今時な死神と不死身な嫌われ者

ガトリングレックス

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第9話相対すらできない

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仕事帰り。
夜道をコンビニ袋を持ち、リュックサックを背負って歩くコウ。
(最近ヤマト忙しくて帰って来ないなぁ、まあ毎度の事だけど)
コンビニで買ったバナナオーレをグビグビと飲み、ペットボトルのフタを閉め、コンビニ袋に入れる。
「プヘー、やっぱバナナオーレ最高だわ~」
独り言を呟いていると、突然霧が発生する。
「おやーまた来てくれたのかー、飽きないねぇー」
リュックサックにコンビニ袋をしまい、戦闘体勢に入る。
「さあ来なよ、今度も暇つぶしになってもらうからさ」
眷属家族共通の能力である透視で霧を視界から消し、奴らの姿を確認する。
すると、黒いローブを着た者達の土下座した姿が見える。
「おいおいどうしたの、戦うんじゃないのかい」
「実はお願いがあってお前を訪ねた」
「ほうー、人を散々襲っておいてお願いなんて、ちょっと都合が良すぎるんじゃないかな」
「ごめん、でも緊急事態なんだよ」
「・・・・・話は聞いてあげる」
「情けない話なんだが、ボスが攫われた」
「だからあなたの力を見込んでお願いしたいんです」
「救出を手伝ってほしい」
奴らの言葉に呆れた表情で「ふーん」と頷く。
「あなた達、私は話を聞いてあげると言っただけでお願いを聞く筋合いはないから」
「そこをなんとかしてくれ、あなたならあの3人を倒せると・・・・・」
「だーかーらー、私はあなた達みたいな奴らに協力しないって言ってるの」
「本当に頼むよ。もしボスに万が一の事があれば俺達は、俺達は!」
「私には関係ないね。逆にそのボスを殺してもいいんだよ。でも法律的にダメだからやらないけどね」
奴らはその言葉に恐れをなし、後ずさりする。
それほどに強大な力を持っているコウ。
あの3人を倒せるその実力は戦闘を行なった奴らならよく知っていた。
「そう、そうやって私達眷属家族に関わらずにいてよ」
「あのー、その眷属家族が私達に向かってくるんですが」
「それはあなたらの自業自得でしょ。私帰るから、じゃあねぇー」
コウの後ろ姿を見ながら、奴らは霧に消えようとする。
「暇つぶしになると思ったのになぁ」
つまらなさそうに言うと、コウの周りに突如として次元の裂け目が出現する。
突然の事に動揺している事も許されず、容赦なく吸い込まれて行く黒いローブを着た者達。
叫びを上げる者、悲鳴を上げる者、その声を聞きながらコウは歩みを進める。
永遠にさようなら。犯罪者さん達アディオス。クリミナルズ
まるでコウ以外の者が最初からいなかったかの様に次元の裂け目が閉まり、静まり返る夜道。
コウが持つ特殊能力、それは次元の裂け目を開き、敵を吸い込み、永遠に閉じ込める、次元幽閉ディメンションプリズン
決して彼女はこの能力を無作為に使っているわけではない。
(私に近づいた。それが原因であんたらは死ぬ以上の目に遭うんだよ。ホント間抜け。死なないなら閉じ込めれば良い、安直だけどさぁ、楽に終わる。だけどつまらないんだよね。楽に終わるのわ)
次元幽閉ディメンションプリズンで人を閉じ込める事は義理の母であるブラッドから硬く禁じられている。
だが戦いたいと言う感情が最近高ぶり始めた。
その優しそうな表情マスクの裏には狂者の考え方が眠っている。
(この衝動を抑えないと、社会で生きていけなくなる)
戦ってはいけない、自分は一般人なのだから。
そんな思いとは裏腹に、戦いへの欲求が湧いてくる。
それはタバコをやめられないのと同じ。
中毒になっているのだ。
今まで安定していた感情が、この前奴らが襲って来たせいで衝動が抑えられなくなり、爆発した。
それからと言う物仕事場で同僚や上司、後輩に迷惑をかけない様に気丈に振る舞ったが、正直つらい。
(お母さん、マンションにいるかなぁ)
こんな時はブラッドに相談するのが1番である。
それまでの辛抱だ。

数分後、マンションに到着し、拳を作りながら、ブラッドの部屋に向かう。
1階にあるブラッドの部屋のチャイムを鳴らし、応答を待つ。
「はーい」
ブラッドの返事が返ってくる。
カギが開き、ブラッドが優しい表情で迎え入れてくれた。
カーペットの上に座り、テーブルに腕を乗せ、まったりとくつろぎつつ、会話を始める。
「どうしたの、なにかあった」
「お母さん、私ね、昔の自分に戻っちゃうかもしれない」
コウの発言に、ブラッドは真剣な眼差しで自分の娘同然の彼女の顔を見る。
「戦いへの衝動を抑えるのがつらくなってきている。そう言う事?」
「うん」
真剣な眼差しが優しい表情に変わる。
「ちゃんと相談してくれてありがとね。コウは一般人として生活したいと思ってるんでしょ。そのために私がいるんだから、心配しなくて良いの」
コウは安心していると、強烈な吐き気に襲われる。
今まで殺意を我慢してきたツケが回ってきたのだ。
慌ててブラッドがコウを抱き寄せる。
「お母さん、ごめん。ごめん・・・・・」
「謝る必要なんてない。頑張っていきましょ、ねっ」
泣くコウをブラッドは微笑みながら背中をポンポンと優しく叩くのだった。
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