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第3話
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放課後は決まって一緒に帰る。連絡先は交換してない。だからいないと靴箱を見る。
「いる……よねぇ。もう一時間も経つんだけど」
私はさっきから五分置きに男の靴箱を開けている。傍から見れば、ラブレターを入れたいのになかなか入れられないみたいな図に見えなくもない。
もしかしたら何か部活に入っているのかもしれないし、委員会とか、追試とか。
私って、何も知らないんだな。
ここで待っているのも退屈なので、男の教室に行ってみることにした。すれ違いになったらなったで仕方がない。
六組の教室に着くと、男はいた。
他には誰もいないようで、追試をしている様子もない。
「ねえ」
私が声をかけると、男は驚いた。
「わっ、……あ、橘さん。すいません、もしかして僕を待っていましたか?」
待ってたなんて言いたくなかったので、要点だけを述べる。
「ここで何やってんの?」
「えと、ちょっと」
私は男に近付いた。よく見ると目が赤い気がする。それになんだか鼻も赤い。
「……もしかして泣いてんの?」
「い、いやぁ」
なんだか煮え切らない態度にこちらの方がもやもやしてくる。
「どうしたのよ」
「……実は、好きな人に振られたんです」
頭の中が真っ白になった。今、好きな人って言った?
「え、……好きな人、いたの?」
「はい。だけど僕のことは友達にしか見れないみたいで、振られちゃいました」
意外だった。てっきりそういう人はいないものだと心のどこかで決め付けていた。
「……一目惚れだったんです。お話してみて、やっぱり心も綺麗な人だと気付いて、ずっと目で追っていました」
なんだろう。なんかいやだな。もやもや、どんどん大きくなっていく。
私は。
つらかったね、と心にもないことを言う。←
好きな人がいるならいるって言えよ! と自分のきもちをぶつける。
つらかったね、と心にもないことを言う。
「はは、……は……ぐすっ、ご、ごめんなさい。橘さんの前で泣くなんて、みっともないですね」
私は今までこんなに美しく泣く男の子を見たことがない。
泣き顔さえも綺麗なんて。
「やっぱり……言わない方が、よかったのかなぁ……っ」
それはあまりにも痛々しい本音だった。
思わずタメ口になってしまうほど、零れる本音。
私はこんな時、どうしたらいいのだろう。何もできずにその場にいることしかできない。
ただひたすらに、心が痛かった。
>>>>やり直し
つらかったね、と心にもないことを言う。
好きな人がいるならいるって言えよ! と自分のきもちをぶつける。←
好きな人がいるならいるって言えよ! と自分のきもちをぶつける。
「…………………………」
「最初から知ってたら……っ、一緒になんて帰らなかった」
ちがう、これは私の八つ当たりだ。
男と一緒に過ごした時間は、楽しかった。
だけどキスなんてむりに決まっている。最初から、むりだった。
だったらどうして。
「……どうしてその時はしましょうなんて言ったの」
「え?」
「好きな人がいるくせに、私のことを知った上でキスしてもいいと思ったらしましょうって、なんでそんなこと言ったのよ!」
「…………………………」
「最初からする気なかったんだ。本当にゲーム感覚だったんだ。だからそんなことが言えるんだ。私がつまんないって言っただけで、簡単に離れていくんだ」
何も言ってくれないことが余計につらかった。返す言葉もないってか。言わせておけばそのうちおわるとでも思っているのだろうか。面倒くさいって思っているのだろうか。
「黙ってちゃわかんないだろうが! あんたがなんか言ってくれないと、否定してくれないと、全部私の言う通りみたいじゃないか!」
めちゃくちゃキレた。なんなら泣いていた。
どうして涙が出てくるのかはわからない。ただ心が痛くて、叫ばずにはいられなかった。
男はずっと下を向いたまま、言葉を選んでいるようにも思えた。
言いたいことがあるのなら言ってほしい。こんなおわり方、私だってしたくない。
「……する気がまったくなかったわけではありません。ただ、僕の発言で橘さんを傷付けてしまったのも確かで、本当に……なんと言えばいいのか……」
「じゃあキスしてよ」←
私からキスをする。
「じゃあキスしてよ」
「…………ごめんなさい。それはできません」
うん、わかってたよ。わかってて言った。これは私が悪い。
「……冗談だよばか」
もう、いい。もう疲れた。好きな人がいるのにむりやりしてもらうとか、なんかちがうじゃん。
「私、帰るね」
「…………………………」
「ばいばい」
ばいばい。
>>>>やり直し
「じゃあキスしてよ」
私からキスをする。←
私からキスをする。
触れた唇は柔らかく、もやもやが一瞬で晴れていくようだった。
「……これでチャラね」
至近距離で見る男の顔立ちはやはり整っていて、拒絶されなかったことに安堵する。
もう私の負けでいいから。だからまた笑ってほしい。
「橘さん、あの」
「ごめんね、私からしちゃった。いやだったよね」
「い、いえ。そんなことは」
私って狡いんだ。離れたくないからって、弱っているところにつけ込んで。
「ねえ、今までのこと全部チャラにするからさ」
私は男の手をとり自分の指を絡ませる。
「またキスしようよ、私と」
「で、でも」
「キス、したい………………だめ?」
甘えた声で強請るように。
距離がまた近付いて、唇が触れる。
きらいにならないでほしいと願うくせに、きらわれて当然なことしてる。
繋いだ手はそのままに、私は男と何度も唇を重ねた。
「いる……よねぇ。もう一時間も経つんだけど」
私はさっきから五分置きに男の靴箱を開けている。傍から見れば、ラブレターを入れたいのになかなか入れられないみたいな図に見えなくもない。
もしかしたら何か部活に入っているのかもしれないし、委員会とか、追試とか。
私って、何も知らないんだな。
ここで待っているのも退屈なので、男の教室に行ってみることにした。すれ違いになったらなったで仕方がない。
六組の教室に着くと、男はいた。
他には誰もいないようで、追試をしている様子もない。
「ねえ」
私が声をかけると、男は驚いた。
「わっ、……あ、橘さん。すいません、もしかして僕を待っていましたか?」
待ってたなんて言いたくなかったので、要点だけを述べる。
「ここで何やってんの?」
「えと、ちょっと」
私は男に近付いた。よく見ると目が赤い気がする。それになんだか鼻も赤い。
「……もしかして泣いてんの?」
「い、いやぁ」
なんだか煮え切らない態度にこちらの方がもやもやしてくる。
「どうしたのよ」
「……実は、好きな人に振られたんです」
頭の中が真っ白になった。今、好きな人って言った?
