1 / 5
第1話
しおりを挟む
「私、初めてだから優しくしてね」
そう言ってキスしようとする私。
ファーストキスの相手もファーストキスとは限らない。こんなに顔がいいんだもの、キスのひとつやふたつやみっつやよっつくらい、済んでいたっておかしくないわ。
「あ、あのぉ……なんだか顔が近くありませんか?」
「やだなあ、何を寝ぼけているの? キスするんだから当たり前じゃない」
「え」
「うん?」
「キスって、誰と誰がするんですか?」
この男、本当にわかっていないのだろうか。私のような大和撫子がファーストキスをあげるって言ってるんだから喜びなさいよ。
「私ときみが、キスするの」
「ど、どうして?」
どうしてって、そんなの。
「きみのことが好きだから」←
「私とキスしたくないの?」
「きみのことが好きだから」
好きと言われて嬉しくない人なんていない。これでこの男も私にイチコロってわけ。
「ご、ごめんなさい。僕は貴女のこと、好きじゃありません」
は?
え、もしかして私からの告白を断ってるの?
なんで?
まったくもって意味がわからなかった。そこは顔を真っ赤にして喜ぶところでしょう。なのにどうして私が振られなきゃいけないの。
許さない、許さない、この男。歯を食いしばりなさい。殴るわよ。
>>>>やり直し
「きみのことが好きだから」
「私とキスしたくないの?」←
「私とキスしたくないの?」
「したくないというか、僕は貴女のこと、知らないので」
そうだった。私ったら自己紹介もなしに迫っちゃってはしたない。
「私は一年二組の橘若菜(たちばなわかな)よ」
「あ、クラスが違うんですね。僕は一年六組の」
「きみのことは知ってるわよ」
なんなんだろう、さっきから妙に調子が狂う。天然なのかしら。
仮にも今、誰もいない教室で、私に馬乗りにされているというのにも関わらず、どうしてそんなに落ち着いていられるの?
ここは男らしく反応するところでしょう。
「もう名乗ったんだからいいわよね。ほら、キスするわよ」
「いえ、あの」
「まだ何か?」
「どうして僕と貴女がキスをするのか、まだ聞いていないので」
呆れた。男と女がキスをする理由に意味なんてないのに。したいからする。それだけ。
そうね、強いて言うなら。
「きみの顔がいいからじゃない?」
顔ファン。これも立派な理由になるでしょう。
顔がいいからキスがしたくなった。それだけ。
「僕の顔がいいとキスをしたくなるんですか?」
「そうよ」
男は少しだけ何かを考える素振りをすると、つまりはこういうことでしょうかと自論を述べた。
「僕が貴女の好みの顔だったので、思わず。いえ、半ば衝動的に押し倒し、キスをしようとした」
言葉にすれば確かにそうなのだが、言葉にしてみると随分と破廉恥な行いだということがわかる。
まるで痴女。恥ずかしい女。いたたたた。
「そ、それの何がいけないのよう」
「いけなくはないですが、これでほんの少しだけ、貴女を理解することができました」
そう言って右手でほんの少しのポーズをすると、自然に笑みが零れる男を見て、私は。
なんだこいつと思った。
不覚にもドキッとした。←
不覚にもドキッとした。
だって、そんな笑顔反則だ。仮にも襲われているのは男の方で、こういう場合、変なやつだと気味悪がるか、力で捩じ伏せるかするだろう。
それなのにこの男は笑っている。どこまでも掴みどころのない変なやつ。
「そうですね。僕とキスがしたいのなら、貴女のことを教えてください。貴女がどんな人なのか知った上で僕が貴女とキスをしてもいいと思ったら、その時はしましょう」
変なの。これじゃまるで私がきみとキスがしたくて堪らないのに、お預けされているみたい。
私は別にきみのことなんて好きじゃない。顔がいいと思ったから。
それだけなのに。
「さあ、帰りましょうか」
優しく差し出された右手を見て、私はそっと触れてみる。
温かい手。
どうしよう、私、どうしてこんなにドキドキするの。
そんな淡いきもちに浸っていると、「足が痺れて立てません」だって。
まったくどこまでも掴みどころのない男なんだから。
私はわざと、男の足を叩いてやった。
「あいたっ!」と教室に響く男の声を聞きながら、私は教室を出た。
そう言ってキスしようとする私。
ファーストキスの相手もファーストキスとは限らない。こんなに顔がいいんだもの、キスのひとつやふたつやみっつやよっつくらい、済んでいたっておかしくないわ。
「あ、あのぉ……なんだか顔が近くありませんか?」
「やだなあ、何を寝ぼけているの? キスするんだから当たり前じゃない」
「え」
「うん?」
「キスって、誰と誰がするんですか?」
この男、本当にわかっていないのだろうか。私のような大和撫子がファーストキスをあげるって言ってるんだから喜びなさいよ。
「私ときみが、キスするの」
「ど、どうして?」
どうしてって、そんなの。
「きみのことが好きだから」←
「私とキスしたくないの?」
「きみのことが好きだから」
好きと言われて嬉しくない人なんていない。これでこの男も私にイチコロってわけ。
「ご、ごめんなさい。僕は貴女のこと、好きじゃありません」
は?
