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5.双子のドール保持者
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「苺香、今日も御主人様を探しに行こうか」
一日や二日で見つかるとは思わないが、探さない事には見つからないと思い、今日も苺香と御主人様を探す旅に出る。
今日は敢えて同じ場所をぐるぐると回ってみたり、日陰を避けて歩いてみたり。色々と工夫を凝らしてみたものの、なんの手掛かりも見つからないまま午前中が終わってしまった。
仕方ないので一時休戦しよう。流石にお腹が空いたので何か食べようと踵を返すと、苺香が俺の背後を指差した。
「え?」
苺香から何かアクションを起こすなんて初めてだ。驚いた俺は、苺香が指差す方向に視線を向けた。
「なんだ、公園に行きたいのか?」
うんともすんとも言わないが、指差す方向は公園で間違いないだろう。公園なんて久しく行ってないけど、ちょっとだけ寄ってみようかな。
「ブランコするか?」
無反応。そうだよな、ブランコなんてやらないよな。
さて何をしようかと悩んでいると、苺香が黙って歩きだす。
そっちはトイレ……もしかしてトイレに行きたかったのか?
だが、いくら待っても中に入ろうとしない苺香。公園のトイレだからな、きっとごみが沢山あって汚いんだろう。もしも衛生面が気になるのなら、ちゃんとしたトイレに行こう。
「苺香」
そこに居たのは苺香と知らない男女だった。いや、正確には知らない男男女だった。
男と男が女の身体を貪るように舐めている……ように見える。女は膝下までの黒い靴下しか履いておらず、胸も女性器も丸見えだ。
こんな真昼間からこんな汚い場所でえっちしてんのか?
まじでばっちいな。ホテル行く金がないのかな。
いや、仮にそうだとしても公園のトイレってどうなんだ。しかもこれ、さんぴいって奴だろ。本当にあるんだな、こういうシチュエーション。えーぶいだけだと思ってた。
女は便座に座っているが、男と男は女の胸を執拗に舐めている。それにしても俺と苺香に見られているのに、ちっとも恥ずかしがらないじゃないか。なんだ、そういう癖なのか?
むしろ女とがっつり目が合っているんだが。え、合っているよな。実は焦点合ってなかったりする?
「あっ、あん、あっ、あっ、ああっ」
しかしこれはまずい。ちっとも目を逸らさずにこちらを見ながらそんな格好で喘がれては、こちらもそれなりに反応してしまう。男だもの、仕方がないわ。で済ましたいところではあるが、どうだろう。これは浮気なのか?
というか苺香はどんな気持ちでこいつらを見ているんだ。トイレに行きたくてきたはいいものの、こいつらが居て驚いて動けずに居るのか。それとも知ってて見にきた冷やかしなのか。俺的には前者がいいなあ。その方が可愛いから。でも多分、後者なんだろうなあ。
「い、苺香。何をしてるんだ、早く行くぞ」
苺香の手を引っ張るも、微動だにしない。いつまで見ているつもりなんだ。これでは俺の方が恥ずかしいぞ。
「あ、お前、ドールじゃん」
「あ、ほんとだ、ドールじゃん」
ふと声がした方を向くと、男と男がこちらの存在に気付いた様子だった。よく見れば男と男の容姿は瓜二つ。まるで双子のようだ。
瞳は青く、金髪が映えるな。ハーフか?
「なに、きみもまざりたいの?」
「ならここが空いてるよ。多分、ぐっちょり濡れてるよ」
男の指でぱっくりと御開帳されたあそこは確かに濡れていて、物欲しそうにこちらの様子を窺っている。
「い、いや、俺はいい」
「嘘、ちんこ勃ってんじゃん」
「嘘、ほんとはやりたいくせに」
ああもう、交互に喋るな夢に出てくる。
「ま、いいけど。見たいならけんぶつりょうはらってね」
「見物料? いくらだ?」
「金なんかいらないよ」
「そこのドール、左と右と上と下、どれがいい?」
なんだ?
こいつらは何を言ってるんだ?
「えらんで」
「えらんで」
「……じゃあ、上」
「もういっこ」
「えらんで」
「はあ? じゃあ、下」
「上と下ね。さいしょは上ね」
男が立つと、苺香の肩に触れ、体重を軽く掛ける。そしてその場で両膝を付く苺香の眼前でズボンを緩めると、既にそそり勃った男性器を躊躇なく苺香の口内へと埋めたのだ。
「……は?」
理解不能だった。本当に何をやっているのか分からなかった。上ってそういう……まさか、上の口、左胸、右胸、下の口って意味か?
だとしたら俺はさっきなんて言った?
「あっ、おくちのなかすんごいぬるぬる、ぬるぬる」
「……なにやってんだてめえ」
「はあ、じょうず、あっ、そう、したでぺろぺろして」
どうやら俺の声なんて聞こえてないらしい。それも心底腹立つが、苺香もなにやってんだ?
初対面だぞ。初対面の男にいきなり口の中に突っ込まれて、嫌がるどころか男の先っぽを自らぺろぺろしてるのか?
なんで?
は、浮気じゃん。しかも何が見物料だよ。碌に説明もせずに人のドール犯してるだけじゃねえか。詐欺だ。
拳に強く力が入る。ぶん殴ってやろうか。本気でそう思っていた。だけどそうしないのは、今殴れば苺香が舌を噛むかもしれないからだ。俺は苺香を傷付けたくない。ただそれだけだ。
「あっ、ん……はあ、のんで……ん、おいしい?」
なんてこった。いつの間にか終わってしまったらしい。しかもごっくんまで。
「あ、おわった? じゃあ次は下だね」
「させるかよ!」
「ドール保持者に危害を加えてはいけないよ」
「あ?」
「しらないんだね。ドールは好きにしていいけど、ドール保持者はそうじゃない。みんななかよく、順番に、だよ?」
「……知らねえよそんなの。俺が貰った説明書にはそんな事、書いてなかった」
「そうなんだ。じゃあおぼえてね。みんななかよく、順番に。まもれないと、おまわりさんにつかまって、ころされちゃう」
まさか。そんな理由で捕まる訳ないじゃないか。百歩譲って捕まったとしてもだ、殺されちゃうなんて物騒な事、冗談だろ?
そのくらいの気持ちで居ろよって意味なんじゃないのか?
「ちなみにこのあいだ僕を殴ったドール保持者は、その日のうちに射殺されたよ」
「ドールを貸してくれるっていうから会いにいったのに、かってに僕のドールに中だししたドール保持者は、その日のうちに撲殺されたよ」
嘘だ。そんなの、お前らがやったんだろ。お前らに逆らったらの間違いなんじゃねえの?
「ま、僕はどっちでもいいけどね」
「けんぶつりょう、下、まだもらってない」
「しにたいならこのままたちさるといいよ」
「だいじょうぶ、下、いれないよ。なめるだけ」
こいつらの言ってる事がルールだろうがそうじゃなかろうが、此処で逃げればやられるのは俺だ。俺がやられてしまったら苺香はどうなる?
それこそこいつらの思う壷だ。
いや、どちらに転んだっていいのだろう。俺が従えば苺香の性器を、俺が逆らえば苺香をこいつらの好きに出来るのだから。
どちらかを絶対に選ばなければならないのなら、俺はどうする?
答えなんて最初からひとつしかないじゃないか。
「りかいがはやくてたすかるよ」
「いただきます」
クソ、クソ、クソ!
いつか絶対にぶん殴ってやる。
「あ、すごいいい匂い」
男の舌が苺香を穢していく。とても不快だ。早くおわってほしい。
「あ、もう濡れてきた。感じやすいのかな、かわいいね」
見物料を払ったらすぐに帰ろう。すぐにだ。帰ったらシャワーで苺香の身体の隅々まで綺麗に洗い流さないと。
一秒がとても長く感じる。苺香がこんな野郎にいかされるのは癪だが、いかなければおわらないのであればこちらとしては待つしかないだろう。
そうこうしているうちに苺香は果てたようで、俺は苺香の手をとると一目散に公園から飛びだした。
どうして今まで気が付かなかったんだ。世界はこんなにもドールで溢れかえっているじゃないか。
家に着くとすぐに苺香の服を脱がせた。脱がせた後は浴室へと連れていき、シャワーで全身を隈なく洗い流す。口内洗浄には歯磨きが一番だろう。俺はこれでもかというくらい苺香の歯を磨いてやった。
これでよし。もうあの公園には行くもんか。
「苺香、ごめんな。もう大丈夫だから」
濡れたままの苺香をギュッと抱き締める。これ以上、変なドール保持者には出会いたくないものだ。
一日や二日で見つかるとは思わないが、探さない事には見つからないと思い、今日も苺香と御主人様を探す旅に出る。
今日は敢えて同じ場所をぐるぐると回ってみたり、日陰を避けて歩いてみたり。色々と工夫を凝らしてみたものの、なんの手掛かりも見つからないまま午前中が終わってしまった。
仕方ないので一時休戦しよう。流石にお腹が空いたので何か食べようと踵を返すと、苺香が俺の背後を指差した。
「え?」
苺香から何かアクションを起こすなんて初めてだ。驚いた俺は、苺香が指差す方向に視線を向けた。
「なんだ、公園に行きたいのか?」
うんともすんとも言わないが、指差す方向は公園で間違いないだろう。公園なんて久しく行ってないけど、ちょっとだけ寄ってみようかな。
「ブランコするか?」
無反応。そうだよな、ブランコなんてやらないよな。
さて何をしようかと悩んでいると、苺香が黙って歩きだす。
そっちはトイレ……もしかしてトイレに行きたかったのか?
