今時な死神と不死身な嫌われ者

ガトリングレックス

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第26話それぞれの向き合い方

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霧から姿を現したジャイアントはキリアの祖母とヤマトが話をしているのを見て、大剣を振りかぶる。
ゆっくりと近づき、 ヤマトを殺しにかかる。
それに気づいたキリアの祖母が悲鳴を上げ、ヤマトは頭を傾げる。
大剣を振り下ろした瞬間、空気の流れが歪む。
それが耳に伝わり、回転蹴りを繰り出す。
「グヲ!?」
ジャイアントの体は大きく吹き飛ばされ、アスファルトの上に叩きつけられる。
切り裂きの殺人鬼達ジャック・ザ・リッパー、お前のやっていることは、キリアちゃんを不幸にしているだけだ」
「うるさい。ボス、いじめる、奴らが、悪い」
ヤマトはキリアの祖母に「こいつは俺に任せて、家に入っててください」と指示を出すが、逆に近づいて行く。
「奥さん! 早くキリアちゃんと逃げてください!」
忠告を聞かず、ゆっくりと歩み寄る。
するとジャイアントがキリアの祖母にいきなりひざまづいた。
突然の事に驚く2人。
「ボスの、面倒を、みて、くれて、ありがとう、ございます」
片言で感謝の言葉を聞いて、キリアの祖母は優しい笑みを浮かべる。
「あなたがキリアちゃんのお友達?」
「お友達、ボスは、そう呼ぶ。でも俺は、ただ、ボスのために、人を殺すだけの、存在」
「とりあえず、キリアちゃんに会ってみる?」
この会話を聞いて、ヤマトは安心してもいいのだろうか、そんな違和感を感じる。
(こいつを倒すにはコウの能力を使うしかない、だが、この仕事は俺が受けた仕事だ。このまま学校にウソをつくか、キリアちゃんを始末するか、どうする、俺)
2つの選択肢で悩んでいると、ジャイアントがキリアの祖母に連れられ家に入って行く。
(しまった)
そう思っている間に玄関を閉められる。
「ちょっと、待ってください! そいつは危険なんです! 開けてください!」
閉じられたドアをひたすら叩くが、反応がない。
(玄関を壊すわけにはいかないし・・・・いや、信じよう、キリアちゃんの純粋さを)
万が一に備え、警察に電話をかけるため、デバイスを取り出した。

ジャイアントがリビングに入って行くと、キリアは食事を食べ終え、手を合わせいた。
「あっ! ジャイアント!」
ジャイアントに気が付き、笑顔を見せながら胸に飛び込む。
「ジャイアント、私ね、学校に行って見返したいの。だからね、私と学校に行こうよ、ねえー、いいでしょー」
「俺は、人殺し、なんだ。ボス、そんなこと、したら、嫌われ者に、なる」
「人殺しでも良いよ。でも約束して、これ以上人は殺さないって」
ボスの命令には逆らえない。
所詮はキリアの人格の1人。
それを実感しながら口を動かす。
「分かった。約束、する」
「やったー。約束だよ」
約束の現場を見届けた祖母は、食器を洗い場に片付け、洗い始めた。

キリアとジャイアントの行動を透視していたヤマトは、安心してデバイスを胸ポケットにしまい、バイクでその場を立ち去った。

翌日、ヤマトは学校にウソの解決書を提出し、会社に帰る。
次の仕事を受けた後、自販機でペットボトルのブラックコーヒーを購入する。
「キカギ先輩ー」
ランの声に振り返ると、フタを開け、コーヒーを口に流し込む。
歩いて来る2人の女子を見て、にこやかな表情を見せる。
「ミガニシ、オンガ、退院してばっかりなんだから無理するんじゃないぞ」
「大丈夫っす、リハビリは万全っすから。ねっ、ミガニシ先輩」
「はい、私達の事はもう心配しないでください」
言えない。
あの黒い戦士に治してもらったなんて、口が裂けても言えない。
「そうか、じゃあ俺仕事があるから、また後でな」
「はいっす」
「お勤めお疲れ様です」
ヤマトがその場から離れると、ミユは仕事のメモを取り出す。
そこにはびっしりとスケジュールが書いてある。
「さて、まずはこの仕事ね」
「おっと。今日は全部暗殺の仕事なんすね」
「私決めたの。もう戦闘をやるような仕事はやらないって」
悲しげな笑みを浮かべるミユに、ランはつまらなそうな表情をする。
「えー、なんでっすか? あっ、もしかして前の仕事で私がドジったからっすか!?」
自分の責任でもしパートナーを解散されたら。
そんな考えがランの頭によぎる。
「別にそう言うことじゃない。ただ私はあぁ言う仕事が苦手だった。それだけの話よ」
納得がいかない回答に、ランの心は切なくなる。
自分の必要性が途絶える。
そう思うと狂いそうになった。
「そのために私がいるんすよ! 今までなんのためにターゲットの動きを止めてきたと思ってるんすか!私、いやっすよ。このままパートナーでいられなくなんて!」
ランのいつもとは違う言動に、動揺するミユ。
「なにもそこまで言ってないでしょ。まったく、分かったわよ。明日はランにも頑張ってもらうから、それで良い?」
先輩の言葉で自分が勘違いをしていたことに気づき、ほっとしながらも、恥ずかしくなり、顔を真っ赤にする。
その姿にミユはため息を吐く。
「ほーら、置いてく行くわよ」
そう言いながら依頼人のいる部屋に向かう。
「はっ、はいっすー!」
ミユに追いつくため、ランは駆け足で廊下を歩く。
パートナーとして、ずっと一緒にいたい。
そんな気持ちを胸に、ミユにいつもの調子で笑みを浮かべるのだった。
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