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第3章《新たな怪異》
第32話《記憶の改ざん》
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図書室を出た俺たちは、校内の廊下を慎重に進んでいた。
静寂——それ以外の何もない。
まるで、俺たち以外の時間が止まったかのように。
「……さっきの本、結局何だったんだ?」
悠真が俺の手元を見ながら言う。
「『七不思議伝承録』……なんて胡散臭いタイトルだけど、内容は妙に具体的だったな」
「記録がないのに、どうやって七不思議が語り継がれてるのか不思議よね」
彩華が腕を組みながら言った。
「それにしても、"借りたら翌日にページが変わる"なんて……本当にそんなことが起こるのか?」
「……それを確かめるために借りたんだろ」
「まあね。でも、もし"ページが変わる"ってことが"記憶も変わる"ことを意味してたら?」
「記憶が……変わる?」
悠真が戸惑った表情を見せた。
「例えば、もしこの本が明日になったら、"この学校に七不思議は存在しない"って内容に書き換わっていたとしたら? そのとき、私たちは"七不思議なんて最初からなかった"って思うようになってしまうかもしれない」
「……そんなの、もう怪異じゃなくて"改ざん"じゃねえか」
悠真が苦笑しながら言うが、俺は笑えなかった。
「でも、久瀬先輩の話を思い出せよ」
俺は慎重に言葉を選びながら話を続ける。
「"消えたクラスメイトのことを覚えているのは、鏡の中に引きずり込まれかけた人間だけ"だったよな?」
「……あっ」
「つまり、"消えたこと自体が改ざんされる"可能性があるってことじゃないか?」
言葉にしてみると、背筋が凍るような感覚があった。
もし、この本が"過去を書き換える"ことができるのなら……
俺たちの存在すら、誰かの記憶から消されるかもしれない——。
「……なあ、ちょっと待てよ」
悠真が足を止めた。
「え?」
「これ、俺がただの考えすぎかもしれないけど……"俺が消えた理由"って、この本と関係あるんじゃないか?」
「……っ!」
俺と彩華は言葉を失った。
「七不思議の一つに巻き込まれたっていうのは分かる。でも、それだけじゃない気がするんだ。もし、"俺がいなかったことにされた"んだとしたら?」
悠真の言葉が、妙に重く響いた。
「つまり、お前は"この本によって消された"ってことか?」
「……そんなの、証明できるのか?」
「できるかどうかは分からない。でも、"この本が関わっている"って仮説は捨てられないと思う」
俺は本を握りしめた。
「……だったら、明日になってどう書き換わっているか、絶対に確認しなきゃな」
「でもさ、もし明日になって……"お前はここにいなかった"って書かれてたら?」
「……っ!」
ゾッとした。
もし、本にそう書かれていたら……俺の存在はどうなる?
俺は、明日も変わらずここにいられるのか?
いや、それ以前に——俺は自分が"消えた"ことにすら気づけなくなるんじゃないか?
「……やめるなら、今のうちよ」
彩華が、俺をじっと見つめていた。
「でも、やめても何も解決しないわ。私たちはもう"この本のルール"に巻き込まれてる」
「……やめるわけにはいかないだろ」
俺は、本を握りしめる。
「やるしかない……"真実"を突き止めるために」
——その瞬間、背後から足音が響いた。
「……え?」
俺は一瞬、心臓が止まるかと思った。
この学校に、俺たち以外の誰かがいる……?
「……誰か、来る」
彩華が、低く囁く。
俺は反射的に本を抱え、振り向こうと——
——いや、違う。振り向いちゃダメだ。
「待て、拓海」
悠真が俺の肩を掴んで止めた。
「……っ」
「お前、さっきの警告、忘れたのか?」
『最初にこれを読んだ者は、振り向いてはならない』
そうだ。
この本を開いた瞬間から、俺はすでに"ルール"の中にいたんだ。
「……逃げるぞ」
俺は声を低くして言った。
「は?」
「ヤバい気がする。ここにいたらダメだ」
「でも——」
「何が来るかも分からない。とにかく、ここを出よう」
悠真も彩華も、一瞬の迷いを見せたが、すぐに頷いた。
俺たちは、一気に駆け出した。
背後の足音は、俺たちの動きに合わせるように、次第に速くなっていく。
まるで俺たちを捕まえようとしているみたいに——。
「……っ、こっち!」
彩華が、廊下の角を指差す。
俺たちはそこに飛び込み、振り返ることなく一気に階段を駆け上がった。
しかし——
その瞬間、俺の視界が真っ暗になった。
「……っ!? おい、なんだよこれ!」
「暗すぎて何も見えない……!」
悠真が叫ぶ。
周囲が、漆黒の闇に包まれていた。
「待って……これ……"黒い窓ガラス"と関係あるんじゃないの!?」
彩華が息を呑む。
——そうか。
俺たちは知らず知らずのうちに、この"異常な空間"の中に踏み込んでいたのか。
"振り向くな"というルールを破らなかったのに、怪異は俺たちを逃がすつもりがない。
「……どうする?」
悠真の声が、震えていた。
「何か出口を——」
俺が言いかけた、その時——