だが、いくら待っても中に入ろうとしない苺香。公園のトイレだからな、きっとごみが沢山あって汚いんだろう。もしも衛生面が気になるのなら、ちゃんとしたトイレに行こう。
「苺香」
そこに居たのは苺香と知らない男女だった。いや、正確には知らない男男女だった。
男と男が女の身体を貪るように舐めている……ように見える。女は膝下までの黒い靴下しか履いておらず、胸も女性器も丸見えだ。
こんな真昼間からこんな汚い場所でえっちしてんのか?
まじでばっちいな。ホテル行く金がないのかな。
いや、仮にそうだとしても公園のトイレってどうなんだ。しかもこれ、さんぴいって奴だろ。本当にあるんだな、こういうシチュエーション。えーぶいだけだと思ってた。
女は便座に座っているが、男と男は女の胸を執拗に舐めている。それにしても俺と苺香に見られているのに、ちっとも恥ずかしがらないじゃないか。なんだ、そういう癖なのか?
むしろ女とがっつり目が合っているんだが。え、合っているよな。実は焦点合ってなかったりする?
「あっ、あん、あっ、あっ、ああっ」
しかしこれはまずい。ちっとも目を逸らさずにこちらを見ながらそんな格好で喘がれては、こちらもそれなりに反応してしまう。男だもの、仕方がないわ。で済ましたいところではあるが、どうだろう。これは浮気なのか?
というか苺香はどんな気持ちでこいつらを見ているんだ。トイレに行きたくてきたはいいものの、こいつらが居て驚いて動けずに居るのか。それとも知ってて見にきた冷やかしなのか。俺的には前者がいいなあ。その方が可愛いから。でも多分、後者なんだろうなあ。
「い、苺香。何をしてるんだ、早く行くぞ」
苺香の手を引っ張るも、微動だにしない。いつまで見ているつもりなんだ。これでは俺の方が恥ずかしいぞ。
「あ、お前、ドールじゃん」
「あ、ほんとだ、ドールじゃん」
ふと声がした方を向くと、男と男がこちらの存在に気付いた様子だった。よく見れば男と男の容姿は瓜二つ。まるで双子のようだ。
瞳は青く、金髪が映えるな。ハーフか?
「なに、きみもまざりたいの?」
「ならここが空いてるよ。多分、ぐっちょり濡れてるよ」
男の指でぱっくりと御開帳されたあそこは確かに濡れていて、物欲しそうにこちらの様子を窺っている。
「い、いや、俺はいい」
「嘘、ちんこ勃ってんじゃん」
「嘘、ほんとはやりたいくせに」
ああもう、交互に喋るな夢に出てくる。
「ま、いいけど。見たいならけんぶつりょうはらってね」
「見物料? いくらだ?」
「金なんかいらないよ」
「そこのドール、左と右と上と下、どれがいい?」
なんだ?
こいつらは何を言ってるんだ?
「えらんで」
「えらんで」
「……じゃあ、上」
「もういっこ」
「えらんで」
「はあ? じゃあ、下」
「上と下ね。さいしょは上ね」
男が立つと、苺香の肩に触れ、体重を軽く掛ける。そしてその場で両膝を付く苺香の眼前でズボンを緩めると、既にそそり勃った男性器を躊躇なく苺香の口内へと埋めたのだ。
「……は?」
理解不能だった。本当に何をやっているのか分からなかった。上ってそういう……まさか、上の口、左胸、右胸、下の口って意味か?
