魔族転身 ~俺は人間だけど救世主になったので魔王とその娘を救います! 鑑定・剥奪・リメイクの3つのスキルで!~

とら猫の尻尾

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第一幕 1場 出会い

第1話 古城前広場の出会い

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 ふと目を開けると俺は見知らぬ場所に立っていた。

 目の前には石造りの立派な建物。
 円筒形の塔のようなものが天高くそびえ立っている。

 これは城だろうか?
 
 城の背後にはゴツゴツした岩がむき出しになった山の斜面が見える。
 城には王族を初め高貴な人達が住んでいるはずだけれど……
 ここは俺が想像していたものとは大分違っていた。
 何か不気味な雰囲気を感じた。

 城の前にはまるで迷路のような花壇がある。
 広場の中央には噴水池。
 それらは手入れもされずに荒廃していた。
 城前の広場の周囲は鬱蒼とした森で囲まれている。
 その森の奥には石垣や木で出来た高い塀が見える。
 おそらく敵の襲撃から城を守るための城壁だろう。

 城の正面に当たるところにはやぐらのような物が見える。
 そこが城門なのだろう。

 さて、周囲の様子は分かった。

 残る問題は――

 俺はどうしてこんな所にいるのか……だ。

 俺は母さんの誕生日に贈り物をしたいと思っていた。そしてそれを買うために交易都市マリームへ向かっていた。

 そこから先が思い出せない。
 俺はしばらくその場で過去の記憶から答えを導く努力をした。
 しかし、それ以上はどうしても思い出すことはできなかった。
 そしてある問題に気付く。 
 
 とにかく早く城の外へ出なければ。

 こんな所に理由も分からずふらついているところを警備隊の人に捕まえられたら、最悪その場で処刑されることだって考えられる。

 我々農民には王族の決定に逆らう権利はない。
 それが王国の法律なのだから。

 急ぎ足で城門へ向かって歩いていく。

 実際に歩いてみると、思っていたよりも城の敷地は広く、門にはなかなかたどり着けない。おまけに鬱蒼とした森に見えた場所には大きな沼があり、それを迂回するためには更に時間がかかった。

 沼の周囲には大人の背丈ほどの高さの植物が群生し、それを掻き分けながら進まなくてはならない。

 パシャン―― 

 何かが水に落ちる音がした。

 水面に大きな波紋が広がってる。
 その中心部では小動物がもがいていた。

「お前、泳げないのか?」

 今は小動物の心配をしている場合ではない。
 しかし……
 このまま見捨てて行くこともできない。

 高さ3メートルぐらいはある植物の茎を根元から折り曲げると、うまい具合にポキンと折ることができた。

「ほら、これにつかまれ!」

 植物の茎の根元を持って、先端を小動物に向けて差し出す。
 すると、小動物は小さな手で植物の先端にしがみいた。

「普通、野生動物は溺れたりしないものだけどな。お前、人間に飼われているペットなのか? それにしても……不思議な体をしているなぁ……」

 鼻先は細く飛び出し、小さな黒い目に丸い耳、手足は短い。頭の天辺には小さな顔に似つかわしくない立派なつのが生えている。背中全体がトゲに覆われ、その先端は黒く根元に行くほどに白くなっている。

 興味深く眺めていると、体をぷるぷる震わせて水滴を振り落とした。

 そして、小さな黒い目で俺を見上げた。

「助けてくれてありがとー」

「うわぁぁぁぁぁ――!」

 俺は仰け反り腰を抜かしたように地べたに尻を付けた。
 
 いま、喋った?
 可愛らしい声で喋ったのか?
 小動物が?

「助けてくれたお礼にボクなんでもするよー」

 そう言って、俺の足首にちょこんとアゴを乗せてきた。

「キミに【鑑定】のスキルをあげるよー」
「か、鑑定のスキルって……言っていることがさっぱり……」
「調べたいものに鑑定と言ってみてー」

 何を言っているのかさっぱり分からない。
 しかしここは言われたとおりにやってみることにする。
 
 小動物を救出するのに使った植物の茎を見ながら――

「【鑑定】!」

 と言ってみた。

 ―――――― 
[名称]ガマガマの穂
[種族]魔植物
[状態]切断死
[特徴]無毒/種子は風に乗って良く飛ぶ/水質を浄化
 ――――――

 俺の目の前に透明なスクリーンが現れたかのように、真っ白い文字が浮かび上がった。

「な、なんだこりゃぁあああ!?」
『べんりべんりー。いつでもどこでも【鑑定】できるのー』
「い、いや……ちょっと待て! この植物は魔植物だったのかよっ! 何でお城の庭に魔植物が……大体お前は何者だ?」
『鑑定してみるー』
「よ、よし。【鑑定】!」

 ―――――― 
[名称]ハリィ(ハリィネズミ)
[種族]魔獣
[状態]健康
[スキル]鑑定/???/???/???
[特徴]???/寄生した相手とスキルを共有化する
 ――――――

 小動物はハリィネズミという種類の魔獣だった。
 ハリィネズミのハリィか……

「ん? き、寄生してスキルを共有って!?」
「こうしてくっついているだけだよー」

 ハリィは俺の足にアゴを乗っけたまま、可愛らしい声で言った。
 
「くっついているだけで寄生なのか……」

 ちょっと安心した。
 いや、よく考えれば安心する材料など何一つないのだが……

「ボクと契約してよー。いつもいっしょにいてあげるー」

 ハリィは短い後ろ足と尻尾で体を直立させ、短い手を俺の方に向けて伸ばしてきた。まるで抱っこをせがむように……
 
「うーん、しかし――」

「はやくはやくー。10分後に危険がせまっているよー」

「そ、そんなことも分かるの?」

 俺はハリィの手を指でそっと摘まんで持ち上げた。すると――

『はいっ、契約かんりょー』

 信じられないことにハリィのずんぐりむっくりとした体が良く焼いた餅のように伸びていく。

 むにゅうぅぅぅぅ――っという感じに。

 そして餅のように伸びたハリィは俺の腕によじ登り、肩に両手をかけて更によじ登り、最後に俺の首に、まるで首飾りのように巻き付いてしまったのだ。
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