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第一話
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「では、堕ちなさいアテッサ。残念だわ」
「ひどいっ、だましたのね、お姉様!? 憎んでやるわっ」
ばくんっ、と神殿の床に貼られた大理石の床の一角が左右に割れてその上には我が愚妹が。
覚えていらっしゃい……ィ、なんてドップラー効果のもたらす音の余韻と共に……我が妹は冥府の神の聖女として召されていったのでした。
……ことの起こりは少し前。
「お姉様、聖女になられたんですの? それ、わたくしにも下さいな!」
と、これは凡百な王国貴族の中でも一、二を争うほどに美しいと評判の我が妹、アテッサが放った、最初の祝いの言葉でした。
聖女というものは神様より与えられるものであって、そうそう好き勝手に譲れるものではなくってよ? と、言いたいのを我慢して、私はにこりと微笑みます。
するとアテッサは女から見ても惚れ惚れするような美しい素振りで悲しそうな一声を……言うのですね。
しかも、あざとく周囲に誰かいるのを確認してから、まるで虐められて尻尾を丸めてしまった仔犬のごとき保護欲をそそりながら……。
「そんな笑顔だけで拒絶されるなんて。なんて冷たいの、お姉様……」
正直、我が妹を見ているとちょっとおつむが弱いかなー、なんてところが幾つかありまして。
生まれながらの美しさ、年齢がまだ十代前半ということもあり、醸し出される幼さ、構ってやりたくなるあどけなさなど、どう見ても作っていますよね、と姉から見れば丸わかりなことを、他人の前ではそつなくこなすのです。
事情をよく知る長年我が家に勤めてくれている家人はそうでもないですが、まだ付き合いの浅い友人・知人や関わった方々だとそれにころっと騙されてしまうのです。
「そうかしら。あなたが神に祈りを捧げて、主が認められたならいつでも譲りますわよ」
「神の御意見を伺うなどと、そのような人の身で大それたことなんて、できませんっ!」
諭すように言うと、ブルブルと全身を振るわせてさも、恐ろしいことを聞いてしまったかのように肩を抱き寄せてすくんでしまう。
そんな愚妹はたしかに可愛らしく、手を差し伸べる男性は後を尽きないのです。
「ひどいっ、だましたのね、お姉様!? 憎んでやるわっ」
ばくんっ、と神殿の床に貼られた大理石の床の一角が左右に割れてその上には我が愚妹が。
覚えていらっしゃい……ィ、なんてドップラー効果のもたらす音の余韻と共に……我が妹は冥府の神の聖女として召されていったのでした。
……ことの起こりは少し前。
「お姉様、聖女になられたんですの? それ、わたくしにも下さいな!」
と、これは凡百な王国貴族の中でも一、二を争うほどに美しいと評判の我が妹、アテッサが放った、最初の祝いの言葉でした。
聖女というものは神様より与えられるものであって、そうそう好き勝手に譲れるものではなくってよ? と、言いたいのを我慢して、私はにこりと微笑みます。
するとアテッサは女から見ても惚れ惚れするような美しい素振りで悲しそうな一声を……言うのですね。
しかも、あざとく周囲に誰かいるのを確認してから、まるで虐められて尻尾を丸めてしまった仔犬のごとき保護欲をそそりながら……。
「そんな笑顔だけで拒絶されるなんて。なんて冷たいの、お姉様……」
正直、我が妹を見ているとちょっとおつむが弱いかなー、なんてところが幾つかありまして。
生まれながらの美しさ、年齢がまだ十代前半ということもあり、醸し出される幼さ、構ってやりたくなるあどけなさなど、どう見ても作っていますよね、と姉から見れば丸わかりなことを、他人の前ではそつなくこなすのです。
事情をよく知る長年我が家に勤めてくれている家人はそうでもないですが、まだ付き合いの浅い友人・知人や関わった方々だとそれにころっと騙されてしまうのです。
「そうかしら。あなたが神に祈りを捧げて、主が認められたならいつでも譲りますわよ」
「神の御意見を伺うなどと、そのような人の身で大それたことなんて、できませんっ!」
諭すように言うと、ブルブルと全身を振るわせてさも、恐ろしいことを聞いてしまったかのように肩を抱き寄せてすくんでしまう。
そんな愚妹はたしかに可愛らしく、手を差し伸べる男性は後を尽きないのです。
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