65 / 221
剣士の休日
里帰り 參
しおりを挟む
「ねぇ、ヨウさん。人のものとは思えないような力ってあると思う?」
宵も深まった頃、酒を口にしはじめたヨウにハヨンは尋ねた。こんな非現実的な話を素面の人に聞いてもらうのはなんだか恥ずかしかったからだ。
チャンヒは朝早くから畑仕事があるので、もう寝付いてしまい、ハヨンはヨウ朝方まで話し込むことになった。
「まぁ、まずは王族の持つ力はそうだな。」
「うん、そうなんだけど、王族以外の人も不思議な力を持つことはあるかな。」
ハヨンはどうしてもあの宴会で、暗殺者の負った火傷の正体を知りたかった。しかし、奇妙な体験のため、なかなか話しづらいのだ。
「…何かあったのか」
ハヨンが無意味な質問をする性格ではないと知っていたヨウは、口もとへ徳利を運ぶ手を止めた。
「うん、私が一回刺客と一対一で対峙したときに、急に辺りが眩しくなって、気がついたら暗殺者は倒れて火傷を負っていたの。でもそこは宴会場だったから、火なんてなかったし、刺客だけ火傷を負ってて、他は焦げさえもなかったの。へウォン様達と考えたんだけどわからなかった」
「火ならば朱雀か…」
「え?」
「考えるとすれば、城内での異変に気づいた朱雀が何かしたと考えられるんじゃないか?朱雀は火の力を持つしな。」
「…ヨウさんは朱雀とか四獣とか信じてるの?」
ヨウは見えるものしか信じないとでも言いそうな人物だと思っていたので、ハヨンは心底驚いた。
「うーん、信じてるのかはわからん。昔、故郷の国を出ていろいろなものを見ると、何が起こってもおかしくは無いんだなと思えるようになってな。それに伝説になってるものは、急にどこかから急に出て話ができた訳じゃない。何かわけがあるから伝説になったんだろ?だから朱雀ではなくとも朱雀に近いものはいるかもしれないしな。」
確かに、不可解なことが起きるのは、必ずしも伝説の四獣達と仕業とは限らない。伝説とは何でも誇張・美化されるものだ。
「ヨウさんが、城を守ろうと力がはたらいているっていうのには私も賛同する。何回か護衛するときに、気がつくと勝手に暗殺者に応戦してたことがあったの」
「それは勘、ではなくてか?」
人は武道を極めると、人の微かな動きや息遣いでも察することができるようになる。そして、危機的な物事にも咄嗟に対応していることもある。ヨウはそのことを言っているのだろう。
「うーん、私異変にはいつも気づけるんだけど、その正体に気付く前に、いつのまにか応戦してるんだよね。」
何度思い返しても、無意識のうちであると言いはることができる。
「わしはそんなことあったことが無いな。城には何かあるんじゃないか?」
「そうかもね。それにリョンヘ王子は不可解なことによく巻き込まれるらしいし。」
城でのことは考えれば考えるほど疑問が沸き起こってくる。なぜリョンヘばかり妙な事件に遭うのか。それにこの前はリョンヘだけでなく、王族や貴族を巻き込んだ事件だった。
「そういえばこの前の刺客は何者かに操られているみたいだったし、不気味なことばかりだよ。」
「そいつはなんだ、洗脳でもされたのか?」
ハヨンは頭を振った。その方がどんなに話が単純だっただろうか。
やはり様々なものを見聞きしたヨウでさえ、首をひねっている。
「暗殺をしかけたこと以外は全部覚えてるの。それに意識もはっきりとしていてそうとは見えないの。」
もう殆ど迷宮入りの案件だ。可愛そうに彼はもう永久に牢から出れないだろう。
「黒幕がわかればいいんだけどな。」
ハヨンはため息をつきながら体をぐっと反らし、伸びをする。この話はいつも煮詰まって疲れる。
「…でもそれを知った者は生きているのが難しいだろうな。」
黒幕がどんな力を持っているのかさえもわからないからだ。
ハヨンは城に仕えるのは、地位や衣食住は保証されるが、命が保証されないのは、どこも同じだな、と考えた。しかし、誰かの陰謀に巻き込まれて命を落とすのは避けたいと願うハヨンだった。
宵も深まった頃、酒を口にしはじめたヨウにハヨンは尋ねた。こんな非現実的な話を素面の人に聞いてもらうのはなんだか恥ずかしかったからだ。
チャンヒは朝早くから畑仕事があるので、もう寝付いてしまい、ハヨンはヨウ朝方まで話し込むことになった。
「まぁ、まずは王族の持つ力はそうだな。」
「うん、そうなんだけど、王族以外の人も不思議な力を持つことはあるかな。」
ハヨンはどうしてもあの宴会で、暗殺者の負った火傷の正体を知りたかった。しかし、奇妙な体験のため、なかなか話しづらいのだ。