だとしたら俺はさっきなんて言った?
「あっ、おくちのなかすんごいぬるぬる、ぬるぬる」
「……なにやってんだてめえ」
「はあ、じょうず、あっ、そう、したでぺろぺろして」
どうやら俺の声なんて聞こえてないらしい。それも心底腹立つが、苺香もなにやってんだ?
初対面だぞ。初対面の男にいきなり口の中に突っ込まれて、嫌がるどころか男の先っぽを自らぺろぺろしてるのか?
なんで?
は、浮気じゃん。しかも何が見物料だよ。碌に説明もせずに人のドール犯してるだけじゃねえか。詐欺だ。
拳に強く力が入る。ぶん殴ってやろうか。本気でそう思っていた。だけどそうしないのは、今殴れば苺香が舌を噛むかもしれないからだ。俺は苺香を傷付けたくない。ただそれだけだ。
「あっ、ん……はあ、のんで……ん、おいしい?」
なんてこった。いつの間にか終わってしまったらしい。しかもごっくんまで。
「あ、おわった? じゃあ次は下だね」
「させるかよ!」
「ドール保持者に危害を加えてはいけないよ」
「あ?」
「しらないんだね。ドールは好きにしていいけど、ドール保持者はそうじゃない。みんななかよく、順番に、だよ?」
「……知らねえよそんなの。俺が貰った説明書にはそんな事、書いてなかった」
「そうなんだ。じゃあおぼえてね。みんななかよく、順番に。まもれないと、おまわりさんにつかまって、ころされちゃう」
まさか。そんな理由で捕まる訳ないじゃないか。百歩譲って捕まったとしてもだ、殺されちゃうなんて物騒な事、冗談だろ?
そのくらいの気持ちで居ろよって意味なんじゃないのか?
「ちなみにこのあいだ僕を殴ったドール保持者は、その日のうちに射殺されたよ」
「ドールを貸してくれるっていうから会いにいったのに、かってに僕のドールに中だししたドール保持者は、その日のうちに撲殺されたよ」
嘘だ。そんなの、お前らがやったんだろ。お前らに逆らったらの間違いなんじゃねえの?
「ま、僕はどっちでもいいけどね」
「けんぶつりょう、下、まだもらってない」
「しにたいならこのままたちさるといいよ」
「だいじょうぶ、下、いれないよ。なめるだけ」
こいつらの言ってる事がルールだろうがそうじゃなかろうが、此処で逃げればやられるのは俺だ。俺がやられてしまったら苺香はどうなる?
それこそこいつらの思う壷だ。
いや、どちらに転んだっていいのだろう。俺が従えば苺香の性器を、俺が逆らえば苺香をこいつらの好きに出来るのだから。
どちらかを絶対に選ばなければならないのなら、俺はどうする?
答えなんて最初からひとつしかないじゃないか。
「りかいがはやくてたすかるよ」
「いただきます」
クソ、クソ、クソ!
いつか絶対にぶん殴ってやる。
「あ、すごいいい匂い」
男の舌が苺香を穢していく。とても不快だ。早くおわってほしい。
「あ、もう濡れてきた。感じやすいのかな、かわいいね」
見物料を払ったらすぐに帰ろう。すぐにだ。帰ったらシャワーで苺香の身体の隅々まで綺麗に洗い流さないと。
一秒がとても長く感じる。苺香がこんな野郎にいかされるのは癪だが、いかなければおわらないのであればこちらとしては待つしかないだろう。
そうこうしているうちに苺香は果てたようで、俺は苺香の手をとると一目散に公園から飛びだした。
どうして今まで気が付かなかったんだ。世界はこんなにもドールで溢れかえっているじゃないか。
家に着くとすぐに苺香の服を脱がせた。脱がせた後は浴室へと連れていき、シャワーで全身を隈なく洗い流す。口内洗浄には歯磨きが一番だろう。俺はこれでもかというくらい苺香の歯を磨いてやった。
これでよし。もうあの公園には行くもんか。
「苺香、ごめんな。もう大丈夫だから」
濡れたままの苺香をギュッと抱き締める。これ以上、変なドール保持者には出会いたくないものだ。
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