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episode4 生ある者の縁
101話 天城よりの支配者
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飛竜種が上空を切り裂くように舞い、雲の隙間を抜けていく。草木や動物たちも落ち着いた平穏を満喫している中で黒い影が覆い日差しが遮られる。動物たちも何かにおびえるようにして草木や森の中へと逃げていく。上空を飛び回っている飛竜や鳥達もその後方より近づく巨大な黒い影から離れていき、『それ』がドラストニアの広大な大地を覆っていく様子が映し出されていたー…。
そしてここドラストニアの王都では事後処理がようやく落ち着いたところで王都への魔物侵攻の危機から脱して早一週間ほどが経過しようとしていた。レイティスからの産業や軍事兵器、グレトンからの鉄鉱石、精製品。そしてフローゼルからの翠晶石も流通したことで王都は平穏に発展を遂げている。賑わう人々の中では翠晶石製の装飾品を売り買いしている姿も散見された。
王宮でも王都に帰還していたシャーナルが浴場にて長旅の疲れを癒し満喫している。小さなため息をつき、白く美しい柔肌にお湯をかけて疲れを取り一連のことについて自身の考えを纏める。ガザレリアでの生物研究と今回の魔物の寄生体、そして王都への侵攻との因果関係。生物研究施設でマディソンが見たものを照らし合わせても可能性は十分に考えられるものだった。それからミスティアの報告者からの記述に興味も惹かれる。
「人間への感染の可能性―…」
現状での寄生体の性質は魔物への感染を経て特定の行動をするように意思決定がなされていた。それを応用して人間に置き換えることが可能ともなればどうなるだろうか―…想像に難くない。軍事兵器を大量に持つベスパルティアやビレフのように直接的な脅威とは異なり、目に見えない水面下でのガザレリアのドラストニアに対する侵略行為に彼女は危機感を抱きながら浴場を後にして報告書として纏めることにした。
そしてここでも長老派と国王派の間で緊張が生まる。今回の魔物に対する措置として大軍を動かしたことにより南部、産業軍事国家で大国のベスパルティアからの書簡が緊急に招集され議会の場で取り沙汰されている最中であった。内容としては大軍の動員の件に加えて諸国との同盟強固に対する警戒を意図したもの。他の高官達も深刻な面持ちで思いの丈を話している様子で長老派の多くは特に深刻視している。
そもそも今回の措置も長老派は全く関与どころか関知すらしていない中で進められたことでもあったので批判の声は大きい。国王派の独裁体制ともとれる行動だとも糾弾の声は強くなる。しかしあの場で議会を開くほどの余裕もあったのかと国王派の若手は切り返し応酬が続く中でロブトン大公が声を挟んだ。
「起こってしまったことに対して抗弁を垂れ流すだけでは意味もございません。遅かれ早かれこうなることは目に見えておりましたし、向こうもドラストニアという国家自体がビレフとの関係もあって嫌でも警戒しなければならないのは当然でしょう」
「しかし…そうは申しますが大公…む―…」
長老派の高官も口を噤んでそれ以上のことは言えないようであった。ポスト公爵もシャーナル皇女が関係している辺りで言及は出来ないでいたが、どこか納得できない表情ではあったものの同意はしている様子。
ベスパルティアは隣国でもある同じく産業大国のビレフと領土問題で紛争を繰り広げてきた。近年では両国とも飛行艇技術を確立してから表立った戦闘は行われていない。互いの戦力が拮抗状態にあるからである。ドラストニアとしては彼らが侵攻してくることが最も気掛かりなのではあるが両国にとっても極めて重要な局面でもある。ユーロピア大陸最南に位置する二つの大国が共同戦線を敷く可能性もあり得ない話ではないが、可能性は極めて低い。掲げている主義思想の違いもあり、互いに産業の発展した大国というのも大きな要素となり敵国とみなして牽制し合っている冷戦状態なのが現状である。両国の内どちらかが先に動けば隙を見せることにも繋がるため今回の書簡をラインズは別の意味として捉えていた。
