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第三幕 7場 カルール村の長い夜
第46話 長い夜の始まり
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皆が寝静まった夜。
突然襲い来る赤い閃光。
それに続く破壊音。
次の瞬間、俺の体は吹き飛ばされた。
その直前まで、俺はベッドの上で寝転がっていた。
頭の中が整理できずになかなか眠れずに寝返りを打ったとき――
俺の体は吹き飛ばされたのだ。
「ぐはっ!」
地面に叩き付けられ、部屋の残骸が俺の体に降り注いだ。
部屋にいたはずが、一瞬で外にはじき飛ばされていた。
いや……
家が跡形もなく吹き飛んでいる!?
「母さん――!」
周りは家の残骸だらけ。
「アリシア――! フォクス――!」
母さんと仲間の姿が見えない。
家の下敷きになったのか?
俺は手当たり次第に壁の残骸、家具の残骸を持ち上げてみる。
夜なのに加え、辺り一面が濃い霧に覆われ、視界がとても悪い。
「カリン――! カルバス――!」
誰からも反応がない。
ハリィは? ハリィは悪魔ルルシェなのにやられたのか?
そもそも今の衝撃は何だ?
何かが爆発したのか?
空を見上げる。
赤い点が、みるみるうちに広がっていった。
「ユーマ!」
母さんの声。
突然目の前に現れた母さんは両手を空に掲げる。
俺と母さんの周辺が緑色に包まれる。
これはドーム型のバリアのような物。
次の瞬間、赤い閃光と衝撃音に包まれた。
周囲にあった家の残骸が荒れ狂うように舞い上がる。
閃光が止み、視界が広がると周囲の状況は一転していた。
母さんが張ったバリアの周辺が地面剥き出しの空間になっていた。
「母さん無事だったのか、良かった……」
「ユーマも無事だったのね。心臓が止まるかと思ったわよ」
俺は母さんに抱きしめられた。
しかし、俺はすぐに引きはがし――
「アリシアが……仲間たちがいなくなったんだ。どうしたんだろう?」
すると、母さんはなぜか俺から目を逸らす。
「あの魔人たちは消えたわ。ユーマ……魔族のことはもう忘れなさい」
「消え……た……?」
「そう、この攻撃は王立魔導士部隊のもの。あなたたち、ここに来る途中すれ違ったそうね?」
そうだ。
たしかにすれ違った。
しかし、奴らは俺たちのことを……
「――――くッ!」
「そう。タロスも私の血を分けたハーフエルフよ。魔王の娘の存在に気付かない訳がないじゃないの」
そう言って、母さんは微笑んだ。
あの時、
馬車の窓から驚いた顔をしていたタロス兄貴は……
アリシアを見ていたのか。
俺は全身から血の気が引くような感覚を覚えた。
「大丈夫よユーマ。お母さんに任せなさい」
母さんは俺を抱きしめた。
俺は…… 空を見上げていた。
赤い光の点が広がっていく様子をただ――
ぼんやりと眺めていた。
突然襲い来る赤い閃光。
それに続く破壊音。
次の瞬間、俺の体は吹き飛ばされた。
その直前まで、俺はベッドの上で寝転がっていた。
頭の中が整理できずになかなか眠れずに寝返りを打ったとき――
俺の体は吹き飛ばされたのだ。
「ぐはっ!」
地面に叩き付けられ、部屋の残骸が俺の体に降り注いだ。
部屋にいたはずが、一瞬で外にはじき飛ばされていた。
いや……
家が跡形もなく吹き飛んでいる!?
「母さん――!」
周りは家の残骸だらけ。
「アリシア――! フォクス――!」
母さんと仲間の姿が見えない。
家の下敷きになったのか?
俺は手当たり次第に壁の残骸、家具の残骸を持ち上げてみる。
夜なのに加え、辺り一面が濃い霧に覆われ、視界がとても悪い。
「カリン――! カルバス――!」
誰からも反応がない。
ハリィは? ハリィは悪魔ルルシェなのにやられたのか?
そもそも今の衝撃は何だ?
何かが爆発したのか?
空を見上げる。
赤い点が、みるみるうちに広がっていった。
「ユーマ!」
母さんの声。
突然目の前に現れた母さんは両手を空に掲げる。
俺と母さんの周辺が緑色に包まれる。
これはドーム型のバリアのような物。
次の瞬間、赤い閃光と衝撃音に包まれた。
周囲にあった家の残骸が荒れ狂うように舞い上がる。
閃光が止み、視界が広がると周囲の状況は一転していた。
母さんが張ったバリアの周辺が地面剥き出しの空間になっていた。
「母さん無事だったのか、良かった……」
「ユーマも無事だったのね。心臓が止まるかと思ったわよ」
俺は母さんに抱きしめられた。
しかし、俺はすぐに引きはがし――
「アリシアが……仲間たちがいなくなったんだ。どうしたんだろう?」
すると、母さんはなぜか俺から目を逸らす。
「あの魔人たちは消えたわ。ユーマ……魔族のことはもう忘れなさい」
「消え……た……?」
「そう、この攻撃は王立魔導士部隊のもの。あなたたち、ここに来る途中すれ違ったそうね?」
そうだ。
たしかにすれ違った。
しかし、奴らは俺たちのことを……
「――――くッ!」
「そう。タロスも私の血を分けたハーフエルフよ。魔王の娘の存在に気付かない訳がないじゃないの」
そう言って、母さんは微笑んだ。
あの時、
馬車の窓から驚いた顔をしていたタロス兄貴は……
アリシアを見ていたのか。
俺は全身から血の気が引くような感覚を覚えた。
「大丈夫よユーマ。お母さんに任せなさい」
母さんは俺を抱きしめた。
俺は…… 空を見上げていた。
赤い光の点が広がっていく様子をただ――
ぼんやりと眺めていた。
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