21 / 46
バラダザ編
第21話 可能性の戦士
しおりを挟む
逃走に成功したZトレーラー。
光炎はカーナビを確認しながら完成したZ2+とZ3+が待つ製造所に向かっていた。
長時間の戦いで疲れが見え始めた如鬼はZ3を手早く着脱し、変身を解除したヒサと六問、そして幕昰に冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターが入っているペットボトルを手渡す。
「ありがとう」
「いいえ。それより、あなたが本者の六問日叉さんですね?」
感謝の言葉に対して質問をする彼女に、彼は表情を変えず「どうしてそう思うんだい?」と質問で返す。
すると幕昰が「どうしてもなにもないだろう」と口を挟む。
「お前が六問だってことは分かってるんだ。如鬼くんが装着しているZ3のAIがデータベースから特定したんだよ」
その発言に対して言い訳をしようとした時だった。
「もうやめてください六問さん! 偽者である俺が言えたことじゃないですけど。あなたには六問と言う男として生きてほしいんです!」
「ヒサ君………」
自分を否定してでも、守りたい者がいる。
その考えは確かに勇気ある考えだ。
しかしそれは時として人を傷つけることがある。
「六問、ヒサ、お前達は個々の人間だ。偽者とか本者とかじゃない。一緒に戦ってくれるな」
「………はい」
少し悩み顔をしながらも、返答を返す六問に笑みをこぼすヒサ。
だが如鬼には納得があまり出来ていない様子。
「つまり、これまで共に戦っていた六問さんは………偽者だった………と言うことですか?」
「おいおい、戦友に向かってそれはないぜぇ。さっき言っただろう。六問は六問、ヒサはヒサだってよぉ。まあ硬い事は考えるな。これからも頑張って行こうぜ」
幕昰はそう言ってキレイな歯を見せながら右手の親指を立て、グッジョブの体勢をとる。
それでも彼女にとってはなにか裏切られた気持ちが過ぎる。
あの英雄とも言われたザーガと協力関係を築いていた愉悦感。
それが壊れたような感覚があり、表情が曇るのだった。
最初は憧れでもなんでもなかった。
元々彼女はZ3の資格者になるために鍛え続けた言わば戦闘マシーンだった。
親と兄と呼んでいるのは血の繋がっていない義理の家族である。
心配してくれたり気にかけてくれる良い家族だが、心底どうでもよかった。
元の父は小学5年の頃Z1の戦闘訓練の際、誤射を受け死亡した。
母は彼女が中学生の頃にうつ病を発症し、入院してから会ったことがない。
後に堕天使によって殺されたことが判明したが、その頃にはZ3の装着者として認められた時期である。
別に父の後を継ぎたいとか、母を殺した堕天使への復讐とか、そんなんじゃない。
ザーガがいない今、戦えるのは自分だと証明したい。
そのために10代から鍛えたこの体で、ザーガよりも強い戦士として認められたい。
そんな気持ちからAIとのシンクロ率が高くなり、操り人形の様に現在もなっている。
そんな中で英雄であるザーガを実物を見た時、彼女は最初何にも思っていなかった。
だがローカスト・ダークエンジェル戦において、彼への見る目が変わった。
初めて、初めて自分が憧れる存在に出会えた瞬間である。
その彼が偽者だと分かるまでは………
不満そうな表情をする如鬼をカメラ越しに覗いていたZ3のAIは感情を分析する。
『これは怒った時の感情の1つ、裏切られたって言うのかな? ふーん。如鬼がこんな感情を出すなんて。まあそれぐらい衝撃的なことだよね』
自己分析を完了し、彼女をより強くするため様々なことをデータベースで学習するのだった。
一方その頃製造所では、奇襲を仕掛けた堕天使であるライオン・ダークエンジェルが避難中の作業員達をモーニングスターで蹴散らしていた。
獅子の頭に金色の王冠、強靭な筋肉に黒きの装飾、鋭い爪と牙はまさに百獣の王と呼ばれるに相応しい存在である。
