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終.旅の果て
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「・・・・・ふぅ、帰って来たのか・・・。」
ゆっくりと隼人は目を開ける、そこは変わらない教会の天井があった。
「随分思い切ったな・・・やれば出来るじゃないか、で?麻衣のことは諦めたんじゃなかったのか?」
床に寝たままの隼人に男が上から顔を覗き込むように声を掛けた。
「そのつもりだったんだけどね・・・俺はあいつの気持ちをずっと蔑ろにして来たんだって気づいた、二度のタイムリープで二度も告白されるなんて一体俺はどんだけあいつの気持ちをバカにして来たんだ・・・結果的に辿り着いた未来が今、情けない話だよ・・・ずっとずっと好きだったくせにさ、目の前にいるのが当たり前で居なくなるハズがないってずっと思ってた。でも正直になった時には、気づいた時には手遅れ・・・バカみてぇだ。もっと早く正直になれてればこんなことにはならなかったんだなって思った、そしてやっぱり俺は麻衣が大好きだ。」
照れ笑いを浮かべる隼人に男は手を差し伸べる。
「それでも、今お前は“過去の修正”を行った未来にいる、どうだ?未来は変えられたか?」
「このくだり何回やんの?結果がどうこう変わってる、なんてのはあんたが一番分かってるハズだ。」
隼人はその手を取って立ち上がった。
「ふふ、驚いたよ・・・まさか君がたった二回でここまでやるとはね。」
「それって・・・まさか!?ってなんだこの格好!?」
気が付けば隼人は薄汚いジャージからきっちりしたスーツ姿になっていることに気が付く。
「自分の目で確かめてくると良い、どの道これ以上過去は変えられないんだ。」
「あ、あぁ・・・!」
急いで部屋を出ようと駆け足で扉の前まで進んで、隼人は足を止めた。
「どうかしたのか?」
振り返り、深々と頭を下げる。
「あ、いや・・・ありがとう、ございました。」
「・・・礼には及ばん、過去を変えたのはお前だ。」
「それでも、このチャンスがなければここまで来られなかった、全部あんたのおかげだ。」
男はフッと小さく笑う。
「言ったろう、これは私のただの気まぐれだと・・・いいから早く行け。」
もう一度頭を下げ、隼人が扉を出るとそこにあったハズの扉はまるで扉など元からなかったように消えた
教会を出ると今までと変わらない晴天が待っていた。
でもどうする?状況が分からない・・・今俺は何をすべきなんだ?
まとまらない思考の中教会の近くを散策しているとポケットの中にあったスマートフォンが鳴った。
「・・・電話か、何かヒントが得られるか・・・?はい」
着信ボタンを押し電話に出る。
《もしもし、はやちゃん?ごめん、遅くなった・・・麻衣だよ。》
「あ、麻衣!?どうかしたのか?」
《うん、私決めたよ・・・はやちゃんにするか、新藤さんにするか・・・。》
深刻そうに話す麻衣の言葉に動揺を隠せない。
“俺にするか新藤さんにするか!?”
《長々待たせちゃってごめんね・・・私、ずっと悩んでた・・・小さい頃いっぱい守ってくれたはやちゃんと今の私を守ってくれる新藤さん、どっちと結婚するのが正解なのかなって・・・まさか、二人に同時にプロポーズされるなんて思っても見なかったけど・・・。》
「・・・!?(どうなってる、この世界線の麻衣はまだ結婚していない!?そして俺と新藤さんが同時に麻衣にプロポーズをした!?でも待て・・・おかしいぞ俺と新藤さんの接点がどこから生まれた?まずい大きく変わりすぎだこの未来!!)」
《大学の頃覚えてる?あそこが初めて3人で出会った場所だったね、それが未来にこんなことになるなんてね、びっくりしちゃうよね・・・はやちゃんもはやちゃんで一流企業に就職しちゃうし、新藤さんもそれに負けじと有名な会社に、二人のライバル的な関係ってもしかして最初っからこういう意味だったの?だとしたら何で気づけなかったのかな、あはは・・・ダメだね私・・・でも、今・・・とっても幸せ。大好きな二人からあんな風にプロポーズされてさ・・・でも、どっちか・・・選ばなきゃいけないんだね。》
「(そうか、この世界線では大学へ進んでそこで新藤さんと初めて会ったんだ、そして麻衣を巡って俺と新藤さんはライバル関係になって・・・同じ土俵の上にいる、俺は負けてないんだ・・・。)」
