒していた。二発の弾丸が撃ち込まれたが妙である。先ほどロゼットが弓で射った時は寄生体が体外へと這い出ようとしていたのだが、シンシアの撃った魔物からはそれが見られなかった。
「何も出てこない…?」
「え?」
ロゼットの疑問にシンシアは恐々と魔物を見てみるがやはり何の反応もなかった。ただ息絶えて屍となっている。緊張して強張った表情と肩で息をするシンシアをひとまず落ち着かせたロゼットは一緒に崩れかかっている角櫓へ行くように促し、走り出す。再び戦火へと引き戻されたように爆破と魔物の行進で揺れる城壁、足元がおぼつかない状態で無我夢中で向かった先―…。
赤々と燃える炎と兵と魔物の死屍累々が入り混じる血だまりの朱に染まりし空間。二人は口を押えて惨たらしい光景にたじろぎ、小さな地竜の澄華も同じ魔物の死骸には寄り付こうとはしていなかった。カブスを探してロゼットは周囲を見渡すが彼らしき人物は見つからない。難を逃れて脱出したのだろうか―…あるいは崩れた城壁の下敷きになってしまったのか。ロゼットの頭の中で嫌な考えが過ったその時、シンシアの声が響き渡った。
彼女の元へと駆け寄るロゼット。
「カブスさん‼」
角櫓はほぼ崩壊状態で城壁の外へ向けて瓦礫が散乱。その瓦礫の中に体の半分が埋もれているカブスを見つける。ロゼットは何の躊躇もなく瓦礫をうまく足場にして飛び降りていく。周囲は猛ける炎に囲まれるような状態で体を動かしていなくても汗ばんでしまいそうだ。
幸いにもカブスの体にかぶさっていた瓦礫はロゼットの力でもどかすことができる程度の重さと大きさ。息を切らしながらも彼の身体を手繰り寄せるように作業を進めていくと両足がつぶされているような形で巨大な岩石の下敷きとなっていた。心配そうに慌てるロゼットに落ち着くように低い声で答えるカブス。
「いや、脚甲のおかげで骨は折れてない」
ただ変形してるせいなのか引き抜くのは難しい様子。ロゼットはダメ元で瓦礫を動かそうとするがビクともしない。無理に引き抜こうとも試みるが激痛が走ったのかカブスが少し顔をゆがませる。
「大丈夫ですか⁉」
「痛みがあるってのは生きてる証拠だ」
どうやら足の感覚がないわけではないようだ。炎上のせいか魔物も彼らの周囲には寄り付こうとしてこないがこちらを伺う様子を見せている。いずれにしても火の手が回っている今のうちに救出できなければ助かる保証もない。ロゼットがシンシアに助けを呼ぶように頼みこもうとした瞬間だった。
炎の中から飛び込んできた一体の魔物。姿かたちは狼型の魔物のようだが様子が他の魔物とは明らかに違った。他の魔物はだらしなく涎を垂らしながら、明後日の方向に視線が向かっている。どれも狂気に満ちているような様子だったがこの魔物―…そんな様子が微塵も見られない。まるで躾の行き届いた動物のように見たままでは大人しく感じるのだ。そして明らかに他とは違う決定的なもの…。
澄華がうなり声をあげ、ロゼットはその違和感の正体に気づく。魔物の目―…全てが真っ黒なのだ。
瞳孔も白目にあたる部分も見当たらない。目を動かせばわずかだが動物でも白目は確認できるものも存在するがこの魔物はそれが一切ない、そして瞳孔にあたる部分さえも全く何もないのだ。炎の光加減で僅かにだが動いているのはわかる。しかし穴でも開いているかのように目が漆黒で底なしの窯のように感じられた。
そしてこちらの様子を伺ったのちに体から黒い無数の触手のようなものが飛び出し、こちらへと向かってくる。あまりのことに慌てて剣を構えるが魔物の急接近があまりにも早すぎる。最後まで目を見開きながら、おびえる余裕さえない刹那で銃声が響く。放ったのはシンシア。彼女が再び放った弾丸は今度は魔物の頭部へと見事に命中。魔物は今度は電源が切れたおもちゃのように一切の苦しみも見せずにその場に倒れこみ即死であった。うねりをあげていた触手もまるで糸が切れたかのように動きが止まった。兵士数名が彼女たちの元に下りてきて救出にやっと乗り出そうとしたが再び火炎の中から先ほどと同じ雰囲気を纏った魔物が次々と飛び込んでくる。
「キリがない…。俺のことはいいから退け‼」
カブスは彼らに逃げるよう指示を促すも誰一人としてその場から逃げようとはしなかった。銃声と剣撃が交差する中でロゼットは戦闘を兵に任せて自身は瓦礫動かそうと再度試みる。
「やめろ‼ お前まで付き合う必要はない。今すぐにでも逃げろ!」
やめる様子を見せないロゼット。今度はシンシアにも彼女を連れて逃げるように叫ぶがシンシアも少し戸惑いを見せながらも彼女たちを守りながら戦う兵たちを見て銃を握りしめて魔物へと正確な射撃を続ける。しかし六発しか入らない小銃はあっという間に切れてしまい、弾丸の込め方がわからないシンシアは狼狽えてしまう。
