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第3章
第34話 ※微
しおりを挟む隔離された部屋で、三日目の朝を迎えた。アルゼオの寝室とは違い、この部屋ではベッドが窓際に置かれているため、陽の眩しさで目が覚める。
バスルームにある洗面台の前に行き、冷水で顔を洗う。側に積み重ねられている白いタオルをとって顔を拭く。歯も磨いてからバスルームを出ると、冷蔵庫もどきから水を1本取り出し、一気に半分まで飲んだ。用意されている水は、日本でよく見るサイズと同じで、容器はガラス製のつるつるとしたシンプルなデザインをしている。蓋は、ちょっとしたへこみ部分に指をかけ、上に開くタイプのものだ。
日中を過ごすために、大きな本棚から3冊本を選び手に抱える。本棚にある本は、この国の歴史や伝記から、ロマンス小説まで幅広い内容が取り揃えられており、そのどれもが分厚い本ばかりである。この2日で既に一段分の本を読んでしまったから、今日は2段目の端の本をとった。
本を持ってベッドにのり、枕を腰の下にクッション代わりに置き、リラックスした姿勢で足を広々と伸ばす。今日でこの屋敷に隔離されて3日目だ。初日から、本を読んで1日を過ごし、いつの間にか日が落ちてていることに気づくというルーティンになっていた。
そして、今日も同じように夜を迎え、ちょうど2冊目の本を読み終えたところで、窓の外が真っ暗になっていることに気がつく。今日手に取った本は魔法についての本で、とても興味深かったが、魔法に縁のない俺には少し難しかった。
まだ読んでいない1冊はベッドサイドの小さなテーブルに残し、2冊は本棚に戻してそのままバスルームに向かう。入浴を終えると、用意されていたバスローブを羽織る。
ここにはドライヤーのようなものはあるが、風を起こすには魔力が必要らしく、魔法が使えない俺には意味がない。いつもはアルゼオが風を起こしてくれていたが、屋敷にいる間は使えなさそうだ。今は気候も暖かいし、風をひく心配はなさそうである。髪を乾かすことができないため、タオルでできる限り拭いてバスルームを出る。
部屋に戻って、1人用のソファに座る。冷蔵庫もどきには、このシチュエーションに似合いそうなワインもあったが、あまり酒を飲まないのでこの時間は特にすることがない。部屋着に着替えるまでの間、壁の装飾や絨毯の模様を見ながら、何も考えすにぼーっとしている。
しかしその静かな空気を壊すように、ガタンと大きな音が聞こえた。廊下のほうからだ。
ドアを見ながら、ソファから立ち上がる。
「どうした?」
ドアの向こう側にいるはずの護衛に問いかける。すると、外の声が大きくなった。護衛からの返事はなく、喋り声のほかに唸り声が聞こえる。最初に音が聞こえた時から、無意識に体が構えている。そっとドアノブに手をかけ、ほんの隙間だけ開けた。
「おやめください!アルゼオ団長、あっ!……」
廊下に掛けられているガラス製のライトが落ちる。ガシャンッという音が響くと同時に、ドアが開いた。
「アオハ様、お逃げくださ…い…」
ドアは全部開ききることはなく、途中で止まった。隙間からは、最後まで言いきることができなかった護衛が倒れているのが見える。外の騒音は落ち着いたようだ。
改めて、ドアを開けようと一歩下がった。――その瞬間。
ドアは勢いよく全開にされ、目の前で起きていたであろう状況を把握することはできなかった。何者かに上をとられたからだ。
「アルゼオ……?」
背中を打った痛みに顔をしかめ、目を開けると見知った顔があった。俺を見下ろしているアルゼオは、荒々しく呼吸を繰り返し、俺の両肩に手を置いて押さえつけている。一心に目を見つめ、まるで捕えた獲物を逃がさないといっているようだ。
「抱かせろ」
う"るる、と低い唸り声を発しながら、アルゼオはそう言った。おそらく、発情期がきてるんだろう。残りの理性で俺の返事を待っているが、目をそらせば首を掻き切られそうだ。
「オルタナが来るはずだ。それまで待っ、…んぅっ、ん……」
俺が口を開くと、アルゼオの目つきが変わる。凄まじい力で肩を押さえつけられ、逃げられないままキスが始まった。噛みつかれるようなキスだが、傷つけられることはない。
「ア、アル……んっ、はぁ…んむぅ、」
空気が欲しくて顔を背ける。だが満足に吸えないまま、アルゼオの唇が重ねられる。力強く、舌で無理やり俺の口を開けてくる。少し開いたところから舌が入り込んで、俺とアルゼオの舌が絡み合う。
「ん、はぁ……」
ひとしきり口内を蹂躙すると、アルゼオがキスをやめる。大きく息を吸って安堵していると、ビリッと音がする。
「あっ、なにしてんだ」
先ほどまで着ていたバスローブが破かれ、上半身が露になる。このバスローブは肌触りがよく、こんな屋敷に用意されているのだから絶対に高価なはずだ。それを破いてしまうなんて。
「うるさい」
俺の言うことは耳に入れたくないようだ。うるさいと一言だけいうと、俺を俵担ぎにして持ち上げた。
「もっといい運び方あっただろ」
返事はなかった。発情期になって、俺のことは見えていないも同然だ。発散ができればいいのだろう。
俺を担いで、アルゼオはベッドに向かっている。かろうじて下半身に纏っていたバスローブの残骸も、するりと床に落ちていった。
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