騎士の鎧を着た社畜職人、最高の製品を作ったら王国の運命を変えることになった

前田 真

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第4章:品質保証(PDCA)と王国の運命

第32話:状況の確認と品質保証の勝利

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 王城内部の避難経路。

 シグマは二人組の侵入者の内、短剣の侵入者を戦闘不能にした。

 それをしっかりと確認する間もなく、距離を取った長剣の侵入者へと向き直った。

 長剣の侵入者は、相棒の排除に驚愕の色を浮かべたが、すぐにその表情を冷酷なものに戻した。

「重装騎士が、我々の動きにここまで対応できるとはな。化け物か」

 侵入者は、シグマの重い鎧を逆手に取り、通路の角を利用した高速のヒット・アンド・アウェイ戦法に切り替えた。

 狭い通路で横移動を繰り返すことで、シグマの重い一撃を空転させ、体力の消耗を狙う。

 シグマの脳裏は冷静だった。

 侵入者の戦術は、『重装備の弱点』を突く、極めて合理的なものだ。

 問題定義は、鎧の重量が、持続的な機動戦において非効率的な負荷となること。

 現状分析は、彼の攻撃は一撃必殺を欠いたことで、エネルギーのロスが発生していることだ。

「必要なのは、防御ではない。次の一撃で、この侵入者を完全に排除することだ」

 シグマは、盾を構えるのをやめ、通路の壁に預けるように立てかけた。

 任務の最優先は扉の防衛だが、目下の脅威は長剣の侵入者だ。

 防御を一時的に犠牲にし、攻撃の効率を最大化するという、職人タカシらしい一点集中型の合理的な判断だった。

 盾を失ったことで、シグマの体はわずかに軽くなり、重心が安定した。

 これは、防御用の重量を攻撃用の推進力に振り分ける、重量の最適化だ。

 侵入者は、シグマが盾を捨てたことに一瞬戸惑ったが、好機と見て鋭い突きを放った。

 しかし、盾の重さから解放されたシグマの反応速度は、直前とは比べ物にならなかった。

 シグマは、次の行動に出る前に、わずか一呼吸の間で肉体と鎧の重心を再調整した。

 シグマは、最小限の動きで剣を打ち払い、侵入者の突きを無効化する。

 そのまま、最適化された全重量を剣に込め、通路の壁際にいる侵入者めがけて、ハンマーのような全力の一撃を振り下ろした。

「ぐっ……!」

 長剣の侵入者は、咄嗟に剣を交差させて防御したが、シグマの全質量が乗った、無駄のない一撃は、その防御を紙のように打ち砕いた。

 剣は侵入者の手から弾き飛ばされ、シグマの剣は、侵入者の軽装の鎧を叩き割り、その身体を通路の壁に叩きつけた。

 ズゥン!

 壁のひび割れはさらに深くなり、侵入者は呻き声すら上げられず、意識を失った。

 シグマは剣を納め、倒れた二人を一瞥した。

「完了。この通路のセキュリティチェックは合格とする」


 王城内部の避難経路は、再び重い静寂に包まれた。

 彼は、通路の奥にある重扉に背を預け、外部の激しい戦闘の音に、再び静かに耳を澄ませた。

 シグマは、通路の壁際に倒れた二人の侵入者を一瞥した後、背後の重扉に寄りかかっていた。

 彼の鎧に目立った損傷はない。

 短時間で二人の侵入者を排除したことは、彼の能力の高さを示していた。

 しかし、シグマの脳裏では、戦闘の『データ分析』が続いていた。

「戦闘効率は、概ね目標値に達した。しかし、長剣の侵入者への初撃は、やはり推進力のロスが大きかった」

 シグマは、わずかな反省点を、生産ラインのチェックリストを埋めるかのように、淡々と脳内で処理した。

 彼の任務は、次の侵入者が来るまで、この防衛ラインの品質を維持すること。

 彼は静かに、その場に留まった。


 一方、王城の鍛冶場。

 ルナは、北門での激しい戦闘の音を遠くに聞きながら、緊急生産された予備の武具の最終チェックを行っていた。

 彼女の職務は、求められた武具を確かな品質で供給し続けることだ。

 鍛冶主任が、補給部隊からの最新の報告書を手に、ルナの元へ近寄ってきた。

 ルナは、補給ラインの管理者として、その報告を聞いた。

 その時、北門での激しい戦闘の音が、急速に歓声へと変わり始めた。

 ルナの隣に立っていた鍛冶主任は、安堵の息を漏らした。

「報告書によれば、騎士団が敵の武力を完全に圧倒し、反乱軍の組織的な計画は阻止されたとのことです!」

 ルナは静かに報告書を受け取った。

 彼女が供給した高品質な武具が、戦場の結果として証明された。

 ほぼ同時に、シグマのいる避難経路にも、王国の完全な勝利が伝えられた。

 シグマは剣を鞘に納めた。

 彼の防衛ラインの品質は、内部の侵入者を阻止することで保証された。

 王国の防衛は、成功裏に完了した。

 それは、ルナが供給した品質と、シグマが示した規格の厳守によって、もたらされた勝利だった。
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