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第23話 魔法の言葉
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ひととおりの魔法が使えるようになったカナデは、アマネの集中講義を終わらせ、ようやく一般の部の授業に参加出来るようになった。とはいっても、カナデが所属したのは、AからDまであるクラスの内のDクラス。このエリート学校の中ではもっとも低いクラスである。まあ、カナデの魔法値や表面上のレベルは1だから、至極当然の成り行きといえる。唯一問題なのは、魔法値が突出している女神フェアリナが、別のクラスになったことだ。
「大丈夫かな、フェアリナは」
特異な性格だから、周りから浮いて仲間外れにされていなければ良いのだけれど。あのフェアリナだけに、カナデはかなり心配していた。
カナデの所属するDクラスは、総勢50名でミリアという女性教官が指導をしてくれる。胸のあたりまでかかる長い黒髪で、細身の美人教師だ。右目の下の泣き黒子が、彼女を艶やかで女らしく見せている。ボルドが指導するAクラスを思うと、カナデはこのクラスで良かったと安堵するのだった。
Dクラスといえども、個々の魔法のレベルは高かった。みながみな中級魔法を平然と発動し、仲間同士の連携もうまく取り、敵を追い詰める術を十分に、いやかなり高いレベルで実現していた。そもそも、授業を受ける必要があるのかさえ疑われる。それほどの実力者たちだった。
昨日の事件でも、不意をつかなければ、彼らが容易に倒されるはずがないとカナデには思えた。少なくとも、影魔導士3人と戦ったカナデには、それが良くわかる。逆にいうと、あの3人も、不意をつかざるを得なかったというのが、正直なところだろう。
そして彼らはまだまだ成長過程にある。更に強くなる彼らを思うと、カナデの口元は自然と緩むのだった。
「あれが噂の中途入学者か」
「ボルド先生の……お気に入り? とうとい」
レベル1でそういうクラスに参加したものだから、クラス全員の様々な思惑を乗せた視線が、射抜くように鋭くカナデを襲う。カナデは畏縮し、出来るだけ実力が悟られないように力や速度を抑え、魔法を放つにしても威力を蝋燭の火を消すくらいの弱さに調整した。あくまでカナデはこのクラスで最弱。そう思わせることが、彼らの精神衛生的にも良かったはずだ。
授業が終わると、物珍しいのか、数人の女子生徒がカナデの元にやってきた。
「ねえねえ、カナデ君って、レベル1なのにどうしてウチの学校に来れたの? しかも学校初の中途入学でしょ? 何で何で?」
パーマがかった明るい髪の女の子が、身を乗り出してくる。
「何でだろう。僕にもわからないんだ」
「ボルド先生のスパダリって本当?」
ボブの女の子が、大きな胸を前につき出してくる。いや、そんなことはどうでもいい。まずスパダリ……とは何ぞや。温泉でだらけることだろうか。
「ごめん、スパダリが良くわからない」
「カナデ君が攻めなら、スーパーダーリンだなって、キャハハッ」
「受けならモブだよね、アハハ」
女の子たちが、カナデをネタに何故か盛り上がっている。理由を知りたくなかったが、察してしまった自分が、カナデは自分で嫌になった。やはりカナデは、腐女子の呪縛からは逃れられないようだ。
「で、カナデ君はどうして、この学校に入れたんですか? 魔法にしてもレベルにしても、明らかに私たちより劣っているように思えますけど」
少し体格の良い女性が、再度他の女子と同じ質問をしてくる。やはりみんなが知りたいところはそこのようだ。カナデはあえて笑顔で、逆に聞き返してみた。
「どうしてだと思う? 僕にもやっぱりわからないんだけど」
「何か特別な魔法でも使えるんですか?」
――特別な魔法か。
光属性が他の誰も使えない属性なら、それは特別なのだろう。しかし、それが使えたからといって、この場を簡単に逃れられるとはカナデは考えていなかった。
何かないだろうか。彼女たちの気を引くことが出来る魔法のような方法が。カナデは元いた世界の記憶を思い出す。女の子たちが一番興味があったのは何だったろう。
――魔法のような?
