この痛々しい妹に天罰を!

星ふくろう

文字の大きさ
5 / 5

第五話

しおりを挟む
 ここに集まる有力者たちの協力とか、王家とお近づきになれるとか。そんな自分に都合のよいことだけを勝手に並びたてて理解した気でいるのでしょう。

「でも、お姉様?」
「何? 怖気づいたの?」
「違いますっ! お姉様は女神さまの聖女ではありませんか」
「だから……何?」
「そんな存在を誰が断罪できると言うのですか? 女神様が聖女の首をあっさりと挿げ替えるとも思えません……」
「妙なところで慎重なのね、あなたって」
「だって!」

 と、言い募るのを制して教えてやります。
 神殿に関しては詳しく知らなくても仕方ない、そう思ったから。

「いい、アテッサ。この大神殿では女神様いがいの神様の分社もあるの。つまり、大陸にある十数柱の神々の目が、今この場にそそがれている。そういうことよ」
「そんなっ!」
「え……?」

 一瞬、妹が己の愚かさに気づいたから天罰を与えられるのかなーと恐れたのかと――思ってみたら誤解でした。

「神々の前でお姉様の愚かさを断罪できる機会を与えられることに歓びを感じますっ!」
「……何よそれ……」

 私の呆れ声も興奮したその耳には届かず、彼女はただただ神託を早く! なんて叫んではしゃいでいました。
 それならさっさと済ませましょう。
 私は神殿の管理主である大神官様や王家の方々にご挨拶。
 その合間にも、愚妹は男性陣の視線を集めることに貪欲的。
 しかし、あの程度の美しさなどとは比較にならない王太子妃様を妻にもつ殿下などは、「大変だねー」とお声かけ頂けるなどして、正しい心を持つ方々は動じないのだな、と思ったりもしました。
 仔細を伝えてみると、国王陛下はうーん、と首をひねります。

「いいのかね、聖女殿。新たな神託が下されるとまた、その……」
「……お布施、ですか。陛下」
「そう、だな……」

 確かに、この神殿はドケチなことで有名なのです。
 王宮の隣にどどんと神の威光を利用してそびえたつ……あ、いえ口が滑りました。
 王など神に比べれば大したことなんてないと言いたそうな――我が豊穣の女神の大神殿は何をするにも多額のお布施を要求することで有名なのです。
 それも今の代の大神官様がドケチで有名なだけなんですけどね。
  
「それはいずれどうにか致しますので、どうか。お願いいたします」
「そうまで言われるのならば……まあ、よかろう」

 結果。
 私が聖女となった褒美として与えられる予定だった土地の一部を王国に返上することで、話がつきました。
 そして、愚妹は水晶球に手を振れ、選ばれたその神の名は――。
 冒頭に戻ります。
 妹が地の底に消え、大理石の床が元通りに戻ったのを目にしてふふっ、とひとごこちついた私でした。
 心の中で我が主と冥府の王にどうか妹をよろしくお願いいたします、と祈りながら。
 今夜は久しぶりにゆっくりと寝られそうな私でした。

                                    (終わり)

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

だって悪女ですもの。

とうこ
恋愛
初恋を諦め、十六歳の若さで侯爵の後妻となったルイーズ。 幼馴染にはきつい言葉を投げつけられ、かれを好きな少女たちからは悪女と噂される。 だが四年後、ルイーズの里帰りと共に訪れる大きな転機。 彼女の選択は。 小説家になろう様にも掲載予定です。

番(つがい)と言われても愛せない

黒姫
恋愛
竜人族のつがい召喚で異世界に転移させられた2人の少女達の運命は?

【完結】王女の婚約者をヒロインが狙ったので、ざまぁが始まりました

miniko
恋愛
ヒロイン気取りの令嬢が、王女の婚約者である他国の王太子を籠絡した。 婚約破棄の宣言に、王女は嬉々として応戦する。 お花畑馬鹿ップルに正論ぶちかます系王女のお話。 ※タイトルに「ヒロイン」とありますが、ヒロインポジの令嬢が登場するだけで、転生物ではありません。 ※恋愛カテゴリーですが、ざまぁ中心なので、恋愛要素は最後に少しだけです。

双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ

海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。 あぁ、大丈夫よ。 だって彼私の部屋にいるもん。 部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

婚約破棄を喜んで受け入れてみた結果

宵闇 月
恋愛
ある日婚約者に婚約破棄を告げられたリリアナ。 喜んで受け入れてみたら… ※ 八話完結で書き終えてます。

記憶喪失になった婚約者から婚約破棄を提案された

夢呼
恋愛
記憶喪失になったキャロラインは、婚約者の為を思い、婚約破棄を申し出る。 それは婚約者のアーノルドに嫌われてる上に、彼には他に好きな人がいると知ったから。 ただでさえ記憶を失ってしまったというのに、お荷物にはなりたくない。彼女のそんな健気な思いを知ったアーノルドの反応は。 設定ゆるゆる全3話のショートです。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

処理中です...