え、もしかして私からの告白を断ってるの?
なんで?
まったくもって意味がわからなかった。そこは顔を真っ赤にして喜ぶところでしょう。なのにどうして私が振られなきゃいけないの。
許さない、許さない、この男。歯を食いしばりなさい。殴るわよ。
>>>>やり直し
「きみのことが好きだから」
「私とキスしたくないの?」←
「私とキスしたくないの?」
「したくないというか、僕は貴女のこと、知らないので」
そうだった。私ったら自己紹介もなしに迫っちゃってはしたない。
「私は一年二組の橘若菜(たちばなわかな)よ」
「あ、クラスが違うんですね。僕は一年六組の」
「きみのことは知ってるわよ」
なんなんだろう、さっきから妙に調子が狂う。天然なのかしら。
仮にも今、誰もいない教室で、私に馬乗りにされているというのにも関わらず、どうしてそんなに落ち着いていられるの?
ここは男らしく反応するところでしょう。
「もう名乗ったんだからいいわよね。ほら、キスするわよ」
「いえ、あの」
「まだ何か?」
「どうして僕と貴女がキスをするのか、まだ聞いていないので」
呆れた。男と女がキスをする理由に意味なんてないのに。したいからする。それだけ。
そうね、強いて言うなら。
「きみの顔がいいからじゃない?」
顔ファン。これも立派な理由になるでしょう。
顔がいいからキスがしたくなった。それだけ。
「僕の顔がいいとキスをしたくなるんですか?」
「そうよ」
男は少しだけ何かを考える素振りをすると、つまりはこういうことでしょうかと自論を述べた。
「僕が貴女の好みの顔だったので、思わず。いえ、半ば衝動的に押し倒し、キスをしようとした」
言葉にすれば確かにそうなのだが、言葉にしてみると随分と破廉恥な行いだということがわかる。
まるで痴女。恥ずかしい女。いたたたた。
「そ、それの何がいけないのよう」
「いけなくはないですが、これでほんの少しだけ、貴女を理解することができました」
そう言って右手でほんの少しのポーズをすると、自然に笑みが零れる男を見て、私は。
なんだこいつと思った。
不覚にもドキッとした。←
不覚にもドキッとした。
だって、そんな笑顔反則だ。仮にも襲われているのは男の方で、こういう場合、変なやつだと気味悪がるか、力で捩じ伏せるかするだろう。
それなのにこの男は笑っている。どこまでも掴みどころのない変なやつ。
「そうですね。僕とキスがしたいのなら、貴女のことを教えてください。貴女がどんな人なのか知った上で僕が貴女とキスをしてもいいと思ったら、その時はしましょう」
変なの。これじゃまるで私がきみとキスがしたくて堪らないのに、お預けされているみたい。
私は別にきみのことなんて好きじゃない。顔がいいと思ったから。
それだけなのに。
「さあ、帰りましょうか」
優しく差し出された右手を見て、私はそっと触れてみる。
温かい手。
どうしよう、私、どうしてこんなにドキドキするの。
そんな淡いきもちに浸っていると、「足が痺れて立てません」だって。
まったくどこまでも掴みどころのない男なんだから。
私はわざと、男の足を叩いてやった。
「あいたっ!」と教室に響く男の声を聞きながら、私は教室を出た。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる