ワケあり!?女オーガの嫁取り冒険譚〜ハーレムを求められたら受け止めるしかないだろう!?〜

加藤備前守

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Session01-1 物語の始まり

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 日が中天を過ぎ、半ば果てに沈もうとしている最中、五つの人影が街道を歩んでいた。
 全員が若く、そして疲れていることが表情から見て取れる。
 各々が得物たる武器を持ち、身を守る防具を身につけている。
 また、大きい背負い袋や鞄をそれぞれが身につけており、中には様々な荷物が入っているが、行商と言うにはいささか物騒な上に物足りない荷物の量だった。
 身につけている鎧や得物には、土埃や土汚れ、そして黒くなった滲みなども見て取れた。得物や防具の前面側に黒い滲みが目立つ事から、インク汚れなどではなく、返り血が乾きこびりついたのではないかと、少しは物騒事に慣れた者なら容易に想像がつく。
 物騒事が得意と言われると思いつくものにゴロツキや盗賊があるが、まず皆が一様に首を振るだろう。そして、こう言うだろう。

「こんなこれ見よがしに歩く盗賊なんざ考えられない!」

 盗賊と言うとどんな奴らかにも寄るが、何かしら脛に傷を持つことがほとんどだ。住んでいた所で罪を犯して逃げる。税を払えず逃げる。好き勝手に生きようと盗賊に身をやつす者。そう言ったやからに見られる負の要素がなかった。

 では、衛兵と言った様な兵士かと言われたら、これもまた皆が一様に首を振ってこう言うだろう。

「こんな統一されてない装備を貴族様が許すもんか!」

 衛兵や兵士は、王侯貴族やそれに準ずる者に雇われ、用意された武具一式を装備しており、見ればどこの所属かがある程度わかるようになっている。騎士団などになると、揃いのサーコートなどを用意し、個々を特定しやすいように着飾った上で統一性をもたせたりしている。
 そう言ったものとは違って、各々が最適であろう装備を用意し、装備しているようだった。

 それなら傭兵かと言われたら、これもまた皆が一様に首を振ってこう言うだろう。

「こんな女だけの傭兵団なんざ聞いた事がない!」

 傭兵であれば装備に統一性がないのは納得ができる。何故なら、統一することで何かが有利になるのであれば、そうするであろうが、一番重要なのは元手になる自身の命である。
 そうなると、生き残るために自身の実力を100%引き出せる様に各々の装備を用意するのだ。
 ただ、女性のみの傭兵団というものはまずない。基本は男のみである。下世話な話ではあるが、性の問題により安全ではないということも大きい。
 では、傭兵でもないとなると、最後に辿り着く答えは一つ。

「冒険者の『一党パーティ』だ!」と。

 冒険者。
 この世界の中でも、特殊と言える職業である。
 様々な出身、様々な階層の人が、様々な理由で、様々な依頼をこなす。
 時には、『迷宮ダンジョン』と呼ばれる所に潜り、宝を見つけ一攫千金を成す者もいる。
 自身の背景を乗り越える事ができ、ほぼ万人に機会がある職業。
 それが冒険者である。

 そんな冒険者に、種族ごとに一人前と言われる年齢からなることができる。
 その一党は、全員が一人前と呼ばれる年齢になったばかりの者で、そして、珍しいことに女性のみの一党であるようであった。

「俺は…このままで良いのだろうか。」

 腰まで届く、金を溶かし梳いた様な美しい髪を三つ編みにした、鬼人族オーガの女性がただ一言口にした。肌は白く艷やかでハリを持っており、素晴らしい素材と言えるだろう。人とすれ違えば十人中六人は振り返る程である。ただ、その女性の額には『一本の角』があった。鬼人族と他の種族・・・多分普人族ヒューマンとの混血なのであろう。混血と断定する理由は、彼女の角が一本であることが証明している。
 鬼人族は『二本の角』を持って生まれる。鬼人族同士で子を成す場合、必ず二本の角を持って生まれる。例外はない。
 鬼人族は他の種族と子を成すこともでき、その際は必ず一本の角を持って生まれるのだ。
 そんな彼女が、今置かれている状況を振り返り、ふと言葉を口にしていた。そして彼女の周囲に居る女性達に意識を向けた。
 鉱人族ドワーフの戦士と小人族ハーフリングの斥候が前を歩き、彼女の左右を暗森人族ダークエルフの精霊術師と銀狼族シルバーウォルフの戦女神の神官戦士が歩いている。
 なぜこうなったのか。
 勿論、切っ掛けはわかっている。
 彼女自身が不用意に他人の事に手を出したからだ。

「どうしたの、アイル?」

 アイルの右手側に居た銀狼族の神官戦士は、己の種族の特徴として語られる白銀の如き髪と同じ色の毛に覆われた狼の耳を周囲へピコピコと向けながら、アイルへ向かって問いを口にした。
 その視線は慈愛に満ちており、アイルと呼んだ女性の悩みなど見透かされているようであった。彼女の見上げてくる視線をしっかりと受け止めながら、アイルは答えた。