「使って‼」
だが遅れてやってきたシェイドがその様子を見て咄嗟の判断でシンシアへ弾丸を込めた小銃を投げ渡す。拾い上げると震える手で再び銃を構えて彼らを援護し、再び正確無比な射撃を行う。彼女にまさかこんな才能があったとは思いもよらずシェイドは弾丸の込められた銃を集めて彼女の元へと駆け寄っていく。
そしてロゼットの行動に兵の一人が手を貸すように瓦礫を動かそうと協力する。ロゼットと違い鍛え上げられた若手の兵士の力でも瓦礫は動く気配を見せない。それでもと命がけで戦う兵士と周囲を見てロゼットも瓦礫の破片の石を抱え込んで瓦礫に向かって猛進。少しでも力の足しになるようにと彼女も全身を使って捨て身のように助け出そうと必死になっていた。身体が傷つき瓦礫にぶつけた部位からジワリと出血しようとも構うことなくぶつけ続ける。誰かに死んでほしくないという一心で―…。
「もうやめろ‼」
カブスの言葉にあの時と同じものを感じとる。あの時ももういいんだという優しい声を掛けられて、そして彼は死んでいってしまった。もうあんな苦しい思いはしたくないと、その眼には大粒の雫が蓄えられていた。そんな異様なまでに生への執着を見せる彼女に触発されたのか、兵士も同じ行動に出た。
「もう誰かが死ぬところなんて…見たくないの‼」
声を張り上げて抱えていた石を瓦礫に向けてぶつけようとするその刹那、身体の熱が発生するようにロゼットを包み込む。魔力の発生と同じ熱を感じ取ったロゼットはそれを理解して、瓦礫へと衝突。
「…っ‼」
衝撃が加えられた瓦礫の部位は粉々に散らばるもロゼットの抱えていた石にはまるで傷一つ付いていない。煙のような炎のような新緑とも思える虹色の輝きを帯びながら孔雀魔鉱石の腕輪と同調している。そんな風に映る。兵士とカブスはそれを見て言葉を失い、彼女が魔力を扱えることにこの時初めて気づく。
ロゼットは新しく覚えた魔力の使い方をさっそく試すようにもう一度石をぶつける。今度は彼女が感じ取り思い描いた形を取るようにその破壊力は先ほどのものとは比較にならないほどの衝撃を与えた。さらに再度繰り返し、瓦礫は大きくひび割れを起こして破損し飛び散る。岩石よりも強固で破壊力を増すことに特化した、物質の性質を大きく変化させたのか、はたまた衝撃を発生させる魔力だったのかそれは定かではない。だが新しい魔力の使い方とそれによってカブスを救い出せたことは紛れもない事実であったのは確かなものであったとこの場にいた皆が共有していた。
だが魔物の侵攻はとどまることを知らず。炎上も火が弱まり、本体と思われる大群もすでに城壁まで三百メートルほどの距離まで迫っていた。
解けない緊張感の中、甲高い鐘の音が響き渡る。何かの合図だろうかとロゼットは城壁のほうへ目をやっていたがすぐに兵に体を抱えられる。
「っ…まずい! 下がれ‼」
カブスの声と同時に迫りつつあった大群の足元より巨大な轟音が断続的に繰り返される。まるで火山でも噴火するのかというほどの勢いで地面から繰り出される炸裂の嵐。それは最後の切り札として仕掛けられた大量の爆薬の数々。魔物の大群は瞬く間に総崩れとなり前方で浸食を広げていた魔物もその轟音にひるみその一瞬の隙をついて形勢が覆る。大群で迫っていた魔物は瞬く間に炎上の中へと消え燃え上がる大地がそこには広がっていた。衝撃で福飛ばされたロゼット達も立ち上がってその光景が目に映る。
魔物の悲鳴や時折遅れるように響く爆発の轟音。その中でのまだ蠢いている魔物を見て、その場にへ垂れ込む。
「雨季のせいで機能するかどうかやけくそ混じりだったが、一番成果を上げたのはこれか…」
ぽつりとつぶやいたカブスの一言にはやりきれないような思いが込められているように感じられる。彼らの実力というよりは『運』を味方につけたことで死守できたようなものだったからだ。
そして今度はすぐさま第二波が襲い掛かってくると兵は重たい体を引き摺りながら、補給の被害報告を行うために駆け出していく。炎上する大地の悲鳴に答えるかの如く、雷雲が轟き天から大粒の雫が次々と零れ落ちる。
「これで同じ手は使えなくなったか…」
カブスが最後に吐き捨て、兵に支えられながらその場を後にする。その光景はロゼットの目にはどのように映ったのか―…
彼女の心の中にまで染み込んでいくように雨は勢いを増すばかりだった。
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