華の剣士

小夜時雨

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四獣

冬の芽吹き 伍

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「なぞらう?それは事実に基づいていないと言うことじゃ。お主も含めてここにいる四人は確かに伝説の四獣で、姿形も常人とは異なっている。お主も気づいていないわけではあるまい」

 老婆の言葉に青年は押し黙った。何か言葉で抗おうと思ったのだろう。目線は下向きだったが、考え込むように彷徨っていた。その沈黙は言葉で語るよりも雄弁に、本心では肯定していることを表していた。

「あんたは自分の力についてかなり嫌な思いをしているみたいだな。全て話せとは言わないが、力を使う事を嫌う理由を教えて欲しい。そうすればあんたが辛い思いをしないよう、配慮することも出来るだろう?」

 青年が、すっかり口をつぐんでしまったからか、リョンヘがそう声をかける。

「それもそうですね…。話が少し長くなりますが良いですか?」
「ああ、大事な話だしな」

 リョンヘが深く頷き、他の面々も同意する。

「ただ、ここは長話をするには向いていない…。俺たちの拠点の孟に向かいながら話さないか。」

 リョンヘの見下ろす先には壊れた鎧や、破れた旗が打ち捨てられており、戦の名残が色濃く残っている。
 その上、冬の冷たい風が血の匂いを運んできていた。

「そうですね…。わかりました。」

 青年は衣の裾を両手で握りしめながら頷く。リョンヘ側に着くことについて、ある程度は覚悟が出来たようだ。
 ハヨンは先導するために先に歩き始める。

「まず、あんたの名前を教えてくれ」

 後ろから、そうリョンヘの声が聞こえた。
 

「僕の名前は…ジイルと言います。」

  青年、もといジイルはそう語り始めるのだった。

 

 

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