黙って聞くことしかできない隼人はひたすらに押し黙る。
《はやちゃん、新藤さんにはもう伝えたけどこれから大学の頃に3人で行った“みはらしの丘の頂上”に来て欲しい》
「みはらしの丘の頂上ね・・・分かった。」
《待ってるからね・・・》
そういうと電話はすぐに切れた。
とにかく向かう先が決まった、麻衣の中ではもう答えが出ているらしい。
進むしかないともういちど覚悟を決める隼人。
指定されたみはらしの丘まではそう遠くない、タクシーを使えばすぐ近くの距離だ。
「新藤さんももう来るらしいから・・・俺も急がないと。」
すぐにタクシーを捕まえ乗り込む。
「みはらしの丘までお願いします、法定速度内で出せる最速で。」
隼人の指示にタクシー運転手は反応することもなく突如全く関係のない言葉を吐く。
「いい顔になったな・・・決着を付けに行くのか。」
ん?初対面のはずだが・・・
「待て、あんたの声どっかで・・・」
「お、気づいたかいい観察眼だ、私だよ。」
そこにいたのは教会の例の男であった
しかし声だけで顔が違う
「あんた教会の外に出られたのか!?てかあんた顔が違うぞ!?」
タクシーはゆっくりと動き出す。
「まぁいわゆる憑依状態というやつだな、ちょっとばかしこの男の身体を借りた。しかしこの男の身体は不健康だ、タバコを吸い過ぎ酒を飲みすぎ食事も不摂生・・・今すぐでも人間ドックに行くべきだと私は考えるがお前はどう思う?」
「いや知らないけど・・・あんたこんなことも出来たんだな、でも何でこんなところに?」
「それは無論・・・お前の未来の顛末を見に来たのだ。正直楽しくて仕方がない。」
一切表情に変化はない、真顔のままだ
本当に楽しんでるのか?と疑問に思いながらもとりあえず黙ることにした。
それから10分程が経過した頃、タクシーは目的地に辿り着く。
「着いたか、よし隼人行ってこい。これがお前の改変した過去と未来だ!」
ガチャリと扉が開き半身が外に出たところで隼人は止まった。
「あぁ・・・ありがとな、そうだ、あんたに名前を付けてなかったな・・・変える者でどうだ?」
「変える者か・・・ふむ、そのままだが悪くない、ありがとう。」
「いいや、こちらこそだ・・・またどこかで。」
完全にタクシーを降りると、隼人は走って丘の頂上を目指した。
「なんだ、お前も呼ばれたのか真島・・・麻衣は俺のものだ、麻衣は俺を選ぶ。」
走ってる途中に馴れ馴れしく突如声を掛けてきたのは新藤浩介その人であった。
「あいつは物じゃないですよ・・・新藤さん、そんな扱いをするあんたに麻衣は渡せねえな!」
「なんで敬語なんだ?真島お前なんか変じゃないか?真島なのに真島じゃねえみたいだ。」
「うるせぇよ、ほっとけ・・・!(こっちにも事情があんだよ、俺からすればはっきり言ってあんたとは初対面だ!やりにくいにも程がある!!)」
走りにくいスーツで丘を登ること15分、二人は頂上に立つ一人の女性の姿を見る。
『麻衣だ!!』
さらに加速し身体をぶつけ合いながら丘を登っていく二人も、頂上に辿り着くころには共に体力が尽きていた。
「はぁはぁ・・・はぁ・・・一歩俺の勝ちだろ真島ァ!」
「ぜーーー・・・ぜーーー・・・バァカ目は節穴か新藤さん・・・俺の方が一歩勝ってた!」
「もう、またそうやって喧嘩して・・・こんな時まで・・・緊張して吐きそうだった私がバカみたい!」
地面に座り込む二人の前に現れたのはエンパイアドレスに身を包んだ麻衣だった。
「でも・・・こんなことになった以上、こんないつも通りの光景も今日限りなのかもね・・・。」
寂しそうに笑う麻衣
隼人と新藤は息がまだ切れながらも顔を見合わせて立ち上がる
「本当に、どっちかを選んでどっちかを捨てなきゃならないの・・・?そんなの・・・!!」
麻衣の頬に一粒の大きな涙が伝う
「どうして・・・?私にとって浩介もはやちゃんもどっちも大切なのに・・・今のままじゃいられないのね・・・大人になるって大変だね・・・。」
そこまで言ったところで麻衣は涙を拭いいつものキリっとした表情に戻る。
「ごめんね、最後の最後までこんなんで・・・はやちゃん、浩介さん・・・私が選ぶのは・・・」
柔らかく優しい風が吹き抜ける中・・・真島隼人の旅は終わりを告げる・・・
物語はここまで・・・
この先どうなったかは読んでくださった皆様で考え、決めて頂ければと思います。
正解はありません、この先の物語を作るのはあなたです。
