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一部 皆殺し編
ネクロマンサーの極意
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「どうだ?反応はあるか?」
ライドはギールとジャンクロイドに問いかけた。
「うむ。どうやら隠れるつもりはないようである。あれだけの死霊を出し続けられるような強い反応は一つしかない」
「モリノハズレノオカニ、キョダイナトビラトニンゲンヲハッケンシマシタ」
2人はいち早く死霊の発生場所を特定し、伝えてくれた。
まるで隠れるつもりがない。ということは、たいそうな自信があるのだろう。
ライドは気を引き締めて、その場所に向かった。
西の森の外れに、あの小男はいた。
情報の通り、おぞましい人の死肉で出来た大きな扉の番をしているようだ。扉からは、濁流のように死霊があふれ出していて、大陸中へと散布されているのだろう。
犠牲者が1人でも減るように、一刻も早く扉を閉じなければ。
ライドは斧を握り締め、小男に向かって思いっきりぶん投げた。ジェット飛行の勢いも掛け合わさった勢いで斧はまっすぐ、高速回転しながら飛んでいく。
だが、コーマンの守りを無数のアンデッドたちが固める。斧はプラズマを放出し、彼らを切り裂きながら突き進むが分厚い肉の壁に勢いを削がれ、コーマンに届く前に制止。閉じ込められてしまった。
さらに、眼前を覆いつくすほどの群れが真下から突きあがってきてライドを襲う。
ライドは急上昇し、迫りくる群れから逃れた。そしてアンデッドたちの肉塊の中の斧を遠隔操作して動かそうとするも、切っても切っても湧いてくるので依然としてコントールが効かない。
旋回しながら素手で攻撃に回ろうとするが、見渡す限りのアンデッドの群れがコーマンの周りには潜んでいて、近寄れば大群が襲い掛かってくる。迂闊には近寄れなかった。
そうしている間にも、死霊たちはどんどん扉から放出されていった。
それはイコール、大陸の民が殺されているの同義。ライドは焦った。
機械化され望遠機能が付いているライドの目からは、遠くでコーマンがほくそ笑んでいるのが見える。
強引にでも行くしかない。
ライドはどんどん上昇し、コーマンから数百m上空に達したところで止まり鋼鉄の爪を伸ばした。ジェット加速を最大にし、ドラゴンと戦った時のように勢いをつけて下降。ミサイルのような勢いでコーマンに向かう。眼前には、自らを操るネクロマンサーを脅威から守るべくアンデッドの肉の壁が立ちはだかるが、急降下の勢いとジェット加速から生み出されるエネルギーは膨大で、肉の壁を貫いていく。肉の壁に血を浴びながらトンネルを掘り続けていくと、やがて貫通しその先にコーマンと冥土の扉が見えた。ライドはそのまま減速することなく、コーマンに機械鬼の鉄爪を突き立てようとする。
その刹那、右から強烈な殺気を喉元に感じ、彼は急反転。身体を捩じりながら着地する。
なにが起きた?
ライドは体制を立て直し、殺気の元を辿った。
冥土の扉から大きな骸骨の両手が伸びている。手には大きな、おぞましい死の気配を纏った鎌が握られていた。そして中から出てきたのは、10メートルほどの大きさの巨大な骸骨。黄金の装飾が施されている紫のローブ。髑髏頭には王冠が被せられていた。
死霊の王。
そのような風貌だった。
小男が召喚したのか、彼は死霊の王の後ろに隠れていた。
どう攻撃したいいのか分析にかかろうとしたその時、ミリーから通信が入る。
「ライド、聞こえる?」
「ミリー!ああ、聞こえてる」
「あれは死霊系最上位の化物。あの大鎌は肉体も物質もすり抜けて、生命の魂を刈り取るの」
「喰らったら死ぬのか…」
「戦鬼、ジャンクロイドの順で死んでしまうはず。小男は魔眼をもっているんでしょ?2回くらったらその時点で負け」
「…わかった。情報ありがとうってうお!」
会話している間にも、背後からアンデッドたちが押し寄せきた。
再び上昇回避を行うライド。目下を群れが覆いつくす。
っつ…これじゃ近寄れねえ!
