王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

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第一章 失われた竜使い

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「ああ、そうだエリス。
 アシュリーは何も知らない。
 弟は純粋に君を信じている。その子供が生まれてくる頃には君は竜公女の地位を廃嫡になるだろう。
 いくら他国の王族とはいえ、手足や目の不自由な人間の男の子供を宿しているんだ。
 竜公国も、それを良しとはしないだろう?」
「それが‥‥‥あなたになんの関係があるの。
 ‥‥‥御主人様」
 悔しいがその言葉は心のなかから湧いて出てきたものだ。
 まるで、魔石を奪われたらそう返答するように生まれる前から躾けられていたかのように。
 エリスは屈辱に耐えながらその言葉を発する。
 御主人様、と。
「アシュリーは王族から退き、シェス国内の有力貴族に力添えを貰い、誰も知らないような。
 そんな田舎で君と生きる。その為に準備をいま始めている。
 それすらも君は知らないんだろ?」
「--!?
 旦那様がそんなことまで?
 ただ、この学院を出れば終わる関係にされるものだとーー」
 いまのエリスは嘘をつくことができない。
 アルバートは質問を変えた。
「終わった後にその子供はどうする気だったんだい?」
 竜公女は初めて寂しそうな目をして、子供の父親であるアシュリーを見た。
 いまは自分がかけた深い眠りのなかで彼は幸せな夢を見てくれているだろうか?
 もしそうなら、この奴隷に落とされた身でも心だけは伝えることができる。

 --利用してごめんなさい

 と。

「お考えの通り、竜族は四年ほど出産に時間がかかります。
 この妊娠のことはこの場にいる三人だけでは‥‥‥」
 やれやれ。
 メアリージュン王女もイゼア皇太子すらも巻き込んでのこの騒動か。
 四年後に、メアリージュンとイゼアが婚約し、イゼアが公国の公主、もしくは要職に就けば。
「妹を汚されたとシェスに宣戦布告するつもり、そういうことか?」
 しかし、エリスは力なくそれを否定した。
「いいえ、そこまではわたしには聞かされておりません。
 わたしも公女とはいえ、単なる側室の子。
 兄上様が駒にするだけの、単なる女に過ぎません」
 まあ、それはそうだろうね。
 アルバートはそう思う。
 どこの王室でも、貴族でもそうだ。
 女性に自由はない。
 あくまで家に帰属して使われる道具なのだから。
 あのメアリージュンのような聖女を除いては。
「子供はどうする気だったんだい? エリス。
 竜公国で産む気だったのかい?」
「いいえ‥‥‥旦那様にも、兄上にも迷惑がかからない場で。
 一人静かに産み、育てる気でした。
 でも、アシュリーを利用していたことは事実だわ。
 学院内で普段の発言も、全部そう振るまえと言われたことばかりーー」
「そうか‥‥‥君も子供を産んだ後は一人で育てる気だった。
 そういうことかーー」
 これは意外だった。
 計画を少し変えないといけないな。
 アルバートはそう考え、エリスに命じる内容を変更することにした。
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