魔族転身 ~俺は人間だけど救世主になったので魔王とその娘を救います! 鑑定・剥奪・リメイクの3つのスキルで!~

とら猫の尻尾

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第三幕 7場 カルール村の長い夜

第47話 もう後悔はしない!

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 王立魔導士部隊による遠距離攻撃。
 強力な破壊エネルギーを伴う閃光は、俺達の居場所を正確に狙ってくる。
 魔王の娘、アリシアが俺の家に滞在している。
 その千載一遇の機会を逃すまいと執拗に撃ってくる。

 アリシアが……消えた……?
 母さんは確かにそう言った。

 母さんは宣言通り、赤い閃光から俺を守ってくれている。
 俺はただその様子を見ているだけ。

 見ているだけ。

 俺は見ているだけなのか。

 それが――俺の選択なのか?

「母さん、バリアを解いてくれ!」
「えっ?」
「アリシアを、仲間たちを探しに行く!」
「駄目よ! 今外に出たら――」
「行かせてくれ!」

 俺は母さんの両腕を掴んで願った。
 母さんの腕が下がったことで、緑色のドーム型のバリアは解除された。

「ユーマどうしたの? 魔人は消えたのよ?」
「俺にはアリシアが消えたなんてどうしても信じられない!」
「ユーマ、あなたはお母さんのことだけを見ていればいいの。魔人のことなんかすぐに忘れてしまうわよ!」
「俺は忘れない! どんなことがあっても」

 俺は母さんに背を向け走り出す。
 地面がむき出しの大地を。
 瓦礫の山に向かって。

「ユーマぁぁぁ――ッ」

 母さんの叫び声が聞こえた次の瞬間。

 俺は赤い閃光に包まれ――

 体が吹き飛んだ。

 そして何かに衝突した。
 いや、これは包み込まれるような感触だ。
 
「ユーマ、良かった。また会えたね」

 俺の体を包み込むもの。
 それはアリシアだった。

「アリシア……よかった……」
「ユーマ、すぐにここから逃げましょう!」
「ああ、そうだな。他の仲間は?」
「みんな無事よ。さあ、行きましょう!」
「どこへ?」
「異次元へ」
「異次元? どうやって……」
「アタシが魔法で入口を開けるから!」

 アリシアは指で長方形を描く。
 すると、闇夜の空間に光の扉が出現した。

「さあ……」

 アリシアは俺の手を引く。
 俺はその手を払う。

「どうしたのユーマ? 早く逃げないと次の攻撃が来るわ」

 アリシアは首を傾げた。

「本当に仲間は逃げたのか? 俺たちを置いて……」

「そうよ、アタシが先に逃げなさいって命令・・したからね!」

「そうか……おまえは命令したのか……」

「さあ、ユーマ。行きましょう!」

 アリシアは再び俺の手を握ろうとする。
 
 俺は――

「おまえは誰だ――!」

 そう叫んだ瞬間、頬に激痛が走った。

『ユーマお待たせー』

 ハリィの棘が刺さっていた。
 
「ハリィ、おまえ今までどこへ行っていたんだ!?」

 ハリィが首飾りに擬態。俺の体に魔力がみなぎる。 
 俺は魔剣ユーマを出現させ、振り下ろす。
 アリシアは後ろに飛び退き、魔剣は大地に突き刺さった。

「ユーマどうしたの!? アタシはアリシアよ?」

「ふざけるな! アリシアは一度だって俺たちに命令なんてしなかったぞ!」

 剣を抜き、斜めに振りかぶる。

「アタシは魔王の娘よ? 命令するに決まっているじゃない!」

 再び振り下ろした魔剣をアリシアは軽々と避けていく。

「そして俺の仲間は、俺達を置いて先に逃げたりはしない。絶対に! たとえアリシアに命令されたとしてもだ!」

 俺のその叫びを聞いたアリシアは戸惑いの表情に変わった。
 魔剣ユーマがアリシアの顔面に向かっていく。
 しかしアリシアは逃げない。

「――くッ!」
 
 寸前のところで魔剣は制止した。
 俺はアリシアを斬ることはできない。
 たとえ偽物と分かっていても。

『ほんとユーマはおもしろいなー』

 ハリィの声。

「斬らないの?」

 アリシアの偽物が言った。

「斬れなかった」

 俺は魔剣を鞘に収めた。

「ユーマは……魔族の中にかけがえのない仲間を見つけてしまったのね……」
 
 アリシアの偽物はしょぼんとした顔をして項垂れた。

「おまえは誰だ?」
『鑑定してみればー』

 ハリィの声。
 俺は久しぶりに【鑑定】スキルを発動した。

 ―――――― 
[名称]???
[種族]???
[職業]???
[状態]???
[攻撃力]???
[魔法]???
[魔力量]???/???
[耐久力]???
[スキル]???
 ――――――

『ね?』
「ね?って何だぁ? 壊れたぁぁぁー?」  
『壊れてないよー、ボクらにはエルフを鑑定できないんだー』

 俺のスキルの半分が『???』だったのはそれが原因か!

「いやまて、ということはこの偽アリシアは……」
「えへへ、お母さんでしたぁー!」

 ふわっと偽アリシアのドレスが広がり、下がる時には母さんの姿になった。
 テヘッみたいな感じで照れ笑いを浮かべているが、あまりにも場違いだった。

「なぜこんなことを!」

 俺が抗議すると、人差し指を俺の唇に当ててきた。

「エルフはね、遠い昔に人類と魔族の戦いには一切関与しないと決めたの。でも、お母さんはお父さんと共に人間側に付いてしまった。それは魔族の根絶を願ってのこと。だからお母さんは魔族の敵。でもユーマ、あなたにはどちらにも付いては欲しくはないの! お母さんと一緒に、異次元へ行きましょう。エルフの国へ!」

 母さんはとても悲しい目をしている。
 エルフの国へ戻ることは母さんの本意ではない。
 それはまるで死地へ向かうことと同義であるように……俺には聞こえた。

 俺は――

 どうしたらいい?

 その瞬間、アリシアの顔が浮かんだ。

 アリシアの『それがユーマの選択なら――』というときの笑顔が。

 首元に手をやり、ハリィの反応を確かめる。
 彼は俺の心に反応して、ぴくぴくと動いた。
    
「俺は、俺の仲間と共に戦う。俺は魔族と共に、アリシアと共にこの世界に平和を取り戻す!」

 もう、俺は後悔しない。

 仲間と共に――魔族を救い、世界を平和にするんだ。 
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