サンタさん、ありがとう!

広瀬あかり

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サンタなんていない!

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さ、タイトル通りです。

内容紹介での茶番もこんなものでいいですか?

どうも、滝沢華凛です、14歳の中学生です。

今年も億劫な時期がやってきました、クリスマス。

まぁ~今年も楽しそうでした、うちの両親は・・・特にパパ。

《華凛ちゃん、今年はサンタさんに何を頼むのかな?サンタさん今年は奮発するよって言ってたぞ~!》

ニッコニコでした、何故パパはサンタさんと直でコネクションがあるのでしょう?

それはもう簡単な話です、パパがサンタさんだからです。

プレゼントの包装紙は近所のお店のものだし、クリスマスの夜になると寝ている私の枕元で両親がひそひそと嬉しそうに騒ぎながらプレゼントが置きます、【普通に起きます】これで“気づくな”という方が無理でしょう。

ですが、ここでサンタなんていないよ、と言ってしまうのは無粋というものです。

楽しんでいるのですからここは付き合ってあげるのが本当の大人ではないのでしょうか。

今年も例年通りのテンプレの子どもらしい舞い上がり喜びで攻めるつもりです。

それでパパとママは笑顔になり、私も欲しいものを貰う・・・Win-Winです。

そんな訳で今日は24日、家族でクリスマスパーティをしました。

豪華なオードブルにローストチキン、それからケーキを食べてクリスマスのお祝いをしました。

後は寝るだけです・・・パパからも“サンタさんが待っているから早く眠るんだよ”との指示がありました。

世界中を回っている筈なのになぜうちだけ

ピンポイント訪問を待っているのでしょうね(笑)

そんなこんなで寝支度を済ませて私はお布団に入り眠りました。

ちょうどまどろみ始めた頃、毎年のひそひそ祭りが始まります。

もう、まだちょっと早いよ、なんて思いつつ私の意識は闇へ落ちて行きました・・・。


不思議なことに、夜中に目が覚めてしまいました。

昨晩食べ過ぎたせいでしょうか、胃が少し疲れているような気もするので原因はそれでしょう。

私が一旦布団から起き電気をつけグッと体を伸ばすと枕元には小さな包みと大きな包みの二つがありました。

おや?例年であれば一つです、包装紙などから察するに大きい方がパパとママからでしょう。

頼んでおいたシルバニ○ファミリーのおっきなお家のおもちゃが入っている筈です。

とっても嬉しいです、好きですシルバ○アファミリー・・・かわいいです、たくさん遊びます!

私は大人なのでこういうのが逆に大好きです!大人なので!

ではこっちの黒い包装紙に包まれた小さな箱のようなものは?

私は恐る恐る開けてみることにしました。

「え?」

開けてみるとそこにあったのは“特別乗車券”とだけ書かれた小さな紙でした。

「なにこれ・・・?」

“それ”に触れた途端です!

「なになになに!?」

その紙から虹色の光が噴き出し、私の身体を包みました!

浮き上がる私の身体!

頭の中はもうパニックです!!

私の身体は実体を失うように透けて天井を抜けそのまま自宅の屋根の上に飛び出ました!

「幽体離脱・・・?夢・・・・?」

様々なことを考え自分を落ち着かせる努力をしていると、遠くの空にチカチカと光が見えました。

「な、なに・・・?」

ポーーー!というけたたましい汽笛の音が耳を劈きます!

それは空を翔る蒸気機関車でした

「うっそぉ・・・!」

電車は私の前で停車し、ドアが開きます、中には誰もいないようです。

私はふわふわと飛んで静かに乗車しました・・・。

電車の中に入ると、身体に重力が戻り私は誰もいない電車の座席に座ります。

《本日は世界中の子ども行き・・・特別サンタ号にご乗車いただきありがとうございます》

妙なアナウンスが耳に入ってきました。

「特別サンタ号・・・?」

《現在、窓から下・・・街並みを見て頂くと本車両から落ちて行く光を見て頂けるかと思います、それが私、サンタから子どもたちへのプレゼントです。》

華凛は落ちないよう身体を固定しながら窓から身を乗り出し下を見ると、確かに落ちて行くキラキラ光る星のようなものを目視で確認する。

「こんなのがプレゼントなの・・・?」

《この光は子どもたちのお家に辿り着くと、眠るその子の思考を読み取り心から望むものに枕元で形を変えます》

「すごい・・・サンタさんって本当にいたんだ・・・で、でもどうして私が・・・?」

その時、突如目の前に現れた人物に華凛は驚きました。

「ふぉっふぉっふぉっ・・・今日はサンタ体験に来てくれてありがとう。」

そこに立っていたのは白い大きなひげと赤い服と帽子をかぶったまさしくイメージ通りのサンタ!

「サンタさんだ!本物!?」

「ふぉっふぉっふぉっ・・・ああ本物だとも、その証拠にこれを君に・・・。」

「こ、これは・・・?」

サンタから手渡されたのは小さな袋

「プレゼントの元だよ、これを手で掴み町に振りまけば子どもたちにプレゼントが届く、さぁやってみなさい」

「・・・・・」

ドキドキしながら袋の中に手を入れると、華凛の手には物質でも粉でもない不思議な感覚が・・・

それを潰さないように、壊さないようにそっと掴んで機関車の窓から振りまきます。

キラキラと落ちて行く光に感動しながら私は世界各国を回りたくさんのプレゼントの元を振りまきそのお仕事と世界旅行を楽しみました。

「ふぉっふぉっふぉっ・・・上手だ、手伝ってくれてありがとう・・・!これでみんな幸せじゃ・・・!」

笑顔で嬉しそうに笑うサンタを見て華凛もなんだか嬉しくなり一緒に笑った。


そして次に気が付いた時、私はいつの間にか自分の布団の上に戻っていた。

付けたはずの電気も消えており、開けたはずの黒い包装紙も小さな箱も消えています。

「夢・・・だったのかな・・・?」

でも、私はそれが夢じゃなかったことにすぐに気づきました。

何故なら私の左手には 例の【特別乗車券】が握られており、その右には切符鋏で穴が開けられていたから・・・。

そして裏には小さく ありがとう と書かれていました。

あれは夢ではなかった、私はサンタさんのお手伝いをしたんだ!

カーテンを開ければ綺麗な青空が広がっていました。

素敵な体験をさせてくれてこちらこそありがとう、サンタさん!!
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