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第1章「出会いと最初のオカルト事件」
第8話《旧校舎、再び》
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放課後——。
俺はまたしても、あの旧校舎の前に立っていた。
正直な話、ここに来るのは絶対に嫌だった。
むしろ、一生近づきたくなかった。
それでも、オカルト耐性Sランクの女こと篠崎彩華が 「行くよ!」 と笑顔で宣言した瞬間、俺の運命は決まってしまったのだ。
「……なあ、最後にもう一回確認させてくれ」
「ん? 何?」
「本当に行かなきゃダメなの?」
「うん!」
「"いや"って言ったら?」
「行くよ!」
「俺に選択権は……?」
「ないよ?」
「理不尽だぁぁぁぁ!!」
俺の叫びは、誰の心にも響かない。
唯一の救いは、周囲に誰もいないことだけだ。
この姿をクラスメイトに見られたら、間違いなく"ヘタレ男子"の称号を授与されてしまうだろう。
……まあ、それが事実なのは否定しないが。
「さて、と」
彩華は、ポケットから懐中電灯を取り出した。
日が落ちかけているとはいえ、まだ外は明るい。
だけど、旧校舎の中は相変わらず暗く、光がほとんど届かない。
「よし、入ろう!」
「だから待てって!」
「何?」
「一応聞くけど……作戦とか考えてる?」
「うん! とりあえず"かえせ"の意味を調べる!」
「具体的には?」
「鏡をよく観察する!」
「……」
いや、それってつまり……
「またあの鏡に近づくってこと!?」
「うん!」
「いやいやいや!! 絶対ダメなやつだろ!!!」
「じゃあどうすればいいの?」
「帰ろう!!」
「うーん、却下!」
「この理不尽女ぁぁぁぁ!!!」
俺は涙目になりながら、結局ズルズルと旧校舎へと足を踏み入れることになった。
扉を開けると、カビ臭い空気が漂ってきた。
外の光が届かない廊下は、相変わらず不気味で、昨日の"あれ"が蘇る。
あの黒い影。
耳元で囁かれた声。
そして、肩に触れた"何か"——。
「……くそ」
俺は拳を握りしめた。
逃げたい。
でも、もう逃げられないのは分かっている。
昨日、俺は確かに"夢"であの影と接触した。
それが現実にどう影響するかは分からないが、このまま放っておけば、また同じ夢を見る可能性が高い。
いや、むしろ——次こそは、夢では済まされないかもしれない。
だからこそ、今ここで何か手がかりを掴まないといけない。
それがどれほど怖くても、放置する方がヤバい。
「……」
俺は深呼吸して、腹をくくることにした。
「おっ、やる気出てきた?」
「出したくないけど、仕方ねぇだろ……」
「えらいえらい!」
「褒めるな!!」
そうして俺たちは、"映してはいけない鏡"のある場所へと向かった。
「お、あったあった」
そこに、問題の鏡はあった。
昨日とまったく同じ場所。
まったく同じ角度で置かれている。
だけど……やっぱり違和感がある。
「……気づいた?」
彩華が、真剣な目で鏡を見つめている。
「ああ……これ、昨日と同じじゃない」
違う。
鏡に映る俺たちの姿が、微妙に"遅れて"いる。
「……またかよ……」
「昨日よりズレが大きくなってるね」
「それ、いいことじゃねぇだろ!!」
まるで、俺たちの"コピー"が鏡の中で少し遅れて動いているような違和感。
普通、鏡に映る姿は一瞬のズレもなく連動するはずだ。
それが遅れているってことは——
「やっぱり"何か"があるな」
「やめて!! 確信しないで!!」
彩華は、ゆっくりと鏡に手を伸ばした。
「よし、触ってみよう!」
「やめろおおおおおお!!!」
俺の叫びもむなしく——
彩華の指が、鏡に触れた瞬間だった。
——バチンッ!!