「ウォーノウ様が倒されても、その意思は受け 継がれる。これ以上、牙を向くことは許さんぞ!」
モーニングスターを勢いよく振り回し、マシンを次々と破壊して行く。
そんな中駆けつけたZ2のチームはライオン・ダークエンジェルを囲み、〈アーチャー〉の銃口を向けた。
「その程度の武器で勝てると、本当に思っているのか?」
「聞き耳を持つな! 撃てぇぇぇぇ!」
引き鉄を弾こうとした瞬間突然目の前に武装したメスのライオンが現れ、飛びかかられた。
「こいつら!? 一体どこから!?」
「グッ、ウワァァァァァ!?」
首に被りつき引き摺り回すライオン達、その光景に堕天使は取り逃がした隊長格のZ2にゆっくりとモーニングスターを構え、繰り出した刺々しいハンマーが頭蓋骨を破壊するのだった。
待機していた軍用車両のモニター越しで部隊の行動を観ていた兵士達は戸惑いを感じていた。
Z2のチームが1体の堕天使にこうも簡単に葬られている。
その現状が受け入れられないのだ。
不意打ちとは言え今まで無敗だった彼らがあっさりと負けるなんて………
激震が走る中Zトレーラーが到着、光炎がドアを開け、車両に駆け寄って来る。
「どうしたんですか?」
「どうもこうもない。堕天使1体にZ2の部隊が壊滅させられた。これ以上の戦闘続行は戦力的に不可能」
「分かりました。すぐにZ3とザーガを向かわせます。あとはお任せてください」
如鬼達の体力的にも無理はさせたくはない。
しかしここでZ2+とZ3+を破壊される訳にはいかない。
「ターゲットは部下の武装したメスライオン達を引き連れている。かなりの強敵だぞ」
「私も覚悟しています。いくら最新型の兵器でも、英雄でも、負ける可能性はあることを。それでも勝つ可能性に、私は賭けたいんです」
真剣な眼差しでこちらを見つめる光炎に、兵士は硬い表情で「頼む」と一言言うのだった。
光炎はカーナビを確認しながら完成したZ2+とZ3+が待つ製造所に向かっていた。
長時間の戦いで疲れが見え始めた如鬼はZ3を手早く着脱し、変身を解除したヒサと六問、そして幕昰に冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターが入っているペットボトルを手渡す。
「ありがとう」
「いいえ。それより、あなたが本者の六問日叉さんですね?」
感謝の言葉に対して質問をする彼女に、彼は表情を変えず「どうしてそう思うんだい?」と質問で返す。
すると幕昰が「どうしてもなにもないだろう」と口を挟む。
「お前が六問だってことは分かってるんだ。如鬼くんが装着しているZ3のAIがデータベースから特定したんだよ」
その発言に対して言い訳をしようとした時だった。
「もうやめてください六問さん! 偽者である俺が言えたことじゃないですけど。あなたには六問と言う男として生きてほしいんです!」
「ヒサ君………」
自分を否定してでも、守りたい者がいる。
その考えは確かに勇気ある考えだ。
しかしそれは時として人を傷つけることがある。
「六問、ヒサ、お前達は個々の人間だ。偽者とか本者とかじゃない。一緒に戦ってくれるな」
「………はい」
少し悩み顔をしながらも、返答を返す六問に笑みをこぼすヒサ。
だが如鬼には納得があまり出来ていない様子。
「つまり、これまで共に戦っていた六問さんは………偽者だった………と言うことですか?」
「おいおい、戦友に向かってそれはないぜぇ。さっき言っただろう。六問は六問、ヒサはヒサだってよぉ。まあ硬い事は考えるな。これからも頑張って行こうぜ」
幕昰はそう言ってキレイな歯を見せながら右手の親指を立て、グッジョブの体勢をとる。
それでも彼女にとってはなにか裏切られた気持ちが過ぎる。
あの英雄とも言われたザーガと協力関係を築いていた愉悦感。