直接的な植民地化を狙えない以上ドラストニアという広大な土地を持つ国家を最大限利用するには自国の産業を売り出す、つまり市場を広げるという選択。書簡には少々棘のある書き方は為されているものの端々にそれらの思惑が見て取れるような文面にもラインズには見えていた。そこで高官の一人ラインズに意見を求める。
「むしろ好意的に受け取っていいのでは? 向こうはこちらの戦力を大した評価では捉えていないでしょうし、良い『きっかけ』になるのではありませんか」
ラインズのこの発言に周囲はどよめくが意外にもロブトン大公も彼と同意を示して一層騒々しく変わる。
「より高度な技術力が入り込むことに対しての考えは私も同じです皇子殿下。彼らと対等に立つには同じ舞台に立つ以外手段がございません」
長老派からも疑問の声はあったが彼らの推し進める『友愛』政策の方針としては一致するものがあったためか声を上げて反対という意思は示さなかった。満場一致というわけにはいかないがある程度の方針は定まり次に厄介事でもあるガザレリアに対する措置へと議題は移るところで休憩が挟まれた。
◇
ドラストニアの広大な草原。蒼く茂り、風と共に草原が一定の間隔で揺れ動く様は自然の中に溢れる舞いのようであった。草原の舞いと共に馬群の踏みしめる音がドラムのように押し寄せてくる。
白馬を駆る紫苑が率いる騎兵隊に対してアーガストとマディソンの部隊がそれぞれ追撃するような形で左右から迫りくる。紫苑の部隊もそれに合わせて左右へと部隊を展開。意気揚々と迫りくる黒い剣歯虎に跨ったマディソン。それに追従する部隊は紫苑の部隊よりも屈強な躯体を持つ馬体と兵で固められている。その機動力は駿馬で構成された紫苑の部隊にも引けを取らないもので武装面でも槌矛や戦斧のような強力な武装で固めて挑む。陣形を崩さぬように紫苑も部隊を指揮しつつ、接近してきたマディソンを大槍で迎え撃つ。互いに数合刃を交えながら兵達へ緊張感を与える。七尺を越える巨体から繰り出される戦斧の一撃、地面を抉る程の威力はありマディソンも演習とはいえ手加減をしている素振りは全く見られない。それに応じている紫苑もいつぞやアーガストと刃を交えた時のようであった。
「へっ、お嬢の前だからいつになく気合入ってんじゃねぇか」
当人同士も一度やりあうことを望んでいたようにも見え、自身を差し置いてドラストニアで実質最強と称えられている紫苑に対して少しばかり悪態をつく。傍からその様子を見つつもため息をついてアーガストも紫苑の部隊の副将を務めるモリアヌス率いる騎兵隊を追撃。互いに顔を見合わせてマディソンの様子に呆れ顔。
「マディソン! 訓練中だぞ! いい加減にしろ!!」
なおも続く彼の様子に痺れを切らしたアーガストの注意喚起の声が響き渡る。その上空からは黒龍が姿を見せており、ロゼットとイヴを背に乗せて彼らの様子を確認。イヴは陣形の細かな崩れや指摘点を纏めてロゼットと話している。
「相変わらずマディソンさん血の気が多いなぁ…」
「ちょっと先行しすぎね。兵士としては勇敢でも追従する部隊のことを考えてないと将としては不安かしら」
「いい人なんですけど…ちょっと熱血というかなんというか」
二人も呆れるように話しながら、イヴは制空権を取ることの有用性と脅威を強く感じ入っている。上空からでは彼らの陣形も手に取る様にわかり、戦術に強い人間が見れば動きの予測も立てて有効に撃退も可能とさえ考える。
「私はさっぱりなんですけど…イヴさんは紫苑さんたちの次の動きとかわかるんですか?」
「多少だけれどね。今マディソン殿が先行しすぎているでしょう? 紫苑殿はこの間に部隊を前後に分けて後続の彼の部隊を四方から挟み込む形で追い込む」
「マディソン殿の突破力は確かに脅威だけれど、紫苑殿が引きつけながらも騎兵数騎で囲って退路を断っている。実際の戦闘でこれをやられたら笑い事じゃすまないわね」
実際に彼女の言うようにマディソンは部隊から孤立に近い状態に陥るが、アーガストの部隊からの援護が入る。紫苑もすぐに陣形を戻して今度はモリアヌスと合流する。先行しすぎたことをアーガストに咎められバツの悪そうな顔をするマディソン。
