Dream Again

広瀬あかり

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5.あの日の出来事

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“場所は分かってるよね?”
“わたし、あそこで待ってるからね”
“ちゃんと来てよね!学校終わったら早くだよ?”

何度も何度も麻衣の言葉を反芻しては記憶を掘り出そうとして絶望に陥る隼人・・・

そもそもあの写真が撮られた経緯も理由もこの日の出来事でさえ何一つ覚えてねぇのに思い出せる訳がねえ!

「クソ・・・どうする、もしかしてこの日の写真に写ってる麻衣が不機嫌そうだったのって・・・これが原因なのか!?」

たった二枚のうちのこの写真に写る麻衣の表情は隼人にはどこか暗く見えていた。

じゃあ・・・これを何とか無事に達成すれば未来が変わる・・・のか!?

「で、でもこれを達成したからって大きく未来が変わるなんてあり得るのか?」

モヤモヤと色々考えては頭を掻く、答えは出ない。

だがリミットは放課後、今すぐでも何とか場所を特定する方法を探さなくてはならない。

「時間がねぇ・・・とにかくやるしかねぇ!!」

覚悟を決めた隼人が現実的な方法を模索する中・・・

「ではこの問題・・・35÷8・・・じゃあ誰にしようかな・・・よし、真島君わかる?」

突如先生に当てられる隼人であったがまったくその耳には入っていない。

「(まずは聞き込みしてみるか・・・ここ最近の麻衣の話とか・・・俺がこの時代に来る前の俺が誰かにこの約束をポロっと喋ってる可能性もある・・・よしまずはこの作戦でどうにか進展をだな・・・)」

トントン、と横から誰かが隼人の肩を叩く。

「うぉ!?なんだよ麻衣、俺は今忙しいんだが・・・?」

その人物は麻衣で隼人にこそっと耳打ちする。

「何やってんのはやちゃん、先生に当てられてるよ!?」

「な、なんだと!?」

隼人は焦って立ち上がり黒板を見て瞬時に問題を確認し答えた。

「4あまり3っスね、ごめん先生ちょっと考え事してた。」

「え、あ、はい正解です・・・ありがとう真島君・・・(何かいつもと雰囲気が違うような・・・!?)」

そうして何とか問題なく授業を切り抜けた隼人は休み時間、麻衣がトイレに立ったタイミングで周囲に聞き込みを
開始する。

しかし一人ひとり聞いていては時間がかかる、もしダメだった場合に次の手を考える為にも・・・声を張り上げた。

「なあああ!みんな頼む聞いてくれ!俺今日学校終わったらどこ行くって言ってた!?」

ざわざわとクラスメイトが困惑の表情を見せた後教室内が静まり返る。

「おいどうしたんだよまじま、今日はまいちゃんとあそぶって言ってたじゃん!」

「どこかは分かんないけどいいところ行くんだーって言ってたよね?」

「麻衣ちゃんにじぶんで聞けばいいじゃん!」

今日俺が麻衣と遊ぶことは何故か皆が分かっていたがどうやら場所はぼかしていたらしい。

「遊ぶのは遊ぶんだがな・・・場所がよ・・・くそ、このままじゃ・・・」

この手では十分な情報は得られない、一旦隼人は聞き込み調査を諦め自分のランドセルの中や机の中を探してみることに。

「大事な約束なら・・・もしかすると何かメモを残している場合もある・・・何か、なにかないのか・・・!」

机の中はぐちゃぐちゃ、奥からはいつのかもわからない潰れたパンや授業参観の予定表・・・

国語のプリントや社会のプリントなどが大量に出て来た。

「まじまくんつくえきたなーい・・・」

近くを通った女子に苦情を言われそんな奴を睨みながら隼人は一枚の紙に辿り着く。

《はやちゃん、明日はかいぞくこうえんでまってるからね、わすれないでね!》

平仮名とまだ下手くそな字で書かれたメモ帳であった。

自分をはやちゃんと呼ぶのは麻衣だけ、そして他の紙がぐちゃぐちゃの中

この紙だけはとても綺麗に残っており渡されたのは数日以内と推定出来る。

“明日は”と書かれていることから渡されたのは昨日か?

