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ようこそ、新しい世界へ(3)
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煌びやかなステージ上に華やかな衣装を身に纏った、私と同い年くらいの女の子。彼女がマイクを握ると同時に何処からともなく大音量で音楽が鳴り響く。
彼女は歌が上手かった。
一度聴いたら忘れられないような、シンプルでポップな可愛らしい曲調の歌。間奏に入った途端にスタンドマイクにマイクを設置すると、今度は手放しで格好良く踊りだす。そして間奏が終わればマイクを手に取りまた歌う。そんな彼女の一挙一動に、私はすっかり心を奪われていた。
曲が終わると、思わず拍手をしてしまう。歓喜に湧いているのは私だけのようだった。
「ありがとう! ありがとう! 皆、今日は遠路はるばる私のライブにきてくれて、ありがとーーーっう!」
観客は私とお兄さんの二人だけ。それでも彼女は文句ひとつ言わずに最後まで歌いきったのだ。
私の足は自然と彼女の方へと向いていた。
「あ、あの……っ、歌、とても上手でした……よ、良かったら握手してください」
「本当? 嬉しい! 私の名前は二見双葉、十六歳のアイドルです!」
「ふたみ……ふたば……」
それはとても聞き覚えのある名前だった。私が知ってる『ふたみふたば』は、同じクラスにいる『二見双葉』しか思い付かない。
だけど私が知ってる二見双葉はもっと大人しくて、こんなふうに笑ったりハキハキと喋るような子ではなかったはずだ。だとすれば、彼女は同姓同名の人違いということになるだろう。
お兄さんなら何か分かるかな。
私はお兄さんの隣に立つと、彼女に聞こえないようこっそり耳打ちをした。
「あの……私のクラスメイトに、彼女と同姓同名の子がいるんですけど……もしかして彼女って、その……私のクラスメイトと何か関係あったりしますか?」
「……ああそうなんだ。へえ。同姓同名なら、あの子はきみのクラスメイトなんじゃないかな」
「え?」
彼女が私の知る二見双葉だったとして、考えうる可能性はただひとつ。それは、彼女も新しい世界のことを知っていて、新しい世界ではアイドルとして振舞っている説だ。
きっと、彼女も私と同じように新しい世界へ飛ばされてきたに違いない。新しい世界でなら、なりたい自分になれるから。だから彼女はアイドルになって、自分の居場所を見つけだすことに成功した。彼女は成功者なんだ。
お兄さんの話を聞いて二見双葉という存在を分かった気になった私は、もう一度彼女に話しかけてみた。
「ふ、二見さん。私のこと、覚えてますか? 同じクラスの無花果いちるです」
「え? っと……ごめん、誰だっけ? 私、今、休学中で、クラスの人達の名前と顔をまだ覚えてないんだよね」
「……え? 休学……中?」
そんなはずはない。だって彼女は毎日学校にいる。朝になると学校にきて、授業を受けて、放課後まで誰とも口を聞かずにいつの間にか帰ってる。私以上に大人しくて、私以上に人との関わりを避けている。
そんな彼女が休学中? ちょっと意味が分かりません。
彼女は二見双葉じゃなかったの? 彼女と二見双葉がイコールでないのなら、いったい彼女は何者?