「もう少し部隊のことを考えろ」
「わりぃわりぃ。兄者は紫苑とかち合ってるからいいが、俺はまだ本気で遣り合ってねぇから、ついな」
マディソンの言い訳に呆れながら、訓練に私情を持ち込まぬことを言い聞かせていた。その光景が微笑ましかったのか困り顔で笑う上空の二人の少女。広大な大地を持つドラストニアでの主戦力は未だ騎兵の大部隊。レイティスからの榴弾砲や新たな兵器が投入されたとはいえバランス関係は圧倒的に現行の騎兵に依存している。それでは飛行艇を持つビレフやベスパルティア相手ではまともに渡り合えないことも危惧しているイヴ。
「上空を取ることが優位に立てるのはわかりましたけど、相手にならないくらいの戦力差なんですか? そのあたりがよくわからないのですけど」
ロゼットは疑問符を浮かべてそう話す。確かに黒龍のような機動力のある飛行が可能であれば銃撃や榴弾砲撃を躱すことは出来るだろうけど、飛行艇の実物を見たことがないロゼットはその脅威が今一つ理解できなかった。イヴは少し考えてから口を開く。
「少し考え方を変えましょうか。軍が戦争をできるのはなぜかしら?」
突然の彼女の問いに困惑するロゼット。学校の授業でいきなり当てられて慌てふためくように頭の中で混乱しつつも整理して答えていく。
「え、えっと…お、王様が命令を下してるから??」
「それもあるわね。じゃあ王様は『誰』の王なのかしら?」
ロゼットは今度は『国民』と答える。その国民はどこで生活をしているのかと問われて、『都市と領地』と答えるロゼット。繰り返しの問答に小首を傾げながらやり取りをしてイヴの意図が見えずにいたが次の問いでその真意がわかることとなる。
「ならその都市や領地で国民は生活をしてるけれど、生活、いえ生きていくためにはまず一番に必要なものって何かしら?」
「え…なんだろう」
少し考えてみると今の生活には必要なものが多く溢れてる。服、家、お金、と考えれば考えるほど多く頭の中で浮かぶがそれらを答えてもきっとイヴの求めている答えとは違うものだと考える少女。真剣に考えながら記憶を辿っていくロゼットがふと思い出したのはダリオとのやり取りであった。
「『食べ物』…とかですか?」
「ええ、そうよ。食べ物がなければ人って思っている以上に何も出来なくなるの。それはいくつもの戦場を潜り抜けた英雄でも同じよ。軍隊が戦うことが出来るのは戦術や戦略があるからではなく『食糧』があるから」
体力を保たせるにはどうやっても切り離すことのできない摂理。命として当然の現象である以上、人の営みにおいて食糧の確保は必要不可欠。であるのならば戦争において真っ先に狙うべきはそういった要所であるのは必然だった。わざわざ移動する軍隊を上空から攻撃するのではなく飛行艇はそういった都市部を攻撃するために運用することが最大限の活用法と説く。
「いくら大砲や榴弾砲のような遠距離攻撃の技術が向上したところで射程は限られてくるし、現状の榴弾砲でも一五〇フィート(五〇〇メートル)が命中精度が確保できる射程じゃないかしら。けど空からは爆弾を投下だけでも十分な戦果は得られるでしょうね」
「爆弾を投下って…え、それって都市を爆撃するってことですか!?」
「そういうことになるわね」
「そんなの…!! 戦争に関係のない国民まで巻き込んで…! 戦う力のない人たちを狙うなんて卑怯ですよ!」
言葉を少し荒げるロゼットに対して「本当にそう言えるかしら?」と落ち着いた口調で宥めるようにイヴは答える。思いもよらない彼女の言葉に思わず疑問の声が漏れるロゼットだったがイヴは更に続ける。
「戦略的に考えても敵の弱点を突く戦い方は至極普通のことよ。私たちだって今回それを利用して魔物を討伐できた部分も少なからずはあったはずよ。あなたにも覚えはあるんじゃないかしら?」
イヴに言われてロゼットも思い当たることがありそれ以上は反論も出来なかった。
「それに…確かに戦争と直接な関係はないでしょうけど、その国の人々も国の発展を願いながら日々を暮らして支えている。軍人も国をそうした支えてくれる人々のために命を削って戦っている」