ぞ。
背後に悪寒を感じる。
転移魔法を使って移動した死霊の王が命を刈り取る大鎌を振り下ろす。
なまじ勢いが付いていたため避けきれず、腕を使って大鎌を受けてしまった。鎌はライドの右腕をすり抜けた。
「うっ!」
腕の力が抜け、戦鬼の右腕の感触が消えた。鋼鉄の爪は消え、ジャンクロイドの腕のみが残る。
命までは取られなかったが、戦鬼の腕が切り落とされた感じだ。
ライドは全力で距離を取り、注意深く死霊の王に集中した。
ヤバイ。姿が消えた瞬間、回避しないと。
空中に漂う死霊の王も不気味にこちらの様子を伺っていた。
「ミリー、あいつにはどんな攻撃が効そうなんだ?」
「そうね…物理攻撃はほぼほぼ無駄。聖なる魔法が有効なんだけど、ジャンクロイドがメイン憑依だからプラズマやレーザーのエネルギー攻撃が効くかも」
なるほど。
ライドが心の中で呟ていると、死霊の王が消え、上空から大鎌が振り下ろされる。が、ジャンクロイドによって、死霊の王が消えた瞬間、自動で回避することができ再び大鎌は宙を切り裂いた。ライドは再び距離を取る。
この攻撃パターンが続きそうだが、もたもたしていると大陸中の人間がアンデッド化してしまう。
その時、ライドは何か閃き、後ろへ飛び去る。
死霊の王は転移魔法を使いながら追いかけてきて、鎌を振り下ろしてはライドが避ける。それを何度か繰り返した。どれも紙一重で躱しながらも、死霊の王がライドのスピードに慣れてきたのか徐々に危うくなってくる。
アンデッドの群れも追いかけてきて、ライドの足を止めようと波になって下から突き上げてきていた。
幾度目かの転移魔法による大鎌の攻撃をすれすれで避けた時、ライドはバランスを崩した。その瞬間を狙い、アンデッドの群れがの1人がライドの足を掴む。
もたつくライド。この瞬間を死霊の王は見逃さなかった。
大鎌を振りかざし、ライドの心臓めがけて振り下ろす。が、ライドの命を刈り取られる寸前、死霊の王の動きが止まった。
見ると、冥土の扉の方から身体を引っ張られているようだった。死霊の王は抵抗するが、遠くに見える冥土の扉に吸い込まれていった。
ライドは足に絡みつくアンデッドの群れを鉄爪で切り裂き身体を自由にし、冥土の扉の方へ向かった。
戻ると、冥土の扉はもうすでに閉じてしまい跡形もなく消えていた。そして、その下ではコーマンが真っ二つに切り裂かれて死んでいた。
アンデッド達も目的を忘れたかのように力なく周辺をうろうろと彷徨っている。
コーマンの死体の横には、斧が突き刺さっていた。
最初にライドが群れに投げた斧だった。
冥土の扉から距離を離し、斧のエネルギーを沈黙させることで、肉の壁になっていたアンデッド達を解除させ、斧が自由になったところで遠隔操作。隠れているコーマンを切り裂いたのだった。
色々聞き出したかったから生け捕りがベストだったものの、仕方ない。
「これで片付いた…。やっとだ…」
アンデッドの侵攻を食い止めていたイトラからも通信が入る。
「ライドさん!急にあいつら、大人しくなりました!勝ったんですね!」
「あぁ…みんなのおかげだ」
映像も入ってきた。飛んでいて音を発しているダタール達には反応しているものの、命令されて動いている様子ではない。
しかし、大陸の至る所で生存者の民衆を襲っている。
「イトラ、まだだ。民がアンデッドに襲われている。助けるぞ」
ライドはギールとジャンクロイドに問いかけた。
「うむ。どうやら隠れるつもりはないようである。あれだけの死霊を出し続けられるような強い反応は一つしかない」
