デビルフェイス

ガトリングレックス

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愛編

第1話デビルな彼氏

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彼女の名前はマアキミク。
28才の高級レストランで働く料理人である。
ミクの楽しみ、それはアパートの部屋に帰る事だ。
カギを開け部屋に帰ると、そこにいるのは彼氏のショウ。
「お帰り、ミクちゃん」
「ただいま、ショウ君」
2人の出会いは5年前、ミクの母から本が届く。
それはデビルフェイスと言われる本。
そこから現れたのは、ショウだった。
決してイケメンと言うわけではない。
だが優しい性格で、場を明るくしてくれる、良い人だ。
「ごめんね、すぐごはん作るから」
「大丈夫、俺が作っておいたから」
「えっ、そうなの、ありがとう」
ミクは手を洗い、食卓を見ると、シャケの塩焼き、ワカメの味噌汁、たけのこの煮付けが置いてある。
「おー、今日も美味しそうじゃん」
「さっ、冷めないうちに食べよっか」
カーペットに腰を下ろして、2人共食事を食べ始める。
「我ながらうまいなこれ」
「確かに、腕上げたんじゃない」
ミクの褒め言葉にショウは照れる。
「ちゃんとフライパンとか鍋も洗って、拭いてくれてるし、合格点だね」
「ありがとうございます師匠」
彼がどんな存在で、どこ生まれなのか、ミクは知らない。
ただ分かるのは、それを知ったら、今の関係が壊れてしまうと言う事だ。
だから知らないままでいたい。
味噌汁を飲み、ごはんをかきこむ。
「ニュースで見たんだけど、最近デビルって言う殺人鬼達が暴れてるんだって」
「最近デビルのニュースばかりね、ネットニュースでもデビルの事ばっかし。まあ軍隊がなんとかしてくれるでしょ」
「だね」
ショウはそう言うと、テレビをつける。
ちょうどミクが好きなバラエティー番組がやっていた。
「ねぇショウ君」
「うん? どうしたミクちゃん」
「結婚しよ」
「良いの、仕事もしない、こんなニートと結婚して」
「なに言ってるの。掃除洗濯、ゴミ出し、ごはん作り、色々やってくれてるじゃない。それで十分よ。だから、ねっ。お願い」
シャケを箸で切り、ごはんにのせ、食べる。
「分かった。休みの時婚姻届を提出しようか」
それを聞いてミクは安心したのか、心の中で(やったぜ)とガッツポーズをとった。

数日後、2人は婚姻届をもらうため車で市役所に向かう。
「名字のところフユキって書いておいてくれる」
「分かった。俺名字がないから偽名使わなきゃね」
「そう、だから私はフユキミクになるの、そこんところよろしくね」
「オーケー」
そんな会話をしていると、軍隊の兵士が「止めろ」と言って来た。
一旦車を止め、ミクは車から出る。
「どうかしたんですか」
「最近デビルの出没情報が出ている。なにか知らないか」
「いえ知らないですけど」
「そうか。引き止めてすまなかった。行ってよし」
そう言われ、車に戻り、走らせる。
「なに言われたの」
「なんかデビルが出たみたい。気をつけていかないとね」
「うん、襲われたら溜まったもんじゃないからな」
ショウの笑みを、ミクは運転中だったので見る事ができなかった。

数分後、市役所に到着し、自動ドアを入ろうとする。
だがやめた。
その理由、それは首輪を付けた巨大な犬がいるからだ。
口には血が溢れ出ていて、側に死体が転がっている。
(こいつもしかして、市役所の人達を殺した?)
ミクの脳内に嫌な予感が過ぎる。
「ミクちゃん、ここは危険だよ、早く逃げよう」
「待って。こう言う時は背中を見せない様にした方がいいの」
「それは狼の話だろ、相手はデビルに決まってる、兵士が言ってたのはこいつだよ」
「つまり見た目で判断しちゃダメって事か」
そんな事を言っている間に、デビルが自動ドアを破壊しながら襲いかかって来た。
「やっぱりこうなるのねー!?」
ショウはそう叫びながらミクの手を掴み、その場から逃げる。
車に乗る余裕なんてない、とにかく走って逃げる。
すると障害者だろうか、青年が横を通りすぎる。
デビルがいるから逃げろ、なんて言っている余裕なんてない。知って死ぬより、知らないまま死ぬ方が楽に死ねるだろう。
デビルは青年に牙をむき出しにして飛びかかる。
「ジャスティス!」
その叫びに応じて召喚されたデビル、ジャスティスがデビルを膝蹴りで吹き飛ばす。
アスファルトの道に激突し、悲鳴の様な鳴き声を鳴らす。
「動物型か、喋れないデビルだから自己紹介はできないな」
「犬みたいだから名前はきっとドッグだね」
「番犬を暗示する者と言ったところか。まあ良い。デビル戦なら俺は負けん。行くぞセイギ」
「おうともさ」
ジャスティスはスクリューから〈シューティングシルバー〉を取り出し、ドッグに銃口を向ける。
ドッグは立ち上がると、遠吠えを上げる。
すると、野良犬達が集まり、目を赤く光らせながらジャスティスに襲いかかって来た。
「なに!?」
動揺しつつ、ジャスティスは野良犬達が正義か悪か計測する。
「みんな正義だ」
「そうか、犬達はただ操られているだけ、純粋な犬には悪の要素がないんだ」
ジャスティスの能力〈ジャスティスウィン〉は悪に対して有効だが、正義に対しては無力なのだ。
その光景を見て、ドッグは笑っている様な表情をした。
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