困惑する私を不思議そうな表情で見つめる彼女。
「えっとぉ……いちる、ちゃん? 今日は見にきてくれてありがとおね? またきてくれると嬉しいな」
全人類の雄と雌を虜にするような愛らしい笑みを浮かべる彼女を前に、それ以上何も言えなかった。
ライブが終わると彼女は去り、またしても私とお兄さんの二人だけの世界になってしまった。
あからさまに虚空を見つめ虚無っている私を見ても、お兄さんはなんとも思わないみたい。
どのくらい時間が経過しただろうか。いつまで経っても空の色が変わらない所為で、時間の流れが分からない。
ただ、結構な時間が経ったと思う。私はお兄さんに焦点を合わせると、ようやく自分の言葉で胸の内を伝えることができた。
「……もしかして……新しい世界の二見双葉と……現実の世界の二見双葉は、別人……なんでしょうか……」
自分でも、虚空を見つめ虚無りながら長考したわりには浅い内容だと思う。だけどこれこそが私の導きだした考察であり、結論だった。
「そうだね。一方ではマイクを片手にキラキラと輝いている二見双葉。そのまた一方では至って普通の学生として振舞っている二見双葉。二人は似て非なる存在だよ」
やっぱりそうなんだ。名前も顔もおんなじで、きっと声だって同じなのに、生い立ちも性格も全くの別物で、別人として違う世界で過ごしている。
もしかしたら現実の世界の二見双葉にもこんな未来があったかもしれない。かもしれない世界線。
「彼女が気になるの?」
「……く、クラスでは全然関わりがなくて……二見さんのことは正直よく分からない、けど……こんな世界線もあるんだって分かったら……その……なんていうか……」
知ってしまったからには放っておけない性分なのか、もっと二見双葉という人間の本質に触れてみたくなる。
興味なんてない癖に、たまたま知ってしまっただけで深入りしようとするとか気持ち悪い。
自分でも分かってる。
だったらどうして。
頭の中ですら上手く言語化できないのに、この気持ちをどうお兄さんに伝えればいいのか分かんないよ……。
いつまでも言葉に詰まっていると、お兄さんがこっちにおいでと手招きをする。
少し歩いた先に見えたのは、童話でよく見るようなクッキーで造られた可愛らしいおうちだった。
「……こ、此処はいったい……」
「中に入ってごらん」
ドアを開けると、部屋の中央にある真っ白な四人掛けテーブルの上には、きっと誰かの誕生日なのだろう、ホールのショートケーキが用意されていた。プレートには『おたんじょうびおめでとう』という文字の下に『ふたば』と名前らしき文字が書いてある。
ふと背後から「お母さん?」と声がしたので振り返ってみると、そこには赤いランドセルを背負った小さな少女が立っていた。
「……ふたみ……ふたば……?」
「お、お母さん!」
少女は慌てた様子で私の横を素早く駆けていく。
「お母さん! お母さん! どうしたの、お母さん!」
さっきまで何もなかったはずの場所には、見知らぬ女性が倒れている。少女は懸命に女性の身体を揺すっては、声をかけ続けていた。
「あ……えっ、と……救急車……」
ようやく状況を理解できた私は、スカートのポケットからスマホを取りだそうと模索する。すると、目の前から甲高い叫び声が聞こえたので、瞬時に視線を向けてみると……。
「お、おかあさっ……~~~~ッ」
一瞬だけ目を離した隙に、ほんの数秒前までそこで倒れていた女性が縄で首を吊ってる場面に変わってしまっていた。
人が死ぬ場面を生まれて初めて見た私は、漫画でよくある、人が本当に驚いた時に出る「ひゅっ」という声にならない声を、自然と口から漏らしていた。
少女は膝から崩れ落ち、えんえんと泣いている。
これはきっと少女の記憶の断片で、新しい世界での二見双葉はこういった過去を経てアイドルになったんだ。
じゃあ、現実の世界での二見双葉はどうだった?
私の知る二見双葉の過去は?