『君主』もとい『王』が機能していれば、互いが互いを思いながらじゃないとこの図式は成り立たないと語るイヴ。確かに民や軍人も最終的には自分たちを導いてくれる『王』のために尽くすものだがそれは自分たちの生活や命が保証されるからで、搾取するだけの指導者のことを誰も『王』とは呼ばない。だからこそ『王』は自己の利益だけを考えるのではなく国全体のことを考えて手腕を振るわなければ破滅へと繋がってしまう恐れがある。
いつかロゼット自身が王位を継承し、国王となった時このことを忘れないでほしいとも彼女は伝えるのだった。ロゼットはシェイドの言葉を思い出す。『言葉一つだけで誰かの力になるなんて、並みの人間に出来る事なんかじゃないんだよ。お前はそれが出来る人間なんだ』と言われたこと―…。いつか自分がその立場に立たされた時にどうすればよいのだろうかと深く考え込む。そんなまだ小さな少女のことを抱き寄せて優しく囁くイヴ。
「まだ難しいわよね? 焦らなくてもいいから、あなたはあなたなりの考えや思いを見出して、それから行動に移せばいいの。とにかく何かをしようというものじゃなくて私の言ったことも全てじゃないのだから色んなものを見て成長してね」
ラインズやセバスからも何度も言われていた言葉だったが今のロゼットにはそんなイヴの優しく語り掛ける言葉がどこか心地よく聞こえた。フローゼルの時にも感じたが母親に似たどこか暖かな温もりに少しだけ甘える少女だった。
しかし、そこで黒龍の異変に気付いた。何やら少し唸るような素振りを見せて飛行高度を徐々に下げていく。何事かと思い気づいて周囲を見回していると後方より飛行生物の群れと思わしき群衆を確認する。それはよく見ると翼龍『ワイバーン』の一種で黒龍よりも遥かに体格は劣るが翼長からおよそ六メートル前後はあろう魔物が彼女たちへと迫り襲い掛かってくる。
イヴは両手に魔力を開放して応戦の姿勢を見せて迎え撃つ。ロゼットもようやく魔力の制御がある程度可能となり火炎弾を数発放って牽制。ワイバーンはあっという間に黒龍を囲い込むようにして四方八方から啄み攻撃や足の爪による引っ掻きを繰り出す。
上空の異変に気付いた紫苑達も訓練を中断し、黒龍を追いかけるようにして隊列を組んで向かう。持ってきていた予備の小銃を確認して武装させて援護を行うのだが、騎乗したままで尚且つ上空の動く標的を狙撃は容易ではない。それどころか射程も足りずに命中すらしない。
「お嬢!! もっと高度下げてくれえぇ!!!」
マディソンが雄たけびを上げて彼女達に伝えてはみるもの届いていないのか、あるいは下げられないのか様子は変わらない。彼らも射程に入らなければ何も出来ないのだがアーガストが瓢箪のような容器を取り出して口にする。大きく息を吸うと今度は口からロゼットの放つ魔力よりも強力な火炎弾を数発放ち数体のワイバーンに命中と同時に奇声を上げて地上へと堕ち行く。
紫苑も大槍に魔力を溜めこんで雷を放ちながら力の限り上空に向けて投げ放ちワイバーンの胴体を貫く命と同時に電撃が周囲にも僅かに影響を与えて、電撃の影響で麻痺したワイバーンは次々と高度を下げていった。
イヴとロゼットも応戦するも一向に数の減らないワイバーンに対して一網打尽にすべく、黒龍へ指示を出す。
「ローザ! 絶対に手を離さないで! 少し荒っぽくなるけど我慢して!」
それに呼応するかのようにロゼットは黒龍にしがみ付いてイヴもそれを支えるようにして捕まると黒龍は身を捻じらせてまるでプロペラのように回転して迎撃。遠心力で引っ張られながらも目を瞑って必死に耐えるロゼット。黒龍はそのままの勢いで更に上空へと舞い上がり距離を置く。追まりくるワイバーンに対して息を吸い込みブレスを吐く予備動作へと移行。
だがブレスを放つ直前でワイバーンの群れに対して黒槍の一斉射撃が襲い掛かり次々と撃破されていった。黒槍が放たれた方角へ目をやるイヴとロゼットが見たものは上空を飛行する船そのものであった。上部は気球のようなガス袋が占めておりほとんどを占めており、船と思われる本体の左右からは巨大なプロペラ。まさしく先ほどまで話していた件の飛行艇のようであった。