「え、……好きな人、いたの?」
「はい。だけど僕のことは友達にしか見れないみたいで、振られちゃいました」
意外だった。てっきりそういう人はいないものだと心のどこかで決め付けていた。
「……一目惚れだったんです。お話してみて、やっぱり心も綺麗な人だと気付いて、ずっと目で追っていました」
なんだろう。なんかいやだな。もやもや、どんどん大きくなっていく。
私は。
つらかったね、と心にもないことを言う。←
好きな人がいるならいるって言えよ! と自分のきもちをぶつける。
つらかったね、と心にもないことを言う。
「はは、……は……ぐすっ、ご、ごめんなさい。橘さんの前で泣くなんて、みっともないですね」
私は今までこんなに美しく泣く男の子を見たことがない。
泣き顔さえも綺麗なんて。
「やっぱり……言わない方が、よかったのかなぁ……っ」
それはあまりにも痛々しい本音だった。
思わずタメ口になってしまうほど、零れる本音。
私はこんな時、どうしたらいいのだろう。何もできずにその場にいることしかできない。
ただひたすらに、心が痛かった。
>>>>やり直し
つらかったね、と心にもないことを言う。
好きな人がいるならいるって言えよ! と自分のきもちをぶつける。←
好きな人がいるならいるって言えよ! と自分のきもちをぶつける。
「…………………………」
「最初から知ってたら……っ、一緒になんて帰らなかった」
ちがう、これは私の八つ当たりだ。
男と一緒に過ごした時間は、楽しかった。
だけどキスなんてむりに決まっている。最初から、むりだった。
だったらどうして。
「……どうしてその時はしましょうなんて言ったの」
「え?」
「好きな人がいるくせに、私のことを知った上でキスしてもいいと思ったらしましょうって、なんでそんなこと言ったのよ!」
「…………………………」
「最初からする気なかったんだ。本当にゲーム感覚だったんだ。だからそんなことが言えるんだ。私がつまんないって言っただけで、簡単に離れていくんだ」
何も言ってくれないことが余計につらかった。返す言葉もないってか。言わせておけばそのうちおわるとでも思っているのだろうか。面倒くさいって思っているのだろうか。
「黙ってちゃわかんないだろうが! あんたがなんか言ってくれないと、否定してくれないと、全部私の言う通りみたいじゃないか!」
めちゃくちゃキレた。なんなら泣いていた。
どうして涙が出てくるのかはわからない。ただ心が痛くて、叫ばずにはいられなかった。
男はずっと下を向いたまま、言葉を選んでいるようにも思えた。
言いたいことがあるのなら言ってほしい。こんなおわり方、私だってしたくない。
「……する気がまったくなかったわけではありません。ただ、僕の発言で橘さんを傷付けてしまったのも確かで、本当に……なんと言えばいいのか……」
「じゃあキスしてよ」←
私からキスをする。
「じゃあキスしてよ」
「…………ごめんなさい。それはできません」
うん、わかってたよ。わかってて言った。これは私が悪い。
「……冗談だよばか」
もう、いい。もう疲れた。好きな人がいるのにむりやりしてもらうとか、なんかちがうじゃん。
「私、帰るね」
「…………………………」
「ばいばい」
ばいばい。
>>>>やり直し
「じゃあキスしてよ」
私からキスをする。←
私からキスをする。
触れた唇は柔らかく、もやもやが一瞬で晴れていくようだった。
「……これでチャラね」
至近距離で見る男の顔立ちはやはり整っていて、拒絶されなかったことに安堵する。
もう私の負けでいいから。だからまた笑ってほしい。
「橘さん、あの」
「ごめんね、私からしちゃった。いやだったよね」
「い、いえ。そんなことは」
私って狡いんだ。離れたくないからって、弱っているところにつけ込んで。
「ねえ、今までのこと全部チャラにするからさ」
私は男の手をとり自分の指を絡ませる。
「またキスしようよ、私と」
「で、でも」
「キス、したい………………だめ?」
甘えた声で強請るように。
距離がまた近付いて、唇が触れる。
きらいにならないでほしいと願うくせに、きらわれて当然なことしてる。
繋いだ手はそのままに、私は男と何度も唇を重ねた。
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