ここに書かれている海賊公園とは海賊船がモチーフになっているアスレチック遊具がある
近所の公園だろう、そうなればこの紙に書かれていることが正解だとみて間違いない!!

隼人は思わずその紙を天に掲げる!!

「いよっっっしゃああああああああああああああああああああああああ!!」

クラス中の注目を浴び、麻衣も既に席に戻っている中の愚行!

「ちょっとはやちゃん何してるの!?それ見せないでよ!見られて誰か来たらヤダよ!!」

若干顔を赤らめる麻衣。

「いや、ごめん・・・今なら未来を変えられる気がしてな・・・!」

「何言ってるの・・・?だいじょうぶ?」

とりあえずミッションは達成、隼人は心から安堵した。

その後、滞りなく国語、体育、社会、理科と授業を進め掃除を終えあっという間に放課後を迎えた。

向かう先は海賊公園、急がなくては!そう思い下駄箱に向け学校内を走っていた時・・・

「ちょっと、いいかな真島君。」

呼び止めたのは担任の先生であった。

「あ、はい・・・先生どうかされましたか?」

急ぎなのにと思いながらも笑顔で対応した隼人はそのまま職員室へと連れていかれた。

その後自分の教員机に座った先生は隼人の顔をマジマジと見つめ質問する。

「今日の真島君・・・なんか変じゃない?何か・・・大人っぽいというか・・・」

突然痛いところを突いてくる先生に鼓動が跳ね上がる!

「(大人っぽいどころか中身は28ですからね!何ならこの時代のあんたより年上ってことになる!)」

「いつもはもっと・・・おちゃらけてるというか・・・子どもっぽい子どもなのに・・・何かあったの?」

そんなことを聞かれても説明など出来る筈もない。

大丈夫です先生、恐らく今日を過ぎればこの時代で言うところの“いつもの俺”に戻るはずです・・・

「い、いえ・・・先生の勘違いではありませんか?俺はいつも通りですよ・・・ははっ!」

誤魔化すたびに先生の眼差しが鋭くなる。

「ほら、やっぱりおかしいわ・・・いつもならこういう時あなたは目を泳がせて挙動不審になるもの。今はまっすぐ私を見てる・・・誤魔化し方もまるで大人の男性みたい・・・!!あなたは一体・・・?もしかして未来の隼人君が子どもの頃にタイムスリップしてきてるのかしら・・・?」

おいおいマジかよこの女!当ててやがる!!

鼓動が最早、太鼓の達人鬼モードに達した頃・・・先生は笑った。

「ふふ、映画の見過ぎね・・・そんなわけない、何かのキャラクターの真似をしているんでしょ?今の隼人君、紳士的でいいわよ。それじゃ・・・帰り遅くならないようにね。あと、宿題も忘れないように、それじゃさようならまた明日。」

いや何の為に呼び出されたんだと思いながらも静かに職員室を出た隼人は今度こそと急いで公園に向かう!

ハズだった、隼人が靴を履き外に出ると・・・

「おい、真島君・・・今帰るのかな・・・?」

そこにいたのは困り顔をした校長。

「え、えぇそうですけど・・・何か・・・?」

嫌な予感しかしない

「実はの、今他の先生方が出払ってて私も腰を痛めてしまっていての・・・あれを降ろしたいのじゃ」

校長の指差す先にあったのは天高く掲げられた国旗。

「手伝え・・・と。」

「いや、わしは無理じゃ・・・」

「なるほど“手伝え”じゃなくて“やれ”と」

「言い方はあれじゃが・・・頼めるかのお・・・」

確か校長は俺が6年の頃・・・つまりこの3年後心不全で亡くなった筈・・・そんな人の声を無下には出来ない。

ため息交じりに隼人は手伝うことに。

「はぁ・・・くそ、国旗降ろすの思いの外手順と時間がかかったな・・・!」

用事を済ませ気づけばもう夕焼けが見える。

“学校終わったら早くだよ”という約束は既に果たしていない。

それでも隼人は走った、海賊公園を目指して・・・!!
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