王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

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第三章 いざ、ダンジョン攻略へ

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「あ、アルバートっ!!?
 ちょっと待って、やだ、まだ納得してない――」
 アリスティアは暴れる暴れる。
 そっちから言いだしたのに、どうしろっていうのさ、アリスティア。
 呆れながら、アルバートは廊下で立ちつくしてしまう。
「あのねえ、アリスティア。
 言いだしたのは?」
 うっ‥‥‥とアリスティアは呻いてしまう。
「わたし、です‥‥‥」
「もう、そろそろ――うーん‥‥‥ごめん、僕が無理みたいだ」
「へっ!?
 って、アルバート!!??」
 抱き上げている妻を下敷きにしないように、アルバートは仰向けに倒れこんでいた。
「ちょっとおーーっ!!?
 なに、どうしたの!?
 まさか、あの牙の毒――‥‥‥」
 寝てる‥‥‥
 信じられない、こんな大事な初夜に!!
 寝るなんてどういうこと!?
 これから一晩かけて甘えて甘えて、あなたに全部捧げようと――
 そこまで考えて、アリスティアははっ、と気づく。
「アルバートは人間だったわ――」
 と。
 魔族である自分とは体力の差も、基礎すらも違う。
 彼を責めるのは、筋違いだということに。
「そうよね、牙の毒で苦しめたのもわたしだし‥‥‥。
 新婚だの初夜だの言う前に、まず、いい妻ではないもの」 
 はあ‥‥‥
 そう、大きくため息が出る。
 わたしは何をやっているんだろう。
 まずは、彼に休息を与えることが妻としての役目だったのに。
「頑張り過ぎなのよ、あなた。
 いつもいつも輝いてわたしの歩く先にいるんだもの。
 つかまえたくて仕方がなかった。
 わたしだけに、わたしだけの王子様でいて欲しかった。
 もうわたしだけのアルバートだけど」
 でもこうして見ると、まだ子供の面影がある。
 いや、少年の面影というべきか。
 神剣なんて届ける大役をいったい、誰から受けたんだろう?
 リアルエルム様?
 その割には、暗黒神の地下神殿の話しかしていなかった気がする。
「あなたはまだわたしの知らないことを隠しているのね?」
 そっと頬にキスをすると、アリスティアは夫を抱きかかえベッドルームに向かう。
 ベッドに寝かせた彼の服だの、靴だのを脱がせていくうちに悪戯を思いつくのも彼女の悪い癖だ。
「起きた時、どんな顔をするかしらー???」
 ふふん、学院にいたときの無口なわたしは、あんなの演技なんだから。
 あなたの知らないアリスティアは、もっと男勝りで頑固で、意地っ張りで‥‥‥わがままなんだから。
 その全てを独占したい!!
 もうこうなると本能なのか、そういう周期が来ているのか‥‥‥
 アリスティアはアルバートの服をすべて脱がし始めた。
 そしてそれが上半身の背中。
 肩の肩甲骨の下に見えた時ー‥‥‥
「アルバート‥‥‥あなた‥‥‥っ!!??」
 アリスティアは見てしまう。
 王国では右側に、大公国では左側に付けられるその痕。
 奴隷として売買された際に付けられた、焼き印の痕を。
「そっか‥‥‥そんなとこまで一緒なら、互いに求め合うのも不思議じゃないわね」
 アリスティアは全てをはぎ取ったアルバートの隣に自分も生まれた姿になり、そっと寄り添った。
 彼女が背中を見せた時、その左肩の下方にも――同じものがあることをアルバートはまだ知らなかった。

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