「こんな誕生日なんていらない! こんな誕生日ならこなくていい! 双葉が虐められてるなんて言わなければ……っ、お母さん……ごめん、ごめんなさい……っ」
二見双葉は虐められていた。虐められていると母親に打ち明けたことでこうなった。彼女は自分の誕生日が嫌いになった。もうこれ以上、大切な人を失いたくない一心で自分を鼓舞し続けていた。
ズキズキと痛む胸を押さえながらドアを開けると、お兄さんが私を見る。
お兄さんは私に何を伝えたかったのか。
その答えは火を見るより明らかだった。
「……これが……私の知る、二見双葉の過去……ですよね」
知ってしまったからには教えてあげたい。貴女にはアイドルとして生きる世界線もあるのだと。だからどうか、自分の境遇を嘆かないで。貴女には貴女にしかない価値があるのだから。
一通り新しい世界を探索し終えると、ギュッと目を閉じてる間にお兄さんの部屋まで戻ってきたようだった。
今思えば夢のような出来事だったと思う。だけどあれは全て現実で、夢じゃない。私は今日、私達が暮らしている現実の世界とは別の新しい世界の存在に触れてしまったんだ。
ヘッドフォンを外すと、座ったままの状態で足で器用に椅子をぐるりと反転させる。お兄さんはチョコレート色のビーズクッションにちょこんと乗っていた。
「……クッションは黒じゃないんですね」
開口一番、我ながら失礼な発言をしたと思う。
だって他の家具はどれも真っ黒なのに、どうしてこれだけ違う色なんだろうって思っちゃったんだもん。私じゃなくても誰だって、この部屋を見た人は違和感を感じると思う。
「うん? ああ、これね。貰い物だから」
誰から? なんて不躾な質問、出会って数時間の相手にするもんじゃないことは私にも分かる。
きっとそう、あのクッションは彼女からの誕生日プレゼントなんだ。お兄さんくらいの年齢なら彼女の一人や二人くらい……いや、彼女が二人もいたら引くんだけど、ってそんな話はおいといて。ああもう、私はいったいさっきから何を意味の分からないことを。
頭の中でセルフツッコミをしていると、「きみも座る?」と聞かれたので丁重にお断りをしておいた。
外はすっかり真っ暗で、時刻は十八時を過ぎている。
流石にそろそろ帰らないと。
私は今度こそお兄さんに道案内してもらおうとした。
「あ、あの……そろそろ家に、帰らないと……」
「ああうん、ばいばい」
「え、えっと……き、きた道が分からないから、大通りまで教えてほしい……です……」
私の気の所為じゃなければ、微かに間があったような気がしたので本当に帰れるのか不安に感じたものの、なんとか家に辿り着けてほっとしている自分がいる。
本当に心臓に悪い。もう二度と帰れなかったらどうしようかと思った。
結局のところ、お兄さんがどうして私を新しい世界へ招待してくれたのか。それはまだ分からないままだけど、二見双葉の過去に触れることができたのは嬉しいし、明日学校に行ったら彼女に伝えたい。新しい世界の存在を。そして、そこでの二見双葉の立ち振る舞いを。
彼女は歌が上手かった。
一度聴いたら忘れられないような、シンプルでポップな可愛らしい曲調の歌。間奏に入った途端にスタンドマイクにマイクを設置すると、今度は手放しで格好良く踊りだす。そして間奏が終わればマイクを手に取りまた歌う。そんな彼女の一挙一動に、私はすっかり心を奪われていた。
曲が終わると、思わず拍手をしてしまう。歓喜に湧いているのは私だけのようだった。
「ありがとう! ありがとう! 皆、今日は遠路はるばる私のライブにきてくれて、ありがとーーーっう!」
観客は私とお兄さんの二人だけ。それでも彼女は文句ひとつ言わずに最後まで歌いきったのだ。
私の足は自然と彼女の方へと向いていた。
「あ、あの……っ、歌、とても上手でした……よ、良かったら握手してください」
「本当? 嬉しい! 私の名前は二見双葉、十六歳のアイドルです!」
「ふたみ……ふたば……」
それはとても聞き覚えのある名前だった。私が知ってる『ふたみふたば』は、同じクラスにいる『二見双葉』しか思い付かない。
だけど私が知ってる二見双葉はもっと大人しくて、こんなふうに笑ったりハキハキと喋るような子ではなかったはずだ。だとすれば、彼女は同姓同名の人違いということになるだろう。
お兄さんなら何か分かるかな。
私はお兄さんの隣に立つと、彼女に聞こえないようこっそり耳打ちをした。
「あの……私のクラスメイトに、彼女と同姓同名の子がいるんですけど……もしかして彼女って、その……私のクラスメイトと何か関係あったりしますか?」
「……ああそうなんだ。へえ。同姓同名なら、あの子はきみのクラスメイトなんじゃないかな」
「え?」
彼女が私の知る二見双葉だったとして、考えうる可能性はただひとつ。それは、彼女も新しい世界のことを知っていて、新しい世界ではアイドルとして振舞っている説だ。
きっと、彼女も私と同じように新しい世界へ飛ばされてきたに違いない。新しい世界でなら、なりたい自分になれるから。だから彼女はアイドルになって、自分の居場所を見つけだすことに成功した。彼女は成功者なんだ。
お兄さんの話を聞いて二見双葉という存在を分かった気になった私は、もう一度彼女に話しかけてみた。
「ふ、二見さん。私のこと、覚えてますか? 同じクラスの無花果いちるです」
「え? っと……ごめん、誰だっけ? 私、今、休学中で、クラスの人達の名前と顔をまだ覚えてないんだよね」
「……え? 休学……中?」
そんなはずはない。だって彼女は毎日学校にいる。朝になると学校にきて、授業を受けて、放課後まで誰とも口を聞かずにいつの間にか帰ってる。私以上に大人しくて、私以上に人との関わりを避けている。
そんな彼女が休学中? ちょっと意味が分かりません。
彼女は二見双葉じゃなかったの? 彼女と二見双葉がイコールでないのなら、いったい彼女は何者?
困惑する私を不思議そうな表情で見つめる彼女。
「えっとぉ……いちる、ちゃん? 今日は見にきてくれてありがとおね? またきてくれると嬉しいな」
全人類の雄と雌を虜にするような愛らしい笑みを浮かべる彼女を前に、それ以上何も言えなかった。
ライブが終わると彼女は去り、またしても私とお兄さんの二人だけの世界になってしまった。
あからさまに虚空を見つめ虚無っている私を見ても、お兄さんはなんとも思わないみたい。
どのくらい時間が経過しただろうか。いつまで経っても空の色が変わらない所為で、時間の流れが分からない。
ただ、結構な時間が経ったと思う。私はお兄さんに焦点を合わせると、ようやく自分の言葉で胸の内を伝えることができた。
「……もしかして……新しい世界の二見双葉と……現実の世界の二見双葉は、別人……なんでしょうか……」
自分でも、虚空を見つめ虚無りながら長考したわりには浅い内容だと思う。だけどこれこそが私の導きだした考察であり、結論だった。
「そうだね。一方ではマイクを片手にキラキラと輝いている二見双葉。そのまた一方では至って普通の学生として振舞っている二見双葉。二人は似て非なる存在だよ」
やっぱりそうなんだ。名前も顔もおんなじで、きっと声だって同じなのに、生い立ちも性格も全くの別物で、別人として違う世界で過ごしている。
もしかしたら現実の世界の二見双葉にもこんな未来があったかもしれない。かもしれない世界線。
「彼女が気になるの?」
「……く、クラスでは全然関わりがなくて……二見さんのことは正直よく分からない、けど……こんな世界線もあるんだって分かったら……その……なんていうか……」
知ってしまったからには放っておけない性分なのか、もっと二見双葉という人間の本質に触れてみたくなる。
興味なんてない癖に、たまたま知ってしまっただけで深入りしようとするとか気持ち悪い。
自分でも分かってる。
だったらどうして。
頭の中ですら上手く言語化できないのに、この気持ちをどうお兄さんに伝えればいいのか分かんないよ……。
いつまでも言葉に詰まっていると、お兄さんがこっちにおいでと手招きをする。
少し歩いた先に見えたのは、童話でよく見るようなクッキーで造られた可愛らしいおうちだった。
「……こ、此処はいったい……」
「中に入ってごらん」
ドアを開けると、部屋の中央にある真っ白な四人掛けテーブルの上には、きっと誰かの誕生日なのだろう、ホールのショートケーキが用意されていた。プレートには『おたんじょうびおめでとう』という文字の下に『ふたば』と名前らしき文字が書いてある。
ふと背後から「お母さん?」と声がしたので振り返ってみると、そこには赤いランドセルを背負った小さな少女が立っていた。
「……ふたみ……ふたば……?」
「お、お母さん!」
少女は慌てた様子で私の横を素早く駆けていく。
「お母さん! お母さん! どうしたの、お母さん!」
さっきまで何もなかったはずの場所には、見知らぬ女性が倒れている。少女は懸命に女性の身体を揺すっては、声をかけ続けていた。
「あ……えっ、と……救急車……」
ようやく状況を理解できた私は、スカートのポケットからスマホを取りだそうと模索する。すると、目の前から甲高い叫び声が聞こえたので、瞬時に視線を向けてみると……。
「お、おかあさっ……~~~~ッ」
一瞬だけ目を離した隙に、ほんの数秒前までそこで倒れていた女性が縄で首を吊ってる場面に変わってしまっていた。
人が死ぬ場面を生まれて初めて見た私は、漫画でよくある、人が本当に驚いた時に出る「ひゅっ」という声にならない声を、自然と口から漏らしていた。
少女は膝から崩れ落ち、えんえんと泣いている。
これはきっと少女の記憶の断片で、新しい世界での二見双葉はこういった過去を経てアイドルになったんだ。
じゃあ、現実の世界での二見双葉はどうだった?