「…何かあったのか」
ハヨンが無意味な質問をする性格ではないと知っていたヨウは、口もとへ徳利を運ぶ手を止めた。
「うん、私が一回刺客と一対一で対峙したときに、急に辺りが眩しくなって、気がついたら暗殺者は倒れて火傷を負っていたの。でもそこは宴会場だったから、火なんてなかったし、刺客だけ火傷を負ってて、他は焦げさえもなかったの。へウォン様達と考えたんだけどわからなかった」
「火ならば朱雀か…」
「え?」
「考えるとすれば、城内での異変に気づいた朱雀が何かしたと考えられるんじゃないか?朱雀は火の力を持つしな。」
「…ヨウさんは朱雀とか四獣とか信じてるの?」
ヨウは見えるものしか信じないとでも言いそうな人物だと思っていたので、ハヨンは心底驚いた。
「うーん、信じてるのかはわからん。昔、故郷の国を出ていろいろなものを見ると、何が起こってもおかしくは無いんだなと思えるようになってな。それに伝説になってるものは、急にどこかから急に出て話ができた訳じゃない。何かわけがあるから伝説になったんだろ?だから朱雀ではなくとも朱雀に近いものはいるかもしれないしな。」
確かに、不可解なことが起きるのは、必ずしも伝説の四獣達と仕業とは限らない。伝説とは何でも誇張・美化されるものだ。
「ヨウさんが、城を守ろうと力がはたらいているっていうのには私も賛同する。何回か護衛するときに、気がつくと勝手に暗殺者に応戦してたことがあったの」
「それは勘、ではなくてか?」
人は武道を極めると、人の微かな動きや息遣いでも察することができるようになる。そして、危機的な物事にも咄嗟に対応していることもある。ヨウはそのことを言っているのだろう。
「うーん、私異変にはいつも気づけるんだけど、その正体に気付く前に、いつのまにか応戦してるんだよね。」
何度思い返しても、無意識のうちであると言いはることができる。
「わしはそんなことあったことが無いな。城には何かあるんじゃないか?」
「そうかもね。それにリョンヘ王子は不可解なことによく巻き込まれるらしいし。」
城でのことは考えれば考えるほど疑問が沸き起こってくる。なぜリョンヘばかり妙な事件に遭うのか。それにこの前はリョンヘだけでなく、王族や貴族を巻き込んだ事件だった。
「そういえばこの前の刺客は何者かに操られているみたいだったし、不気味なことばかりだよ。」
「そいつはなんだ、洗脳でもされたのか?」
ハヨンは頭を振った。その方がどんなに話が単純だっただろうか。
やはり様々なものを見聞きしたヨウでさえ、首をひねっている。
「暗殺をしかけたこと以外は全部覚えてるの。それに意識もはっきりとしていてそうとは見えないの。」
もう殆ど迷宮入りの案件だ。可愛そうに彼はもう永久に牢から出れないだろう。
「黒幕がわかればいいんだけどな。」
ハヨンはため息をつきながら体をぐっと反らし、伸びをする。この話はいつも煮詰まって疲れる。
「…でもそれを知った者は生きているのが難しいだろうな。」
黒幕がどんな力を持っているのかさえもわからないからだ。
ハヨンは城に仕えるのは、地位や衣食住は保証されるが、命が保証されないのは、どこも同じだな、と考えた。しかし、誰かの陰謀に巻き込まれて命を落とすのは避けたいと願うハヨンだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
ひめさまはおうちにかえりたい
あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)
王冠を手に入れたあとは、魔王退治!? 因縁の女神を殴るための策とは。(聖女と魔王と魔女編)
平和な女王様生活にやってきた手紙。いまさら、迎えに来たといわれても……。お帰りはあちらです、では済まないので撃退します(幼馴染襲来編)
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。
発端は彼女の父親が行方不明となり、叔父である父の弟が公爵邸に乗り込んで来たこと。
何故か叔父一家が公爵家の資産に手を付け散財するが、祖父に相談してもコロネに任せると言って、手を貸してくれないのだ。
そもそも父の行方不明の原因は、出奔中の母を探す為だった。その母には出奔の理由があって…………。
残された次期後継者のコロネは、借金返済の為に事業を始めるのだ。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる