オカルト耐性Sランクの私に、ビビりな男子がついてくる件について

結城 雅

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第4章 書き換わる現実

第53話《繰り返す記憶》

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 薄暗い資料室に閉じ込められ、数分が過ぎた。

「くそっ、やっぱり開かない!」

 悠真が何度もドアノブを回しながら舌打ちした。さっきから試しているが、扉は頑として動かない。

「落ち着いて。きっと何か別の方法があるわ」

 彩華は淡々と言ったが、その声もいつもより少し硬かった。

 スマホも圏外になっていて外への連絡手段はない。この状況では誰かが通りかかるまで待つしかないのか——そんなことを考えていた時だった。

「……あれ?」

 資料室の奥の棚に視線を向けていた悠真が、小さな声を上げた。

「どうした?」

「あそこに、まだ何かある」

 悠真が指差した先、古い木製の棚の中段に、少しだけ色あせたファイルがひっそりと収まっていた。他の資料と違い、妙に古くて埃をかぶっている。

「こんなのさっきまであったっけ?」

「わからない。でも、何か気になる」

 彩華は迷わず手を伸ばし、ファイルを棚から抜き出した。俺と悠真も彼女を取り囲むようにしてそれを覗き込んだ。

「随分と古いファイルだな」

「ええ、何か書いてあるわ」

 彩華がファイルを慎重に開いた。ページは黄ばんでいたが、文字はしっかり残っていた。

『七不思議・第六の怪異に関する調査報告書』

「第六の怪異?」

 悠真が呟き、彩華がページをめくる手を止めた。

「『図書室の本の内容が消える怪異』……これ、今まさに私たちが調べている怪異じゃない!」

「まさか、過去にもこの怪異があったのか?」

「そのようね。しかもかなり前……20年以上前の日付だわ」

 俺たちは互いに顔を見合わせた。

「とりあえず、中を確認しよう」

 悠真の言葉に頷き、俺たちはその報告書を詳しく読み始めた。

 そこには、20年以上前にも本の内容が消え、人々の記憶も侵食される現象があったことが書かれていた。そして当時もまた、この資料室に閉じ込められた生徒たちがいたことも。

『私たちは閉じ込められて数時間、脱出を試みたが無理だった。しかし、ここで私たちは重要なことに気がついた。この怪異は本の中身を奪っているのではなく、奪った内容をどこか別の場所に蓄積しているようだ。』

「別の場所に蓄積……?」

 彩華が眉をひそめながらページをめくる。

『もし我々の仮説が正しければ、その場所に行き着ければ失われた記憶を取り戻すことが可能かもしれない』

「記憶を取り戻す場所、か……」

 悠真が呟いた。その言葉は重く、俺たちの胸に響いた。

「でも、その場所ってどこよ?」

「それが書かれているかもしれない。読み進めよう」

 俺たちは緊張したまま続きを読み進めた。しかし、そこから先はページが破り取られてしまっていた。

「ちょっと、ここから先がないわ……!」

 彩華が舌打ちした。

「肝心なところが破り取られてるなんて……」

「わざとだろうな。俺たちがここまで辿り着くことも想定されていたんだろう」

「なら、どうすれば……」

 俺たちが途方に暮れかけたその時、ファイルの最後のページに別の走り書きを見つけた。

『その場所に辿り着くには、怪異の中心となっている本を見つけるしかない。図書室のどこかに、全ての記憶が集約される一冊が存在するはずだ』

「怪異の中心となる本?」

「つまり、その本を見つけ出せば、記憶も取り戻せる可能性があるってことね」

 彩華は即座に顔を上げた。その瞳には再び鋭い好奇心が宿っている。

「でも、それってどの本だよ?」

「わからないわ。でも、おそらく私たちが今まで見た本とは違う特別な何かがあるはず」

「その本を探すためにも、まずはここを脱出しないと話にならないな」

 俺が言うと同時に、資料室の扉が唐突にゆっくりと開いた。

「……開いた?」

「どういうこと?」

「また誘導されてるのかもしれないわ」

 彩華が呟き、俺たちは資料室の外に慎重に出た。図書室は変わらず静かで、異常はないように見える。

 しかしその瞬間、俺は違和感を覚えた。

「あれ?」

「どうした?」

 悠真が問いかける。

「さっきまで確かに閉じ込められていたのに、そのことが……」

「拓海、どういう意味?」

 彩華が心配そうに覗き込んでくるが、俺はうまく言葉が出ない。

「……いや、なんでもない」

 俺は誤魔化したが、心の中では違和感が広がっていく。

(もしかして、さっきの資料室での出来事すら、記憶が侵食され始めているのか?)

「とにかく、中心となる本を見つけないと」

「ええ、急ぎましょう」

 彩華が促し、俺たちは再び本棚を調べ始めた。だが、俺は既に不安を抑えきれずにいた。

 次々に記憶が消えていくこの状況で、いつまで俺たちは本当のことを覚えていられるのだろうか。

 そして、この怪異の中心となる一冊の本は、どこに隠されているのだろうか。

 俺たちは何度も見てきたはずの本棚を、初めて見るような感覚で見つめながら、不気味な焦燥感に追い立てられていった。
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みんなの感想(1件)

富樫 直子
2025.03.01 富樫 直子

13話 先輩の登場あたりから面白くなってきます。なんなら途中での離脱をを招かないよう1章を削ってもいいくらいに思えます。
今後の展開が楽しみになってきました。応援してます。頑張ってください。

解除

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