「飛行艇…? あれが…飛行艇!?」
ロゼットの驚きの声が上空で響き渡ったがそれをかき消すように飛行艇から放たれるエンジン音とプロペラの音を立てて、巨大な空を飛ぶ船が彼女達に近づいてきたのであった。
そしてここドラストニアの王都では事後処理がようやく落ち着いたところで王都への魔物侵攻の危機から脱して早一週間ほどが経過しようとしていた。レイティスからの産業や軍事兵器、グレトンからの鉄鉱石、精製品。そしてフローゼルからの翠晶石も流通したことで王都は平穏に発展を遂げている。賑わう人々の中では翠晶石製の装飾品を売り買いしている姿も散見された。
王宮でも王都に帰還していたシャーナルが浴場にて長旅の疲れを癒し満喫している。小さなため息をつき、白く美しい柔肌にお湯をかけて疲れを取り一連のことについて自身の考えを纏める。ガザレリアでの生物研究と今回の魔物の寄生体、そして王都への侵攻との因果関係。生物研究施設でマディソンが見たものを照らし合わせても可能性は十分に考えられるものだった。それからミスティアの報告者からの記述に興味も惹かれる。
「人間への感染の可能性―…」
現状での寄生体の性質は魔物への感染を経て特定の行動をするように意思決定がなされていた。それを応用して人間に置き換えることが可能ともなればどうなるだろうか―…想像に難くない。軍事兵器を大量に持つベスパルティアやビレフのように直接的な脅威とは異なり、目に見えない水面下でのガザレリアのドラストニアに対する侵略行為に彼女は危機感を抱きながら浴場を後にして報告書として纏めることにした。
そしてここでも長老派と国王派の間で緊張が生まる。今回の魔物に対する措置として大軍を動かしたことにより南部、産業軍事国家で大国のベスパルティアからの書簡が緊急に招集され議会の場で取り沙汰されている最中であった。内容としては大軍の動員の件に加えて諸国との同盟強固に対する警戒を意図したもの。他の高官達も深刻な面持ちで思いの丈を話している様子で長老派の多くは特に深刻視している。
そもそも今回の措置も長老派は全く関与どころか関知すらしていない中で進められたことでもあったので批判の声は大きい。国王派の独裁体制ともとれる行動だとも糾弾の声は強くなる。しかしあの場で議会を開くほどの余裕もあったのかと国王派の若手は切り返し応酬が続く中でロブトン大公が声を挟んだ。
「起こってしまったことに対して抗弁を垂れ流すだけでは意味もございません。遅かれ早かれこうなることは目に見えておりましたし、向こうもドラストニアという国家自体がビレフとの関係もあって嫌でも警戒しなければならないのは当然でしょう」
「しかし…そうは申しますが大公…む―…」
長老派の高官も口を噤んでそれ以上のことは言えないようであった。ポスト公爵もシャーナル皇女が関係している辺りで言及は出来ないでいたが、どこか納得できない表情ではあったものの同意はしている様子。
ベスパルティアは隣国でもある同じく産業大国のビレフと領土問題で紛争を繰り広げてきた。近年では両国とも飛行艇技術を確立してから表立った戦闘は行われていない。互いの戦力が拮抗状態にあるからである。ドラストニアとしては彼らが侵攻してくることが最も気掛かりなのではあるが両国にとっても極めて重要な局面でもある。ユーロピア大陸最南に位置する二つの大国が共同戦線を敷く可能性もあり得ない話ではないが、可能性は極めて低い。掲げている主義思想の違いもあり、互いに産業の発展した大国というのも大きな要素となり敵国とみなして牽制し合っている冷戦状態なのが現状である。両国の内どちらかが先に動けば隙を見せることにも繋がるため今回の書簡をラインズは別の意味として捉えていた。
直接的な植民地化を狙えない以上ドラストニアという広大な土地を持つ国家を最大限利用するには自国の産業を売り出す、つまり市場を広げるという選択。書簡には少々棘のある書き方は為されているものの端々にそれらの思惑が見て取れるような文面にもラインズには見えていた。そこで高官の一人ラインズに意見を求める。