それでは、短い間でしたが読んでくださった方々、本当にありがとうございました。
ゆっくりと隼人は目を開ける、そこは変わらない教会の天井があった。
「随分思い切ったな・・・やれば出来るじゃないか、で?麻衣のことは諦めたんじゃなかったのか?」
床に寝たままの隼人に男が上から顔を覗き込むように声を掛けた。
「そのつもりだったんだけどね・・・俺はあいつの気持ちをずっと蔑ろにして来たんだって気づいた、二度のタイムリープで二度も告白されるなんて一体俺はどんだけあいつの気持ちをバカにして来たんだ・・・結果的に辿り着いた未来が今、情けない話だよ・・・ずっとずっと好きだったくせにさ、目の前にいるのが当たり前で居なくなるハズがないってずっと思ってた。でも正直になった時には、気づいた時には手遅れ・・・バカみてぇだ。もっと早く正直になれてればこんなことにはならなかったんだなって思った、そしてやっぱり俺は麻衣が大好きだ。」
照れ笑いを浮かべる隼人に男は手を差し伸べる。
「それでも、今お前は“過去の修正”を行った未来にいる、どうだ?未来は変えられたか?」
「このくだり何回やんの?結果がどうこう変わってる、なんてのはあんたが一番分かってるハズだ。」
隼人はその手を取って立ち上がった。
「ふふ、驚いたよ・・・まさか君がたった二回でここまでやるとはね。」
「それって・・・まさか!?ってなんだこの格好!?」
気が付けば隼人は薄汚いジャージからきっちりしたスーツ姿になっていることに気が付く。
「自分の目で確かめてくると良い、どの道これ以上過去は変えられないんだ。」
「あ、あぁ・・・!」
急いで部屋を出ようと駆け足で扉の前まで進んで、隼人は足を止めた。
「どうかしたのか?」
振り返り、深々と頭を下げる。
「あ、いや・・・ありがとう、ございました。」
「・・・礼には及ばん、過去を変えたのはお前だ。」
「それでも、このチャンスがなければここまで来られなかった、全部あんたのおかげだ。」
男はフッと小さく笑う。
「言ったろう、これは私のただの気まぐれだと・・・いいから早く行け。」
もう一度頭を下げ、隼人が扉を出るとそこにあったハズの扉はまるで扉など元からなかったように消えた
教会を出ると今までと変わらない晴天が待っていた。
でもどうする?状況が分からない・・・今俺は何をすべきなんだ?
まとまらない思考の中教会の近くを散策しているとポケットの中にあったスマートフォンが鳴った。
「・・・電話か、何かヒントが得られるか・・・?はい」
着信ボタンを押し電話に出る。
《もしもし、はやちゃん?ごめん、遅くなった・・・麻衣だよ。》
「あ、麻衣!?どうかしたのか?」
《うん、私決めたよ・・・はやちゃんにするか、新藤さんにするか・・・。》
深刻そうに話す麻衣の言葉に動揺を隠せない。
“俺にするか新藤さんにするか!?”
《長々待たせちゃってごめんね・・・私、ずっと悩んでた・・・小さい頃いっぱい守ってくれたはやちゃんと今の私を守ってくれる新藤さん、どっちと結婚するのが正解なのかなって・・・まさか、二人に同時にプロポーズされるなんて思っても見なかったけど・・・。》
「・・・!?(どうなってる、この世界線の麻衣はまだ結婚していない!?そして俺と新藤さんが同時に麻衣にプロポーズをした!?でも待て・・・おかしいぞ俺と新藤さんの接点がどこから生まれた?まずい大きく変わりすぎだこの未来!!)」
《大学の頃覚えてる?あそこが初めて3人で出会った場所だったね、それが未来にこんなことになるなんてね、びっくりしちゃうよね・・・はやちゃんもはやちゃんで一流企業に就職しちゃうし、新藤さんもそれに負けじと有名な会社に、二人のライバル的な関係ってもしかして最初っからこういう意味だったの?だとしたら何で気づけなかったのかな、あはは・・・ダメだね私・・・でも、今・・・とっても幸せ。大好きな二人からあんな風にプロポーズされてさ・・・でも、どっちか・・・選ばなきゃいけないんだね。》
「(そうか、この世界線では大学へ進んでそこで新藤さんと初めて会ったんだ、そして麻衣を巡って俺と新藤さんはライバル関係になって・・・同じ土俵の上にいる、俺は負けてないんだ・・・。)」
黙って聞くことしかできない隼人はひたすらに押し黙る。
《はやちゃん、新藤さんにはもう伝えたけどこれから大学の頃に3人で行った“みはらしの丘の頂上”に来て欲しい》