「モリノハズレノオカニ、キョダイナトビラトニンゲンヲハッケンシマシタ」
2人はいち早く死霊の発生場所を特定し、伝えてくれた。
まるで隠れるつもりがない。ということは、たいそうな自信があるのだろう。
ライドは気を引き締めて、その場所に向かった。
西の森の外れに、あの小男はいた。
情報の通り、おぞましい人の死肉で出来た大きな扉の番をしているようだ。扉からは、濁流のように死霊があふれ出していて、大陸中へと散布されているのだろう。
犠牲者が1人でも減るように、一刻も早く扉を閉じなければ。
ライドは斧を握り締め、小男に向かって思いっきりぶん投げた。ジェット飛行の勢いも掛け合わさった勢いで斧はまっすぐ、高速回転しながら飛んでいく。
だが、コーマンの守りを無数のアンデッドたちが固める。斧はプラズマを放出し、彼らを切り裂きながら突き進むが分厚い肉の壁に勢いを削がれ、コーマンに届く前に制止。閉じ込められてしまった。
さらに、眼前を覆いつくすほどの群れが真下から突きあがってきてライドを襲う。
ライドは急上昇し、迫りくる群れから逃れた。そしてアンデッドたちの肉塊の中の斧を遠隔操作して動かそうとするも、切っても切っても湧いてくるので依然としてコントールが効かない。
旋回しながら素手で攻撃に回ろうとするが、見渡す限りのアンデッドの群れがコーマンの周りには潜んでいて、近寄れば大群が襲い掛かってくる。迂闊には近寄れなかった。
そうしている間にも、死霊たちはどんどん扉から放出されていった。
それはイコール、大陸の民が殺されているの同義。ライドは焦った。
機械化され望遠機能が付いているライドの目からは、遠くでコーマンがほくそ笑んでいるのが見える。
強引にでも行くしかない。
ライドはどんどん上昇し、コーマンから数百m上空に達したところで止まり鋼鉄の爪を伸ばした。ジェット加速を最大にし、ドラゴンと戦った時のように勢いをつけて下降。ミサイルのような勢いでコーマンに向かう。眼前には、自らを操るネクロマンサーを脅威から守るべくアンデッドの肉の壁が立ちはだかるが、急降下の勢いとジェット加速から生み出されるエネルギーは膨大で、肉の壁を貫いていく。肉の壁に血を浴びながらトンネルを掘り続けていくと、やがて貫通しその先にコーマンと冥土の扉が見えた。ライドはそのまま減速することなく、コーマンに機械鬼の鉄爪を突き立てようとする。
その刹那、右から強烈な殺気を喉元に感じ、彼は急反転。身体を捩じりながら着地する。
なにが起きた?
ライドは体制を立て直し、殺気の元を辿った。
冥土の扉から大きな骸骨の両手が伸びている。手には大きな、おぞましい死の気配を纏った鎌が握られていた。そして中から出てきたのは、10メートルほどの大きさの巨大な骸骨。黄金の装飾が施されている紫のローブ。髑髏頭には王冠が被せられていた。
死霊の王。
そのような風貌だった。
小男が召喚したのか、彼は死霊の王の後ろに隠れていた。
どう攻撃したいいのか分析にかかろうとしたその時、ミリーから通信が入る。
「ライド、聞こえる?」
「ミリー!ああ、聞こえてる」
「あれは死霊系最上位の化物。あの大鎌は肉体も物質もすり抜けて、生命の魂を刈り取るの」
「喰らったら死ぬのか…」
「戦鬼、ジャンクロイドの順で死んでしまうはず。小男は魔眼をもっているんでしょ?2回くらったらその時点で負け」
「…わかった。情報ありがとうってうお!」
会話している間にも、背後からアンデッドたちが押し寄せきた。
再び上昇回避を行うライド。目下を群れが覆いつくす。
っつ…これじゃ近寄れねえ!
