チェンジソルジャーザーガ

ガトリングレックス

文字の大きさ
30 / 46
ファパー編

第30話 不死鳥の戦士

しおりを挟む
堕天使の虐殺が絶えないこの世の中、しかしニュースなどで触れられるのは軽い程度。
人間は慣れていく生き物、過去に怪人の被害を受けたことで当たり前の様になっている恐ろしさ。
そんな中授かれし戦士達は下界していた超級堕天使であるファパーに苦戦していた。

「これが………超級堕天使の実力………」

「ふん、弱い。神に少しばかし力を貰ったところで、俺には勝てぬ。倒すならばザーガを連れて来い。我が勢力が使い捨ての駒ではないことを神に証明するためには、お前達では弱すぎる」

圧倒的力の前に倒れ込む戦士に、捨てられぬポーンは呆れた様子で後ろ側の首から片手で持ち上げる。
そして上空に放り投げ、次元の裂け目から大剣を召喚した。

「弱き命、この剣に捧げよ」

上空では身動きが取れない、しかし授かれし戦士には天使の翼がある。
おそらく相手はその大剣を自分の着地点に設置し突き刺す予定なのだろう。
この翼で飛行すれば反撃も容易だ。

翼を羽ばたかせようとすると、予想外のことが待ち受けていた。

なんとファパーは大剣を逆手で持ち、投げ槍の如くこちらに勢いよく投げて来たのだ。

「だから言っただろう。弱き命、この剣に捧げよと」

避けるまもなく授かれし戦士の腹部は貫かれ急降下しながら死亡、そのまま地面に叩きつけられた。

大剣が高速で主人の元へ戻るとそれを掴み取り、相手のあまりの弱さに思わず咆哮を上げる。
すると発射音と共にミサイルが4発同時に飛んで来た。

(新手か?)

大剣を旋風を巻き起こすように右手のスナップを効かせることで高速回転、ミサイルから身を防ぐ。
だがあまりの爆風に思わず後退りする。

「敵はワイバーンの攻撃を防ぎました。これよりアーチャーディーでの攻撃を開始します」

ミサイルを放ったのはパワードスーツZDズーディーを装着した自衛隊所属の軍人である如鬼現人、〈ワイバーン〉を仲間へ渡し代わりにサブマシンガンの〈アーチャーディー〉を右手に装備した。

「お前が禁断の戦士か。人間がいくら強力な武装をしたとしても、死に近づくことに何の価値がある?」

「………別に近づきたくて近づいているわけじゃない。軍人は命令があればそれ通りに動く、それにZDズーディーは死の兵器じゃない。それを今ここで証明する」

装着者として、家族のためにここで死ぬわけにはいかない。
〈アーチャーディー〉の銃口をファパーに向け、現人はトリガーを引く。
撃ち出される銃弾を大剣で斬りながら走り近づいて来る敵に対し、連射しつつカウンターの左フックを仕掛ける。

(安易だな)

だが戦闘においてファパーの熟練度は現人より遥かに高い。
大剣を盾にすると見せかけ勢いのまま刺し貫く。
相手の拳よりリーチの長い大剣でトドメを刺すことは簡単なことだ。

「その攻撃は読んでいる」

それに対して禁断の戦士は左拳で刀身を殴り、大剣を破壊して見せた。

ヘッドパーツのスキャナーには〈スー〉よりも格段に優れたAIエーアイが搭載され、敵の攻撃を120パーセントつまり完全な予測が可能になっている。
しかし目と脳にかなりの負荷が掛かるため、長時間の装着はできない。
それを悟られないようにしなければ、時間稼ぎをされては目も当てられない。

あまりの破壊力に動揺すると同時に、ファパーは好敵手の出現に興奮すら覚えた。

突っ込んだ勢いのまま頭突きを繰り出すも、予測され顎を蹴り上げられる。
銃口を向けられ即座に堕天の翼を羽ばたかせ、回避行動を取る。
しかしそれもAIエーアイの予測通り、瞬時に現人は〈アーチャーディー〉を敵に向けて連射する。

(俺の攻撃はすべて予測される。ならば仕方あるまい。あまり頼りたくなかったが)

ファパーは変身に躊躇ためらいつつ、堕天使の誇りに賭けて右腕に取り付けた黒き腕輪を左手で重ねる。

「変身!」

掛け声と共に全身が闇に包まれ、銃弾をすべて吸収した。

「なんだ。まさか、あれが堕天使の変身……」

予想通りファパーは変身を完了し、新たな姿を表す。
それは銀色に輝き、不死鳥の如く激しい炎の様なトゲトゲしい造形をした頭と顔に赤き複眼があり、口にはレーザーキャノン砲を搭載、筋肉質になっている。

「これが俺の新たな姿。再生を繰り返しより強くなる。お前では殺すことは不可能だ。名を名乗るならば、そう、メタルフェニックス・ダークエンジェルと言ったところか」

「メタル………フェニックス………いや、あのザーガが倒せた相手だ。俺だって」

「ほぉー。ザーガと自分が対等と戦闘力だと思っているのか。愚かな。あの戦士は成長を続けている。限界のあるお前が並べる器ではない」

ファパーが道路に降り立つとまるで地球が拒否反応を起こしているように地面が震え始める。
その光景に授かれし戦士達も完全に確信した。

「逃げろ! 君ではこの悪魔を倒すことはできない!」

忠告を聞いてもなお、現人は戦う意志を燃やし続ける。
すると後輩の自衛官が〈ワイバーン〉を渡してきた。

「現人さん、上からの命令です。時間をかけるな、速やかに撃破しろと」

「………了解した。ここで終わらせる」

4連装型ランチャーを敵に向け、ケーブルを腰部分の電源に繋ぐ。
余裕を見せるようにゆっくりと近づいて来るメタルフェニックス・ダークエンジェルに〈ワイバーン〉を向ける。

「ファイヤ」

AIエーアイの指示通りトリガーを弾く。
撃ち出される4弾のミサイル、これを食らえばいくら再生できようがひとたまりもない。

勢いのままにファパーの胸に激突すると、爆発を引き起こした。
だがAIエーアイは生体反応を検知、攻撃体勢の続行をうながされる。

(ウソだ。あの強力な攻撃を受けて倒せないなんて………)

予想外の生命力に恐怖する現人だったが、両手を拳にし自分をふるい立たせる。

「倒したことを確信しないあたり、そこは褒めてやる。だがその程度の攻撃で俺を消し飛ばすことができる。そう思っていたなら、それは間違いだ」

黒煙こくえんが晴れて行くと期待ハズレだと吐き捨て、再生を完了した不死鳥の姿がそこにはあったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...