こいラテ。同級生ルート

まなづるるい

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第1話

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「私、初めてだから優しくしてね」
そう言ってキスしようとする私。
ファーストキスの相手もファーストキスとは限らない。こんなに顔がいいんだもの、キスのひとつやふたつやみっつやよっつくらい、済んでいたっておかしくないわ。
「あ、あのぉ……なんだか顔が近くありませんか?」
「やだなあ、何を寝ぼけているの? キスするんだから当たり前じゃない」
「え」
「うん?」
「キスって、誰と誰がするんですか?」
この男、本当にわかっていないのだろうか。私のような大和撫子がファーストキスをあげるって言ってるんだから喜びなさいよ。
「私ときみが、キスするの」
「ど、どうして?」
どうしてって、そんなの。

「きみのことが好きだから」←
「私とキスしたくないの?」

「きみのことが好きだから」
好きと言われて嬉しくない人なんていない。これでこの男も私にイチコロってわけ。
「ご、ごめんなさい。僕は貴女のこと、好きじゃありません」
は?
え、もしかして私からの告白を断ってるの?
なんで?
まったくもって意味がわからなかった。そこは顔を真っ赤にして喜ぶところでしょう。なのにどうして私が振られなきゃいけないの。
許さない、許さない、この男。歯を食いしばりなさい。殴るわよ。

>>>>やり直し

「きみのことが好きだから」
「私とキスしたくないの?」←

「私とキスしたくないの?」
「したくないというか、僕は貴女のこと、知らないので」
そうだった。私ったら自己紹介もなしに迫っちゃってはしたない。
「私は一年二組の橘若菜(たちばなわかな)よ」
「あ、クラスが違うんですね。僕は一年六組の」
「きみのことは知ってるわよ」
なんなんだろう、さっきから妙に調子が狂う。天然なのかしら。
仮にも今、誰もいない教室で、私に馬乗りにされているというのにも関わらず、どうしてそんなに落ち着いていられるの?
ここは男らしく反応するところでしょう。
「もう名乗ったんだからいいわよね。ほら、キスするわよ」
「いえ、あの」
「まだ何か?」
「どうして僕と貴女がキスをするのか、まだ聞いていないので」
呆れた。男と女がキスをする理由に意味なんてないのに。したいからする。それだけ。
そうね、強いて言うなら。
「きみの顔がいいからじゃない?」
顔ファン。これも立派な理由になるでしょう。
顔がいいからキスがしたくなった。それだけ。
「僕の顔がいいとキスをしたくなるんですか?」
「そうよ」
男は少しだけ何かを考える素振りをすると、つまりはこういうことでしょうかと自論を述べた。
「僕が貴女の好みの顔だったので、思わず。いえ、半ば衝動的に押し倒し、キスをしようとした」
言葉にすれば確かにそうなのだが、言葉にしてみると随分と破廉恥な行いだということがわかる。
まるで痴女。恥ずかしい女。いたたたた。
「そ、それの何がいけないのよう」
「いけなくはないですが、これでほんの少しだけ、貴女を理解することができました」
そう言って右手でほんの少しのポーズをすると、自然に笑みが零れる男を見て、私は。

なんだこいつと思った。
不覚にもドキッとした。←

不覚にもドキッとした。
だって、そんな笑顔反則だ。仮にも襲われているのは男の方で、こういう場合、変なやつだと気味悪がるか、力で捩じ伏せるかするだろう。
それなのにこの男は笑っている。どこまでも掴みどころのない変なやつ。
「そうですね。僕とキスがしたいのなら、貴女のことを教えてください。貴女がどんな人なのか知った上で僕が貴女とキスをしてもいいと思ったら、その時はしましょう」
変なの。これじゃまるで私がきみとキスがしたくて堪らないのに、お預けされているみたい。
私は別にきみのことなんて好きじゃない。顔がいいと思ったから。
それだけなのに。
「さあ、帰りましょうか」
優しく差し出された右手を見て、私はそっと触れてみる。
温かい手。
どうしよう、私、どうしてこんなにドキドキするの。
そんな淡いきもちに浸っていると、「足が痺れて立てません」だって。
まったくどこまでも掴みどころのない男なんだから。
私はわざと、男の足を叩いてやった。
「あいたっ!」と教室に響く男の声を聞きながら、私は教室を出た。
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