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宴にて交わされるのは杯か思惑か
不穏な動き
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入ってきた芸人は演奏者は男だったが、舞い手は女ばかりだった。
先日、リョンヤンが狙われたときもそうだったが、暗殺者は、芸人になりすまして来ることも多い。家柄や様々なことを重視する城において、芸人は技術しか求められないため、侵入しやすいからだ。ハヨンも、芸人を注意深く見ろとヘウォンに指示されている。
(短剣を忍ばせて…という作戦は無理だな。あんな細腕なら、精々浅手しか負わせられない。)
彼女達の持ち物を一つ一つ目で確認していく。
(武器になるのはかんざし辺りか。)
どうも彼女たちは暗殺を企てているように見えなかった。情報戦を主とする隠密が、王族の誰かが狙われているようだと報告していたのだが、果たして本当かと、他の隊員も思っているようで、四隅に立つ上司達が訝しげな表情をしているのが見てとれた。
(もし芸人に紛れていなかったら…。)
素性が曖昧で、すぐに風景に紛れ込める者。ハヨンは辺りを見渡す。
「今日は陛下にお渡ししたいものがあるのです。」
ある貴族がそうヒチョル王に話を持ちかけていた。ありがたいことに、ハヨンの座る位置は貴族の話していることが大抵聞き取ることができた。
「また、異国の物か?」
どうやら王にはなれたことのようで苦笑いをしていた。
「そうなのです。今日はまた、他国の動きが不穏なので、陛下のためを思い、これをもって参りました。ヤクヨン。」
その貴族は後ろに控えていた従者に声をかける。従者は静かに王に近付いた。青年の従者が頭をたれ、恭しく差し出したものは、綺麗な宝石が埋め込まれた短刀だった。
「何かが起こっても陛下が身を守れるよう、この短刀は軽く、鋭くできております。そして異国独特の装飾ですので人目について、陛下が警戒しておられることが伝わるかと思います。」
ヒチョル王のためにと聞き、王は嬉しそうに顔を綻ばせた。
(根が優しい方なのだな…。)
今まで面と向かって王を拝見したことはなかったのだが、ハヨンはこの方がいてこそのリョンヤンとリョンヘだ、と思えた。
しばしの間、その忠義心に厚い側近である臣下の貴族と、臣下を大切に思っている王の姿に和んでいたら、唐突に悪寒が走り抜けた。
(まただ…!)
と気づいたときには、ハヨンはいつのまにか貴族の従者が振りおろした短剣を受け止めていた。
(…さっきまでの記憶が全然無い…!でも、今は陛下達を守らねば…!)
どうやら従者は隙を見てセヒョン王に差し出そうとしていた短剣を鞘から抜き、斬りかかろうとしたようだった。
(…体格がいいし、私が受け止めているから、向こうの方が有利なのは分かる。でも…)
これまでに無いほどの力の強さに、奥歯を食い縛った。少し押されぎみになったが、なんとかもちこたえる。他の隊員も加わって、宴会にいた人達を避難させ、残りの二人が従者を羽交い締めにしようとする。
(なんでこんなに力が強くて、いきなりこんなに殺気だっているの…?)
普通の人物なら、こんなに強い殺気を押し殺すことはできない。
その上従者は二人の隊員を片腕で凪ぎ払った。
「…っぐ!」 「かはっ…!」
二人が壁際まで飛ばされる。従者は人間とは思えない叫び声を発した。
先日、リョンヤンが狙われたときもそうだったが、暗殺者は、芸人になりすまして来ることも多い。家柄や様々なことを重視する城において、芸人は技術しか求められないため、侵入しやすいからだ。ハヨンも、芸人を注意深く見ろとヘウォンに指示されている。
(短剣を忍ばせて…という作戦は無理だな。あんな細腕なら、精々浅手しか負わせられない。)
彼女達の持ち物を一つ一つ目で確認していく。
(武器になるのはかんざし辺りか。)
どうも彼女たちは暗殺を企てているように見えなかった。情報戦を主とする隠密が、王族の誰かが狙われているようだと報告していたのだが、果たして本当かと、他の隊員も思っているようで、四隅に立つ上司達が訝しげな表情をしているのが見てとれた。
(もし芸人に紛れていなかったら…。)
素性が曖昧で、すぐに風景に紛れ込める者。ハヨンは辺りを見渡す。
「今日は陛下にお渡ししたいものがあるのです。」
ある貴族がそうヒチョル王に話を持ちかけていた。ありがたいことに、ハヨンの座る位置は貴族の話していることが大抵聞き取ることができた。
「また、異国の物か?」
どうやら王にはなれたことのようで苦笑いをしていた。
「そうなのです。今日はまた、他国の動きが不穏なので、陛下のためを思い、これをもって参りました。ヤクヨン。」
その貴族は後ろに控えていた従者に声をかける。従者は静かに王に近付いた。青年の従者が頭をたれ、恭しく差し出したものは、綺麗な宝石が埋め込まれた短刀だった。
「何かが起こっても陛下が身を守れるよう、この短刀は軽く、鋭くできております。そして異国独特の装飾ですので人目について、陛下が警戒しておられることが伝わるかと思います。」
ヒチョル王のためにと聞き、王は嬉しそうに顔を綻ばせた。
(根が優しい方なのだな…。)
今まで面と向かって王を拝見したことはなかったのだが、ハヨンはこの方がいてこそのリョンヤンとリョンヘだ、と思えた。
しばしの間、その忠義心に厚い側近である臣下の貴族と、臣下を大切に思っている王の姿に和んでいたら、唐突に悪寒が走り抜けた。
(まただ…!)
と気づいたときには、ハヨンはいつのまにか貴族の従者が振りおろした短剣を受け止めていた。
(…さっきまでの記憶が全然無い…!でも、今は陛下達を守らねば…!)
どうやら従者は隙を見てセヒョン王に差し出そうとしていた短剣を鞘から抜き、斬りかかろうとしたようだった。
(…体格がいいし、私が受け止めているから、向こうの方が有利なのは分かる。でも…)
これまでに無いほどの力の強さに、奥歯を食い縛った。少し押されぎみになったが、なんとかもちこたえる。他の隊員も加わって、宴会にいた人達を避難させ、残りの二人が従者を羽交い締めにしようとする。
(なんでこんなに力が強くて、いきなりこんなに殺気だっているの…?)
普通の人物なら、こんなに強い殺気を押し殺すことはできない。
その上従者は二人の隊員を片腕で凪ぎ払った。
「…っぐ!」 「かはっ…!」
二人が壁際まで飛ばされる。従者は人間とは思えない叫び声を発した。
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