――7日間で?
――楽して?
カナデに閃いたのは、女性が永遠に追い続けるテーマだった。そして魔法がイメージを具現化出来るものであるなら、カナデの想像力を持ってすれば、実現出来るはずである。やってみるだけの価値はあるとカナデは思った。
「1つだけ思い出した。僕には君の願いを魔法で解決することが出来るような気がする。君は魔法以外で何か悩みがあるんじゃないかな? 女の子ならみんな抱えている問題だと思うけど」
カナデの言葉に、女の子は二の腕や太ももを触りながら苦笑いをした。やはり現実世界でも異世界でも、女の子が美を追い求めるのは同じのようだ。
「言わなくても大丈夫だよ。君が陰で頑張っている姿も、僕には思い浮かぶから」
魔法には攻撃魔法と回復魔法、防御や移動などの補助魔法がある。そして補助魔法には、状態変化を付与する魔法がある。ならば、カナデがイメージする姿を、いや、彼女らが追い求める姿を、状態変化として付与すれば、何かが起こるのではないか。それがカナデが思いついた方法である。
――大丈夫。
失敗すれば笑い者にされるだけだ。最初からカナデには失うものなんてない。カナデは自分の力を信じることにした。
「究極痩身魔法ー!!」
カナデの手から放たれた光は、ふくよかな女の子を包み、みるみる健康的な普通体型へと姿を変えさせた。
「ユリちゃん、すごい。痩せた……痩せたよっ?」
別の女の子が、元ふくよかだった女の子・ユリに抱きつく。言われてユリも自らの身体が細くなったことに気づいたようだ。ぱあっと笑顔になり、その目からは何故か涙が溢れていた。
「うん、うん。私、頑張った! 頑張ったよ!」
うん、さほど頑張ってはいない。魔法のおかげだ。お互いに肌を触り合う2人の微笑ましい百合を堪能したところで、カナデは満足したようにその場を後にしようとした。
――しかし。
「何これ、スゴーイ!」
「私もやって、私もー!」
「カナデくーん、おねがーい、私にもして欲しいー」
その後、カナデを囲む女子が爆発的に増えたのは言うまでもない。カナデは完全に選択を誤ったなと後悔したのだった。
「大丈夫かな、フェアリナは」
特異な性格だから、周りから浮いて仲間外れにされていなければ良いのだけれど。あのフェアリナだけに、カナデはかなり心配していた。
カナデの所属するDクラスは、総勢50名でミリアという女性教官が指導をしてくれる。胸のあたりまでかかる長い黒髪で、細身の美人教師だ。右目の下の泣き黒子が、彼女を艶やかで女らしく見せている。ボルドが指導するAクラスを思うと、カナデはこのクラスで良かったと安堵するのだった。
Dクラスといえども、個々の魔法のレベルは高かった。みながみな中級魔法を平然と発動し、仲間同士の連携もうまく取り、敵を追い詰める術を十分に、いやかなり高いレベルで実現していた。そもそも、授業を受ける必要があるのかさえ疑われる。それほどの実力者たちだった。
昨日の事件でも、不意をつかなければ、彼らが容易に倒されるはずがないとカナデには思えた。少なくとも、影魔導士3人と戦ったカナデには、それが良くわかる。逆にいうと、あの3人も、不意をつかざるを得なかったというのが、正直なところだろう。
そして彼らはまだまだ成長過程にある。更に強くなる彼らを思うと、カナデの口元は自然と緩むのだった。
「あれが噂の中途入学者か」
「ボルド先生の……お気に入り? とうとい」
レベル1でそういうクラスに参加したものだから、クラス全員の様々な思惑を乗せた視線が、射抜くように鋭くカナデを襲う。カナデは畏縮し、出来るだけ実力が悟られないように力や速度を抑え、魔法を放つにしても威力を蝋燭の火を消すくらいの弱さに調整した。あくまでカナデはこのクラスで最弱。そう思わせることが、彼らの精神衛生的にも良かったはずだ。
授業が終わると、物珍しいのか、数人の女子生徒がカナデの元にやってきた。