「むしろ好意的に受け取っていいのでは? 向こうはこちらの戦力を大した評価では捉えていないでしょうし、良い『きっかけ』になるのではありませんか」
ラインズのこの発言に周囲はどよめくが意外にもロブトン大公も彼と同意を示して一層騒々しく変わる。
「より高度な技術力が入り込むことに対しての考えは私も同じです皇子殿下。彼らと対等に立つには同じ舞台に立つ以外手段がございません」
長老派からも疑問の声はあったが彼らの推し進める『友愛』政策の方針としては一致するものがあったためか声を上げて反対という意思は示さなかった。満場一致というわけにはいかないがある程度の方針は定まり次に厄介事でもあるガザレリアに対する措置へと議題は移るところで休憩が挟まれた。
◇
ドラストニアの広大な草原。蒼く茂り、風と共に草原が一定の間隔で揺れ動く様は自然の中に溢れる舞いのようであった。草原の舞いと共に馬群の踏みしめる音がドラムのように押し寄せてくる。
白馬を駆る紫苑が率いる騎兵隊に対してアーガストとマディソンの部隊がそれぞれ追撃するような形で左右から迫りくる。紫苑の部隊もそれに合わせて左右へと部隊を展開。意気揚々と迫りくる黒い剣歯虎に跨ったマディソン。それに追従する部隊は紫苑の部隊よりも屈強な躯体を持つ馬体と兵で固められている。その機動力は駿馬で構成された紫苑の部隊にも引けを取らないもので武装面でも槌矛や戦斧のような強力な武装で固めて挑む。陣形を崩さぬように紫苑も部隊を指揮しつつ、接近してきたマディソンを大槍で迎え撃つ。互いに数合刃を交えながら兵達へ緊張感を与える。七尺を越える巨体から繰り出される戦斧の一撃、地面を抉る程の威力はありマディソンも演習とはいえ手加減をしている素振りは全く見られない。それに応じている紫苑もいつぞやアーガストと刃を交えた時のようであった。
「へっ、お嬢の前だからいつになく気合入ってんじゃねぇか」
当人同士も一度やりあうことを望んでいたようにも見え、自身を差し置いてドラストニアで実質最強と称えられている紫苑に対して少しばかり悪態をつく。傍からその様子を見つつもため息をついてアーガストも紫苑の部隊の副将を務めるモリアヌス率いる騎兵隊を追撃。互いに顔を見合わせてマディソンの様子に呆れ顔。
「マディソン! 訓練中だぞ! いい加減にしろ!!」
なおも続く彼の様子に痺れを切らしたアーガストの注意喚起の声が響き渡る。その上空からは黒龍が姿を見せており、ロゼットとイヴを背に乗せて彼らの様子を確認。イヴは陣形の細かな崩れや指摘点を纏めてロゼットと話している。
「相変わらずマディソンさん血の気が多いなぁ…」
「ちょっと先行しすぎね。兵士としては勇敢でも追従する部隊のことを考えてないと将としては不安かしら」
「いい人なんですけど…ちょっと熱血というかなんというか」
二人も呆れるように話しながら、イヴは制空権を取ることの有用性と脅威を強く感じ入っている。上空からでは彼らの陣形も手に取る様にわかり、戦術に強い人間が見れば動きの予測も立てて有効に撃退も可能とさえ考える。
「私はさっぱりなんですけど…イヴさんは紫苑さんたちの次の動きとかわかるんですか?」
「多少だけれどね。今マディソン殿が先行しすぎているでしょう? 紫苑殿はこの間に部隊を前後に分けて後続の彼の部隊を四方から挟み込む形で追い込む」
「マディソン殿の突破力は確かに脅威だけれど、紫苑殿が引きつけながらも騎兵数騎で囲って退路を断っている。実際の戦闘でこれをやられたら笑い事じゃすまないわね」
実際に彼女の言うようにマディソンは部隊から孤立に近い状態に陥るが、アーガストの部隊からの援護が入る。紫苑もすぐに陣形を戻して今度はモリアヌスと合流する。先行しすぎたことをアーガストに咎められバツの悪そうな顔をするマディソン。
「もう少し部隊のことを考えろ」
「わりぃわりぃ。兄者は紫苑とかち合ってるからいいが、俺はまだ本気で遣り合ってねぇから、ついな」
