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第4話
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今日も男とキスをする。付き合ってもいないのにキスをする。
そう仕向けたのは私。罪悪感がないと言ったら嘘になる。だけど。
「橘さん、これ以上は、ちょっと」
以前よりもずっと、私は男に惹かれていた。
わかるよ。男の子だもん、これ以上は困るよね。
わざとだよ。
そう言えば男はどんな反応をするのだろうか。
きっと顔を真っ赤にして焦るんだろうな。
私はそんな男を。
かわいいと思う。←
愛しいと思う。
かわいいと思う。
本当はこんなはずじゃなかったのに、いつの間にか私の中で男の存在が大きくなっていた。
驚いたことに、私はそれを素直に受け入れている。
きっと恋とはこういうものなんだ。
実ることのない恋。
わかってはいてもつらいものだ。
だからこそこうすることで男を繋ぎ止めていたいのかもしれない。
私は狡い。
「そういえば、来週花火大会があるみたいですよ」
「ふうん」
人気のない三階と屋上を繋ぐ踊り場の階段に腰を下ろし、男の肩に寄り添う私。
まわりに誰もいないからか、やめてくださいとは言われなかった。
「橘さんは行くんですか?」
「行かないよ」
「なら、僕と行きましょうか」
意外だった。まさか向こうからデートに誘ってくるなんて。
花火大会当日。
私は。
私服で行く。←
浴衣で行く。
私服で行く。
浴衣だと張り切りすぎな気がしたので、敢えて私服で行こうと思う。
爽やかな白いワンピース。髪もばっちり巻いてみた。
家を出るとそこに男はいて、男は浴衣を着こなしていた。
やっぱり私も浴衣を着てくればよかった。隣に並んで歩くのが恥ずかしい。
「やっぱり帰る」
「えっ、橘さん?」
時間を巻き戻せたらいいのに。
真っ暗な部屋の中で、私はひとり、花火の音を聞いていた。
>>>>やり直し
私服で行く。
浴衣で行く。←
浴衣で行く。
少し張り切りすぎただろうか。ううん、きっと大丈夫。髪をお団子にしたら準備完成。
家を出るとそこに男はいて、男は浴衣を着こなしていた。
浴衣を着てきて正解だった。となりに並んで歩いても恥ずかしくない。
「浴衣、かわいいですね」
「浴衣がかわいいの? 私じゃなくて?」
「浴衣を着ている橘さんがかわいいですね」
こんなのまるでデートみたいだ。誰かに見られでもしたら、勘違いされる。
私は一歩、男から距離をとった。
なのに。
どうして手を繋ぐんだろう。誰かに見られたらどうするの。
これじゃ期待しちゃうじゃない。
それとも期待していいの?
「ねえ」
「はい?」
「誤解されちゃうよ」
「私のこと好きなの?」←
「私のこと好きなの?」
時が止まる。きょとんとした顔。それ知ってる。私、見当違いなこと言ったんだ。
「えーと……はい、好きですよ」
ちがう。それは私のほしい好きじゃない。
「やっぱり帰る」
「えっ、橘さん?」
間違えた、間違えた。
時間を巻き戻せたらいいのに。
花火の音を背に聞きながら、私はきた道を走って帰っていった。
>>>>やり直し
「誤解されちゃうよ」←
「私のことが好きなの?」
「誤解されちゃうよ」
「どうしてですか?」
「浴衣に夏祭り、それに手なんか繋いでる。まるで恋人同士みたい」
「……いいですよ、誤解されても」
「へ」
「いいですよ」
心臓がばくばくしてる。そういうところだぞ。天然のタラシめ。
会場に着くと、沢山の屋台が並んでいた。
私だって、誤解されてもいい。
私は男の手をぎゅっと握り返した。
焼きそばにタピオカ、冷やしパイン。二人でひとつのものを食べるとか、本当に付き合っているみたい。
ずっとこうしていたいと感じるほど楽しくて、夢のような時間だった。
「橘さん、もっと僕にくっついてください」
人が沢山いるからはぐれないように。
そういう意味だとわかっていても、今の発言には心が揺れる。
ほんのり香る汗の匂い。それすらもいい匂いと思ってしまう。
感覚がばかになっているんだろうな。私が好意を寄せているから。
もっと触れていたい。きみに触れることをどうか許して。
「いたっ」
急に男が止まるからぶつかってしまう。
どうしたのかと思い顔を見ると、どこか一点を見つめて驚いているようだった。
「どうしたの?」
「あっ……い、いえ。なんでもありませんよ」
嘘だ。いったい何を見ているのかと視線を追えば、ひとりの女性に焦点が合う。
もしかして。
気付いた瞬間、口にする。
「……あの人が、きみの好きな人?」
沈黙は肯定だと誰が言いだしたのだろうか。
私は唇をきゅっと噛み締めると。
「嘘つき……」と呟いた。
「嘘つき!」と叫んだ。←
「嘘つき!」と叫んだ。
誤解されてもいいって言った。
それなら堂々としてればいいのに、どうして立ち止まっているの。
「やっぱり帰る」
「えっ、橘さん?」
時間を巻き戻せたらいいのに。
私はその場から離れてひとり、泣いていた。
>>>>やり直し
「嘘つき……」と呟いた。←
「嘘つき!」と叫んだ。
「嘘つき……」と呟いた。
誤解されてもいいって言った。
それなら堂々としてればいいのに、どうして立ち止まっているの。
「やっぱり帰る」
「えっ、橘さん?」
時間を巻き戻せたらいいのに。
私はその場から離れてひとり、泣いていた。
>>>>やり直し
「嘘つき……」と呟いた。
「嘘つき!」と叫んだ。←
「嘘つき!」と叫んだ。
(早送り)
そう仕向けたのは私。罪悪感がないと言ったら嘘になる。だけど。
「橘さん、これ以上は、ちょっと」
以前よりもずっと、私は男に惹かれていた。
わかるよ。男の子だもん、これ以上は困るよね。
わざとだよ。
そう言えば男はどんな反応をするのだろうか。
きっと顔を真っ赤にして焦るんだろうな。
私はそんな男を。
かわいいと思う。←
愛しいと思う。
かわいいと思う。
本当はこんなはずじゃなかったのに、いつの間にか私の中で男の存在が大きくなっていた。
驚いたことに、私はそれを素直に受け入れている。
きっと恋とはこういうものなんだ。
実ることのない恋。
わかってはいてもつらいものだ。
だからこそこうすることで男を繋ぎ止めていたいのかもしれない。
私は狡い。
「そういえば、来週花火大会があるみたいですよ」
「ふうん」
人気のない三階と屋上を繋ぐ踊り場の階段に腰を下ろし、男の肩に寄り添う私。
まわりに誰もいないからか、やめてくださいとは言われなかった。
「橘さんは行くんですか?」
「行かないよ」
「なら、僕と行きましょうか」
意外だった。まさか向こうからデートに誘ってくるなんて。
花火大会当日。
私は。
私服で行く。←
浴衣で行く。
私服で行く。
浴衣だと張り切りすぎな気がしたので、敢えて私服で行こうと思う。
爽やかな白いワンピース。髪もばっちり巻いてみた。
家を出るとそこに男はいて、男は浴衣を着こなしていた。
やっぱり私も浴衣を着てくればよかった。隣に並んで歩くのが恥ずかしい。
「やっぱり帰る」
「えっ、橘さん?」
時間を巻き戻せたらいいのに。
真っ暗な部屋の中で、私はひとり、花火の音を聞いていた。
>>>>やり直し
私服で行く。
浴衣で行く。←
浴衣で行く。
少し張り切りすぎただろうか。ううん、きっと大丈夫。髪をお団子にしたら準備完成。
家を出るとそこに男はいて、男は浴衣を着こなしていた。
浴衣を着てきて正解だった。となりに並んで歩いても恥ずかしくない。
「浴衣、かわいいですね」
「浴衣がかわいいの? 私じゃなくて?」
「浴衣を着ている橘さんがかわいいですね」
こんなのまるでデートみたいだ。誰かに見られでもしたら、勘違いされる。
私は一歩、男から距離をとった。
なのに。
どうして手を繋ぐんだろう。誰かに見られたらどうするの。
これじゃ期待しちゃうじゃない。
それとも期待していいの?
「ねえ」
「はい?」
「誤解されちゃうよ」
「私のこと好きなの?」←
「私のこと好きなの?」
時が止まる。きょとんとした顔。それ知ってる。私、見当違いなこと言ったんだ。
「えーと……はい、好きですよ」
ちがう。それは私のほしい好きじゃない。
「やっぱり帰る」
「えっ、橘さん?」
間違えた、間違えた。
時間を巻き戻せたらいいのに。
花火の音を背に聞きながら、私はきた道を走って帰っていった。
>>>>やり直し
「誤解されちゃうよ」←
「私のことが好きなの?」
「誤解されちゃうよ」
「どうしてですか?」
「浴衣に夏祭り、それに手なんか繋いでる。まるで恋人同士みたい」
「……いいですよ、誤解されても」
「へ」
「いいですよ」
心臓がばくばくしてる。そういうところだぞ。天然のタラシめ。
会場に着くと、沢山の屋台が並んでいた。
私だって、誤解されてもいい。
私は男の手をぎゅっと握り返した。
焼きそばにタピオカ、冷やしパイン。二人でひとつのものを食べるとか、本当に付き合っているみたい。
ずっとこうしていたいと感じるほど楽しくて、夢のような時間だった。
「橘さん、もっと僕にくっついてください」
人が沢山いるからはぐれないように。
そういう意味だとわかっていても、今の発言には心が揺れる。
ほんのり香る汗の匂い。それすらもいい匂いと思ってしまう。
感覚がばかになっているんだろうな。私が好意を寄せているから。
もっと触れていたい。きみに触れることをどうか許して。
「いたっ」
急に男が止まるからぶつかってしまう。
どうしたのかと思い顔を見ると、どこか一点を見つめて驚いているようだった。
「どうしたの?」
「あっ……い、いえ。なんでもありませんよ」
嘘だ。いったい何を見ているのかと視線を追えば、ひとりの女性に焦点が合う。
もしかして。
気付いた瞬間、口にする。
「……あの人が、きみの好きな人?」
沈黙は肯定だと誰が言いだしたのだろうか。
私は唇をきゅっと噛み締めると。
「嘘つき……」と呟いた。
「嘘つき!」と叫んだ。←
「嘘つき!」と叫んだ。
誤解されてもいいって言った。
それなら堂々としてればいいのに、どうして立ち止まっているの。
「やっぱり帰る」
「えっ、橘さん?」
時間を巻き戻せたらいいのに。
私はその場から離れてひとり、泣いていた。
>>>>やり直し
「嘘つき……」と呟いた。←
「嘘つき!」と叫んだ。
「嘘つき……」と呟いた。
誤解されてもいいって言った。
それなら堂々としてればいいのに、どうして立ち止まっているの。
「やっぱり帰る」
「えっ、橘さん?」
時間を巻き戻せたらいいのに。
私はその場から離れてひとり、泣いていた。
>>>>やり直し
「嘘つき……」と呟いた。
「嘘つき!」と叫んだ。←
「嘘つき!」と叫んだ。
(早送り)
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