騎士の鎧を着た社畜職人、最高の製品を作ったら王国の運命を変えることになった

前田 真

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第2章:最高の製品は悪用させない!

第16話:盾の発見と機密資料の回収。静音鎧の勝利

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 シグマが滑り込んだ最奥の部屋は、中央広間よりもさらに奥まった場所にあり、照明はほとんど届いていなかった。

 この部屋にはランプ一つ無く、わずかに扉の隙間から漏れる光だけが、部屋の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。

 ここは、盗賊団の戦利品が保管されている場所だった。

 部屋の中央には、簡素だが頑丈な木箱が置かれていた。

 探知機の波動が最も強く反応している場所だ。

 部屋の隅には、使い込まれた簡素な木製の机と、座面が破れた椅子が置かれていた。

 他の部屋から、微かに怪我人の呻き声が聞こえる。

 おそらく、騎士団との戦闘で出た重傷者だろう。

 彼らは警備ではなく、看病に気を取られている。

 シグマは音を立てないように木箱に近づき、蓋に手をかけた。

 鍵はかかっていない。

 警戒が薄いわけではない。

 この場所が最も奥であるという事実と、王都の騎士団を退けたという慢心が、彼らに『これ以上の手間は不要』と思わせている。

 静かに蓋を持ち上げると、内部に収められていたものにシグマの瞳が鋭く光った。

 それは、彼が『最高の製品』と評した、紛れもない盾だった。

 シグマは盾を慎重に取り上げ、状態を確認した。

 重さは設計通りであり、その表面は完璧な輝きを保ち、全くの無傷だった。

 目的である盾の回収は完了した。

 シグマは、一刻も早くこの場を離れるべきだと判断した。

 彼は、盾をジャケットの下に隠すために、自作の特殊な固定ベルトを取り出した。

 静音鎧の性能を最大限に活かすため、盾と鎧が接触して音を立てないよう、細心の注意を払う。

 盾を背中に密着させた後、シグマはふと視線を部屋の隅の簡素な机に向けた。

 待て。

 この盗賊団が、盾の奪取に留まらず、次の獲物や計画に関する情報を隠している可能性はないか?

 もしあれば、その後の被害は甚大になる。

 シグマは、盗賊団の今後の悪行を防ぐため、資料を探すことを決めた。

 彼は静かに机に近づき、引き出しを開けた。

 中に、羊皮紙の束が乱雑に入れられているのを発見した。

 これか。

 シグマは、それが極めて重要な次の計画の文書であると直感した。


 回収した盾と計画の文書を、それぞれジャケットと外套の下にしっかりと収納した。

 彼は、ベルトの調整に数秒を費やし、盾と鎧が接触して音を立てないことを再度確認した。

 これでよし。

 あとは来た道を戻るだけだ。

 彼は慎重に扉を開け、最奥の部屋から通路へ滑り出た。

 静かに扉を閉め、中央広間へと続く通路の角へ向かう。

 広間では、先程と同じ二人の警戒員が武器の手入れを続けていた。

 おそらく、負傷者の分も任されたのだろう。

 会話の内容は変わらないが、運搬の準備が近いという緊張感からか、彼らの動きはわずかにせわしなくなっているように見える。

 シグマは、再び彼らが最も手入れに集中し、視線が固定された一瞬の隙を狙う。

 静音鎧は完璧に機能し、彼らの会話のノイズに溶け込みながら、シグマは広間を通り抜け、潜入に使った窓のある裏側の通路へと入った。

 シグマは細心の注意を払って窓に近づき、音を立てずに閂を外して窓を静かに開けた。

 窓の外には、ルナが指定された合流地点で待機している。

 シグマは静かに窓枠を跨ぎ、アジトの外へと降り立った。

 彼の背後、中央広間側から、アジトの正面扉が乱暴に開け放たれる大きな音が、微かに響いてきた。

 ドォン!

「隊長!」という警戒員の叫び声が、彼の脱出の成功を知らせていた。

 ギリギリだったな。

 シグマは、周囲の警戒を確認する。

 ルナとの合流地点はすぐそこだ。

 彼は、静音鎧を脱出経路の最後の最後まで信頼し、ルナの待つ合流地点へと音もなく移動を開始した。
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