ワケあり!?女オーガの嫁取り冒険譚〜ハーレムを求められたら受け止めるしかないだろう!?〜

加藤備前守

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Session02-06 マーリエの騎士

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「俺の名前はダール。傭兵だ。……まぁ底辺傭兵だがな。」

 孤児院の応接室に、アイル、ルナ、マーリエ、ピッピ、そして眼帯の男と襲撃者である男が机を囲んでいた。
 降伏した男は、ダールと名乗った。一緒にいた男達は、貴族然とした雇い主が一緒に雇い、あくまでもダールがリーダーをしていただけの付き合いであるという。今回の依頼は、ここの修道女……マーリエをさらい、依頼主へ引き渡す……もしくは依頼主が助け出す形にするための悪漢あっかん役であった。五人で金貨十枚という報酬にいぶかしがりながらも、背に腹は代えられず、今回の依頼に乗ったという。

「……お前はこの街に来たばかりだったな?」

 眼帯の男が、ダールに質問をした。その質問に、何故なぜ知ってるんだと疑問に思いながらも、その通りだとダールは答える。それを見て、男はアイルに向かって、あごで指し示し、説明をするように促した。

「……ダール、よそ者なら知らなくて当然だ。……マーリエは、レンネンカンプ辺境伯家へんきょうはくけの長女だ。この街の統治者とうちしゃの一族なんだ。……その意味が、わかるな?」

 アイルの説明を聞いて、ダールは一瞬にして血の気ちのけを失った。狂言きょうげんとは言え、誘拐ゆうかいの実行犯となれば、犯罪奴隷で済めば御の字……まず縛り首であろうことが容易に想像がついたのだ。それに、相手のことを伝えてなかったということは、自分たちを殺して、”ぞくを倒して助け出した”という名声を得ようという魂胆こんたんも隠されていたに違いない。その事をさとったダールは、席を立ち、机から少し離れた位置で片膝をついた。そして自身の首を見せるように頭を下げる。

「……辺境伯家のお嬢様とつゆも知らずとは言えども、手に掛けようとしましたこと、弁解の余地もございません。しかしながら、もし、お許しいただけるのであれば、俺をだました雇い主に一矢いっしを報いてから死なせていただきたく。伏してお願い申し上げます。」

 そのいさぎよい態度は、底辺の傭兵と自身を卑下ひげしていた存在とは思えない姿だった。
 眼帯の男も、その潔い態度に感銘かんめいを受けたらしく、「ふむ。」と考える仕草を見せた。その仕草を目にしたマーリエは彼に意見を出すように話しを振る。

「ブルズアイ。今回の陰謀をあばく役割を確実にこなし、首謀者を捕縛できれば一考の価値はないかしら?」

 眼帯の男……ブルズアイはマーリエが、彼の態度を潔しと認め、落とし所を作ろうとしているのだろうと理解した。この中で、被害者でもあり、辺境伯家の長女でもある彼女が一番地位が高い。その彼女が落とし所を用意しろと言っているのだ。辺境伯家に忠実なブルズアイは、功と罪を並べて口にした。

「……そうですな。言ってしまえば、お家乗っ取りの陰謀を暴く役割をしたという事になれば、報奨ほうしょう……または取り立てもあり得るかとは。……誘拐未遂の罪を問うというのであれば、情状じょうじょう酌量しゃくりょうをして、犯罪奴隷落ちと言った所で済ませられるでしょう。」

 ブルズアイの言葉を聞いたマーリエは、彼に向かって頷いて見せた後、頭を下げているダールに向かって宣言をする。

「ダール。あなたのその潔い態度と、この度の陰謀を暴いた功績を持って、今回の誘拐未遂の罪を半分、相殺そうさいとします。そして、この後の首謀者の捕縛の任を全うした際は、あなたを”マーリエ・オズワルド・フォン・レンネンカンプ”の騎士として雇用し、こちらの”アイル・コンラート・フォン・ベルンシュタイン”の与力よりきとして、彼の力となることを命じます。自身が死ぬことを覚悟してるのであれば、私に仕え、彼の力になることもできるはずです。いかがかしら?」

 この流れは何なのか。ダールは困惑こんわくしていた。マーリエの宣言に反射的に頭を上げ、呆然ぼうぜんと相手の目を見ていた。
 ただの傭兵。しかも底辺の傭兵だと自身の事を伝えた。そして、貴族のお嬢様を誘拐未遂とは言え、その実行犯をした。それだけで、貴族に手を出した事で死に方をした奴らを思い返す。底辺とは言えども傭兵として、戦士として死にたい……自分をめた相手に一矢を報いたいと思った。そのため、心残りを解消できれば、潔く刑を受けると申し出たのだ。
 なのに、この自分を、騎士として雇うという。正直言って、傭兵の立身出世としては上出来過ぎる話である。裏があるのではないか。そう考えるのが普通である。そう考えておきながら今回の依頼を受けた事で、この苦境があった。……しかし、マーリエの瞳には一片の曇りはなく、凛とした光を湛えていた。その光に、自分が身命を賭して仕えるべき主がここにいると、理解し、納得した。そして、改めて頭を下げる。

「このダール。ただの平民出の傭兵ではありますが、身命しんめいを賭して、マーリエ様に忠誠を誓うと共に、アイル殿の与力として力になることを誓います!!」

 ダールはそう答えることに精一杯で、目からは涙を滂沱ぼうだと流していた。そして、それを拭うと表情を改めて、皆の顔を見回し、この後の策について提言をする。

「改めてではありますが、マーリエ様は俺にさらわれていただきます。落ち合う場所は決めておりますので、そこにまずは俺とマーリエ様のみで参ります。ブルズアイ殿には周りを囲んでいただき、隠れているであろう依頼主の部下を捕縛していただきたい。」

 その発言にマーリエとブルズアイは頷いた。マーリエ自身が出なければ相手は姿を表さないであろう。ならば、今後の憂いを払うためにも、自身が出る必要があると判断していた。

「そして、アイル殿。あなたには、依頼主が現れた後、乗り込んで捕まえていただきたい。」

 アイルもダールの発言に頷いた。これはアイルに花をもたせる為のダールの考えである。ダール自身は、この策が上手く行けば功を成せるので、アイルに捕縛の功をゆずろうとしているのだ。

「……わかった。ダール……お前を信頼する。マーリエを頼んだぞ。」

 アイルは、ダールへ向かって身体を倒し、頭を下げてみせた。自分の愛する女をたくすに足ると言ってみせたのだ。ダールは、「必ずや、生命いのちに代えてもお守りいたします。」と、そう口にし、アイルへ深々と頭を下げるのであった。
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