レベルが上がらない転生者は、魔法学校を卒業出来ない

lablabo

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第35話 レベルが上がらない転生者は、魔法学校を守らない①

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 白い生地に橙色の幾何学模様の制服の群れが、今、カナデたちを取り囲んでいる。あるものはステッキを、またあるものはロッドを構え、険しい表情でカナデを睨みつけている。動くなと、同じラファエリアの生徒である彼らに言われる理由が、カナデにはわからなかったが、自らが動くまでもなく、正義感の強いヒュウマが黙ってはいなかった。

「おいおい、動くなって何の冗談だよ? 俺らは同じラファエリアだぞ? しかも、俺はAクラスのヒュウマ様だぜ? わかんねえのか、お前ら。頭でもおかしくなったんじゃねえのか?」

 金髪の厳ついヒュウマ。その鋭い眼光に気押されてか、怯むように1歩後退する生徒たち。パッと見ただけでも、Aクラスだけでなく、Bクラスの生徒たちもが、大勢でカナデたちを囲んでいるようだ。その制服の数およそ50人。

「あなたたち、私たち執行部に喧嘩を売るとは、良い度胸ね。誰の許可を取っての行動かしら?」

 ユリイナだって黙ってはいない。そう問いただしながらも、既に、両手で炎と氷結属性の詠唱を終わらせている。大勢に視線に耐えられなくなったのか、フェアリナはちょこんとカナデの背後に隠れた。

「そこにいるカナデ君には、ガブリエを煽動し、ラファエリアを攻撃させた疑いが持たれています」

「そうなのです。だから彼はフェアリナさんと一緒に、ラファエリアに転入してきたんです。そして1度ならず2度までも、敵に襲わせたんです」

 ラファエリアの生徒たちが、カナデを非難するかのように指差す。女子生徒と男子生徒。優等生タイプの2人だ。きっと誰かに焚きつけられたのだろう。

 ――しかし、2度までもって……。

 まさか、今回だけでなく、あの影魔導士3人組の事件も、カナデたちの仕業だとでもいうつもりだろうか。

 ――やれやれ。

 呆れたカナデは大きく溜め息をついた。どうも全ての事件を、カナデたちのせいにしたい人間が、このラファエリアにいるということのようだ。

「馬鹿野郎、誰がそんなことを?! こいつはラファエリアを守りはしても、裏切るような真似は絶対にしねえ奴だ!」

 ヒュウマがカナデを庇ってくれる。その言葉が、カナデを勇気づけた。

「ヒュウマ。残念だが、コイツらを庇うと、お前も同罪扱いされるぞ」

「ライネル! てめえっ」

 リーゼント風なワイルドな赤い髪形に、これまた男らしい顔つきのライネル。ヒュウマがどんなに睨みつけようと、彼の表情が変化することはなかった。

「それに、カナデ君たちに、あんな残虐非道な仕打ちが出来ると思っているのかしら。彼らと一緒にいればわかるわ。2人にはそんなことは決して出来るはずがないのですから」

 ユリイナの熱い言葉。しかし、それをまた別の女性が全否定する。

「ユリイナ姉さまは、騙されているのです。彼らが来なければ、私たちの仲間がこんなにも傷つくことはなかったのですよ?」

「シイナ、あなたまで一体誰に洗脳されているのかしら?」

 ユリイナの妹なのだろうか、シイナと呼ばれた女性は、彼女よりも少し小柄で、髪も肩に届かないくらいの藍色のショートボブだった。

「ミュゼが死んだのよ? それに他の子たちだって……。お姉さまはいい加減目を覚まして!」

 ミュゼとは先発部隊のAクラスの女の子だったとカナデは記憶している。ガブリエのあの赤い瘴気にやられてしまったのだろうか。同じ学校の生徒が亡くなったと聞くと、カナデの胸は強く痛む。

「ミュゼは残念ですけれど、勇敢に戦ったのでしょう? それを全てカナデ君たちのせいにするだなんて、呆れてものも言えないわ。いいえ、これは死者への侮辱よ。シイナ、一体誰の命令か、早く私に教えなさい。教えなければ、姉妹といえども、許しませんよ」

 睨みあうユリイナとシイナ。元々仲が良いわけではないのだろう。そういった鬱念が、こういう時に悪い方へ作用するのは、流れが良くない証明だろう。それは、ヒュウマとライネルの2人にとっても同じようであった。



 タイミングを見計らうかのように、薄いエメラルドグリーンの髪が風に揺れる。それは聖ラファエリア魔法学校の執行委員長である、あのカミュだった。

「カミュ、お前がいながらどうして……」

 ヒュウマがその綺麗な顔を鋭く睨みつける。

「全てはの意志だ」

 ――ボルド先生が?

 カナデには意外だった。彼はそういった知略染みたことからは縁遠い気がしていたのに。彼がやるなら、真正面から問い質すだろう。しかし、それがもし出来ないような状況にあったとしたら?

 ――あの魔法学校の秘密か。

 少なくともボルドは知っていた。だからこそ、うまく生徒たちを丸めこむために、カナデを悪者にするしかなかったのだろう。そうしてその役目を執行委員長であるカミュに押しつけた。そういうことだろう。

「カナデ君。君がセトを騙し、その大役が終わったと見るや否や、残虐にも処分したのだね。そもそも七魔帝のセトを倒せることすら、私には未だ信じられないのだけれども。一体どんな魔法を使ったんだい?」

 カミュが、カナデの心を試すようにじっくりと見つめる。そのまっすぐな目は、カナデの嘘を見抜こうとでもしているかのようだった。もちろん、カナデには、都合の悪いことなど、何もないのだけれど。

「どうしてそうなるのかわからないですけど、僕がやったのは、敵だったガブリエのボスを倒しただけです。それがどうして、反逆者扱いされなければならないんですか、カミュ先輩」

「君が初めてラファエリアの門を潜った時にだけ、ラファエリアの門から守衛がいなくなった。そしてその瞬間を見逃さずに、君の仲間だった影魔導士3人がラファエリアに入り込んだ」

 ――ちょっ……。

「それはたまたまでしょう? 僕らはユリイナの移動魔法で、校門から学校の会議室に移動したんですよ? だったら、カミュ先輩は、ユリイナやヒュウマさえ、グルだって思っているんですか?」

「そういうことだ。校門であった戦闘も、全ては君や賊を招き入れるための、大袈裟なアクションだったというわけだ。本来なら、戦わずに追い払えば良いのだからな」

「委員長! それは聞き捨てなりません。私やヒュウマがラファエリアを裏切ったような物言い、今すぐ訂正して下さい!」

 ラファエリアに尽くしてきたユリイナにとっては、耐えられる言動ではなかったのだろう。彼女の両手の魔法は、カミュへと向けられていた。その表情には悔し涙を浮かべながら。

「なるほど。全てはということか。だから、僕とフェアリナが、この学校に突如呼ばれたと。そういうことだったんですね」

「君の言っている意味はわからないが、君とフェアリナ君、そしてユリイナとヒュウマの2人の協力がなければ、2つの事件は起こらなかったものと推測される。これがボルド先生の出した結論だ」

 カミュが冷やかな視線で、四人を見つめる。ヒュウマもユリイナも抵抗するように反論するが、カミュが聞き入れることはなかった。

「そういうわけだ、カナデ君。今すぐ投降してくれたまえ」

 凛としたカミュの声。勝てる勝てないではなく、ただ単に投降を迫るところは、流石委員長だなとカナデは思った。

 ――さあ、どうする?
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