「ねえねえ、カナデ君って、レベル1なのにどうしてウチの学校に来れたの? しかも学校初の中途入学でしょ? 何で何で?」
パーマがかった明るい髪の女の子が、身を乗り出してくる。
「何でだろう。僕にもわからないんだ」
「ボルド先生のスパダリって本当?」
ボブの女の子が、大きな胸を前につき出してくる。いや、そんなことはどうでもいい。まずスパダリ……とは何ぞや。温泉でだらけることだろうか。
「ごめん、スパダリが良くわからない」
「カナデ君が攻めなら、スーパーダーリンだなって、キャハハッ」
「受けならモブだよね、アハハ」
女の子たちが、カナデをネタに何故か盛り上がっている。理由を知りたくなかったが、察してしまった自分が、カナデは自分で嫌になった。やはりカナデは、腐女子の呪縛からは逃れられないようだ。
「で、カナデ君はどうして、この学校に入れたんですか? 魔法にしてもレベルにしても、明らかに私たちより劣っているように思えますけど」
少し体格の良い女性が、再度他の女子と同じ質問をしてくる。やはりみんなが知りたいところはそこのようだ。カナデはあえて笑顔で、逆に聞き返してみた。
「どうしてだと思う? 僕にもやっぱりわからないんだけど」
「何か特別な魔法でも使えるんですか?」
――特別な魔法か。
光属性が他の誰も使えない属性なら、それは特別なのだろう。しかし、それが使えたからといって、この場を簡単に逃れられるとはカナデは考えていなかった。
何かないだろうか。彼女たちの気を引くことが出来る魔法のような方法が。カナデは元いた世界の記憶を思い出す。女の子たちが一番興味があったのは何だったろう。
――魔法のような?
――7日間で?
――楽して?
カナデに閃いたのは、女性が永遠に追い続けるテーマだった。そして魔法がイメージを具現化出来るものであるなら、カナデの想像力を持ってすれば、実現出来るはずである。やってみるだけの価値はあるとカナデは思った。
「1つだけ思い出した。僕には君の願いを魔法で解決することが出来るような気がする。君は魔法以外で何か悩みがあるんじゃないかな? 女の子ならみんな抱えている問題だと思うけど」
カナデの言葉に、女の子は二の腕や太ももを触りながら苦笑いをした。やはり現実世界でも異世界でも、女の子が美を追い求めるのは同じのようだ。
「言わなくても大丈夫だよ。君が陰で頑張っている姿も、僕には思い浮かぶから」
魔法には攻撃魔法と回復魔法、防御や移動などの補助魔法がある。そして補助魔法には、状態変化を付与する魔法がある。ならば、カナデがイメージする姿を、いや、彼女らが追い求める姿を、状態変化として付与すれば、何かが起こるのではないか。それがカナデが思いついた方法である。
――大丈夫。
失敗すれば笑い者にされるだけだ。最初からカナデには失うものなんてない。カナデは自分の力を信じることにした。
「究極痩身魔法ー!!」
カナデの手から放たれた光は、ふくよかな女の子を包み、みるみる健康的な普通体型へと姿を変えさせた。
「ユリちゃん、すごい。痩せた……痩せたよっ?」
別の女の子が、元ふくよかだった女の子・ユリに抱きつく。言われてユリも自らの身体が細くなったことに気づいたようだ。ぱあっと笑顔になり、その目からは何故か涙が溢れていた。
「うん、うん。私、頑張った! 頑張ったよ!」
うん、さほど頑張ってはいない。魔法のおかげだ。お互いに肌を触り合う2人の微笑ましい百合を堪能したところで、カナデは満足したようにその場を後にしようとした。
――しかし。
「何これ、スゴーイ!」
「私もやって、私もー!」
「カナデくーん、おねがーい、私にもして欲しいー」
その後、カナデを囲む女子が爆発的に増えたのは言うまでもない。カナデは完全に選択を誤ったなと後悔したのだった。
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