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長の議の間で
譲歩の条件
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「ふむ…。それは最も有効な手段かもしれませんな。本人の力を、どれ程のものか言葉を発すことなく伝えることができる。それならば波風立たず妙な噂も立たぬだろうしな。」
玄武の隊長、カム・ドユンが賛同した。彼はいつも静かに議論を見守り、重要な時にだけ、慎重に自分の意見を述べる人間だ。彼の発言には皆一目置いており、彼の賛同を得ることはかなり有利だ。
「う…。ならば彼女が、わしら全員から見ても強いとわかったら、彼女を受け入れようではないか。もしヘウォン殿が誤った選択をしたという結論にいたったら…。」
チェソンが険しい表情を見せる。ハイルは思わず、手に力を入れた。
「即刻彼女を除名し、ヘウォン殿は責任をとって隊長をおりる。その条件つきでならわしはかまわん。」
昔ながらの考えが染み付いて離れないチェソンにしてはかなりの譲歩なのかもしれないが、ヘウォンにとってはあまりにも危険なかけのようにハイルは感じた。
思わず隣に座る彼の横顔を見るが、ヘウォンには全く恐れの色が無かった。むしろ自信に満ち溢れた顔でもある。
「私もそれで構いません。彼女を除名することとなれば、隊長の座をハイルに譲りましょう。」
(だんだんと話が大事になってきている…。)
基本面倒なことは上手くかわし、安全な道を選びながら生きていくことを理念としているハイルにとっては、この上なく迷惑なことであった。
「では、入隊後の彼女の扱いについてハイルと相談があるので私たちはここで。」
とヘウォンが椅子から立ち上がるのを見て、ハイルは慌てて会釈してそれにならった。
長の議の間を出てハイルは即座にヘウォンへと向き直る。
「ヘウォンさん。これでいいんですか?」
「もし彼女が除名されたら、俺がお前に隊長の座を譲る話か?」
「はい。俺には全く理解できません。なぜこの件であなたまで地位を失うような危険にさらされなければならないのか。」
ヘウォンは隊長であると同時に王を直属で守る者でもあり、この地位に登り詰めるまでに、長い間苦労をしたはずだ。責任をとって隊長の座をおりれば、今の役目を失う確率も高い。なぜそこまでして彼女を入隊させたいと思うのか、ハイルには不思議でならなかったのだ。
「面白いと思った。」
「なんですって?」
耳を疑うような理由で、ハイルはすっとんきょうな声をだす。
「今まで女の兵士なんて一人もいなかったからな。あいつが女だと知ったとき、もしかするとこの国が大きく変わるきっかけかもしれないと思ったんだ。あのときは思わず興奮したな。」
たしかにハイルにも何か変わるかもしれないということを感じとることはできた。彼女にはそこらの町娘からは感じることのできない何か大きな夢に向かってひたすら走っていくような熱意があったからだ。
「それに、ちゃんと理由はあるぞ。彼女の存在によって、警護の方法が大きく変わることがあるかもしれん。例えば警護で宴に出席しても、いかつい男ではないから、客に恐怖を与えるようなこともないだろうし、まぁ言い方は悪いが、少し囮になってもらって、敵を倒すこともできるかもしれない。」
男ばかりの軍では、いかつい者が多いので、囮になっても兵士だと敵に一目でばれたり、人質として非力な女官を捕らえられたりする。
もし女性の兵士がいたら、人質になっても冷静に対処できるだろうし、囮になっても油断される確率が高いに違いない。
「…。たしかに、いろいろと警護の方法が広がりますね。」
ハイルが納得すると、だろう?と得意気なヘウォンの顔。少し子供っぽいところのある上司にハイルは相変わらずだな、とため息をつきたくなった。
しかし、彼の考えは的確で、流石王の警護を一人で任される人だとも感嘆していた。でもそんなことを素直に言えば、この男はつけあがるので言わないようにしておく。