——パサッ……
手の中の本が、勝手に開かれた。
そこには、新しい一文が記されていた。
『今度は、お前が消える番だ』
静寂——それ以外の何もない。
まるで、俺たち以外の時間が止まったかのように。
「……さっきの本、結局何だったんだ?」
悠真が俺の手元を見ながら言う。
「『七不思議伝承録』……なんて胡散臭いタイトルだけど、内容は妙に具体的だったな」
「記録がないのに、どうやって七不思議が語り継がれてるのか不思議よね」
彩華が腕を組みながら言った。
「それにしても、"借りたら翌日にページが変わる"なんて……本当にそんなことが起こるのか?」
「……それを確かめるために借りたんだろ」
「まあね。でも、もし"ページが変わる"ってことが"記憶も変わる"ことを意味してたら?」
「記憶が……変わる?」
悠真が戸惑った表情を見せた。
「例えば、もしこの本が明日になったら、"この学校に七不思議は存在しない"って内容に書き換わっていたとしたら? そのとき、私たちは"七不思議なんて最初からなかった"って思うようになってしまうかもしれない」
「……そんなの、もう怪異じゃなくて"改ざん"じゃねえか」
悠真が苦笑しながら言うが、俺は笑えなかった。
「でも、久瀬先輩の話を思い出せよ」
俺は慎重に言葉を選びながら話を続ける。
「"消えたクラスメイトのことを覚えているのは、鏡の中に引きずり込まれかけた人間だけ"だったよな?」
「……あっ」
「つまり、"消えたこと自体が改ざんされる"可能性があるってことじゃないか?」
言葉にしてみると、背筋が凍るような感覚があった。
もし、この本が"過去を書き換える"ことができるのなら……
俺たちの存在すら、誰かの記憶から消されるかもしれない——。
「……なあ、ちょっと待てよ」
悠真が足を止めた。
「え?」
「これ、俺がただの考えすぎかもしれないけど……"俺が消えた理由"って、この本と関係あるんじゃないか?」
「……っ!」
俺と彩華は言葉を失った。
「七不思議の一つに巻き込まれたっていうのは分かる。でも、それだけじゃない気がするんだ。もし、"俺がいなかったことにされた"んだとしたら?」
悠真の言葉が、妙に重く響いた。
「つまり、お前は"この本によって消された"ってことか?」
「……そんなの、証明できるのか?」
「できるかどうかは分からない。でも、"この本が関わっている"って仮説は捨てられないと思う」
俺は本を握りしめた。
「……だったら、明日になってどう書き換わっているか、絶対に確認しなきゃな」
「でもさ、もし明日になって……"お前はここにいなかった"って書かれてたら?」
「……っ!」
ゾッとした。
もし、本にそう書かれていたら……俺の存在はどうなる?
俺は、明日も変わらずここにいられるのか?
いや、それ以前に——俺は自分が"消えた"ことにすら気づけなくなるんじゃないか?
「……やめるなら、今のうちよ」
彩華が、俺をじっと見つめていた。
「でも、やめても何も解決しないわ。私たちはもう"この本のルール"に巻き込まれてる」
「……やめるわけにはいかないだろ」
俺は、本を握りしめる。
「やるしかない……"真実"を突き止めるために」
——その瞬間、背後から足音が響いた。
「……え?」
俺は一瞬、心臓が止まるかと思った。
この学校に、俺たち以外の誰かがいる……?
「……誰か、来る」
彩華が、低く囁く。
俺は反射的に本を抱え、振り向こうと——
——いや、違う。振り向いちゃダメだ。
「待て、拓海」
悠真が俺の肩を掴んで止めた。
「……っ」
「お前、さっきの警告、忘れたのか?」
『最初にこれを読んだ者は、振り向いてはならない』
そうだ。
この本を開いた瞬間から、俺はすでに"ルール"の中にいたんだ。
「……逃げるぞ」
俺は声を低くして言った。
「は?」
「ヤバい気がする。ここにいたらダメだ」
「でも——」
「何が来るかも分からない。とにかく、ここを出よう」
悠真も彩華も、一瞬の迷いを見せたが、すぐに頷いた。
俺たちは、一気に駆け出した。
背後の足音は、俺たちの動きに合わせるように、次第に速くなっていく。
まるで俺たちを捕まえようとしているみたいに——。
「……っ、こっち!」
彩華が、廊下の角を指差す。
俺たちはそこに飛び込み、振り返ることなく一気に階段を駆け上がった。
しかし——
その瞬間、俺の視界が真っ暗になった。
「……っ!? おい、なんだよこれ!」
「暗すぎて何も見えない……!」
悠真が叫ぶ。
周囲が、漆黒の闇に包まれていた。
「待って……これ……"黒い窓ガラス"と関係あるんじゃないの!?」
彩華が息を呑む。
——そうか。
俺たちは知らず知らずのうちに、この"異常な空間"の中に踏み込んでいたのか。
"振り向くな"というルールを破らなかったのに、怪異は俺たちを逃がすつもりがない。
「……どうする?」
悠真の声が、震えていた。
「何か出口を——」
俺が言いかけた、その時——
——パサッ……
手の中の本が、勝手に開かれた。
そこには、新しい一文が記されていた。
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