家なき狂人

大窟凱人

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教団の子

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「あんたはなんでそんなこともできないの?」

 お母さんはそういって私を殴った。まただ。もう慣れたけど。
 こうしないと、お母さんの心は保たれないの。気遣いができてない私も悪い。だから、仕方ないし、いいんだ。

 だけど痛いものは痛い。

 学校にも通わないといけない。でないとお母さんが怒るから。

「ねえ、あかり。聞いてる?」

「え? うん」

「ともみの親、宗教やってるみたいなの。やばくない?」

「知ってる! あの黄色っぽい服着てる人たちでしょ? お母さんが勧誘されたって。なんか、新興宗教ってか、カルトっぽい。きつい感じの。バリきしょい」

「壺とか売りつけられたらどうしよ。キャハハ」

「ふーん」

 あいつにしようかな。


 私はともみに決めた。暗くていつも一人で気持ち悪い本読んでるし、友達もいないし、おとなしいし、どうせやり返してこない。

 まずは小手調べ。靴箱にゴミを詰め込んだ。トイレに入っているときに上から水をかけた。ノートに悪口を書き込んだ。靴を片方隠した。

 それもこれも反応を見るのが楽しい。
 ああ、いたぶるって楽しいな。

 案の定、ともみはやり返してこなかった。

 だから、今度はトイレに呼び出した。

「な……なに?」

「あんた、宗教やってるでしょ?」

「そうだけど」

「は? マジきも!」

 ともみを強く突き飛ばしたら、簡単に転んで尻もちをついた。ひょろかった。

 すると彼女は両手を結んで、祈るようなポーズをとった。

 そして、ぶつぶつ何か言っている。キモイ、というより、嫌悪感を覚えた。

「なにやってんの? 宗教のお祈り?」

「マジ引くんだけど」

「やめろよそれ」

 私はともみに強く言った。だけど、ともみは祈り続けた。

「やめろっつってんだろ!」

 頭を殴った。わき腹を蹴った。水をぶっかけた。祈る手を掴んで引き離そうとした。それでもやめないから、その場にいた3人で蹴りまくった。

 そのとき、風が吹いた。

 トイレの中で、窓も締め切ってるのに。

 鳥肌が立つ。反射的に蹴るのをやめて周囲を警戒した。

 背後に、黄色いローブを身に纏った誰かが立っていた。優雅でありつつも不気味な感じで、蒼白の仮面をかぶっている。

 あ……

 それを見た瞬間、私たちの精神は一瞬にして、恐怖と狂気で埋め尽くされた。

 もう私たちは絶対に、何があっても、ここで死ぬんだって本能が理解した。3人ともおしっこをもらしああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁああああああ

 頭が狂っていく中、ひとかけらの理性がともみの言葉をかすかに拾った。

「ハスター様! いらしてくれたのですね……」
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