55 / 56
第三幕 8場 目覚めの刻(最終場)
第55話 帰ろう
しおりを挟む
「ユーマ……」
タロス兄貴がローブのフードを後ろへ外しながら近づいてくる。
緑色の髪に少し尖った耳。
俺とは違って母さんから受け継いだハーフエルフとしての特徴。
カルバスが剣を構える。
しかし兄貴はそれを無視するように無表情のまま、
「お前らを襲った者たちは魔導士部隊の斥候隊、言わば傭兵部隊のようなものだ。本来はおまえたちをこの村に押しとどめるのが任務だったのだが、手柄を早まるあまり村の者たちにも迷惑をかけてしまったようだ」
斥候隊の生き残りは、呆然と立ち尽くしている。その向こう側にいる村人たちは身を寄せ合って、未だに去らぬ恐怖にうちひしがれている。
「いやな予感がしたので、俺だけ先に村に到着して正解だったな。何とか間に合ったようだ」
「間に合ってなんかない。家が……木っ端みじんに飛び散ったよ!」
「えっ!? 母さんはどうなった? 無事なんだろうな!」
兄貴が焦りの表情を見せた。
そうか、兄貴は母さんがエルフであることを知らないんだ。
「兄貴によろしくって言っていたよ」
俺は母さんとの約束を守った。
「よかった、無事なんだな!」
「母さんは兄貴が思っているよりもずっと強い人だよ」
「確かに……おまえとジロスの兄弟げんかを母さんが指先一本で止めたのは今でも時々思い出すよ。フッ……」
昔の記憶を懐かしんでか兄貴の口元がその一瞬だけは緩んだ。
そして、俺達に背中を向けた。
「夜明けと共に本隊が到着する。撤退するなら今のうちだな……」
兄貴は独り言のように呟き、斥候隊と村人の元に歩き出す。
「なぜそれを……?」
「村の皆を助けてくれた礼だ。それに……」
兄貴は立ち止まり、振り向きざまに――
「あんな熱烈なラブシーンを目の前で見せられたら何も言えなくなるだろ!」
「はっ!?」
俺の声と同時にアリシアが吹き出した。
カリンとフォクスは睨んできた。
「たが……次に合ったときは殺す。おまえが魔族にいる限り……」
「俺は魔族の救世主になったんだ。どんなことがあっても魔族を守りきって見せる。相手が兄貴であっても容赦はしない!」
「フッ、口だけは達者になったな……」
俺は兄貴の背中を見ながら決意する。
絶対に強くなって、兄貴を見返してやると。
教会の建物は骨組みがわずかに残り、その向こうに広がる空が少しずつ紅を差し始めている。
「城へ帰ろう!」
俺が呼びかけると、仲間たちが頷いた。
タロス兄貴がローブのフードを後ろへ外しながら近づいてくる。
緑色の髪に少し尖った耳。
俺とは違って母さんから受け継いだハーフエルフとしての特徴。
カルバスが剣を構える。
しかし兄貴はそれを無視するように無表情のまま、
「お前らを襲った者たちは魔導士部隊の斥候隊、言わば傭兵部隊のようなものだ。本来はおまえたちをこの村に押しとどめるのが任務だったのだが、手柄を早まるあまり村の者たちにも迷惑をかけてしまったようだ」
斥候隊の生き残りは、呆然と立ち尽くしている。その向こう側にいる村人たちは身を寄せ合って、未だに去らぬ恐怖にうちひしがれている。
「いやな予感がしたので、俺だけ先に村に到着して正解だったな。何とか間に合ったようだ」
「間に合ってなんかない。家が……木っ端みじんに飛び散ったよ!」
「えっ!? 母さんはどうなった? 無事なんだろうな!」
兄貴が焦りの表情を見せた。
そうか、兄貴は母さんがエルフであることを知らないんだ。
「兄貴によろしくって言っていたよ」
俺は母さんとの約束を守った。
「よかった、無事なんだな!」
「母さんは兄貴が思っているよりもずっと強い人だよ」
「確かに……おまえとジロスの兄弟げんかを母さんが指先一本で止めたのは今でも時々思い出すよ。フッ……」
昔の記憶を懐かしんでか兄貴の口元がその一瞬だけは緩んだ。
そして、俺達に背中を向けた。
「夜明けと共に本隊が到着する。撤退するなら今のうちだな……」
兄貴は独り言のように呟き、斥候隊と村人の元に歩き出す。
「なぜそれを……?」
「村の皆を助けてくれた礼だ。それに……」
兄貴は立ち止まり、振り向きざまに――
「あんな熱烈なラブシーンを目の前で見せられたら何も言えなくなるだろ!」
「はっ!?」
俺の声と同時にアリシアが吹き出した。
カリンとフォクスは睨んできた。
「たが……次に合ったときは殺す。おまえが魔族にいる限り……」
「俺は魔族の救世主になったんだ。どんなことがあっても魔族を守りきって見せる。相手が兄貴であっても容赦はしない!」
「フッ、口だけは達者になったな……」
俺は兄貴の背中を見ながら決意する。
絶対に強くなって、兄貴を見返してやると。
教会の建物は骨組みがわずかに残り、その向こうに広がる空が少しずつ紅を差し始めている。
「城へ帰ろう!」
俺が呼びかけると、仲間たちが頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる