オカルト耐性Sランクの私に、ビビりな男子がついてくる件について

結城 雅

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第2章「七不思議と消えたクラスメイト」

第25話《保健室の夢》

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 悠真——。

 俺は、ようやくアイツの名前を思い出した。

 だが、悠真の影が示した「保健室」という言葉が、何を意味しているのかはまだ分からない。

 この世界に来てから、一度も保健室を見たことがない。

 "存在しない"のか、それとも"今まで見えなかっただけ"なのか——。


「……行こう」

 俺たちは、校舎の中を歩きながら、保健室を探した。

 いつも通っていたはずの廊下。

 見慣れたはずの扉の並び。

 なのに——

「おかしいな……こんなところに、扉あったっけ?」

 彩華が足を止めた。

 そこには、今まで一度も見たことがなかった"古びた木製の扉"があった。

「これ……保健室?」

 扉の上には、薄くかすれた文字で"保健室"と書かれている。

 だけど——

「……見たことない」

 俺も、彩華も、この扉の記憶がまったくない。



「入るしかない、よな……」

 俺は、深呼吸をして扉に手をかけた。

 ギィ……

 扉がゆっくりと開く。

 中は——普通の保健室だった。

 ベッドが並び、棚には薬や包帯が収納されている。
 窓の外は相変わらず真っ白で、"現実"とは違う異様な空気が漂っている。

 ——そして。

 奥のベッドの上に、誰かが横たわっていた。



「悠真……?」

 俺は、おそるおそる近づいた。

 ベッドの上で、悠真は静かに横たわっている。
 目を閉じたまま、微動だにしない。

「……寝てる?」

 彩華がそっと声をかけるが、返事はない。

「いや、違う。これは……」

 近くに寄って、息を呑んだ。

 悠真の体は、半透明になっていた。


「……何これ……」

 彩華が小さく呟く。

「まるで"消えかけてる"みたい……」

「悠真……」

 俺は、そっと肩を揺さぶった。

「起きろよ、悠真! 俺だ、拓海だ!」

 だが、悠真は微動だにしない。

 その体は、""ようだった。




「……"保健室の夢"」

 彩華の言っていた七不思議のひとつを思い出す。

——『七不思議の一つに、"保健室の夢"というものがある』

——『そこに入ると、決して目覚めることができない』

「これが、"七不思議の怪異"……?」

「たぶん……悠真は、この保健室の"夢"に囚われてるんだ」



「どうやったら、起こせる?」

 俺は、焦る気持ちを抑えながら考える。

 "夢に囚われる"なら、"目覚めさせる方法"があるはずだ。

「……拓海、何か違和感、ない?」

 彩華が辺りを見回しながら言った。

「違和感?」

「この保健室……すごく静かじゃない?」

 言われてみると、確かに異常なほど静まり返っている。
 時計の針も動いていないし、空気がまるで"止まっている"ように感じる。

「まるで……"時間が止まっている"みたい……」

 時間——。

 この世界に来てから、ずっと止まった時計があちこちにあった。

 悠真も、"この時間の中"で止められているのか?


「もしかして……時間を動かせば、悠真も目を覚ますんじゃないか?」

「時間を、動かす?」

「この世界では、時計が全部止まってる。でも、もし"時間を進められたら"、悠真も……」

 俺たちは、保健室の中を探した。

 そして——見つけた。

 保健室の壁に掛けられた古びた時計。

 秒針はピクリとも動いていない。

「……これを、動かせば?」

「やってみる価値はある」

 俺は、そっと時計の針に指をかけた。

 カチッ——

 時計の針を少し進める。

 その瞬間——

ゴォォォォォ……!

 空間が歪んだ。



「……っ!?」

 保健室全体が揺れる。
 悠真の体が、ゆっくりと光に包まれていく。

「効いてる……?」

「分かんない! でも、もう少し……!」

 俺は、時計の針をさらに進めた。

カチ、カチ、カチ……

 秒針が動き出す。

 その瞬間——

「……ん、……」

「悠真!?」

 悠真が、ゆっくりと目を開けた。



「……拓海?」

 弱々しい声が、俺の耳に届く。

「悠真!!」

 俺は、思わず悠真の肩を掴んだ。

「お前……お前、ずっと……!!」

「……ごめん……俺……」

 悠真は、困ったように笑った。

「……長い夢を見てた気がする」

 涙が出そうになった。

 俺は、悠真を、取り戻せたのか——?



 その時。

 鏡が、砕けた。

 パリン——!

 空間が一気に揺らぎ、俺たちの視界が白く染まる。

「……っ!!」

 光の中で、彩華の声が聞こえた。

「……これって!」

「世界が、戻る……?」

 悠真を取り戻したことで——この鏡の怪異が、終わる。

 俺たちは、その光の中へと飲み込まれていった。

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