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覚悟
修羅の道
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「戦のとき、向こうが徴兵達をどう扱うのかが問題だな…。」
彼らを操らずに捨て駒として最前線に立たせるか、それとも全員を操って強い兵として一斉に進軍するか。
どちらにしろ罪のない民を犠牲にする方法なので忍びない。今回は相手を撤退させることが目的なので、操って強い兵にされるとこちらにも大損害だ。
「俺はこの国の民を大事にしたいし、忍んで街に下りたとき、仲のいい連中もいた。本当は民からの犠牲は出したくない。でもな、王族として生まれてきた以上、俺は人間としての情を、切り離さなければならないことも知っている。例えどんなに非難されてもな…。王都を出るまで、こんなことはまだ先だと思っていた。だか覚悟を決める…。たとえそれが修羅の道だとしても、この先の国のためなら…。俺はこの先、民が笑顔で過ごせる方を選ぶ。」
「リョン…」
彼は犠牲という言葉を何よりも嫌い、正義を愛する人間だと言うのを、ハヨンは今まで過ごしてきた中から自と知っていた。誰よりも民を愛し、穏やかな日々の大切さを知っている王子だ。その彼が、決断したことに、ハヨンは胸が痛かった。
リョンヘらは今、世間では反逆者とみなされ、悪い王子だと非難されている。
今、ここで民の犠牲を出さないようにするのなら、リョンヘはこの身を隠し、争いを避ければ良かっただろう。しかし、それでは真の反逆者の思うままに国を使われてしまう。
リョンヘは例え、この戦いが長く苦しいものとなっても勝利することで平和な国を取り戻していけると信じているのだ。
ハヨンはリョンヘが戦うと決めたときからずっと彼の側にいたが、今日のように、非難されても…と言うのは初めて聴いた。
きっとリョンヘのことだから、民のことについてはずっと悩んでいたはずだ。きっとどのような覚悟で自分は戦うのか、明確になるまで話せなかったのだろう。
「なら私も、その修羅の街とやらを一緒に進む。私だって本来は王城にいらっしゃるリョンヤン様の側近だ。傍から見たらとんでもない裏切り野郎だろうね。この際、二人の王子を手玉に取る魔性の女にでもなろうかな。」
リョンヘの本当の願いは知っている。誰も傷つかないことだ。自惚れではないが、その中にハヨンも含まれているのはわかっている。少しでも彼の拒む色を見たくなかったので、ハヨンは最後に少しおどけてみせる。
ふっとリョンヘは小さく笑った。どこか寂しそうで、影のある笑い方だった。
「魔性ね。ハヨンとは程遠いな。」
「失礼だな。これでも口説かれたことぐらいあるんだけど?」
ハヨンはふざけて流し目でリョンヘを見つめてみる。色っぽくできたかどうかは定かではない。
「うーん、ハヨンはどう頑張ってもそういう気質ではないからな。ほら、どうしても真面目だから。」
「伝説に残る絶世の魔性の女にはなれなかったか…。なら最初の方針通り、どこまでも主人についていく篤い女剣士に路線修正する。」
「自分で言ってしまって良いのかそれ…」
ハヨンたちは久しぶりに軽口を叩き合っていた。ハヨンの冗談にリョンヘが乗ってきたのは、自身の決心による情動を隠したかったからなのか、それとも忍び寄る戦の空気を少しでも明るくしたかったのか、それは定かではない。
しかし戦の足音は着実に近づいて来ているのだった。
彼らを操らずに捨て駒として最前線に立たせるか、それとも全員を操って強い兵として一斉に進軍するか。
どちらにしろ罪のない民を犠牲にする方法なので忍びない。今回は相手を撤退させることが目的なので、操って強い兵にされるとこちらにも大損害だ。
「俺はこの国の民を大事にしたいし、忍んで街に下りたとき、仲のいい連中もいた。本当は民からの犠牲は出したくない。でもな、王族として生まれてきた以上、俺は人間としての情を、切り離さなければならないことも知っている。例えどんなに非難されてもな…。王都を出るまで、こんなことはまだ先だと思っていた。だか覚悟を決める…。たとえそれが修羅の道だとしても、この先の国のためなら…。俺はこの先、民が笑顔で過ごせる方を選ぶ。」
「リョン…」
彼は犠牲という言葉を何よりも嫌い、正義を愛する人間だと言うのを、ハヨンは今まで過ごしてきた中から自と知っていた。誰よりも民を愛し、穏やかな日々の大切さを知っている王子だ。その彼が、決断したことに、ハヨンは胸が痛かった。
リョンヘらは今、世間では反逆者とみなされ、悪い王子だと非難されている。
今、ここで民の犠牲を出さないようにするのなら、リョンヘはこの身を隠し、争いを避ければ良かっただろう。しかし、それでは真の反逆者の思うままに国を使われてしまう。
リョンヘは例え、この戦いが長く苦しいものとなっても勝利することで平和な国を取り戻していけると信じているのだ。
ハヨンはリョンヘが戦うと決めたときからずっと彼の側にいたが、今日のように、非難されても…と言うのは初めて聴いた。
きっとリョンヘのことだから、民のことについてはずっと悩んでいたはずだ。きっとどのような覚悟で自分は戦うのか、明確になるまで話せなかったのだろう。
「なら私も、その修羅の街とやらを一緒に進む。私だって本来は王城にいらっしゃるリョンヤン様の側近だ。傍から見たらとんでもない裏切り野郎だろうね。この際、二人の王子を手玉に取る魔性の女にでもなろうかな。」
リョンヘの本当の願いは知っている。誰も傷つかないことだ。自惚れではないが、その中にハヨンも含まれているのはわかっている。少しでも彼の拒む色を見たくなかったので、ハヨンは最後に少しおどけてみせる。
ふっとリョンヘは小さく笑った。どこか寂しそうで、影のある笑い方だった。
「魔性ね。ハヨンとは程遠いな。」
「失礼だな。これでも口説かれたことぐらいあるんだけど?」
ハヨンはふざけて流し目でリョンヘを見つめてみる。色っぽくできたかどうかは定かではない。
「うーん、ハヨンはどう頑張ってもそういう気質ではないからな。ほら、どうしても真面目だから。」
「伝説に残る絶世の魔性の女にはなれなかったか…。なら最初の方針通り、どこまでも主人についていく篤い女剣士に路線修正する。」
「自分で言ってしまって良いのかそれ…」
ハヨンたちは久しぶりに軽口を叩き合っていた。ハヨンの冗談にリョンヘが乗ってきたのは、自身の決心による情動を隠したかったからなのか、それとも忍び寄る戦の空気を少しでも明るくしたかったのか、それは定かではない。
しかし戦の足音は着実に近づいて来ているのだった。
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