「…この一党に居ても良いものか。改めて自問していたんだ。ルナ。」

 その言葉にルナと呼ばれた神官はクスクスと笑みを溢す。その笑みはアイルを嘲るものではなく、微笑ましい物を見たと言う様な雰囲気が含まれていた。
 その答えについては、その反対側からもたらされた。

「アイル。あの時のあなたの立ち回りは素晴らしかったですよ。そして、その後のあなたの発言も好ましかった。誰かと組まねばならないなら、あなたでありたいと私たちが思うほどにはね。そして、今回の依頼。あなたはしっかりと自身の価値を示しました。」

 高級品であるココアをミルクで溶かした様な色合いの肌を持つ、暗森人族の精霊術師はそう言い切った。ふふふと笑みをこぼしながら、アイルへ向かって顔を向けた。
 アイルも顔を向ける。アイルの方が背が高いこともあり、見下ろすような形になる。
 そして、アイルは彼女の名前を呼ぶ。

「フィーリィ・・・。」

「私達は冒険者。そして、私たちは一党です。ただ、それだけでいいのです。」

 アイルがフィーリィに答えようとするが、フィーリィの指が伸ばされ、アイルの口を塞ぐように抑えた。

「それにルナも望んでいますよ。勿論、バーバラとピッピもです。ねぇ?バーバラ、ピッピ!」

 そう口にし、前を歩く二人にフィーリィは声を投げかけた。

「うむ、我もそう願うぞ!アイル、そなたの振る舞いは誠に美事であった。どこぞの絵物語に語られる騎士の様であった。そして、今回の依頼もだ!共に戦う者を選べと言うのであればそなたが良いと思わせるものであったぞ!であるな、ピッピ?」

 バーバラと呼ばれた鉱人族の戦士は、にっかりと言う表現が合いそうな笑みを浮かべ、振り返りながら答えた。そして、その笑みを浮かべたまま、隣を歩む小人族の斥候に語りかける。

「にひひひ。いやぁあれは見物だったねぇ!ルナに持っていた剣を放り渡して『少しの間、預かっていて欲しい。』と言ったと思ったら、絡んでいた相手に喧嘩を売って!そいつら一党を綺麗にのしちまうんだからなぁ!それに今回の依頼。知恵もあれば戦う術もある。勿論、あたしもアイル以外を探すのは避けたいねぇ。な、アイル!」

 ピッピと呼ばれた小人族の斥候は、この面子で一党を組む事になった切掛のやり取りを思い出して笑い声を上げた。それは好ましい笑い声で、良くやった!という言葉が聞こえてくる様な笑い声だった。

「私・・・いえ、ボクは。」

 ピッピの言葉を引き取る様に、ルナが言葉を紡いだ。

「あの時、アイルが手を出してくれた事が、戦女神様の思し召しと思ったんだ。」

 そう口にすると共に、もう一度、アイルの瞳を見上げる。その澄んだ瞳には一片の嘘も見受けられない。

「戦女神の神官は、勇者の傍にて助力をする事が使命なんだ。そして、ボクはあなたがそうだと思った。ボクはあなたと一緒にいたいんだ。」

 その言葉を聞いたアイルは、他の3人の顔を見る。フィーリィは目を瞑りながら「うんうん」と頷き、バーバラは「うむ!」と大きく頷いている。ピッピに至っては「いやぁ、モテる男…いや、女は辛いねぇ」と冷やかす様な事を口にしている。三者三様だが、誰もがアイルの事を好ましく思っている事に変わりはなかった。
 彼女達は、気持ちを改めて伝えた。
 後は、アイルがどう答えるか次第。
 しかしながら、ここまでの好意を向けられていて、それを断る程の理由もない。

「…すまない。そしてありがとう。」

 アイルはまず謝りの言葉を口にし、それから感謝の言葉を紡いだ。そして、フィーリィ、バーバラ、ピッピ…そして、ルナの名を呼び、顔を向けて口にする。

「改めて、よろしくお願いします。」

 その言葉と共に、一礼をした。その礼を見た4人は、

「ええ、こちらこそ。」

「うむ、よろしく頼む!」

「あいよ!」

「はい。こちらこそ宜しくお願いします。」

 フィーリィ、バーバラ、ピッピにルナ。それぞれ違うが同じ答えを返した。

「では、まずは初依頼の完了を祝って皆で飲むぞ!」

 バーバラがそう口にすると、フィーリィも口を綻ばす様に笑った。

「そうですね。私達一党の初仕事、思い出になるように楽しみましょう。」

「ならお勧めの酒場があるから、そこにしようぜ!旨くて、量が多い店なんだ!」

 二人の発言にピッピも乗っかる。あんな料理とかこんな料理、そして酒の名前とつらつらと口にしていく。

「アイルも行こう。何より急がないと門が閉まっちゃうよ!」

 ルナが白銀の毛に覆われた尻尾をぶんぶんと振りながら先を歩く。腹も空いて、ピッピの言葉に食欲を刺激されているのであろう。一党の仲間達の姿を見て、アイルは微笑を浮かべた。そして、四人に聞こえる様に声を上げた。

「ああ。帰ろうか!」

 吹っ切れたようにルナ、そしてみんなに伝えるように声を上げて追いかけ始めた。
 さて、この五人の初の冒険譚。
 どう言ったものだったのか、それはここから語るとしよう。
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