マディソンの言い訳に呆れながら、訓練に私情を持ち込まぬことを言い聞かせていた。その光景が微笑ましかったのか困り顔で笑う上空の二人の少女。広大な大地を持つドラストニアでの主戦力は未だ騎兵の大部隊。レイティスからの榴弾砲や新たな兵器が投入されたとはいえバランス関係は圧倒的に現行の騎兵に依存している。それでは飛行艇を持つビレフやベスパルティア相手ではまともに渡り合えないことも危惧しているイヴ。
「上空を取ることが優位に立てるのはわかりましたけど、相手にならないくらいの戦力差なんですか? そのあたりがよくわからないのですけど」
ロゼットは疑問符を浮かべてそう話す。確かに黒龍のような機動力のある飛行が可能であれば銃撃や榴弾砲撃を躱すことは出来るだろうけど、飛行艇の実物を見たことがないロゼットはその脅威が今一つ理解できなかった。イヴは少し考えてから口を開く。
「少し考え方を変えましょうか。軍が戦争をできるのはなぜかしら?」
突然の彼女の問いに困惑するロゼット。学校の授業でいきなり当てられて慌てふためくように頭の中で混乱しつつも整理して答えていく。
「え、えっと…お、王様が命令を下してるから??」
「それもあるわね。じゃあ王様は『誰』の王なのかしら?」
ロゼットは今度は『国民』と答える。その国民はどこで生活をしているのかと問われて、『都市と領地』と答えるロゼット。繰り返しの問答に小首を傾げながらやり取りをしてイヴの意図が見えずにいたが次の問いでその真意がわかることとなる。
「ならその都市や領地で国民は生活をしてるけれど、生活、いえ生きていくためにはまず一番に必要なものって何かしら?」
「え…なんだろう」
少し考えてみると今の生活には必要なものが多く溢れてる。服、家、お金、と考えれば考えるほど多く頭の中で浮かぶがそれらを答えてもきっとイヴの求めている答えとは違うものだと考える少女。真剣に考えながら記憶を辿っていくロゼットがふと思い出したのはダリオとのやり取りであった。
「『食べ物』…とかですか?」
「ええ、そうよ。食べ物がなければ人って思っている以上に何も出来なくなるの。それはいくつもの戦場を潜り抜けた英雄でも同じよ。軍隊が戦うことが出来るのは戦術や戦略があるからではなく『食糧』があるから」
体力を保たせるにはどうやっても切り離すことのできない摂理。命として当然の現象である以上、人の営みにおいて食糧の確保は必要不可欠。であるのならば戦争において真っ先に狙うべきはそういった要所であるのは必然だった。わざわざ移動する軍隊を上空から攻撃するのではなく飛行艇はそういった都市部を攻撃するために運用することが最大限の活用法と説く。
「いくら大砲や榴弾砲のような遠距離攻撃の技術が向上したところで射程は限られてくるし、現状の榴弾砲でも一五〇フィート(五〇〇メートル)が命中精度が確保できる射程じゃないかしら。けど空からは爆弾を投下だけでも十分な戦果は得られるでしょうね」
「爆弾を投下って…え、それって都市を爆撃するってことですか!?」
「そういうことになるわね」
「そんなの…!! 戦争に関係のない国民まで巻き込んで…! 戦う力のない人たちを狙うなんて卑怯ですよ!」
言葉を少し荒げるロゼットに対して「本当にそう言えるかしら?」と落ち着いた口調で宥めるようにイヴは答える。思いもよらない彼女の言葉に思わず疑問の声が漏れるロゼットだったがイヴは更に続ける。
「戦略的に考えても敵の弱点を突く戦い方は至極普通のことよ。私たちだって今回それを利用して魔物を討伐できた部分も少なからずはあったはずよ。あなたにも覚えはあるんじゃないかしら?」
イヴに言われてロゼットも思い当たることがありそれ以上は反論も出来なかった。
「それに…確かに戦争と直接な関係はないでしょうけど、その国の人々も国の発展を願いながら日々を暮らして支えている。軍人も国をそうした支えてくれる人々のために命を削って戦っている」
『君主』もとい『王』が機能していれば、互いが互いを思いながらじゃないとこの図式は成り立たないと語るイヴ。確かに民や軍人も最終的には自分たちを導いてくれる『王』のために尽くすものだがそれは自分たちの生活や命が保証されるからで、搾取するだけの指導者のことを誰も『王』とは呼ばない。だからこそ『王』は自己の利益だけを考えるのではなく国全体のことを考えて手腕を振るわなければ破滅へと繋がってしまう恐れがある。
