ワケあり!?女オーガの嫁取り冒険譚〜ハーレムを求められたら受け止めるしかないだろう!?〜

加藤備前守

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Session02-04 闇に蠢く者達

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 そこは、薄暗い酒場だった。まだ昼だと言うのに光は差し込まず、周囲に据えたランタンが周囲を明るくし、人の影を躍らせた。かすかに人の顔が見分けがつくかどうかと言った闇の中、ピッピはカウンターで主人と思わしき普人族ヒューマンの男と話をしていた。左目に眼帯を付け、口周りの髭、オールバックに纏めた髪を丁寧に手入れしているのが見て取れる。そんな男がピッピの話に驚いた様な声を上げた。

「……で、どういった風の吹き回しだ。お前がハーレムの一員だって?」

 男は表情には表してはいないが、心底驚いてはいた。たしか、ハルベルトに支部を置いている工房のお嬢さんが冒険者になるような話をしてるとのことで、ピッピを内偵も兼ねて所属させるという話だったはずだ。それがどんな話の流れでハーレムという話になったのか。

「……あたしも驚いてるよ。……でも、あいつは良いやつなんだよ。あたしなんかより魅力的なのが三人もいるのに、別け隔てなく愛そうとしているってのが、分かるんだ。……こんなの初めてなんだよ。」

 両手で持った盃を、もじもじとするように動かす。顔は今までの姿からは想像がつかないくらいに乙女らしい。頬を赤くし、何かを見つめるように盃を見ていた。それを見ていた男は、肩を竦ませながら次の酒を差し出した。

「……正直に言えば、辺境伯家に迷惑がかからなければハーレムに入ろうが構わない。お前の役割はハルベルトにて騒乱を起こそうとする者の内偵と排除だからな。」

「分かってる……分かってるんだ。頭領……。でも、黙ってるのが辛いんだ……今まで、こんな事なかったのに。」

「……お前を拾ってから十年か。」

 頭領と呼んだ男が思い返すように言った言葉。それを聞いて自身も思い返す。そして、新しく出された酒をゴクリと仰ぎ呑む。頭領はその勢いを見て、新しい酒を注いでカウンターへ置いた。

「……もしも抜けたいというなら、功績を立てろ。そうしたら、俺が後はなんとかしてやる。」

「……チョトー地方の解放……。」

 頭領の言葉にピッピはボソリと言った。チョトー地方。”迷宮ダンジョン”が近くにあり、”迷宮”指定地域になった場所だ。二十年立つが、解放はうまく行っていない。当代の辺境伯も悲願としているが、うまく行っていないことに歯噛みしているぐらいだ。

「それができりゃ、十分過ぎるな。」

「……あたしらの目標はそれ。……十分なら頑張る。」

「……呑み過ぎだ。馬鹿野郎。」

 そんあ馴れ合いの様な話を続けていると、慌ただしい足音が聞こえてくる。この酒場は地下に作られており、街の様々な場所からこの地下酒場へ来ることができるようになっている。その道と合言葉を知っているのは、辺境伯家に仕える”暗部”のみであり、今ここに居る者、そしてここに来る者は全員が暗部として活躍している者だった。その取り纏めを行っているのが頭領と呼ばれた男であった。その男の元に、一人の若者然とした男が息も絶え絶えに走ってきた。

「頭領!大変だ!」

「どうした。落ち着いて話せ。」

「貴族然とした男と、ごろつきの様な冒険者が外の酒場で何やら話をしていたから、耳を澄ましていたんだが、あいつら、お嬢様を狂言誘拐しようとしてるみたいなんだ!」

 ピクリと頭領の眉が動いた。そして、何も言わず一度頷く。そのまま話を進めろという意味だ。彼が言うには、ごろつき共は最近この街に来た流れの傭兵くずれで、貴族はあくまでも名は名乗らなかったが、成功報酬で金貨十枚を提示していたこと。そして、狙いが首座神の教会にある孤児院の院長を攫おうとさせ、そこに貴族が割り込み助け出すという、陳腐な筋書きであった。実行は今日、夕方。人通りが減った辺りを狙うようだ。

「……たしか、アイル達が孤児院へ向かっているはずだよ。あたしがひとっ走りして協力を求め…っつ!!」

「急にどうした!?」

 ピッピが駆け出そうとした瞬間にうずくまった。急なことだったので、頭領がカウンターを回って、ピッピの傍に歩み寄る。首筋を抑えているのを見て、怪我がないか確認のために手を払うと、そこに見えたのは首座神しゅざしんの印が焼印のように生じていた。

「……これは、首座神の加護……か?」

「え? な、なにがあるの!?」

 頭領はその印を見て、加護であることがわかった。しかし、首座神の物であることに動揺していた。ピッピは自分の首筋にあるため、直接見ることができないため、何がついているのか不安がっている。仕事道具の一つでもある小鏡を向けて、ピッピに”それ”を見せてやる。

「……これ、なに?」

「……神々が人に加護を授ける時、授けた神の印が首筋に現れる。よく冒険譚とかにもあるだろう。……多分、それだ。しかし……。」

「……しかし?」

「首座神の印は、とんと聞いたことがない。」

 頭領が知らない。それだけで余程のことなのだと思った。この男は、辺境伯の下で、国内から隣国までの情報を一手に集め、精査し、辺境伯へ報告する役割を持っている。故に、この男が知らないというのはそれ程のことであった。

「……それよりも、お嬢様を守らないと!」

「俺も行く。他は、下手人どもが逃げ切れないように周囲を固めろ!」

 頭領が周りで話している男達に指示を出す。その指示を聞いた男どもは何も言わず、音を立てずに出ていった。
 それを見届けた後、二人は同じ様に音を立てずに酒場を出ていった。
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