それが壊れたような感覚があり、表情が曇るのだった。
最初は憧れでもなんでもなかった。
元々彼女はZ3の資格者になるために鍛え続けた言わば戦闘マシーンだった。
親と兄と呼んでいるのは血の繋がっていない義理の家族である。
心配してくれたり気にかけてくれる良い家族だが、心底どうでもよかった。
元の父は小学5年の頃Z1の戦闘訓練の際、誤射を受け死亡した。
母は彼女が中学生の頃にうつ病を発症し、入院してから会ったことがない。
後に堕天使によって殺されたことが判明したが、その頃にはZ3の装着者として認められた時期である。
別に父の後を継ぎたいとか、母を殺した堕天使への復讐とか、そんなんじゃない。
ザーガがいない今、戦えるのは自分だと証明したい。
そのために10代から鍛えたこの体で、ザーガよりも強い戦士として認められたい。
そんな気持ちからAIとのシンクロ率が高くなり、操り人形の様に現在もなっている。
そんな中で英雄であるザーガを実物を見た時、彼女は最初何にも思っていなかった。
だがローカスト・ダークエンジェル戦において、彼への見る目が変わった。
初めて、初めて自分が憧れる存在に出会えた瞬間である。
その彼が偽者だと分かるまでは………
不満そうな表情をする如鬼をカメラ越しに覗いていたZ3のAIは感情を分析する。
『これは怒った時の感情の1つ、裏切られたって言うのかな? ふーん。如鬼がこんな感情を出すなんて。まあそれぐらい衝撃的なことだよね』
自己分析を完了し、彼女をより強くするため様々なことをデータベースで学習するのだった。
一方その頃製造所では、奇襲を仕掛けた堕天使であるライオン・ダークエンジェルが避難中の作業員達をモーニングスターで蹴散らしていた。
獅子の頭に金色の王冠、強靭な筋肉に黒きの装飾、鋭い爪と牙はまさに百獣の王と呼ばれるに相応しい存在である。
「ウォーノウ様が倒されても、その意思は受け 継がれる。これ以上、牙を向くことは許さんぞ!」
モーニングスターを勢いよく振り回し、マシンを次々と破壊して行く。
そんな中駆けつけたZ2のチームはライオン・ダークエンジェルを囲み、〈アーチャー〉の銃口を向けた。
「その程度の武器で勝てると、本当に思っているのか?」
「聞き耳を持つな! 撃てぇぇぇぇ!」
引き鉄を弾こうとした瞬間突然目の前に武装したメスのライオンが現れ、飛びかかられた。
「こいつら!? 一体どこから!?」
「グッ、ウワァァァァァ!?」
首に被りつき引き摺り回すライオン達、その光景に堕天使は取り逃がした隊長格のZ2にゆっくりとモーニングスターを構え、繰り出した刺々しいハンマーが頭蓋骨を破壊するのだった。
待機していた軍用車両のモニター越しで部隊の行動を観ていた兵士達は戸惑いを感じていた。
Z2のチームが1体の堕天使にこうも簡単に葬られている。
その現状が受け入れられないのだ。
不意打ちとは言え今まで無敗だった彼らがあっさりと負けるなんて………
激震が走る中Zトレーラーが到着、光炎がドアを開け、車両に駆け寄って来る。
「どうしたんですか?」
「どうもこうもない。堕天使1体にZ2の部隊が壊滅させられた。これ以上の戦闘続行は戦力的に不可能」
「分かりました。すぐにZ3とザーガを向かわせます。あとはお任せてください」
如鬼達の体力的にも無理はさせたくはない。
しかしここでZ2+とZ3+を破壊される訳にはいかない。
「ターゲットは部下の武装したメスライオン達を引き連れている。かなりの強敵だぞ」
「私も覚悟しています。いくら最新型の兵器でも、英雄でも、負ける可能性はあることを。それでも勝つ可能性に、私は賭けたいんです」
真剣な眼差しでこちらを見つめる光炎に、兵士は硬い表情で「頼む」と一言言うのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる