スクラップ・ギア

前田 真

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第二章:二度寝を夢見る孤児と修理屋の仲間たち

第十話:自由の光、そして新たな夜明け

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 黄金の檻が崩壊し、ガルヴァンの支配が終わった翌日から、外の街は急速に変わっていった。

 これまで監視ドローンが飛び交っていた空は、静けさを取り戻し、人々の顔に浮かんでいた恐怖の表情は、少しずつ和らいでいく。ネロたちが街の表通りを歩くと、道行く人々が驚いた顔で彼らを見つめ、やがて、その瞳に感謝の光が宿る。

「……信じられない」

 リナは、子供たちが楽しそうに駆け回る姿を見て、小さく息を漏らした。

「まるで、別の街みたいね。私たちが来た時とは大違いだわ」

「ああ、そうだな。俺たちがやったことなんて、ほんの少しだ。後は、こいつらが自分で立ち上がっていくんだ」

 ネロはそう言って、満足そうに微笑む。

 テゴが静かに言う。

「……解析完了。この街のエネルギーシステムは、ガルヴァンの支配から完全に解放された。後は、この街の人々が、自分たちの手で街を再生していく」


「……すごいことだよな。たった五人で、一人の大富豪を倒したんだ」

 カイルが感慨深げに呟く。

 ネロは頷く。

「そうだな。俺たちは五人なら、どんなことでも乗り越えられるよ。なっ、ミナト」

 隣を歩くミナトに声をかけた。ミナトは静かに頷き、遠くの空を見つめていた。



 外の街での滞在は、一週間ほどになった。ネロたちは、ガルヴァンの支配下にあった人々を助け、街の復興を支援した。ネロのサイキック能力や、テゴの情報解析、そして彼らの修理技術は、街の人々にとって、希望の光となっていた。


 ある日、ネロたちが街を出る準備をしていると、一人の少女が駆け寄ってきた。

「ねえ、お兄ちゃんたち、もう行っちゃうの?」

「ああ。俺たちには、俺たちの街があるからな」

 ネロは優しく笑い、少女の頭を撫でる。

「……そっか。でも、いつかまた、会えるよね?」

「ああ。また会えるさ。その時は、お前たちが作った、最高の街を見せてくれ」

 少女は笑顔で頷き、ネロたちを見送った。



 修理屋に戻ってきたネロたちは、久しぶりに自分たちの街の空気を吸い込む。

「……やっぱり、ここが一番落ち着くね」

 リナがそう言って、大きく息を吸い込む。錆びた鉄骨や、煤にまみれたコンクリートの匂い。外の街の豪華な匂いとはまるで違うが、ネロたちにとっては、この匂いこそが、自分たちの『家』の匂いだった。

「ああ。俺たちの街は、見かけはボロボロだけど、心は自由だ」

 ネロはそう言って、修理屋の扉を開ける。

「ただいまー!」

 リナが元気いっぱいに叫ぶと、カイトも続いて店の中に入っていく。

「帰って来たって実感するな」

「終わったんだな」

 ミナトは、少し疲れたような顔でカイトたちに微笑みかけた。

「帰ってきたな。俺達の家に」

 ネロはそう言って、ミナトの肩を叩く。ミナトは何も言わず、ただ静かに頷いた。



 夜。ネロたちは、修理屋の屋上で、星空を見上げていた。

「……なぁ、みんな」

 ネロが口を開く。

「……なんだ、ネロ」

 ミナトは、ネロの言葉を待つ。

「……ガルヴァンの奴が言ってただろ。『俺たちの才能は、奴の管理下にあれば、もっと開花しただろう』って」

「……そうだな」

 ミナトは、静かに答える。

「でも、俺はそうは思わない。俺たちは、俺たちのやり方で、俺たちの自由を求めて戦った。それが、俺たちの才能なんだ」

 ネロの言葉に、リナは頷く。

「そうよ、ネロの言う通り。私だって、あんな風に誰かに操られて、誰かの指示で狙撃するなんてまっぴらだもん」

 リナはそう言って、笑いながら星に指を向けて撃つような真似をする。

「まったく、リナの言う通りだぜ。俺だって、あんな退屈な機械ばっかり触らされてたら、頭がおかしくなってたな。やっぱり、壊れたものを自分の手で直すのが一番楽しい」

 カイルが工具を弄びながら、そう付け加えた。

「……そうだな。俺たちには、俺たちのやり方がある。それに……」

 ミナトは、ネロの方を向く。

「俺は、ネロと一緒に戦えて、本当に良かったと思ってる。ネロのおかげで、俺も、自分の進むべき道が見えた気がする」

「ミナト……」

 ネロは、ミナトの言葉に、少し驚いたような顔をする。ミナトは、いつも寡黙で、自分の感情をあまり表に出すことはなかった。


 ポーチの中のテゴが言う。

「そろそろ、寝る時間だ」

「よし、じゃあ、今日はもう寝るか。明日は、朝から修理の仕事が山積みだ」

 ネロはそう言って、立ち上がる。

「おやすみ、みんな。……そして、また明日」

 ネロの言葉に、全員が静かに頷く。

 こうして、修理屋の物語は、一つの大きな節目を迎えた。

 彼らはこれからも、この街で、大崩壊によって壊された”希望”を修理していくのだろう。
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