「みはらしの丘の頂上ね・・・分かった。」
《待ってるからね・・・》
そういうと電話はすぐに切れた。
とにかく向かう先が決まった、麻衣の中ではもう答えが出ているらしい。
進むしかないともういちど覚悟を決める隼人。
指定されたみはらしの丘まではそう遠くない、タクシーを使えばすぐ近くの距離だ。
「新藤さんももう来るらしいから・・・俺も急がないと。」
すぐにタクシーを捕まえ乗り込む。
「みはらしの丘までお願いします、法定速度内で出せる最速で。」
隼人の指示にタクシー運転手は反応することもなく突如全く関係のない言葉を吐く。
「いい顔になったな・・・決着を付けに行くのか。」
ん?初対面のはずだが・・・
「待て、あんたの声どっかで・・・」
「お、気づいたかいい観察眼だ、私だよ。」
そこにいたのは教会の例の男であった
しかし声だけで顔が違う
「あんた教会の外に出られたのか!?てかあんた顔が違うぞ!?」
タクシーはゆっくりと動き出す。
「まぁいわゆる憑依状態というやつだな、ちょっとばかしこの男の身体を借りた。しかしこの男の身体は不健康だ、タバコを吸い過ぎ酒を飲みすぎ食事も不摂生・・・今すぐでも人間ドックに行くべきだと私は考えるがお前はどう思う?」
「いや知らないけど・・・あんたこんなことも出来たんだな、でも何でこんなところに?」
「それは無論・・・お前の未来の顛末を見に来たのだ。正直楽しくて仕方がない。」
一切表情に変化はない、真顔のままだ
本当に楽しんでるのか?と疑問に思いながらもとりあえず黙ることにした。
それから10分程が経過した頃、タクシーは目的地に辿り着く。
「着いたか、よし隼人行ってこい。これがお前の改変した過去と未来だ!」
ガチャリと扉が開き半身が外に出たところで隼人は止まった。
「あぁ・・・ありがとな、そうだ、あんたに名前を付けてなかったな・・・変える者でどうだ?」
「変える者か・・・ふむ、そのままだが悪くない、ありがとう。」
「いいや、こちらこそだ・・・またどこかで。」
完全にタクシーを降りると、隼人は走って丘の頂上を目指した。
「なんだ、お前も呼ばれたのか真島・・・麻衣は俺のものだ、麻衣は俺を選ぶ。」
走ってる途中に馴れ馴れしく突如声を掛けてきたのは新藤浩介その人であった。
「あいつは物じゃないですよ・・・新藤さん、そんな扱いをするあんたに麻衣は渡せねえな!」
「なんで敬語なんだ?真島お前なんか変じゃないか?真島なのに真島じゃねえみたいだ。」
「うるせぇよ、ほっとけ・・・!(こっちにも事情があんだよ、俺からすればはっきり言ってあんたとは初対面だ!やりにくいにも程がある!!)」
走りにくいスーツで丘を登ること15分、二人は頂上に立つ一人の女性の姿を見る。
『麻衣だ!!』
さらに加速し身体をぶつけ合いながら丘を登っていく二人も、頂上に辿り着くころには共に体力が尽きていた。
「はぁはぁ・・・はぁ・・・一歩俺の勝ちだろ真島ァ!」
「ぜーーー・・・ぜーーー・・・バァカ目は節穴か新藤さん・・・俺の方が一歩勝ってた!」
「もう、またそうやって喧嘩して・・・こんな時まで・・・緊張して吐きそうだった私がバカみたい!」
地面に座り込む二人の前に現れたのはエンパイアドレスに身を包んだ麻衣だった。
「でも・・・こんなことになった以上、こんないつも通りの光景も今日限りなのかもね・・・。」
寂しそうに笑う麻衣
隼人と新藤は息がまだ切れながらも顔を見合わせて立ち上がる
「本当に、どっちかを選んでどっちかを捨てなきゃならないの・・・?そんなの・・・!!」
麻衣の頬に一粒の大きな涙が伝う
「どうして・・・?私にとって浩介もはやちゃんもどっちも大切なのに・・・今のままじゃいられないのね・・・大人になるって大変だね・・・。」
そこまで言ったところで麻衣は涙を拭いいつものキリっとした表情に戻る。
「ごめんね、最後の最後までこんなんで・・・はやちゃん、浩介さん・・・私が選ぶのは・・・」
柔らかく優しい風が吹き抜ける中・・・真島隼人の旅は終わりを告げる・・・
物語はここまで・・・
この先どうなったかは読んでくださった皆様で考え、決めて頂ければと思います。
正解はありません、この先の物語を作るのはあなたです。
それでは、短い間でしたが読んでくださった方々、本当にありがとうございました。
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