いつかロゼット自身が王位を継承し、国王となった時このことを忘れないでほしいとも彼女は伝えるのだった。ロゼットはシェイドの言葉を思い出す。『言葉一つだけで誰かの力になるなんて、並みの人間に出来る事なんかじゃないんだよ。お前はそれが出来る人間なんだ』と言われたこと―…。いつか自分がその立場に立たされた時にどうすればよいのだろうかと深く考え込む。そんなまだ小さな少女のことを抱き寄せて優しく囁くイヴ。
「まだ難しいわよね? 焦らなくてもいいから、あなたはあなたなりの考えや思いを見出して、それから行動に移せばいいの。とにかく何かをしようというものじゃなくて私の言ったことも全てじゃないのだから色んなものを見て成長してね」
ラインズやセバスからも何度も言われていた言葉だったが今のロゼットにはそんなイヴの優しく語り掛ける言葉がどこか心地よく聞こえた。フローゼルの時にも感じたが母親に似たどこか暖かな温もりに少しだけ甘える少女だった。
しかし、そこで黒龍の異変に気付いた。何やら少し唸るような素振りを見せて飛行高度を徐々に下げていく。何事かと思い気づいて周囲を見回していると後方より飛行生物の群れと思わしき群衆を確認する。それはよく見ると翼龍『ワイバーン』の一種で黒龍よりも遥かに体格は劣るが翼長からおよそ六メートル前後はあろう魔物が彼女たちへと迫り襲い掛かってくる。
イヴは両手に魔力を開放して応戦の姿勢を見せて迎え撃つ。ロゼットもようやく魔力の制御がある程度可能となり火炎弾を数発放って牽制。ワイバーンはあっという間に黒龍を囲い込むようにして四方八方から啄み攻撃や足の爪による引っ掻きを繰り出す。
上空の異変に気付いた紫苑達も訓練を中断し、黒龍を追いかけるようにして隊列を組んで向かう。持ってきていた予備の小銃を確認して武装させて援護を行うのだが、騎乗したままで尚且つ上空の動く標的を狙撃は容易ではない。それどころか射程も足りずに命中すらしない。
「お嬢!! もっと高度下げてくれえぇ!!!」
マディソンが雄たけびを上げて彼女達に伝えてはみるもの届いていないのか、あるいは下げられないのか様子は変わらない。彼らも射程に入らなければ何も出来ないのだがアーガストが瓢箪のような容器を取り出して口にする。大きく息を吸うと今度は口からロゼットの放つ魔力よりも強力な火炎弾を数発放ち数体のワイバーンに命中と同時に奇声を上げて地上へと堕ち行く。
紫苑も大槍に魔力を溜めこんで雷を放ちながら力の限り上空に向けて投げ放ちワイバーンの胴体を貫く命と同時に電撃が周囲にも僅かに影響を与えて、電撃の影響で麻痺したワイバーンは次々と高度を下げていった。
イヴとロゼットも応戦するも一向に数の減らないワイバーンに対して一網打尽にすべく、黒龍へ指示を出す。
「ローザ! 絶対に手を離さないで! 少し荒っぽくなるけど我慢して!」
それに呼応するかのようにロゼットは黒龍にしがみ付いてイヴもそれを支えるようにして捕まると黒龍は身を捻じらせてまるでプロペラのように回転して迎撃。遠心力で引っ張られながらも目を瞑って必死に耐えるロゼット。黒龍はそのままの勢いで更に上空へと舞い上がり距離を置く。追まりくるワイバーンに対して息を吸い込みブレスを吐く予備動作へと移行。
だがブレスを放つ直前でワイバーンの群れに対して黒槍の一斉射撃が襲い掛かり次々と撃破されていった。黒槍が放たれた方角へ目をやるイヴとロゼットが見たものは上空を飛行する船そのものであった。上部は気球のようなガス袋が占めておりほとんどを占めており、船と思われる本体の左右からは巨大なプロペラ。まさしく先ほどまで話していた件の飛行艇のようであった。
「飛行艇…? あれが…飛行艇!?」
ロゼットの驚きの声が上空で響き渡ったがそれをかき消すように飛行艇から放たれるエンジン音とプロペラの音を立てて、巨大な空を飛ぶ船が彼女達に近づいてきたのであった。
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