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1.新たな旅

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朝、10時
ここは、山奥の寂れた神社。俺は、ここのお稲荷さまだ。参拝客が最後に来たのは5年くらい前だが。だか、相変わらず、今日もうるさい俺の隣の稲荷、すりの声が聞こえる。

「えーみ!えーみ!お客様だよ!」 
「変わらずうっせぇな。すりは。」
「そんな、ふてくされちゃって。ほんとは、えーみ、うれしいくせに。」
神社には五年振りに参拝客が来たようだ。参拝客の1人は面白い格好をしている。
「えーみ!あれ、学生服だよ!」
「学生服?」
「学校に行くときの制服。前、森でたぬきに聞いたんだけどあれで間違いない。あー。もう、憧れる!!!」
「男と女で分かれてるんだな。」
「そうなの!学校によってちょっと違うんだけど、すっごいかわいくてかっこいいんだよねー。いつか着てみたいよねー。」
すると、参拝客が喋り出した。
「ここって、相場いくらくらいですかね?」「大体、五百万くらいですかね。」
「そうですか...」参拝客は、口々に話し出した。

「マジかよ。」
「どうしたの?えーみ。」
「ここ、売られるっぽい。この、神社も壊される。」
「え?ガチ?」「あぁ。」
「私たちは、どうなるの?」
「知らねぇよ。」

しばらくして参拝客は帰っていった。嵐は過ぎ去ったようだ。
「すり、今日の夜こっから出るぞ。」
泣くな!俺!
「えっ?山から?」
「あぁ。すぐさま用意をしとけって言ってもまだ、動けねーよな。」
俺たち、稲荷は夜だけ動けるようになる。ちなみに、口は24時間動けるけど。
「分かった。」
すりも何か決意をしたような顔をした。

10時間後
「すり、起きてるか?」
「起きてるよー。」
「よし、支度完了。動けるよな?」
「動けまーす!」
「じゃ、出発だ!」
「ちょい待ち、最後にこの神社参拝させて。」「あぁ。そうだな。」
最後に、神社を参拝した。この、神社は皆が着物を着ている時以前からあった神社だ。なのに、こんな形で終わるとはひどい話だ。なぜ、終わってしまったのか。まぁ、そんなこと考えてる暇はない。しっかりしなきゃいけねぇ。風呂敷包みを背負い俺は出発した。

無事、山下りを終え、道路に出た。下は石みたいなゴツゴツとした感触がする謎の絨毯だ。多分、神主さんが言ってたコンクリートとか言うやつだろう。「ヤバイ、ヤバイ!えーみ!」
急にすりの叫び声が聞こえた。
「ん?どした?」
「私ら、狐になってるよ!」
「そりゃあ、俺ら稲荷だもんな。」
「違うよ!!石じゃなくて毛皮がある!」「え?」俺は、自分の手に触ったらもふもふとした感触があった。ヤバすぎる。
「ふわっふわじゃん!」
「でしょでしょ!!」
「なんでだろ?」
「多分、山降りたからじゃないか?」
「マジで!?最高っ!」こう、流暢になってちゃいけねぇ。俺は、すぐすりに聞いた。
「これから、どうするか?」
「どうするって決まってんじゃん?」
「何をだ?」
「世界一周だよ!」
「は?お前バカか?」
そんな明るい話をしなながら俺らは道路をとことこと歩いていた。
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