「っ!?」
まるで静電気のような衝撃が走り、彩華が手を引っ込める。
「……今の、何?」
「俺が聞きてぇよ!!」
鏡の表面には、何の傷もない。
けれど、今のは明らかに"何かの拒絶"だった。
「おかしいな……何かを返せって言ってるのに、こっちが接触しようとすると拒む?」
「それってつまり……」
「まだ"足りない"のかもね」
「……」
まだ、何かが必要だというのか。
でも、それが何なのかは分からない。
そのとき——
「……た……し……て……」
「!!」
鏡の中の俺たちが、"ズレ"たまま動いた。
いや、違う。
鏡の奥の"何か"が、動いた。
「……気づいた?」
「あ、ああ……」
俺は、背筋に冷たいものが走るのを感じた。
今までは、俺たちの映像が遅れていただけだった。
だが——
「今の……"別の何か"だったよな?」
「うん」
「……ヤバくね?」
「うん」
「帰ろう!!!」
「却下!」
「この女ぁぁぁぁ!!」
俺はもう、心が限界を迎えつつあった。
だけど、鏡の怪異は、確実に"次の段階"に入っている。
俺たちはもう、逃げられない。
俺はまたしても、あの旧校舎の前に立っていた。
正直な話、ここに来るのは絶対に嫌だった。
むしろ、一生近づきたくなかった。
それでも、オカルト耐性Sランクの女こと篠崎彩華が 「行くよ!」 と笑顔で宣言した瞬間、俺の運命は決まってしまったのだ。
「……なあ、最後にもう一回確認させてくれ」
「ん? 何?」
「本当に行かなきゃダメなの?」
「うん!」
「"いや"って言ったら?」
「行くよ!」
「俺に選択権は……?」
「ないよ?」
「理不尽だぁぁぁぁ!!」
俺の叫びは、誰の心にも響かない。
唯一の救いは、周囲に誰もいないことだけだ。
この姿をクラスメイトに見られたら、間違いなく"ヘタレ男子"の称号を授与されてしまうだろう。
……まあ、それが事実なのは否定しないが。
「さて、と」
彩華は、ポケットから懐中電灯を取り出した。
日が落ちかけているとはいえ、まだ外は明るい。
だけど、旧校舎の中は相変わらず暗く、光がほとんど届かない。
「よし、入ろう!」
「だから待てって!」
「何?」
「一応聞くけど……作戦とか考えてる?」
「うん! とりあえず"かえせ"の意味を調べる!」
「具体的には?」
「鏡をよく観察する!」
「……」
いや、それってつまり……
「またあの鏡に近づくってこと!?」
「うん!」
「いやいやいや!! 絶対ダメなやつだろ!!!」
「じゃあどうすればいいの?」
「帰ろう!!」
「うーん、却下!」
「この理不尽女ぁぁぁぁ!!!」
俺は涙目になりながら、結局ズルズルと旧校舎へと足を踏み入れることになった。
扉を開けると、カビ臭い空気が漂ってきた。
外の光が届かない廊下は、相変わらず不気味で、昨日の"あれ"が蘇る。
あの黒い影。
耳元で囁かれた声。
そして、肩に触れた"何か"——。
「……くそ」
俺は拳を握りしめた。
逃げたい。
でも、もう逃げられないのは分かっている。
昨日、俺は確かに"夢"であの影と接触した。
それが現実にどう影響するかは分からないが、このまま放っておけば、また同じ夢を見る可能性が高い。
いや、むしろ——次こそは、夢では済まされないかもしれない。
だからこそ、今ここで何か手がかりを掴まないといけない。
それがどれほど怖くても、放置する方がヤバい。
「……」
俺は深呼吸して、腹をくくることにした。
「おっ、やる気出てきた?」
「出したくないけど、仕方ねぇだろ……」
「えらいえらい!」
「褒めるな!!」
そうして俺たちは、"映してはいけない鏡"のある場所へと向かった。
「お、あったあった」
そこに、問題の鏡はあった。
昨日とまったく同じ場所。
まったく同じ角度で置かれている。
だけど……やっぱり違和感がある。
「……気づいた?」
彩華が、真剣な目で鏡を見つめている。
「ああ……これ、昨日と同じじゃない」
違う。
鏡に映る俺たちの姿が、微妙に"遅れて"いる。
「……またかよ……」
「昨日よりズレが大きくなってるね」
「それ、いいことじゃねぇだろ!!」
まるで、俺たちの"コピー"が鏡の中で少し遅れて動いているような違和感。
普通、鏡に映る姿は一瞬のズレもなく連動するはずだ。
それが遅れているってことは——
「やっぱり"何か"があるな」
「やめて!! 確信しないで!!」
彩華は、ゆっくりと鏡に手を伸ばした。
「よし、触ってみよう!」
「やめろおおおおおお!!!」
俺の叫びもむなしく——
彩華の指が、鏡に触れた瞬間だった。
——バチンッ!!
「っ!?」
まるで静電気のような衝撃が走り、彩華が手を引っ込める。
「……今の、何?」
「俺が聞きてぇよ!!」
鏡の表面には、何の傷もない。
けれど、今のは明らかに"何かの拒絶"だった。
「おかしいな……何かを返せって言ってるのに、こっちが接触しようとすると拒む?」
「それってつまり……」
「まだ"足りない"のかもね」
「……」
まだ、何かが必要だというのか。
でも、それが何なのかは分からない。
そのとき——
「……た……し……て……」
「!!」
鏡の中の俺たちが、"ズレ"たまま動いた。
いや、違う。
鏡の奥の"何か"が、動いた。
「……気づいた?」
「あ、ああ……」
俺は、背筋に冷たいものが走るのを感じた。
今までは、俺たちの映像が遅れていただけだった。
だが——
「今の……"別の何か"だったよな?」
「うん」
「……ヤバくね?」
「うん」
「帰ろう!!!」
「却下!」
「この女ぁぁぁぁ!!」
俺はもう、心が限界を迎えつつあった。
だけど、鏡の怪異は、確実に"次の段階"に入っている。
俺たちはもう、逃げられない。
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