「それでまぁ、お前を信頼して頼みたいことがあるんだが…。」
ヘウォンが表情を引き締めて、ハイルと目を合わせ、真剣な表情を見せた。
玄武の隊長、カム・ドユンが賛同した。彼はいつも静かに議論を見守り、重要な時にだけ、慎重に自分の意見を述べる人間だ。彼の発言には皆一目置いており、彼の賛同を得ることはかなり有利だ。
「う…。ならば彼女が、わしら全員から見ても強いとわかったら、彼女を受け入れようではないか。もしヘウォン殿が誤った選択をしたという結論にいたったら…。」
チェソンが険しい表情を見せる。ハイルは思わず、手に力を入れた。
「即刻彼女を除名し、ヘウォン殿は責任をとって隊長をおりる。その条件つきでならわしはかまわん。」
昔ながらの考えが染み付いて離れないチェソンにしてはかなりの譲歩なのかもしれないが、ヘウォンにとってはあまりにも危険なかけのようにハイルは感じた。
思わず隣に座る彼の横顔を見るが、ヘウォンには全く恐れの色が無かった。むしろ自信に満ち溢れた顔でもある。
「私もそれで構いません。彼女を除名することとなれば、隊長の座をハイルに譲りましょう。」
(だんだんと話が大事になってきている…。)
基本面倒なことは上手くかわし、安全な道を選びながら生きていくことを理念としているハイルにとっては、この上なく迷惑なことであった。
「では、入隊後の彼女の扱いについてハイルと相談があるので私たちはここで。」
とヘウォンが椅子から立ち上がるのを見て、ハイルは慌てて会釈してそれにならった。
長の議の間を出てハイルは即座にヘウォンへと向き直る。
「ヘウォンさん。これでいいんですか?」
「もし彼女が除名されたら、俺がお前に隊長の座を譲る話か?」
「はい。俺には全く理解できません。なぜこの件であなたまで地位を失うような危険にさらされなければならないのか。」
ヘウォンは隊長であると同時に王を直属で守る者でもあり、この地位に登り詰めるまでに、長い間苦労をしたはずだ。責任をとって隊長の座をおりれば、今の役目を失う確率も高い。なぜそこまでして彼女を入隊させたいと思うのか、ハイルには不思議でならなかったのだ。
「面白いと思った。」
「なんですって?」
耳を疑うような理由で、ハイルはすっとんきょうな声をだす。
「今まで女の兵士なんて一人もいなかったからな。あいつが女だと知ったとき、もしかするとこの国が大きく変わるきっかけかもしれないと思ったんだ。あのときは思わず興奮したな。」
たしかにハイルにも何か変わるかもしれないということを感じとることはできた。彼女にはそこらの町娘からは感じることのできない何か大きな夢に向かってひたすら走っていくような熱意があったからだ。
「それに、ちゃんと理由はあるぞ。彼女の存在によって、警護の方法が大きく変わることがあるかもしれん。例えば警護で宴に出席しても、いかつい男ではないから、客に恐怖を与えるようなこともないだろうし、まぁ言い方は悪いが、少し囮になってもらって、敵を倒すこともできるかもしれない。」
男ばかりの軍では、いかつい者が多いので、囮になっても兵士だと敵に一目でばれたり、人質として非力な女官を捕らえられたりする。
もし女性の兵士がいたら、人質になっても冷静に対処できるだろうし、囮になっても油断される確率が高いに違いない。
「…。たしかに、いろいろと警護の方法が広がりますね。」
ハイルが納得すると、だろう?と得意気なヘウォンの顔。少し子供っぽいところのある上司にハイルは相変わらずだな、とため息をつきたくなった。
しかし、彼の考えは的確で、流石王の警護を一人で任される人だとも感嘆していた。でもそんなことを素直に言えば、この男はつけあがるので言わないようにしておく。
「それでまぁ、お前を信頼して頼みたいことがあるんだが…。」
ヘウォンが表情を引き締めて、ハイルと目を合わせ、真剣な表情を見せた。
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