ぞ。
背後に悪寒を感じる。
転移魔法を使って移動した死霊の王が命を刈り取る大鎌を振り下ろす。
なまじ勢いが付いていたため避けきれず、腕を使って大鎌を受けてしまった。鎌はライドの右腕をすり抜けた。
「うっ!」
腕の力が抜け、戦鬼の右腕の感触が消えた。鋼鉄の爪は消え、ジャンクロイドの腕のみが残る。
命までは取られなかったが、戦鬼の腕が切り落とされた感じだ。
ライドは全力で距離を取り、注意深く死霊の王に集中した。
ヤバイ。姿が消えた瞬間、回避しないと。
空中に漂う死霊の王も不気味にこちらの様子を伺っていた。
「ミリー、あいつにはどんな攻撃が効そうなんだ?」
「そうね…物理攻撃はほぼほぼ無駄。聖なる魔法が有効なんだけど、ジャンクロイドがメイン憑依だからプラズマやレーザーのエネルギー攻撃が効くかも」
なるほど。
ライドが心の中で呟ていると、死霊の王が消え、上空から大鎌が振り下ろされる。が、ジャンクロイドによって、死霊の王が消えた瞬間、自動で回避することができ再び大鎌は宙を切り裂いた。ライドは再び距離を取る。
この攻撃パターンが続きそうだが、もたもたしていると大陸中の人間がアンデッド化してしまう。
その時、ライドは何か閃き、後ろへ飛び去る。
死霊の王は転移魔法を使いながら追いかけてきて、鎌を振り下ろしてはライドが避ける。それを何度か繰り返した。どれも紙一重で躱しながらも、死霊の王がライドのスピードに慣れてきたのか徐々に危うくなってくる。
アンデッドの群れも追いかけてきて、ライドの足を止めようと波になって下から突き上げてきていた。
幾度目かの転移魔法による大鎌の攻撃をすれすれで避けた時、ライドはバランスを崩した。その瞬間を狙い、アンデッドの群れがの1人がライドの足を掴む。
もたつくライド。この瞬間を死霊の王は見逃さなかった。
大鎌を振りかざし、ライドの心臓めがけて振り下ろす。が、ライドの命を刈り取られる寸前、死霊の王の動きが止まった。
見ると、冥土の扉の方から身体を引っ張られているようだった。死霊の王は抵抗するが、遠くに見える冥土の扉に吸い込まれていった。
ライドは足に絡みつくアンデッドの群れを鉄爪で切り裂き身体を自由にし、冥土の扉の方へ向かった。
戻ると、冥土の扉はもうすでに閉じてしまい跡形もなく消えていた。そして、その下ではコーマンが真っ二つに切り裂かれて死んでいた。
アンデッド達も目的を忘れたかのように力なく周辺をうろうろと彷徨っている。
コーマンの死体の横には、斧が突き刺さっていた。
最初にライドが群れに投げた斧だった。
冥土の扉から距離を離し、斧のエネルギーを沈黙させることで、肉の壁になっていたアンデッド達を解除させ、斧が自由になったところで遠隔操作。隠れているコーマンを切り裂いたのだった。
色々聞き出したかったから生け捕りがベストだったものの、仕方ない。
「これで片付いた…。やっとだ…」
アンデッドの侵攻を食い止めていたイトラからも通信が入る。
「ライドさん!急にあいつら、大人しくなりました!勝ったんですね!」
「あぁ…みんなのおかげだ」
映像も入ってきた。飛んでいて音を発しているダタール達には反応しているものの、命令されて動いている様子ではない。
しかし、大陸の至る所で生存者の民衆を襲っている。
「イトラ、まだだ。民がアンデッドに襲われている。助けるぞ」
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