私の知る二見双葉の過去は?
「こんな誕生日なんていらない! こんな誕生日ならこなくていい! 双葉が虐められてるなんて言わなければ……っ、お母さん……ごめん、ごめんなさい……っ」
二見双葉は虐められていた。虐められていると母親に打ち明けたことでこうなった。彼女は自分の誕生日が嫌いになった。もうこれ以上、大切な人を失いたくない一心で自分を鼓舞し続けていた。
ズキズキと痛む胸を押さえながらドアを開けると、お兄さんが私を見る。
お兄さんは私に何を伝えたかったのか。
その答えは火を見るより明らかだった。
「……これが……私の知る、二見双葉の過去……ですよね」
知ってしまったからには教えてあげたい。貴女にはアイドルとして生きる世界線もあるのだと。だからどうか、自分の境遇を嘆かないで。貴女には貴女にしかない価値があるのだから。
一通り新しい世界を探索し終えると、ギュッと目を閉じてる間にお兄さんの部屋まで戻ってきたようだった。
今思えば夢のような出来事だったと思う。だけどあれは全て現実で、夢じゃない。私は今日、私達が暮らしている現実の世界とは別の新しい世界の存在に触れてしまったんだ。
ヘッドフォンを外すと、座ったままの状態で足で器用に椅子をぐるりと反転させる。お兄さんはチョコレート色のビーズクッションにちょこんと乗っていた。
「……クッションは黒じゃないんですね」
開口一番、我ながら失礼な発言をしたと思う。
だって他の家具はどれも真っ黒なのに、どうしてこれだけ違う色なんだろうって思っちゃったんだもん。私じゃなくても誰だって、この部屋を見た人は違和感を感じると思う。
「うん? ああ、これね。貰い物だから」
誰から? なんて不躾な質問、出会って数時間の相手にするもんじゃないことは私にも分かる。
きっとそう、あのクッションは彼女からの誕生日プレゼントなんだ。お兄さんくらいの年齢なら彼女の一人や二人くらい……いや、彼女が二人もいたら引くんだけど、ってそんな話はおいといて。ああもう、私はいったいさっきから何を意味の分からないことを。
頭の中でセルフツッコミをしていると、「きみも座る?」と聞かれたので丁重にお断りをしておいた。
外はすっかり真っ暗で、時刻は十八時を過ぎている。
流石にそろそろ帰らないと。
私は今度こそお兄さんに道案内してもらおうとした。
「あ、あの……そろそろ家に、帰らないと……」
「ああうん、ばいばい」
「え、えっと……き、きた道が分からないから、大通りまで教えてほしい……です……」
私の気の所為じゃなければ、微かに間があったような気がしたので本当に帰れるのか不安に感じたものの、なんとか家に辿り着けてほっとしている自分がいる。
本当に心臓に悪い。もう二度と帰れなかったらどうしようかと思った。
結局のところ、お兄さんがどうして私を新しい世界へ招待してくれたのか。それはまだ分からないままだけど、二見双葉の過去に触れることができたのは嬉しいし、明日学校に行ったら彼女に伝えたい。新しい世界の存在を。そして、そこでの二見双葉の立ち振る舞いを。
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