魔族転身 ~俺は人間だけど救世主になったので魔王とその娘を救います! 鑑定・剥奪・リメイクの3つのスキルで!~

とら猫の尻尾

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第三幕 8場 目覚めの刻(最終場)

第55話 帰ろう

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「ユーマ……」

 タロス兄貴がローブのフードを後ろへ外しながら近づいてくる。
 緑色の髪に少し尖った耳。
 俺とは違って母さんから受け継いだハーフエルフとしての特徴。
 
 カルバスが剣を構える。
 しかし兄貴はそれを無視するように無表情のまま、

「お前らを襲った者たちは魔導士部隊の斥候隊、言わば傭兵部隊のようなものだ。本来はおまえたちをこの村に押しとどめるのが任務だったのだが、手柄を早まるあまり村の者たちにも迷惑をかけてしまったようだ」

 斥候隊の生き残りは、呆然と立ち尽くしている。その向こう側にいる村人たちは身を寄せ合って、未だに去らぬ恐怖にうちひしがれている。
 
「いやな予感がしたので、俺だけ先に村に到着して正解だったな。何とか間に合ったようだ」
「間に合ってなんかない。家が……木っ端みじんに飛び散ったよ!」
「えっ!? 母さんはどうなった? 無事なんだろうな!」

 兄貴が焦りの表情を見せた。
 そうか、兄貴は母さんがエルフであることを知らないんだ。

「兄貴によろしくって言っていたよ」

 俺は母さんとの約束を守った。 

「よかった、無事なんだな!」
「母さんは兄貴が思っているよりもずっと強い人だよ」
「確かに……おまえとジロスの兄弟げんかを母さんが指先一本で止めたのは今でも時々思い出すよ。フッ……」

 昔の記憶を懐かしんでか兄貴の口元がその一瞬だけは緩んだ。
 そして、俺達に背中を向けた。

「夜明けと共に本隊が到着する。撤退するなら今のうちだな……」

 兄貴は独り言のように呟き、斥候隊と村人の元に歩き出す。

「なぜそれを……?」

「村の皆を助けてくれた礼だ。それに……」

 兄貴は立ち止まり、振り向きざまに――
 
「あんな熱烈なラブシーンを目の前で見せられたら何も言えなくなるだろ!」

「はっ!?」

 俺の声と同時にアリシアが吹き出した。
 カリンとフォクスは睨んできた。

「たが……次に合ったときは殺す。おまえが魔族にいる限り……」

「俺は魔族の救世主になったんだ。どんなことがあっても魔族を守りきって見せる。相手が兄貴であっても容赦はしない!」

「フッ、口だけは達者になったな……」

 俺は兄貴の背中を見ながら決意する。
 絶対に強くなって、兄貴を見返してやると。

 教会の建物は骨組みがわずかに残り、その向こうに広がる空が少しずつ紅を差し始めている。

「城へ帰ろう!」

 俺が呼びかけると、仲間たちが頷いた。



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